今週の音楽家はこの人だっ!

back number

当ホームページ開設以来のこのコーナー、1年経ってしまったので、当然ながら今回でおしまいです。いやあ、1年もやるかね、フツー。

08月22日

[NEW]クロード・ドビュッシー
Claude Debussy
(AUG/22/1862--MAR/25/1918) 生きてれば134歳

 えー、上に行くほど新しいというスタイルでこのコーナーは書かれてるので、ドビュッシーで本連載はおしまい。この後は1年近く前に書いたバックナンバー参照ってことで。で、永遠の新鮮さを保証してくれる大作曲家ドビュッシー、「牧神の午後への前奏曲」「海」はもちろん、室内楽にしてもピアノ曲にしても声楽曲にしても、カッコよさ強まりまくって愚作度ゼロ。「ベルガマスク組曲」「映像第1集&第2集」「子供の領分」(←考えてみると変な訳題だよなあ)「喜びの島」「前奏曲集第1巻&第2巻」「版画」「12の練習曲」……とまあ、ピアノ曲だけでもこのラインナップ。マラルメがどうだのヴェルレーヌだのボードレールだの、その筋のハッタリかますのにも最適。

08月22日

[NEW]カールハインツ・シュトックハウゼン
Karlheinz Stockhausen
(AUG/22/1928--) 68歳

 ブーレーズやノーノらと並び戦後のヨーロッパ前衛作曲家の代表的な一人、と言われ続けるも、実際にその作品あるいは名前自体を耳にする頻度となるとなかなか寒めかも。が、CDは出てる、つうか出てるなんてもんじゃなくて「シュトックハウゼン・エディション」としてレーベルでずらりと作品まとめられているくらいだ。ポップなジャケットと中身が全然対応してないので注意するように(笑)。ってシュトックハウゼンをジャケ買いする人もいないとは思うけど。

08月19日

[NEW]ジョルジュ・エネスコ
Georges Enesco
(AUG/19/1881--MAY/04/1955) 生きてれば115歳

 ルーマニアのヴァイオリニストにして、作曲家。作曲家としては「ルーマニア狂詩曲第1番」の演奏頻度が図抜けて高いが(作曲つうかほとんど編曲のような気もするけど)、「エディプス王」なんてオペラも書いている。最近、LDでリリースされたユーディ・メニューインのドキュメンタリー(あのグールドの「ゴルトベルク」なんかを作ったブルーノ・モンサンジョンの映像作品)なんか見てると、なんと映像でエネスコが出てくるシーンがあったりする。

08月18日

[NEW]アントニオ・サリエリ
Antonio Salieri
(AUG/18/1750--MAY/07/1825) 生きてれば246歳

 サリエリって言われても、頭に浮かぶのは映画「アマデウス」で描かれてるサリエリ像ばかりで、実在の作曲家としてのサリエリのイメージ超希薄という方が多いはず(作曲家を扱った映画としては例外的によく出来ててかつ広い層にウケるものだった)。ワタシもそう。CDで作品を聴くこともできることはできるんだけど。件の映画では、神に愛でられた天才作曲家モーツァルトと、器用ではあっても天賦の才には恵まれなかった(単なる)人気作曲家サリエリとが対比されていた。それに加えて、時の淘汰に耐えることのできる真に優れた音楽の価値を誰よりも正しく見抜くことができた鋭い批評眼(つうか耳ですね)を持ち、それゆえに苦悩するサリエリと、モーツァルトの天才性に気付かずサリエリの浅はかな仕掛けに喜んでしまう聴衆という図式も描かれていた。映画の中であれだけうまく描写されているとなると、もはや水戸黄門が印籠持って日本全国渡り歩いて悪を懲らしめたというのと同じくらい、虚構が史実に勝っている。残された作品の力では挽回不可能なほど定着。

07月28日

リッカルド・ムーティ
Riccardo Muti
(JUL/28/1941--) 55歳

 ナポリ生まれのイタリアの指揮者、って誰もが知ってると思うんだけど。ミラノ・スカラ座音楽監督というオペラ界最大の要職に付いてるってことでは最強に強まり中の指揮者。んが、要職を務めるのは苦労も多そう。ちょうど今そのスカラ座のサイトで新シーズンのプログラムが発表されてるんだが物議をかもしそうな気が。オープニングにイタオペ避ける安全策は定着気味として、なにせヴェルディのオペラが一本もないもんなあ。ざっと見た感じだとキャストもどうやら3大テナーいないようだし地味めかも。

