ということで、CLASSICA流はなはだお気楽路線で私の95年を振り返り。ざっと本棚やらCDプレーヤーの上やらに積まれたCDから適当に選択する方式なのだ(笑)。年間発売されるクラシック系CDの総数は、日本のお店で買えるものだけでも何千枚もあるわけで、この中で聴いたのが数パーセント。さらにそこから「こいつには世話になったぜ」なものを選ぶのだから、これが他人と重なったりしたらほとんど奇跡的現象だ、と余計なことを考えつつ、まず一発目は地味めな線で。
Haydon:Symphony No.99 & No.100 / S.Kuijken & La Petite Bande
deutsche harmonia mundi
ハイドン/交響曲第99番&第100番「軍隊」 S・クイケン/ラ・プティット・バンド
躍進する古楽器系オーケストラのおかげでハイドンの交響曲のディスクは百花繚乱状態。その内、一番よく聴いたのはどれかと言われたら、これ。多分に選曲の良さもあって、第99番は102番と並んで構成最強緊密ぶりを誇るシンフォニーの王道を行き、一方「軍隊」は名前の通りトライアングルやらシンバルが加わって軍楽隊調の趣向もあって異端派という「一粒で2度おいしい」組み合わせ(しかも「軍隊」は個人的にハイドン聴きはじめた最初の曲でやたら懐かしかったりする)。で、集中かつ意外とパワフル系のクイケンでボリューム上げて安心の均整古典派快感味わえってことなり。
Mozart:Piano Concerto No.9 & No.12 / R.Levin(fortepiano), Hogwood & AAM
L'OISEAU-LYRE
モーツァルト/ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」&第12番 レヴィン(フォルテピアノ), ホグウッド/AAM
さらに名曲中の名曲ってやつを。同じ演奏者の組み合わせで第11番&13番ってのも出ていて、喜ばしげなモーツァルトのピアノ協奏曲プレ20番な世界。フォルテピアノの響き自体が嫌いとか、ピッチの低いのががまんできんという人以外にとっては、どちらも高品質かつ待望のディスク。当然カデンツァはロバート・レヴィン作であります。こうして並べると曲的には「ジュノム」ってのが初っ端からピアノが出てきたり等、型破り系の傑作だと実感。古楽器派によるモーツァルトのピアノ協奏曲で言うと、先人ビルソン&ガーディナーも少し古くなったような気も。でインマゼール(全集完結ずみ)があって、メルヴィン・タンもVirginとEMIにちょっとだけ録音があって、レヴィンも登場となると御三家揃った感強し。こうなるとオーセンティックであることへの欲求ってのは一般リスナーとしてはもう満足で、お次はヴァイオリンでビオンディがやったような、おもしろさ優先の古楽器系も聴きたくなるような気が(笑)。特にカデンツァとかね。
Boulez conducts LIGETI
Deutsche Grammophon
ブーレーズ・コンダクツ・リゲティ
さて一気に時代を下って、この頃旗色の悪い前衛系。ピアノ協奏曲、チェロ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、とリゲティ3点セットはブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン。昨年から指揮者ブーレーズDGに復活中でCD数多しの状況で、その中からどれか一枚となったら迷わずこいつ(って言っても「悲劇的」も「ダフニス」も未聴だったりする)。前二者は従来からも録音あったけど、演奏のうまさでは楽々凌駕かも。ながら聴きしても楽しめる無調音楽という現代性(笑)が、曲を古びさせない。少なくともブーレーズ自身の作品よりは(ってマズイか)。
Officuim / Jan Garbarek, The Hilliard Ensemble
ECM NEW SERIES
「オフィチウム」 ヤン・ガルバレク(sax), ヒリヤード・アンサンブル
古楽なのか現代音楽なのかよく分からん、しかも日本盤の帯にはジャズとまで書いてある(笑)、ヒーリング・ミュージックなコラボレーションを一つ。ヒリヤード・アンサンブルがモラレスやらペロタンやらグレゴリオ聖歌を奏でる上に、ジャズ畑のサックス奏者ガルバレクが即興的に音を重ねるという、古楽畑の人には顰蹙を買うかもしれないアルバム。でもこれが見事に融合で最強にシミジミな夜なのだ。楽しめ、この抒情。昨今のグレゴリオ聖歌ブームに便乗と批判する人もいるらしいが、これは93年にすでに録音されているので無関係なはず。それに明らかに従来のECMレーベルの路線上にある音楽なので、むしろ時代を予見してたくらいと誉めてもいいんじゃないでしょーか。
Rameau:Les Indes Galates / Frans Brueggen & Orchestra of the 18th century
PHILIPS
ラモー/「優雅なインドの国々」組曲 ブリュッヘン/18世紀オーケストラ
最後にフランス・バロックから。たぶんラモーで最も親しまれているオペラ・バレエの組曲版。素晴らしくエンタテインメントでカッコいい曲なのだ。従来、この曲にはヘレヴェヘのがハルモニア・ムンディ・フランスにあって、あのディスクはいまだに心の中ではラモーの王様であることには変わりはないんだけど、18世紀オーケストラの重めの演奏もまた良きかなアンドこの曲の応援てな意味合い。曲の選択もちょっと違うのでこれくらい強まっている名曲は新録音歓迎。あっ、でもこれ今年だっけ? もしかして去年だったらすまぬ(笑)。