どこまで観れるか!?
ワールドカップ1998テレビ観戦記
ウチじゃ衛星放送映んないけど、それでも何とかするのだ。


ワタシが最近観た順で並んどります。ビデオや再放送で翌日観る人たちのことも考えて、日本時間午前1時10分以降に放映開始の試合については翌日夜までは結果に触れない非速報主義(笑)。なお、対戦カード名に張られたリンクはFRANCE98公式サイトの試合記録につながってます。


決勝トーナメント / 一次リーグ第3戦 / 一次リーグ第1〜2戦

ぱつきんポンポン頭、パワーとスピードに屈する。
イングランド vs コロンビア

 地上波で一部カットして録画で放映。
 世代交代が進まず高齢化しているコロンビア、ヴァルデラマがゲームを作る様子は4年前と変わらず、つうか4年前以上に足が動かない、ゴールが遠いチームかも。技巧的なパス回しは健在で、中盤の狭いエリアの中で次々と相手をあざ笑うかのようにパスをつなげてくるんだが、「散々難しいパス回しを成功させた揚げ句にボールは自陣深くまで戻ってきました」(笑)みたいな、空しさがある。誰かがスペースに走り込むわけでもなく(ホント、歩いてるよ、このチームは)、相手が相手だけに空中戦の勝利を期待してゴール前にボールを放り込むわけでもなく、強引なドリブル突破をしかけるでもない(リンコンが何度か試みてたがもう歳か。アスプリージャはトラブって帰国)。ひたすら細かくパスを回して揺さぶるサッカーは、特異で、魅力的で、インテリジェンスも感じさせる。しかしボールをイングランドに奪われた途端に、グラウンドを広く使った、ダイナミックで力強い展開に圧倒されてしまう。

 勝たなければ一次リーグを突破できないコロンビアだが、アンダートンとベッカムのゴールの前に沈む。前評判通り、イングランドが決勝トーナメント進出。アンダートンのシュートも、浅い角度からキーパーのニアサイドをぶち抜くゴールで、今大会よく見る形かと。

 試合終了後、コロンビアのGKモンドラゴンが泣いているのを、イングランドのGKシーマンが慰めていた。なにせこういう国なので、単に負けたのが悔しくて泣いているだけならいいんだがと、心配せずにはいられない。

イングランド 2−0 コロンビア
至福度 ★★★
面白度 ★★★
非力度 ★★★★(コロンビア)
(06/28)


チャンスは無尽蔵に作られ、無限に浪費される。
日本 vs ジャマイカ

 ワタシらとしては大変悔しい結果に終わってしまった一戦なんだが、ここは一つ冷静に他の試合と同じように振り返って見ようかと。
 お互いに勝点0の消化試合となった一戦だが、初出場同士、史上初の勝利が欲しいということもあって、試合に臨む両チームのモチベーションは決して低くなかった。日本は出場停止の中西に代えて小村を使ってきた以外は先発メンバーはこれまでと同じ。組織的なディフェンス力と中盤の構成力が高い日本と、ドリブル突破力、スピード、フィジカルの強さ、シュート力に優れるジャマイカ。それぞれの長所が相手の弱点でもあるという、まったく対照的な2チーム。

 中盤はパスワークに勝る日本が支配、ジャマイカは個人の能力の高さで局面を打開するという展開は予想通りだが、ともにミスが多くなかなかゴールは生まれない。凡戦の気配大アリ。前半の日本のビッグ・チャンスを2つ挙げると、カウンターから中央の中田が落ち着いて左サイドをフリーで走る城へパス、これを右足のボレーで叩くが枠を外した場面、もう一つは右サイドの名波のクロスに左で相馬がヘッドで中央に折り返し、城がトラップしてシュートするがスライディングしてきたグッディソンの足に阻まれたシーン。

 しかし先制したのはジャマイカ。ゴール前で井原と競り合ったシンプソンが背中で前に流し、これを追いかけたマルコムが秋田と転倒、こぼれたボールを拾ったウィットモアがフリーで打ってゴールを決める。前半は0−1でジャマイカがリード。

 後半8分、相馬が上がった後のスペースがぽっかり空いているところに、一つぽつんと立つウィットモアにパスが出ると、これをウィットモアがそのままドリブルでゴール前まで持ち込み、浅い角度から思い切ったシュート。これ、ウィットモアが持った瞬間に「ヤバいっ」と思った人は山盛りいると思う。この浅い角度だとワタシらは難しいと思っちゃうわけなんだが、このワールドカップではこういう厳しい角度から決まったゴールってのをいくつも見てるわけで、心配通りウィットモアは豪快に叩き込んでくれてしまった。0−2。