07月26日

セルゲイ・クーセヴィツキー
Serge Koussevitzky
(JUL/26/1874--JUN/04/1951) 生きてれば122歳

 ロシア生まれでアメリカに渡り、ボストン響を20年以上に渡り率いてその地位を押し上げた指揮者。作曲もやるし、コントラバスも弾くってことで、コントラバス協奏曲なんかを書いている。指揮者としての活躍もさることながら、同時代の作曲家への委嘱活動も重要め。特にアメリカに渡って苦難の生活を送るバルトークにとっては大きな支えだったはず。バルトークの「管弦楽のための協奏曲」(通称オケコン)ってクーセヴィツキーの委嘱だったよなあ、たしか(いつものごとく記憶頼り)。オケコンのスコアって最後のコーダが2種類あって、今普通に聴かれるのが「こっちで演奏してもいいよ」って書かれた2番目の派手なほうで、スコアの本編に書かれてるシンプルなほうはめったに演奏されない。でもクーセヴィツキーの録音ではシンプルなほうが採用されてる、らしい。

07月24日

ピーター・ゼルキン
Peter Serkin
(JUL/24/1947--) 49歳

 怒れる若者も年齢的にはもうすっかりオヤジ。言うまでもなく、大ピアニスト、ルドルフ・ゼルキンの息子である。長髪を束ねて髭はやして60年代ヒッピー・スタイルでインド放浪して、変な曲(笑)好んで演奏して、いやー、ヨーロッパの伝統を具現化した立派な親父がいると子供はいつまでたってもグレたままだなあー、なんて思われがちだったのが、近年じゃすっかり落ち着いてBMGと再び契約、録音活動も本格的に再開。再開第一弾としてリーバーソンやらヘンツェやら武満やらを出してくるのも、今なら大人びた選択。もちろん、もう髪は短くなったし、髭も生やしていない。

07月18日

クルト・マズア
Kurt Masur
(JUL/18/1927--) 69歳

 旧東独生まれの指揮者。ライプツィヒ・ゲヴァントハウスとのコンビや、近年のニューヨーク・フィル音楽監督としての活動でおなじみ。ベルリンの壁崩壊のときとか、なかなか毀誉褒貶激しめ。ニューヨークに行った途端、アメリカのミニマル・ミュージックなんかも振ったりしてて環境適応能力高い人なのかも。

07月16日

ウジェーヌ・イザイ
Eugene Ysaye
(JUL/16/1858--MAY/12/1931) 生きてれば138歳

 時代を代表する名演奏家は、同時に作曲家でもあった、ちょっと前までは。で、ベルギーの大ヴァイオリニスト、イザイもフランス近代の作品を世に広めつつ、自らも無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集を作曲、現在もバッハやバルトークらと並ぶ無伴奏の名曲として演奏されている。6曲の無伴奏ソナタはシゲティのバッハ/無伴奏に触発され書かれ、それぞれシゲティやらクライスラーやらエネスコやらの同時代の巨匠ヴァイオリニストたちに献呈された。

07月16日

ピンカス・ズッカーマン
Pinchas Zukerman
(JUL/16/1948--) 48歳

 イスラエル生まれのアメリカのヴァイオリニスト。名前が日本語的な響きから言うとなんだか妙で、結構損してるかも。

07月10日

カール・オルフ
Carl Orff
(JUL/10/1895--MAR/29/1982) 生きてれば101歳

 ドイツはミュンヘンの作曲家にして教育者。作品は何と言っても「カルミナ・ブラーナ」が有名。CMだとかTV番組のタイトルとか、いろいろ使われめな曲なので、知らない人でも耳にしたことある可能性大。中世世俗歌の詩を用いて明快かつリズム楽しげな人気曲で、酒場がどうとか愛がどうとか世俗のありさまが歌われとります。同じくドイツの作曲家ヒンデミットも同年生まれ。

