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CLASSICA DISC WOW!


[CD]モノクロ写真が似合うシブいヤツ。ヘレヴェヘのミサソレ

 重々しい曲名に引っ張られてか、この曲、第9と並んでイメージが肥大化系かも。ベートーヴェンのミサ・ソレムニス(荘厳ミサってヤツです)、ヘレヴェヘ指揮のシャンゼリゼ管とシャペル・ロワイヤルで古楽器。編成は弦楽器の数を上からいうと10,10,7,5,4。予想したほど小さくないんだけど、これってたとえばブリュッヘン/18世紀管の「第9」の3分の2くらいなんだよね。ま、ライヴなんで(ここ何年かシャンゼリゼ劇場でヘレヴェヘ・シリーズをやってたんだっけか)会場の関係とかもあるかもしれんが。でもちゃんと鳴ってるし、これくらいでもサイズは満足。「クレド」感動の嵐。「グロリア」最強にカッコいい。特に後半のフーガのとこ。年末はディスクマンにこのCD突っ込んでフルボリュームでガンガン鳴らしながら街を闊歩するのが大吉(ウソ)。

 ヘレヴェヘのサンプラーが1枚付いているのもいいかも。

Beethoven:Missa Solemnis/Philippe Herreweghe & La Chapelle Royale, Collegium Vocale, R.Mannion, B.Remmert, J.Talor, C.Hauptmann/ harmonia mundi France HMC901557  国内盤は出るならキング・インターナショナル


[CD]もう当局を気にしなくたって、好きに弾けるのだよ、ウゴルスキ

 うむむ、こんな楽しいディスクを一月以上も開封せずに放置してしまったとは。「ウゴルスキ・ピアノ・リサイタル」は、なんと言っても選曲がクール。意表を突いてブゾーニの「モーツァルトの主題によるジーグ、ボレロと変奏曲」で始まったと思ったら、おなじみのリストの「愛の夢」、ドビュッシーの「月の光」へ。シューマンの「トロイメライ」、ショパンの「幻想即興曲」がある一方で、スクリャービンの「左手のための2つの小品」があったりする。普通の選曲のセンスじゃないね。ラストはウェーバーのピアノ・ソナタ第1番の終楽章だし。テクニック抜群で、通俗的な曲もカッコよく弾き、難曲もサラリかつ迫力。それにしてもピアニストってのは羨ましい。たった一人でこれだけ趣味に走ったアルバム作れるんだから。

 旧ソ連時代のウゴルスキには選曲の自由はなかった。メシアンの「鳥のカタログ」の楽譜を友人宅で見つけ(通常の手段では入手できない代物だったようだ)、貸してもらえるよう興奮して懇願し、その日4時間もぶっ続けでその曲を弾いて無上の幸せを感じたという人。小品集一枚作るにも、並みの作りじゃすまさない。

ウゴルスキ・ピアノ・リサイタル ポリドール(ドイツ・グラモフォン) POCG1912


[CD]オリジナル楽器系なり。ロバート・レヴィン版のモツレク

 モーツァルトのレクイエム、言うまでもなく一般に演奏されるのは、弟子であったジュスマイヤーが補筆完成させたものである。しかし、この補筆部分をめぐっては様々な議論があり、いまやモーンダー版やレヴィン版といったようにいくつもの稿が存在する。このディスクはモーツァルト学者として(またピアニストとしても)知られるロバート・レヴィンの稿による演奏。すでに依頼者であるリリングの指揮で録音も行われているが、オリジナル楽器で同稿を録音したのはこれが初めて。ジュスマイヤー版との相違は、解説でレヴィン自身によって述べられているが(ちゃんと国内盤にも翻訳が載ってます)、まずは予備知識なしで聴いてみたい。細部の違いだけでなく、モーツァルトのスケッチに基づくまったく聴いたことのない曲も耳にできるはずだ。

 演奏はマーティン・パールマン(この人も音楽学者だ)指揮のボストン・バロック他。個人的な話だが、私が最初に聴いたモツレクはカール・ベームのものだった。その訴えかけの強さがあまりに印象的で、この曲は特別な機会でもなければ聴かない音楽になった。そのうち、何年も経ってモーツァルトの種々の曲をオリジナル楽器で聴くことが多くなるとともに、そこで聴く透明感のある響きと、ベームのレクイエムで聴く分厚い響きや切実で深刻な祈りの音楽が、大きく乖離してきた。もはや、レクイエムとそれ以外の曲が別人による音楽であるかのように。そして、その何年も続いた不自然な乖離は、このディスクの最初の数秒を耳にした瞬間に雲散霧消してしまったのだ。

 余談なんだが、オッフェルトリウムの後ろのとこで、quam olim Abrahae〜って歌うところがあるんだが、あれがいつも「ま・も・り・た〜まえ〜」って聞こえてしまう。「空耳アワー」に応募すりゃよかったかも(笑)。
モーツァルト/レクイエム M・パールマン指揮ボストン・バロック他 マーキュリー(TELARC) PHCT5144


[CD]キースのヘンデルだ。バッハよりずっといいかも

 キース・ジャレットのピアノと聞いて不信感(笑)を持つ人もいるのかもしれない。が、とにかく20年間彼が録音の機会を待っていたというヘンデルのクラヴィーア組曲が、信頼のブランドECMレーベルよりリリースされた。ヘンデルの組曲にここまでこだわるピアニストはそうはいない。余計な先入観は捨て去るべし。事実、非常に洗練されたカッコいい演奏だ。全7曲。