 ここからは日本が圧倒的に攻めはじめる。次々とチャンスを作り、次々とつぶす。名良橋のポストに当たったボレーは惜しかったが、その直後、山口のスルーパスに相手ディフェンダーが処理を誤ったところに城、ペナルティエリアのやや内側、左45度から右足でシュート、豪快に枠を外す(ため息)。その後、城に代えてロペス、小村に代えて平野、4−4−2の攻撃的な布陣に。ここから終了までの約30分は大猛攻。ゴール前の混戦からロペスがディフェンダーを外してシュート、キーパーにはじかれたところに中山、トラップの間にボールを奪われる。平野の左からのクロスを右で中山、ゴール手前でシュート、キーパーがキャッチ。右サイドを駆け上がった中山のクロスに、左からゴール前で平野がフリーでジャンピング・ヘッド、キーパーに弾かれる。ロペスがボールを懸命に追っていたのが印象的。平野はクロスボールもコーナーもキックの精度悪すぎ。

 ようやく日本のW杯史上初ゴールが生まれたのは後半29分。左サイド、相馬の正確なアーリー・クロスがゴール目の前のロペスに。ロペスのヘディング(たぶんシュート)がつめていた中山にどんぴしゃり。1−2。ジャマイカはパニック状態でプレイが雑、しかし時間がない。バテた名波に代えて小野投入。小野、股抜きで一人かわして、相手ディフェンダーの間隙を縫ってミドル・シュート。素晴らしいプレイではあるが、残念ながら枠をとらえていない。試合終了までほとんど日本が攻撃をしていたわけなんだが、1点返した後は、ゴールの枠をとらえた日本のシュートって一本もなかったんでは。そのまま1−2でタイムアップ。

 アルゼンチン、クロアチアという強豪に対しての戦いぶりは現状の日本のレベルを考えれば大善戦として称えられるものだと思うが、この試合は同レベルの相手だっただけに残念。ただし本大会初出場のアウトサイダーが勝点0に終わったことは、本来意外なことでもないし、騒ぐようなことでもない。4年後に期待するまで。中盤ではほれぼれとするようなパスワークでチャンスを作れるチームなので、相手ゴール前でのプレイの精度が上がればもっとワクワクできるはず。

日本 1−2 ジャマイカ
至福度 ★
面白度 ★★
フィニッシュの精度 ★
(06/27)

 さて、NHK地上波ではラモス(と松木さん)の「一部の(若い)選手に気迫がない」と体育会系大批判大会が始まってしまったわけだが、城に足りないのは気迫だの精神力だのよりも決定力でしょう(苦笑)。公式サイトの戦評記事に指摘されるまでもなく、チャンスを浪費していたのは確か。前線で楔になって中盤を助けるのはうまいし身体能力も高いとは思うんだが、ストライカーのゴール数(キャップ数とゴール数を見よ)がこんなに少なくてはどうしようもない。ピッチ上での未成熟さを感じさせる態度が批判されがちだが、これも実績があればヒールとしての魅力にもなるわけで(悪童ストライカーとか)、ニヤニヤ笑うのが悪いわけではなく技術がないのが問題。たとえシュートを外した時でも、バティならニヤッと笑っても風格を感じさせるのは、実績があるからに尽きる(もっとも負けてる時には笑わんだろうが)。
 中田はミドルをことごとくふかすなどミスが多く精彩を欠いていたが、それでも中盤の核となっていたのは事実。今日の試合だけ見ても、視野の広さでもキープ力でも難度の高いパスを出せるって点でも他よりは一枚上手だとワタシゃ思っとります。運動量もあって、守備もできる。今のとこ日本のナンバーワン・プレーヤーかと。


アジア勢唯一の生き残りを賭けて。
ドイツ vs イラン

 アジア的には最大最強に注目の大一番。ドイツはクリンスマン、ビアホフのツートップ。マテウスも先発、メラーに代えてヘスラーを先発。イランも、ダエイ、アジジ、バゲリのドイツ・ブンデスリーガ組が無事登場。勝ったほうは確実に決勝トーナメントへ行けるという状況。勝点はドイツ4、ユーゴスラヴィア4、イラン3、アメリカ0。