07月09日

オットリーノ・レスピーギ
Ottorino Respighi
(JUL/09/1879--APR/18/1936) 生きてれば117歳

 イタリアはボローニャ生まれの作曲家。華麗なオーケストレーションは師リムスキー=コルサコフゆずりか。ローマの風物を描いたローマ三部作(「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭」)がいずれも人気。特に「ローマの祭」は複雑なスコアがバカっぽいくらいの壮麗さを生み出してて偉大。古い音楽遺産の再生にも熱心だったようで、「リュートのための古風なアリアと舞曲」や「グレゴリオ聖歌による協奏曲」、組曲「鳥」などもあり。室内楽ではヴァイオリン・ソナタも演奏頻度高め。

07月07日

グスタフ・マーラー
Gustav Mahler
(JUL/07/1860--MAY/18/1911) 生きてれば136歳

 おそらく最も人気の高い作曲家の一人のはず。10の長大な交響曲(第10番はアダージョ以外は未完成で補筆完成版がいくつかある)のいずれもが名曲である、なんてのは言うまでもない。LPからCD時代になってさらに一般の聴衆への人気が高まった、てなことも言うまでもない……と思ったんだが、そろそろこの辺の事情にも説明が必要な時代になったかも。つまり昔はLPだと収録時間が短い上に、CDと違って表と裏に音楽が入っていた(オイオイ)。だから長い交響曲の場合は、なんと、楽章の途中で音楽が切れることもあった。例えば、交響曲第1番「巨人」だったら第3楽章の途中で切れちゃって、裏返してから続きを聴くとか、そういう今から思えば信じられないような暗黒時代が(笑)あったわけで、だから74分通して聴けるCDってのは大曲にはとっても便利だったっつう話。えー、今大学生で20歳だとすると、8歳の頃にCDがあったっておかしくないんだよな。たぶん、コレを読んでる半分近くは大学生だろうって想定してんだけど。

07月06日

ウラディーミル・アシュケナージ
Vladimir Ashkenazy
(JUL/06/1937--) 59歳

 いつの間にか、こんな年になっとりました。ショパンはもちろん、古典派からスクリャービン、プロコフィエフまで、幅広いレパートリーを持つピアニスト。さらに今やすっかり指揮者としても活躍中。小さくてニコニコしてる人っつう印象強げで、カリスマな魅力弱まってるが、本質的にはその場の感興より細部まで意図通り実現させること優先の職人肌かも。ってあんまり聴いてないんだけど。やっぱりピアニストは眼光鋭くて奇癖の一つや二つ持っていたほうが評価的には得のような気が(笑)。あ、でもアシュケナージってすごくCDのセールスいいらしいから、そうでもないのか。

07月05日

ワンダ・ランドフスカ
Wanda Landowska
(JUL/05/1879--AUG/16/1959) 生きてれば117歳

 今世紀になってチェンバロ(ハープシコード)を音楽史に復活させた人。ま、ワタシは若者ゆえに(笑)ちゃんと演奏を聴いていないんだが、チェンバロの話には必ず名前が出てくる人だろう。もっともその後チェンバロの復権ぶりはオリジナル楽器の隆盛とともに激しく進んでしまった。ちらっとランドフスカがチェンバロ(つっても楽器自体がオリジナルとだいぶ違う)を弾いてる古い映像を見たことがあるんだけど、今の視点で見ればほとんど冗談かも。これからも名前は記憶に留められ、一方演奏は忘れ去られていくはず。歴史、っすな。

07月03日

レオシュ・ヤナーチェク
Leos Janacek
(JUL/03/1854--AUG/12/1928) 生きてれば142歳

 モラヴィアが生んだ偉大な才能は20世紀音楽の中でも独特の地位を占める作曲家として世界に知られることに。演奏頻度では「シンフォニエッタ」、あるいは「タラス・ブーリバ」といったところが人気だが、これだけではあまりにもったいない。ヴァイオリン・ソナタや弦楽四重奏曲といった室内楽、「草陰の小道にて」などピアノ曲、さらにオペラと、他の誰とも異なる響きを持った音楽が多数ある。ところで、オペラでは「利口な女狐の物語」が曲調の明るさもあってよく知られてるんだけど、これを「自然主義オペラ」みたいに言う人が多い。自然保護、環境保護的な意味合いなんだろうけど、どうもその読み方ってピンと来ないなあ、と思うのはワタシの無知のせい? 原作って翻訳あるんだろうか。