 ヘンデルの組曲はアルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグという組曲を構成する基本的な舞曲から成り立っている。まさに組曲の原形。バッハのフランス組曲やイギリス組曲と比べても、ずっとシンプルな形だ。基本的に現代の演奏会で弾かれるようなレパートリーではないので忘れられがちだが、どれも簡潔かつ豊かな内容を持つ。キースは「本来、これらの曲は通して聴かれるものではないが、連続して聴いたときの効果も考えて曲を並べた。するとちょうど作曲年代の逆順になった」といったことを解説で述べている。初期に書かれたものほど多様で冒険的な傾向がある。7曲中真ん中の組曲第1巻第8番は、これらの組曲中では例外的に第1曲にプレリュード、そしてフーガが置かれ(バッハみたいでしょ)、大変盛り上がる曲。また最後の第1巻第1番の1曲目がファンタジー風のプレリュードになっているのもロマンティックで効果満点だ。トリルにまでペダルを踏んでしまうところがちょっとナンではあるが、古臭い印象を与えたり崩れたりは決してしない。

Handel:Suites for Keyboard /Keith Jarrett/ECM 445 298-2  国内はポリドール POCC1031


[CD]ついでにもう一つ組曲。太ったオヤジ、ルー・ハリソン

 とまあ上に書いたようにもともと組曲ってのは一定の形式があったわけだが、その後、たとえば組曲「展覧会の絵」みたいに、単なる自由な形式の曲の連なりになってしまった。

 さてアメリカの偉大なる東洋かぶれオヤジ、ルー・ハリソンの登場だ。曲は「シンフォニック・ストリングスのための組曲」。古典から現代までこなすD・R・デイヴィス指揮アメリカン・コンポーザーズ・オーケストラの演奏でレーベルはArgoから。この「組曲」はアルマンドやジーグのかわりに、コラールやノクターンが入ったもの。それぞれ3、4分で、バロック期の「組曲」の概念とちょっと近い。実際、小フーガ(ちょっと主題がバルトークげな感じ)なんてのまである。曲調は例によって、まがいモノっぽい東洋風だったり、どこまで敬虔なんだか計りかねる祈りの音楽だったりと、本領発揮。テンポの遅い曲はいずれも深々として美しい。ケージ、カウエルらと並ぶ、愛すべき作曲家である。

Harrison:Suite for symphonic strings, etc./D.R.Davies & American Composers Orchestra/argo 444 560-2  国内盤はもし出るとしたらポリドール


[CD]爆笑してもいいですか? 古楽器によるロッシーニ序曲集

 「ウィリアム・テル」や「セビリャの理髪師」「絹の梯子」といった超ポピュラーなロッシーニの序曲集を、古楽器で演奏してくれたのはロイ・グッドマンとザ・ハノーヴァー・バンド。ゲテモノ視しちゃいけませんぜ。学究肌のグッドマン先生のおっしゃることにも耳を傾けなきゃ。「え〜、ロッシーニにおけるハイドンの影響は明らかでして、ユーモアのセンス、管弦楽法への繊細さにそれは現れております。今回の演奏には巷の印刷譜があんまり自筆譜に忠実じゃないので、いろんな資料に当たりました。曲順も作曲年代順になっておりますので、頭から聴けばロッシーニの書法の変遷が明らかになるでしょうな。ロッシーニの序曲ではいろんな打楽器が活躍しますが、これは19世紀のものです。もちろんホルンはバルブのない当時のものを使っております」

 先生、ハイドンの影響はあんまりピンと来ないんですが、なぜホルンがあんなにヨレヨレなのかは分かりました。「ウィリアム・テル」が従来の序曲よりずっと大編成なのも分かりました。でも、どうしても愉快すぎて笑っちゃうんですけど……。

 カラヤンみたいにゴージャスじゃない。でも、楽しさでは最強のロッシーニ。皮肉でもなんでもなくて本気で喝采。

Rossini:William Tell and other overtures /Roy Goodman/The Hanover Band /RCA 09026 68139 2  国内盤は近々BMGから


[CD]教師vs孫弟子。ラローチャの弾くグラナドス/スペイン舞曲集

 ぼんやりしているとスペイン音楽との最初の出会いは、ロドリーゴのアランフェス協奏曲やラロのスペイン交響曲といったあたりになりがち。それはそれで悪くはないのだろうが、あのストレートさがちょっと苦手な人もいるはず。そこで、アルベニスと並ぶ近代スペイン音楽の大家、グラナドスの登場である。「スペイン舞曲集」はその名の通り民族音楽的な要素を持った曲だが、同時にロマン派風の洗練されたピアニズムにもあふれた曲。カタルーニャ一辺倒ではなくちょっとインチキ臭い東洋風の曲なんかもあったりして、洒落ている。

 グラナドスはピアノ即興の名手でもあった。そのグラナドスのピアノの弟子がフランク・マーシャル、そしてそのまた弟子がアリシア・デ・ラローチャ。たしかグラナドス自身もラローチャのお母さんにピアノを教えたりしていた(記憶)。ラローチャがグラナドスを弾いて悪いはずはない。ソフトな美音が大変印象的。こんなドメスティックな環境に(同じくスペインの作曲家モンサルバーチェはラローチャの幼馴染だったりする)、才能が集結しているんだから凄い国である。

Granados:Spanish Dances / Alicia de Larrocha /RCA 09026 68184 2  国内盤はおそらく近々BMGから


各項の末尾にこの書体で書かれた部分はそのディスクに関するインフォメーションです。国内発売されているものについてはレコード会社名、モノによってはディスク番号と発売日を添えています。社名の後の括弧内はレーベル名。輸入盤を探すときはレーベル名で探してください。
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