 圧倒的にドイツのキープ率が高く、ドイツのラインは極端に上がる。その裏を狙うのがイランの作戦。イランの選手はボールが足につかない。プレイが不安定で、守備のマークも甘い。いかにも点を取られそうな雰囲気なんだが……。イランは自陣でちょっと怖いほど弱いスピードでパスを回しているし、せっかく攻撃のチャンスを得てもあまり選手が走り込んでこない。相変わらずのらりくらりとしているように見えるんだが、イランにはワタシらには分からんようなイランの論理があるんだろう。

 ドイツのプレイはユーゴ戦と同じでゴール前への放り込みを主体とするシンプルなもの。いくつかチャンスを作るがGKアベドザデーの好守で防ぎ、前半は0−0。イランは何を考えているか分からんが、ここまではゲーム・プラン通りのはず。スタジアムは圧倒的にドイツ・サポーター。ちょっとイランの怪しさ加減に戸惑っているかも。前半終了後の休憩時間に、イランのベンチ裏は最前席のサポーターへの即席サイン会状態(笑)。うーん、分からんぞ、イラン。

 しかし50分、ついにヘスラーのクロスにビアホフのヘッドが炸裂、ドイツがようやく得点。さすがにこれでイランも攻撃的になる、と同時に守りが薄くなった分だけピンチも増える。58分、ビアホフのミドル・シュートがポストに跳ね返ったところにクリンスマンが体ごと飛び込んでゴール。2−0、イラン崖っぷち。アジジ、ダエイ、バゲリらのコンビで何度かチャンスはつかむものの実らず。むしろよく2点で済んだというべきか。試合終了後、イランの選手はニコニコとドイツの選手たちとユニフォーム交換に勤しんでおりました(GK同士で手袋まで交換)。

ドイツ 2−1 イラン
至福度 ★
面白度 ★★★
不思議度 ★★★★
(06/27)


最後はスタミナと根性勝負。
ベルギー vs 韓国

 同組のオランダ、メキシコ(ともに勝点4)を追うベルギー(勝点2)。ベルギーはこの試合に勝つのが決勝トーナメントへの最低条件。開始直後からとばしまくり、韓国を押し込む。6分にコーナーキックからこぼれ球をニリスがゲットして早くも先制。アジア枠を守るためにも韓国を応援するワタシだが、オランダ戦の大敗の記憶が蘇る。どうも韓国選手の体が重そうに見えるのは気のせいか? 前半の後半から次第に韓国もチャンスを作る。が、お互いに攻撃のツメのところが雑で凡戦の気配。

 後半はキープ率では韓国が優勢。チャンスを自らのミスでつぶしてなかなか決定機まで至らないが、後半26分、ついにハソクジュのFKにユサンチョルが合わせて同点ゴール。韓国、この後、三度続けてチェヨンスがチャンスをものにできず大ブレーキ。終盤はともに消耗、中盤が完全に消滅。足が止まってスタミナ勝負に。85分すぎからのベルギーの猛攻にひたすら耐える韓国。ロスタイム99分、引き分けでは意味がないベルギーは、コーナーキックにキーパーまで前線に上がる。キーパー同士でハイボールに競り合う世にも珍しい光景が。しかしこれも実らず、タイムアップ。ベルギーから見れば、まさかの引き分け、1次リーグ敗退に茫然自失。ただ、実はロスタイムにメキシコがオランダに追い付いたという知らせ。つまり、ベルギーはもし勝っていても3点差以上をつけない限りはダメだったんです。

 韓国のベストプレーヤーはホンミョンボかと。守備での貢献はもちろん、攻撃の起点にもなってました。

ベルギー 1−1 韓国
至福度 ★
面白度 ★★★
消耗度 ★★★★★
(06/26)


劇的幕切れ。それとも諧謔的幕切れ?
オランダ vs メキシコ

 両者勝点4。オランダもメキシコも、勝てば決勝トーナメント進出確定。もし負けたとしても、ベルギーが韓国に勝てなければ大丈夫。ただ、これまでの韓国を見れば、ベルギーがここで勝点を落とすことは期待できない(落としちゃったんだけど)。そこで、どちらも、負け=一次リーグ敗退と考えて試合に臨んだはず。引き分けた場合(なおかつベルギーが順当に勝てば)、3ヶ国とも勝点5になり、得失点差の争い。この場合、オランダはすでに安全圏(韓国戦でたっぷり稼いだ)、メキシコはベルギーが3点差以上を付けて韓国を下さない限り大丈夫という微妙な状況(あー、ややこしい。要するに引き分けだとメキシコのほうにちょっと心配が残るってことよ)。