07月02日

クリストフ・グルック
Christoph Willibald Gluck
(JUL/02/1714--NOV/15/1787) 生きてれば282歳

 ウィーン古典派というと、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの3人がまず上がる。つうかほとんど3人だけで語られ気味。ん、では古典派の4人目って誰だってことになると有力候補はグルックか。歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」などが知られている。

06月30日

アントン・アレンスキー
Anton Arensky
(JUN/30/1861--FEB/12/1906) 生きてれば135歳

 ロシアの作曲家。特に室内楽、歌曲で知られる。ボザール・トリオの録音など、近年再評価著しげで中吉。

06月29日

ラファエル・クーベリック
Rafael Kubelik
(JUN/29/1914--) 82歳

 あれー、クーベリックってまだ存命だっけか(オイオイ)。ブリタニカが言ってんだから間違っていないよなあ。で、引退してしまったボヘミア生まれの名指揮者である。なかなかシブめ。ドヴォルザーク、スメタナ、ベートーヴェン、モーツァルト、マーラーなど、数多くの名演を残している。ベートーヴェンの交響曲全集は、9つの交響曲をすべて異なるオーケストラで録音したという珍しさも話題になった。

06月26日

クラウディオ・アバド
Claudio Abbado
(JUN/26/1933--) 63歳

 現在、もっとも活躍している指揮者を挙げるとするとやっぱりこの人なのか。かつてはスカラ、ロンドン、シカゴ、現在はウィーンでオペラにオーケストラ、さらにはベルリン・フィルまで手中に収め、さらに若い音楽家との共同作業にも怠りなく、しかも今世紀の音楽も積極的に紹介中という、もはや得るべきポストなどないというくらいの充実ぶり。録音では新ウィーン楽派関係、およびその関連筋の作曲家あたりが聴きやすくて、個人的にはオススメ(ってあんまり聴いてないんだけど^^;)。ニッポンのウルサイ好事家層には、音楽の価値観が平準化してしまい没個性的になった現代の指揮者像の代表として見られるせいか、今ひとつ人気的には芳しくないような気配もなくはない(なくはない、こともない、とは言えないとは言い切れまい、とも言えよう<腰がひけがち)。ま、悪口のネタを提供できるのも優れた指揮者の特権。現代の名指揮者で酒場のクラシック音楽ファンの標的にならないのは、たぶん、カルロス・クライバーただひとりなんだから。

06月23日

ジェイムズ・レヴァイン
James Levine
(JUN/23/1943--) 53歳

 メトロポリタン・オペラに拠点を置きつつ、シンフォニーでも(さらには3大テナーの伴奏でも^^;)活躍中の現代を代表する指揮者の一人。録音も数多し。ピアノの腕前もなかなか。写真嫌いなのか、ジャケットやら雑誌やらを見ても、いつも同じ写真が出てしまうという、紙メディア的には辛い人である(笑)。一説によると「太って写るのがイヤ」という話もあるが真偽のほどはまったく定かではない。林家ペー的蘊蓄をたれると、あとはホルショフスキも同じ誕生日。

06月17日

シャルル・グノー
Charles Gounod
(JUN/17/1818--OCT/18/1893) 生きてれば178歳

 フランス近代音楽の先駆者の一人。オペラ「ファウスト」、「ロメオとジュリエット」で知られる。「ロメジュリ」には最近ようやく映像が出ました。ゲオルギウとアラーニャの実生活でも結婚した2大新星が共演してるヤツが。ちなみに、ゲオルギウの表記がゲオルギューとかゲオルギウーとか揺れ動き中。一頃ACミランにいて現在スペイン・リーグにいるフォワードのラドチオウと並んで、世界から注目されるルーマニアの2大若手スターですな(って関係ないけど)。

