エヴァンゲリオン交響楽を聴いてきた
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文=
三軒茶屋道楽娘


新日本フィルの「エヴァンゲリオン交響楽」を聴いてきた数少ないクラシック側の聴衆から見た参加レポート(もちろん数多いのはエヴァ側だ)。新世紀エヴァンゲリオンとクラシック音楽について真っ正面から挑んだっていうページじゃないっす、念のため。 エヴァそのものについての記事はMusiCinema「エヴァンゲリオン・スペシャル」をご参照ください。


 とある成り行きで、7月6日、なぜか「エヴァンゲリオン交響楽」なるコンサートの初日に行くことに。場所はオーチャードホール、オケは新日フィル。もしかしてレニーもビックリの、エヴァ版「青少年のための管弦楽入門」なのか?

 演奏会は猛暑の真っ只中。午後3時半のBunkamuraの前は、人、人、人。……んー、ハッキリ言いましょう、「エヴァンゲリオンって何ですかっ??」 私には初期のガンダムが精一杯。当日は主役の声優も駆けつけるとのことで、もしや現地はコスプレだらけかとビビリつつ(笑)、新日フィル定演で通い慣れたはずのオーチャードホールへおっかなびっくりやってきたのだ。

 ところが、入場前のカメラチェックに長蛇の列を成すのは、年齢層こそ若いものの、至って普通の人々。年齢幅は予想以上に多岐に渡っている。
 そして、「コスプレの人、いないねー」という声とともに、「あー、よかった、もっとスーツとか着て来る人が多いかと思ったよー」とか、「クラシックっていうからさー、ワンピ(=ワンピース)がいいかなーとか思ったんだけど」などという会話が。皆さん、思いのほか緊張顔。
 そうか。ここに来た人達って、エヴァンゲリオンだから当然チケットを買ったわけだけど、「今日はバリバリのクラシック・コンサートなんだ」ということを、とても意識して来た人たちばかりなのだ。会場に入ってからもその雰囲気は同じで、定演のお客よりもはるかに静かに開演を待っているほど。チューニングが終わった後なんか、コトリとも音がしない。お目当ての声優が出てきても、歓声一つたたなくて、余りの静けさに、「そんなに遠慮しなくてもいいんだよぉぉぉお」と心の中で叫んだ私でありました。

 さて、ステージの上にスクリーンが降り、映画の予告編を流してからコンサート開始。エヴァはクラシックを上手に使っていることから、このコンサートが急遽企画されたそうだけど、オリジナル曲もなかなか良かったりする。私の前の高校生(男性)なんか、最後まで身を乗り出して聴いていた。
 私はというと、今回誘ってくれた友人に1度だけサントラを聴かせてもらったんだけど、新日フィルがやると、格段にいい。やっぱり上手いオケがやるといいですね。ボストン・ポップスでスターウォーズやスーパーマンを楽しむのと同じように、音楽として十分聴ける(惜しむらくは、ステージ両脇のPAから、必要以上に増幅されたオケと合唱の音がし、ハウリングまで起こしてしまったこと。後半は全く解決し、マイクで増幅するものの、かなり自然なオケの音に落ちついていた)。
 曲は以下の通り。

 ・ベートーヴェン/交響曲第9番 第4楽章より
 ・TOKYO-3 C7
 ・EVA-01
 ・DECISIVE BATTLE
 ・戦闘組曲
 ・RAI I
 ・RITSUKO
 ・I SHINJI
 (休 憩)
 ・バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番より前奏曲
 ・バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番よりガヴォット
 ・パッヘルベル/3声のカノンとジーク(→オケ演奏、途中からラップに)
 ・THANATOS
 ・エヴァンゲリオン・エスニックメドレー
 ・FLY ME TO THE MOON
 ・ヘンデル メサイヤよりハレルヤ・コーラス
 アンコール:ハレルヤ+ラップ等のアレンジメント

 今回の企画は「クラシック」「交響楽」を前面に出していたんだけど、実は本編内で使ったジャズあり、ラップあり、かなりバラエティに富んだコンサート。ふたりの黒人女性が熱唱した「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」など、とても上手くて素敵かった。オケを交えて、クラシックの曲を次第にポップス調に変えていったり、ラップにオケが伴奏を付けてド迫力出したり。声優さんに対しての黄色い歓声は出なかったのに、音楽に対しては次第に会場がノッてきて、最後は全員手拍子で楽しく終演となったのでした。

 ゲストの声優3人のトークはこんな感じ。

声優A「今日はクラシックっていうから、緊張して来たんですが、生のオーケストラって迫力ありますねー」
声優B「身体に音の振動が伝わってきて、生で聴くのって、大切なんだと思った」
声優C「クラシックって敷居が高いと思いがちだけど、そうじゃない。これからどんどん生のコンサートに行きましょうよ。逆に、新日フィルが好きでいらした方は、ぜひエヴァを見てほしい」
 この話にうん、うん、と頷きながら、バーンスタインがカメラに向かって話すモノクロームの画面がふと頭をよぎったのでした。


 客席は日によってメチャメチャ盛り上がったり、私の行った日のように「借りてきた猫2000人」状態(出演者の某管楽器奏者・談)だったりしていたらしいけど、なにはともあれ、オーチャードがエヴァのお蔭で超満員。どんな形であれ、オーケストラ・コンサートにあんなに沢山の人(しかも大勢の中学・高校生)がやって来るのは、とても良かったのでは。
 ちなみに当日の指揮を務めたデリック・イノウエは小澤征爾のアシをやったとかいう日系カナダ人。実は井上道義の偽名ではないかという巷のウワサはデマでした(笑)。
(07/25/97)


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