 開始直後の4分、ベルカンプのパスからディフェンス・ラインを抜け出たコクが落ち着いてゴール。18分、ゴール前の混戦からロナルド・デブールがゴール。メキシコ、大ピンチ。メキシコの選手たちが濡れた芝に足を滑らせる光景が目立つ。この後、オフェルマウスが1対1の超決定的なチャンスを外す。前半は完全にオランダのペース。

 ところでメキシコの応援ってトランペット&太鼓入りで歌うのがおもしろいっす。ちょっと日本の野球みたいな感じ。

 後半もメキシコはパス回しが思うようにできない。一方、オランダも安心したのかややプレイが雑になり膠着状態。が、残り15分でコーナーキックからペラエスのヘッドで1点を返すと、俄然メキシコの動きが良くなる。ペラエス、鬼の形相。これまでの戦いぶりがウソのようにメキシコが攻めまくる。パニックに陥るオランダ。

 89分、ついにラモン・ラミレスがゴールを決めたっ!と思ったらオフサイド、怒り狂ったラモン・ラミレスは何か審判に言ったらしくて、レッドカードで退場処分。ところがそれでもメキシコは攻める。審判が時計を見た94分、後方のロングボールから、粘ってエルナンデスが奇跡の同点ゴール、メキシコの選手たちは歓喜大爆発!! 笛が鳴って皆が抱き合って互いを祝福する……。

 で、ここで選手たちにも情報が入る。ベルギーとメキシコは引き分けました。メキシコ、別に負けてても大丈夫だったんです(大苦笑)。たとえるなら、大事な待ち合わせに遅刻しそうになって必死の思いで大汗かきながら駆けつけてみたら相手はもっと遅刻していたっていう時の気持ちを、256倍に増幅したようなもんでしょーか(笑)。でも結果がハッピーなことには違いなし。最後の20分ほどは本当にすごいサッカーを見せていただきました→メキシコ。

オランダ 2−2 メキシコ
至福度 ★★★
面白度 ★★★★
脱力度 ★★★★★
(06/26)


無敵艦隊の遅すぎた大勝利。
スペイン vs ブルガリア

 同組の勝点はスペイン(1)、ブルガリア(1)、ナイジェリア(6)、パラグアイ(2)。すでにナイジェリアの1位が決定済み、2位の座をめぐって3ヶ国が争う。同時刻に行われるナイジェリアvsパラグアイで、もしパラグアイが勝ってしまえば、スペインは追い付けない。しかし、引き分けならともかく、パラグアイがナイジェリアに勝つ可能性はそう高くはないはず。追い詰められた無敵艦隊の勝利を信じて、スペインのカルロス国王がスタジアムに駆けつける。

 スペインはモリエンテス、エチェベリアを先発、ラウール、キコはベンチに(ともに途中出場)。ブルガリアも勝てばスペイン同様チャンスがあるために、お互いに積極的に攻め合う展開になるわけだが、中盤は完全にスペインが支配。わずか開始4分で、ルイス・エンリケがゴール前のドリブル突破からPKをもらって、これをイエロが決めて先制。続いて19分、ルイス・エンリケが相手ディフェンダーを引きずりながらも強引にシュートを決めて2点目。前半はこれで終ったものの、後半はもう試合にならない。1点を失ったが、モリエンテスがさらに2点を奪って4−1。

 ここで場内にウェーブが起きる。そしてスペイン・サポーターから、ものすごい大合唱。んん、この意味は? 普通に考えれば、ナイジェリアがパラグアイに対してリードしたとか、そういった意味だと思うわけだが、テレビ中継が伝えるところによれば、事実はその逆。なんと3−1でパラグアイがリードしているという絶望的状況。それを知って、あえて選手を励ますためにサポーターたちは歌っていたということになる。コーナーからキコが決めて5−1。合唱のボリュームがさらに増す。カメラが顔をスペインの色に塗りたくったサポーターをとらえる。があがあ泣いている。

 ロスタイム、プレイが途切れ、選手が水分補給に。この時に選手にもパラグアイ・リードの情報が伝わったようだ。ベンチのそばの選手から順に、がっくりと肩を落とす。キコがさらに1点を追加するが、誰も喜ばない。笛が鳴ってタイムアップ。スペイン、6−1の大勝。と同時に、一次リーグ敗退が決定。開幕前から「死のグループ」と言われたD組だが、よもやシード国が姿を消すことになろうとは。