06月17日

イゴール・ストラヴィンスキー
Igor Stravinsky
(JUN/17/1882--APR/06/1971) 生きてれば114歳

 これほど作風が変遷した作曲家も珍しい。ディアギレフ@ロシア・バレエ団の委嘱によるバレエ「春の祭典」「ペトルーシュカ」「火の鳥」の最強ぶりもさることながら、その後、新古典主義げな擬古バロック調あり、ソナタあり、かと思えばラグ・タイムあり、しかも結局12音技法まで受け入れてしまうと、節操のなさだけでも音楽史に名を残せる(さすがにウルトラ・ロマンティックな作品までは書いてないと思うけど)。作風いろいろ、作品量産で、楽しみがいあり。乾いた響きに飢えたときにはぜひ3大バレエ以後の作品を。音列技法で書かれた晩年の作品にバレエ「アゴン」ってのがあるが、アゴンとは古代ギリシャのスポーツ・舞踊的な競技のことらしい。カイヨワが「遊び」の4つに分類してるうちの一つのアゴンのことっすな。

06月15日

エドヴァルド・グリーグ
Edvard Grieg
(JUN/15/1843--SEP/04/1907) 生きてれば153歳

 ノルウェーの作曲家。印象的かつ悲劇げな出だしを持つピアノ協奏曲が何と言っても有名だが、こちらは25歳、若き日の代表作。イプセンの劇のために書かれた劇音楽「ペール・ギュント」も、超有名。「ソルヴェイグの歌」「朝」などおいしいとこどりの組曲版での演奏が多い。作品数で膨大なのはピアノ独奏曲。折りにふれ書かれた小品が「抒情小曲集」としてまとめられているが、第1集から第10集まで、30年以上にわたり書かれている。まさに箱庭世界のライフ・ワーク。ヴァイオリン・ソナタ第3番もオススメ。

06月11日

リヒャルト・シュトラウス
Richard Strauss
(JUN/11/1864--SEP/08/1949) 生きてれば132歳

 あー、オレの書いてるものなんてニーチェだの何だの引っ張ってても別に深くなんかないっすよ、いいだろ、底が浅くたって職人芸としちゃ最高なんだからさあ、と本人が語ったかどうかは知らんが、娯楽と頽廃と革新性を持ち合わせたヨーロッパ的カッコよさに貫かれた人ではある(「薔薇の騎士」は物語的には結構ハズいと思うが)。代表作で見る限り19世紀と20世紀でスパッと分かれてて、19世紀は交響詩の時代、20世紀に入ってからはオペラの時代(家庭交響曲、アルプス交響曲はともに今世紀に入ってからの作品で、内容的には交響詩なんだけどそれを避けるがごとく交響曲と名付けられてる)。前者の交響詩群は「ドン・ファン」「死と変容」「ツァラトゥストラはかく語りき」「ドン・キホーテ」他で、「英雄の生涯」で己の業績の輝かしさを振り返り自己満足的にシメ、後者のオペラ群は「サロメ」「エレクトラ」の後、「薔薇の騎士」「アラベラ」など甘美な愛の物語路線で、グレン・グールドが溺愛したシンメトリックな(グールド談)オペラ「カプリッチョ」でシメ。作風の変遷すらなんだかカッコよさに貫かれてるような気がする。ちなみにオペラ「ナクソス島のアリアドネ」は劇中劇の要素を持ちつつも、一旦外側から内側の劇に入った後、最後に外側の劇に回帰しないという、物語的には異様なアンバランスさがあって、わけがわからない。わからんと言えば「薔薇の騎士」も、女装した少年にヒヒオヤジが惚れてしまうというのが物語的にムリめでわからん。が、このあたりは19世紀的物語の「お約束」ってヤツで、現代における「ウルトラマンはカラータイマーが赤くなるまでスペシウム光線を使わない」とかいうのと同じ「お客の共通理解」の部分なんだろう(勝手な理解か?)。つうわけで、最強にクールな作曲家である。

06月09日

カール・ニールセン
Carl Nielsen
(JUN/09/1865--OCT/03/1931) 生きてれば131歳

 フィンランドがシベリウスを生んだ同じ年、デンマークはやはり偉大な作曲家ニールセンを生んでいる。実演のほうではそれほどでもないが、録音に関して言えばここ数年再評価高まり中の作曲家。ワールドカップ2002年が日韓共同開催になったのもアヴェランジェFIFA会長がヨハンソン副会長との権力闘争についに敗れたためであり(まだ言うか)、2006年には北欧パワー炸裂が予想されるということで、これからは北欧である(強引すぎ)。交響曲第4番に「不滅」という標題が付いているため有名だが、第5番や第3番にも一歩もひけをとらない魅力ありってのはもはや言うまでもない、たぶん。親しみやすさプラス革新性っても今時。木管関係者には木管五重奏曲ってのもいいかも。