スペイン 6−1 ブルガリア
至福度 ★★★
面白度 ★★★★
衝撃度 ★★★★
(06/25)


したたかなアウトサイダー。
ナイジェリア vs パラグアイ

 例によって、スペインvsブルガリアの生放送中に、この試合の結果は明らかにされてしまっている。一体どうやって、パラグアイはこの難敵から勝点3を手に入れたのか、興味はそれに尽きる。

 ナイジェリアは、カヌがキャプテンとして先発、ただしアモカチは試合前のアップで怪我、出場を見合わせる。さらにイエローカードの蓄積をクリアするために、ややメンバーを落としている。

 開始直後いきなりアルセーのFKからアジャラがヘッドで鮮やかにゴール(なんとこれがパラグアイの今大会初得点)。勝たなければいけないパラグアイにとって大きな1点。ナイジェリアは明らかに受けて立つ姿勢。プレスが緩い。「静かなナイジェリア」は不満とばかり、スタジアム内にウェーブが起こる(もっとファイトすれっ!)。これに応えてか、スピードあふれるババンギダの突破から横に流したボールをオルマがゴールに叩き込む。1−1。始まったか、恐るべきナイジェリアの猛攻が。オリセーやイエキニのスーパー・シュートに対して、GKチラベルトがスーパー・セーブを連発。超人的すぎて、絵的にはほとんどサッカー・マンガの世界。また今日もすごいことになってきた……か? しかし、基本的にはナイジェリアは親善試合モード。ギリギリのファイトをするつもりは毛頭なし。

 後半立ち上がり、パラグアイは勝負に出る。ディフェンダーの攻撃参加が見られる。引き分けでは勝点が足りない。ウィングバックのカニサに代えてFWのジェグロスを入れて3トップへ。パラグアイがゲームを支配。後半14分、ベニテスが思い切ったミドルを蹴り込んで、ついに2−1とリード。さらに必死に攻めるパラグアイに対して、相変わらずナイジェリアの淡白は守備。終了間際、カルドーソがオフサイドぎりぎりのところでパスをもらい、すばやく反転してシュート、これがキーパーの手をかすめてゴール。3−1。これで決まった。決勝トーナメント進出。

 それにしてもチラベルトはすごいなあ。どこがすごいか。セーブ力が並外れている。フリーキックも打てる。ゴール・キックでアシストを狙える。味方の選手を怒鳴りつけて鼓舞することができる。攻められすぎて泣きそうになったディフェンダーを勇気付けることができる(笑)。キャラ的には男性性の塊みたいな人っす。

 パラグアイは強固な守備を武器に、3試合をプラン通りに戦ってスペインを出し抜いた。次は開催国フランス相手に、どんなしたたかな戦いを見せてくれるのか、非常に楽しみ。

ナイジェリア 1−3 パラグアイ
至福度 ★★★
面白度 ★★★★
全力度 ★★(ナイジェリア)
(06/25)


PK合戦90分一本勝負(笑)。
南アフリカ vs サウジアラビア

 もはや一次リーグ敗退決定済みのサウジアラビアと、まだ希望を残す南アフリカの対戦。この組の勝点はそれぞれ南アフリカ(1)、サウジアラビア(0)、フランス(6)、デンマーク(4)。うーむ。勝点を見ていると、同時に行われるフランスvsデンマークが「お互い無理をしない」試合になりそうな気もするが、南アフリカとしてはフランスの大勝利を願いながら、自分たちも勝利を目指すしかない(得失点差も稼がなきゃならん状況)。

 下肢が長くて、ボール・タッチの柔らかいほうがサウジ、逞しい体つきで高さのあるのが南ア。ボールの扱いは圧倒的にサウジが巧い。ただし最終ラインの守備には難ありか。決定力はともにない(苦笑。って日本も同じなんですが)。

 19分、南アのバートレットがスルーパスに抜け出して、浅い角度からフリーで打って先制。前半のロスタイム、サウジのトゥニアンが見事な演技(でしょう、あれは)でPKをもらって、ジャヴァーが同点ゴール。その後、やや幸運な判定で、またもサウジがPKを獲得、今度はこれをサラヤンが蹴って決める。逆転。終了間際、バランスを取ってるわけではないだろうが、今度は南アがPKを得て同点。これにて試合終了。やれやれ。

 サウジの細かいパスワークは楽しかったが、一般的に言えば実に締まらない凡戦かと。攻撃の機会がともに多かったのに、両者とも決定機を作れなかった。

南アフリカ 2−2 サウジアラビア
至福度 ★
面白度 ★
凡戦度 ★★★★
(06/25)


両者納得。安全地帯に軟着陸。
フランス vs デンマーク

 フランスはすでに決勝トーナメント進出決定(それにしてもジダンがこの試合から2試合出場停止とは)。この試合、引き分けても1位で通過。そこでイエローカードの累積を防ぐため一部メンバーを変えてきた(1枚のみなら決勝Tで帳消し)。デンマークは引き分け以上ならOK、負けた場合は微妙なところだが、例によってテレビでは上記南アvsサウジ戦の後での録画中継なので、視聴者はデンマークがすでに負けても次に進めることを知っている。ちなみに本日の主審はセリエAでもおなじみ、コリーナさん(頭を剃ってる方です)。世界最高峰の審判っすね。

 12分のフランス、ペナルティ・エリアでトレゼゲのドリブルがファウルをもらう。あらら、今日はなんてPKをよく見せられる日なんだろうか。これをジョルカエフが決める(シュマイケル、スーパー・セーブへあと一歩)。フランスが押し気味に試合を進める。ところが42分、ゴール前のフリーキックでデンマークが素早いリスタート、このパスをゴール前でもらった21番が2番に倒されて、おいおい、またまたPK。ラウドルップ兄があっさり決めて1−1の同点。た、頼む、今日はもうPKは勘弁してくれよ。

 56分、フランスのコーナーキック、シュートが跳ね返されたところをプティがダイレクトで強烈なミドルを叩き込む。いやー、よかった、やっぱりシュートが巧いと試合が締まるよ。その後もフランスが中盤を支配。しかし、時間とともに試合をこのまま終らせようという空気が濃厚に。たとえ負けてもデンマークのC組2位は堅いということが選手たちに伝わったようだ。お互い無理して戦う必要はなし。両チーム間に暗黙の了解が生まれる。ゴールよりも時計の針を見るかのようなプレイが続き、そのまま2−1でフランスの勝利。デンマークは決勝トーナメントでナイジェリアに挑む。

フランス 2−1 デンマーク
至福度 ★★
面白度 ★
緊張度 ★★
(06/25)


マルセイユの奇跡、と。
ブラジル vs ノルウェー

 えっ、レオナルドがサンパイオ(累積警告で出場停止)の位置に? で、快速ドリブラーのデニウソンが初めて先発出場。

 ブラジル(勝点6)はすでに1位勝ち抜け決定済み、ノルウェー(勝点2)はもう一方のスコットランド(勝点1)vsモロッコ(勝点1)の結果次第。得失点差ではノルウェーはスコットランド、モロッコを上回っている。

 ゴール前を人数を割いて守るノルウェー。大混雑状態でさすがにブラジルもなかなか攻め入れない(ま、無理する必要もないんだしさ)。ノルウェーはカウンター攻撃をしかけ、いくつか惜しいチャンスを作り出す。もちろんキープ率はブラジルが圧倒的に高いんだが、ノルウェーのゲーム・プラン通りの試合展開と言うべきか。前半は0−0。

 前半終了時、モロッコがスコットランドを1−0でリードしているという情報が(苦笑)。テレビ的にはこの試合の後に録画で放送される一戦。なんだ、NHK、やっぱりネタばれやっちゃうのか。まあ、いいでしょう、どうせ試合終了後の選手の表情でバレちゃうかもしれないんだから。

 そんなわけで、後半はノルウェーも勝ちを狙わなければいけなくなる。試合はいくらか攻撃的になるものの、ゴールは遠い。慎重に後ろでボールを回すブラジルにはスタジアムからブーイングの大合唱が沸き起こる。

 これはスコアレス・ドローの退屈な試合で終るのかと半ば覚悟を決めた78分、デニウソンが左サイドを得意のドリブルで突破、速く正確なクロスを上げ、中央のベベットがヘディングで決めてようやくゴール。しかし83分、タテに長く放り込まれたボールにフロー弟が追い付いて、個人技でジュニオール・バイアーノをかわして、豪快にゴールに叩き込む。俄然、勢いづくノルウェー。圧倒的な高さでゴールを襲うパワー・プレイ。なんと、ブラジルが守勢に回っているではないか。そして88分、ペナルティ・エリア内でジュニオール・バイアーノ(かな?)がファウルを取られる。んん、リプレイをスローで見たところPKに値するものとは思えないんだが、よく分からず。これを10番のレクダルが決めて、奇跡の逆転。いやいや、サッカーは分からんよ。