06月08日

ローベルト・シューマン
Robert Schumann
(JUN/08/1810--JUL/29/1856) 生きてれば186歳

 ロマン派といえばこの人。名曲膨大、歌あり室内楽あり協奏曲あり交響曲あり山あり谷ありだが、やっぱりピアノ曲でせうか。「クライスレリアーナ」と「幻想曲」は死んでも聴いておきたい。クセ者は4つの交響曲。オーケストレーションが拙いってのはよく言われるところであるが、適度なダサさを含めて魅力になってるかも。こんな昔の大作曲家にも今世紀になって発見された曲ってのがあって、ヴァイオリン協奏曲がそれ。メニューインが復活蘇演しようとしたんだけど、ナチス政府がユダヤ人にこういう名誉をとられては困ると先走ってクーレンカンプ(当然ドイツ人だ)に弾かせたって曲っす。

06月07日

ジョージ・セル
George Szell
(JUN/07/1897--JUL/30/1970) 生きてれば99歳

 ハンガリー生まれのアメリカの指揮者。セルと言えばクリーヴランド管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団といえばセル(ま、今ならドホナーニだが)というほどの四半世紀にわたる名コンビ。緻密かつ厳格げなアンサンブルの精度から浮かぶ姿は完全主義者のそれ。実際練習も厳しかったようであるが、残されたリハーサルのビデオなんかを見ると、R・シュトラウスのモノマネをしたり意外とユーモラスな一面も持っていたりする。録音はやまほどソニークラシカルから出てて、何を聴いても吉という安定まった印象強げ。

06月06日

アラム・ハチャトゥリアン
Aram Khachaturian
(JUN/06/1903--MAY/01/1978) 生きてれば93歳

 バレエ「ガイーヌ」の中の1曲、「剣の舞」が突出して有名なのがあまりに不幸すぎかも(笑)。「ガイーヌ」以外だと交響曲第2番とかバレエ「スパルタクス」あたりでせうか(非ロシア者>自分)。

06月02日

エドワード・エルガー
Edward Elgar
(JUN/02/1857--FEB/23/1934) 生きてれば139歳

 イギリスの近代音楽といえば、まずはこの人。周囲にクラシック音楽好きの人間が何人かいれば、中にはイギリス音楽ファンも一人くらいはいるだろう。そういう人間をつかまえていろいろ尋ねれば親切にエルガーやらディーリアスやらヴォーン・ウィリアムズについて語ってくれるはずだ(もっとも饒舌なイギリス音楽ファンは滅多にいないという話もあるが)。で、一般的にエルガーと言えば第2の英国国歌とも言うべきトリオを持つ行進曲「威風堂々」第1番ってところがまず有名か。が、これではちと寂しげなので、エニグマ変奏曲、交響曲第1番、第2番、チェロ協奏曲あたりも。「愛の挨拶」他、小品系もアリアリ。

05月29日

ヤニス・クセナキス
Iannis Xenakis
(MAY/29/1922--) 74歳

 すぐ下にリゲティがあるんだけど、クセナキスも現代の前衛系作曲家にして、なおかつ知識なしに耳だけで聴いて感動を得ることができる人である。ギリシャ人の両親を持ち、ルーマニア生まれで後にフランスへ。この人を語るときに必ず言われるのが、50年代のパリで建築家ル・コルビュジェのアシスタントをしてたってことと、統計学や代数学を作曲に応用したってこと。たとえばオーケストラ曲「ピソプラクタ」では、グリッサンドの音速を統計的に決定するために気体分子運動論が適用された、ってなことが言われる。これ、何のことか分かりますかねえ>コレを読んでる結構多いはずの理系大学生の方々。大体において少なくとも日本語で紹介される場合は、書いているほうも数学や物理はよく分からんからウケウリで語り継がれている(笑)って現状があって、具体的にどういう風にそれらを援用したのかさっぱり分からんですなあ。冷静に考えてみれば、気体分子の運動を作曲に使って何か意味があるかと言えば、ありそうにない(というのがモダンの時代が終った後のフツーの考え方だと思う)。しかし、それでもクセナキスは大作曲家だ。なぜなら、その音楽が聴衆を魅了する力を持つからってシンプルな話。経験則から言って、一番聴く機会が多いのが打楽器アンサンブルのための「プレイアデス」。「エオンタ」「メタスタシス」「ピソプラクタ」が収められた名盤がハルモニア・ムンディ・フランスにあるんだけど、このあたりの曲がイマイチCDでは手にしにくい現況が惜しい。でも彼の作品の録音自体は輸入盤を視野に入れればかなり多いっすよ。

05月28日

ジョルジ・リゲティ
Gyorgy Ligeti
(MAY/28/1923--) 73歳

 ハンガリーに生まれ、その後亡命した現代の大作曲家。前衛系の音楽がちょっと苦手、という方にとってもオススメ。代表作はやっぱり「アトモスフェール」ってことになるのか。精緻極まりないトーン・クラスターの手法による曲で、オーケストラとピアノ内部奏法の87声部が絡み合う。同工異曲で合唱曲の「ルクス・エテルナ」ってのがあって、こちらは16声部。不思議な深みに一度はハマる価値あり。キューブリックの映画「2001年宇宙の旅」に効果的に使われていたのは「アトモスフェール」のほうだっけ? あ、「ルクス・エテルナ」のような気もするな(記憶曖昧)。で、たしか著作権料が払われなくてリゲティが怒ったって話をどこかで聞いた。他にも「13人の奏者のための室内協奏曲」とか「チェロ協奏曲」「ロンターノ」、チェンバロのために書かれた「コンティヌム」など名曲数多し。最近のブーレーズのDG録音もいいし、wergoレーベルならほぼ一通りの代表作を聴ける。録音には十分恵まれとりますな。

05月28日

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
Dietrich Fischer-Dieskau
(MAY/28/1925--) 71歳

 リート(歌曲)に、ドイツ・オペラに活躍した名バリトン。さすがにこの歳になると昔の人って感じ強し。録音も多い。って、苦手系の人なので書くことあまりありませんなあ(笑)(<だったら書くな)

05月22日

リヒャルト・ワーグナー
Richard Wagner
(MAY/22/1813--FEB/13/1883) 生きてれば183歳

 長い。長すぎる。まあ「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は長いとは言え、曲調も明快でまだ許せる。やはり上演に4日間を要する「ニーベルングの指環」こそ長さの王様。「ラインの黄金」「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」と、長大な作品を4日間かけて上演するのだから。北欧神話に題材を求めたこの楽劇、全能さを失う悩める神、英雄の登場により台頭するニンゲン、地下国家を作る小人族、神々と取り引きする巨人族と、舞台設定もヒロイック・ファンタジー、あるいはロールプレイング・ゲーム風の魅力大ありで、物語的なおもしろさでハマる人も多い。アイテム類も充実だ。ライン河に眠る黄金から作られた呪われた指環は愛と引き換えに権力をもたらすし、トネリコに刺さる魔剣(?)ノートゥングを引き抜くことができる者は自らの英雄性を証明できるし、ノートゥングは神ヴォータンの持つ権力の象徴たる槍を打ち砕く。いやー、ドラクエ・ライクな世界観っすな(ってちと違うか)。神の長ヴォータンが、ギリシャ神話で言うところのゼウスに相当するらしいんだが、神の力が全能ではなく、神々の城に象徴されるがごとく黄昏てしまい、ニンゲンに時代を譲らざるを得ないというところがミソかも。で、音楽は? 「お父さん、ごめんなさい、私が悪かったです」と娘が反省するのに、20分も30分もかけてしまうオペラならではの展開。やっぱり長い。

05月17日

エリック・サティ
Erik Satie
(MAY/17/1866--JUL/01/1925) 生きてれば130歳

 ロマン派もいやだ、印象派もちょっと違う、もちろん前衛ぢゃない、そーゆー20世紀音楽の方向性がここに一つ。ジムノペディに聴けるシンプルさには今日性ありあり。で、曲のタイトルの変さ加減にも触れないわけにはいかず、「梨の形をした3つの小品」「ひからびた胎児」「犬のための本当のだらだらした前奏曲」「逃げ出したくなる3つの歌」などなど。