 客席は騒然。よもやブラジル相手に逆転を収めるとは。そのままタイムアップ、自力で決勝トーナメント進出を決めたノルウェーは、あたかも優勝したかのように喜びを爆発させる。無理もない、ノルウェー史上初の決勝トーナメント進出を、世界王者を倒して決めたのだから。イタリアへの挑戦権を得たイレブンはウィニング・ラン、スタジアムの赤い一団は「万歳!万歳!」(って聞こえたんです)といつまでも叫び続けていた。

ブラジル 1−2 ノルウェー
至福度 ★★
面白度 ★★★
奇跡度 ★★★★★
(06/25)


サンテチエンヌの悲劇。
スコットランド vs モロッコ

 テレビ上では先に上記ブラジルvsノルウェー戦が放映されてしまったので、単なる消化試合。しかし実際には、ノルウェーがブラジルに勝利を収める(それも終了間際の逆転劇)などとは両者とも思わずに戦っていただろうから、「勝ったほうが決勝トーナメントに進めるだろう」という予測のもとに、攻撃的な激しい試合になる(くどいようだが、スコットランドvsモロッコ戦とノルウェーvsブラジル戦は同時刻に試合が始まっている)。

 21分、モロッコはタファルがタテへのロングボール、これに追い付いたバシルが浅い角度からキーパーのニアサイドをぶち抜くスーパー・ゴールを決める。後半の立ち上がりにカウンターからハッダが抜け出てループシュート。2−0。その後スコットランドはバーリーがバックチャージで退場してしまう。85分にはバジルが1点を加える。この時点でブラジルvsノルウェーが1対1であることは、選手にも伝えられていたようだ。つまりこのままブラジルが引き分けるか、あるいは勝てばモロッコは決勝トーナメントへ進める。笛が鳴って試合終了、モロッコの完勝。

 モロッコは試合終了の笛とともに笑顔でガッツポーズを取るが、ベンチでは険しい表情の監督が待っていた。選手たちは虚ろな表情を浮かべ、次々とピッチに倒れ込み、何人もの選手が泣きじゃくる。終了直前にノルウェーがブラジルを逆転したことを知ったのだ。ノルウェー人たちが狂喜している同じ時間、別のスタジアムには悲劇が訪れていた。

スコットランド 0−3 モロッコ
至福度 ★
面白度 ★★
悲劇度 ★★★★★
(06/25)


堅い守りを不屈の闘魂は破れるか。
イタリア vs オーストリア

 すべてのチームに決勝への可能性が残されたB組の最終戦。イタリア(勝点4)、本日はデルピエロ先発、バッジョ控え。大会前の規定路線に初めて落ちついたわけだ。オーストリア(勝点2)はこれまで起用してきたMFヘルツォークを控えに、フォワードのヴァスティッチを使う。つまり、ワントップからツートップへ。より攻撃的な布陣。同組のチリ(勝点2)vsカメルーン(勝点1)は同時刻に行われてる。オーストリアは勝利を目指す。

 開始5分もしないうちに、イタリアはネスタが負傷、代わって登場したのが、なんと大ベテランのベルゴミ。今大会はベテランの顔をよく拝めますなあ。

 スリリングで激しい試合に。しかし両者守備が固く決定的なチャンスをなかなか作れない。前半は互角の戦いで0−0のまま。オーストリアは手応えを感じているはず。

 さて、ハーフタイムだが、ここでちょっとご注意を。ホントは同時刻にチリvsカメルーンも行われてるんである。ところがTVでは同時中継というわけにはいかないので、生でイタリアvsオーストリアを放映して、その後にチリvsカメルーンを録画中継する。そのために、中継では、あえてチリvsカメルーンの得点経過には言及しない。が、選手たちには伝わっている可能性は高い(それによって戦い方を変えなきゃいかんこともあるから)。ワタシら視聴者は、その辺の事情を知らないままに後半を観ることになる。

 さて後半、いきなり試合は動く。立ち上がり3分、サイドからのデルピエロのFKに、中央でヴィエリがきれいに合わせて、ついにイタリア先制。その後オーストリアも懸命の攻めで何度かチャンスを作る。ヴィエリに代えてインザーギ登場。