05月12日

ガブリエル・フォーレ
Gabriel Faure
(MAY/12/1845--NOV/04/1924) 生きてれば151歳

 その後の近代フランス音楽に大きな影響を与えた作曲家。何と言ってもレクイエムが有名。旋律的には「夢のあとに」とか「パヴァーヌ」、「エレジー」ってのも。ピアノ連弾で遊んだ人なら組曲「ドリー」もたぶんおなじみ。管弦楽(とメゾ・ソプラノ)のためには、音楽の素材としては頻度高めな「ペレアスとメリザンド」。晩年を中心に書かれたピアノ五重奏曲などの室内楽、ヴァイオリン・ソナタやチェロ・ソナタ、そして夜想曲や即興曲などピアノ曲、数多くの歌曲と、名作強まって膨大。個人的にはどうもピンと来ないんだけど「修行が足りんわぁ」(バーチャのラウ調で)なんでしょうか。ちなみに、同時代のフランスの作曲家マスネも、3年前のこの日の生まれってのが奇遇。

05月10日

ミルトン・バビット
Milton Babbitt
(MAY/10/1916--) 80歳

 アメリカの作曲家。新ウィーン楽派以来の12音技法の流れを汲み、徹底したセリー主義者として知られる、はずなんだが、セリー主義の旗色の悪さとあいまって、そろそろ忘れ去られる頃かもしれない(笑)。ちゃんと訃報が新聞に載るんだろうか。しかし、ともかく意外と探せば録音は出ている。NEW WORLDとかCRIとかHarmonia Mundiあたりで、彼の主知的な音楽を堪能できる。数年前、ある都内の大型レコード店で、バビットのピアノ・コンチェルトのCDを見かけた。で、買おうと思ったんだが、とりあえず店内を一周してからにしようと思って、数十分後に再び現代音楽の棚の前に立った。すると忽然とそのCDが消えているではないか。こんなものを同じ日に同じ店で買おうと考えるヤツがいるとは、蓋然性の悪戯以外の何物でもない。

05月09日

カルロ・マリア・ジュリーニ
Carlo Maria Giulini
(MAY/09/1914--) 82歳

 イタリアの名指揮者。かつて韓国の指揮者チョン・ミュンフンはジュリーニのアシスタントをしていたが、謙虚かつ礼儀正しく、権謀術数に興味を持たなくとも指揮者になれるのだということをそこで学んだと言う。指揮界の良心なのか。しかし芸術家ってのは適度に悪人なほうが話題にはなりやすい気もするが(笑)。

05月08日

キース・ジャレット
Keith Jarrett
(MAY/08/1945--) 51歳

 もちろんジャズ・ピアニストとして知られる人だが、ECMレーベルにはJ・S・バッハやヘンデルなど純然たるクラシックのレパートリーも録音している。チェンバロまで弾いてしまう大胆さ。全然音楽とは関係ないが、作家のトーマス・ピンチョンと同じ誕生日である。

05月07日

ヨハネス・ブラームス
Johannes Brahms
(MAY/07/1833--APR/03/1897) 生きてれば163歳

 19世紀を代表する濃厚系ドイツのロマン派作曲家と言えばブラームス。ドイツ音楽の伝統を引きずったと言われても、現代から見りゃ誰もがパラレルに存在しててピンと来ないかもしれないが、あとほんのちょっと生きてりゃ20世紀までたどり着いたという事実を考えると、その辺の時代意識が実感できる。晩年の作品、たとえばクラリネット(またはヴィオラ)・ソナタ第1番&第2番が、R・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」よりも後に書かれていたりする。オペラ以外のあらゆるジャンルに名曲を書いていてその辺の紹介の要もないだろうが、最強にカッコいい曲をあげるとすると、独断では初期のセレナード第1番(オーケストラ曲ね)と、晩年のピアノ小品群。ま、基本的にはCOOLってのとは違う人ですな。怪獣、じゃない、晦渋系。

back number

[INDEX]INDEXへ