 後半21分、ゴール前の混戦から、オーストリアのウェトルの至近距離からのオーバーヘッド・キックをGKパリュウカがスーパー・セーブ。この後、スタジアムのコールに応えるかのように バッジョ登場(退くのはもちろんデルピエロ)。

 終盤オーストリアはヘルツォークを投入する。何しろ、前の2試合とも終了直前に追い付いたチームである。何が起きるか分からない。ラインを浅くして、攻撃に出るオーストリア。しかし、それがイタリアの2点目を生んでしまった。バッジョのパスに、インザーギがオフサイド・ラインぎりぎりから飛び出し、再び中央に上がってきたバッジョに落ち着いて合わせて2−0。

 ロスタイムに入ってオーストリアはPKから1点を返す。確かに得意のロスタイムの粘りは見せた。しかし、2失点してからで遅すぎた。これでイタリアはB組1位決定。2位になれば決勝Tではいきなりブラジル戦だったが、これでブラジルとは決勝まで戦わずに済む。

イタリア 2−1 オーストリア
至福度 ★★
面白度 ★★★
FW豪華度 ★★★★★(イタリア)
(06/24)


楽園を奪ったのは、怯えか、老獪さか。
チリ vs カメルーン

 すごい! チリの選手たちは国歌をシャウトしてるぜっ! 全員大声で情熱的に歌ってました(笑)。なにせ決勝トーナメント進出のかかった試合だけに、気合いの入り方が違う。しかも前2戦を、ある意味では極めて不運な形でともに引き分けに持ち込まれてしまった。気持ちはよーく分かる。

 カメルーンはどうやらついにエムボマを守備的MFとして使うのを諦めて、前で使うようだ。そりゃそうだよ、ほんっとに動かないんだから。前線に行けば浪花の黒豹、怖い。それにカメルーンは引き分けでは次に進めない。

 シエラの左足から優雅なカーブを描いたフリーキックがゴール隅を捉えて、チリ、先制。惚れ惚れとするような落ちながら曲がるボールだった。直後にオマンビイクのシュートがネットを揺らしたときにはドキリとしたが、これはオフサイド。エムボマも今日は惜しいシュートを何本か放っていた。

 愚者はカメルーンのソング。前半に1枚イエローをもらい、その直後に再び悪質なチャージ。これはなんとか審判にカードだけは見逃してもらったのに、後半に相手と競りながら顔面にエルボーをお見舞い。酷すぎる。さすがにこれは見逃せず、レッドカードで退場処分。ここまではチリの自信にあふれた細かいパス回しによる楽園のようなフットボールが続いていた。これはホントに楽しくて美しい。

 しかし、油断したわけではないだろうが、チリ、エムボマのヘッドで1点を失う。過去2戦の既視感に襲われたか、急にプレイが雑になってしまう。勇気を失いパスで中盤を作らないチリは魅力を欠く。一人多いのに、怖がってパスをつながず前へ大きくクリア。そのため、不利なはずのカメルーンの攻撃が増えてしまう。あるいは、イタリアの勝利を信じて、引き分け狙いで守っていたのか? それにしてはピンチが多すぎるぞ。

 前半のフットボールの楽園はすっかり消えて、身体能力頼みのカメルーンの攻撃が続く。守備重視のチリは怯えているのか、老獪なのか。後半40分過ぎ、カメルーンのエタメが意味もなくレッドカードをもらう。その頃、イタリアは2点リードしていたはず。キーパーのタピアが倒れ込む(たぶん演技)。ここからは露骨に時間稼ぎ。苦手科目に合格しました。チリは1−1で「逃げきり」。笛が鳴って、やっと前半の元気が戻ってきたようです。決勝トーナメントはブラジルとの対戦。

チリ 1−1 カメルーン
至福度 ★★★
面白度 ★★★★
乱暴度 ★★★★(カメルーン)
(06/24)

後日談:オフサイドおよびファウルで2つのゴールが幻となったことと、二人の退場者を出したことによって、カメルーン国内ではハンガリー人主審への反感が爆発、「白人はすべて人種差別主義者である」と群集による白人への暴動が起きたという。


決勝トーナメント / 一次リーグ第3戦 / 一次リーグ第1〜2戦

★は5点満点(って何だよそりゃ)
至福度:フットボールの醍醐味たるスーパーな個人技or
超モダンな組織プレイor壮絶な勝負の駆け引きなど
「至福の瞬間」の詰まり具合。
面白度:試合として自分的にどれくらい楽しめたか
っていう娯楽性の高さ。
あとは試合ごとにテキトーに。



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