投稿

「3大テナー」vs「ヤクルト・阪神戦」

文=三軒茶屋道楽娘
狂乱イヴェント未聴レポート。国立競技場で3大テナーが歌ってる間、隣の神宮球場じゃヤクルト・阪神戦をやってたんだよね。


6月28日(金)

後7時を15分ほど回った頃、国立競技場の青山門辺りへ。聞こえる、聞こえる。パヴァロッティのいい声が。オケの音もちゃんとする。しかし、周囲の道路を走る車の音が気になって、「よく聞こえる」ほどではない。立ち聴きするスペースは充分あるんだけど、この時点で翌日の「タダ聴きピクニック計画」は諦める。
 周りには下見に来たダフ屋らしきオジサンと、カメラ持った追っ掛けファンがちらほら。「昨日はリハーサル見せてくれたのにー」との声あり。えー、そうなんだ!! 知らなかった。この日もズンズン入っていって観ている人もいたが(大胆すぎ)、大抵の一般人はガードマンに厳重なストップをかけられていた。

6月29日(土)

ダ聴きピクニック計画中止により、私は友人と野球見物の約束をして午後4時に青山一丁目で待ち合わせ。ヤクルト・阪神戦である。新宿から向かったので千駄ヶ谷で下車。3時半頃だったか。陽はまだ高いというのに、改札口にはダフ屋のみなさんがズラ〜リと横一列。改札を抜けた人は、必ずその間を抜けていかねばならないという大ダフ屋大会状態。以前東京ドーム近くで勤務していたからダフ屋は全然珍しくないんだけど、一度にあんなに沢山のダフ屋を見たのは生まれて初めてだなあ。ダッフィーズ(=ダフ屋の集団)は全員片手にケイタイ、もう一方の手には札束握ってビラビラ見せながら「はい、3大テナー、余ってたら、買うよ、買うよ、おねーさん、券余ってない?」とダミ声が乱れ飛ぶ。ひえー。

ゲずに神宮方向へ歩くと、あるチケットブースの前に20人ほどの行列が。気になったので「当日券ですか?」と訪ねると、「出るらしいんですよ」とのこと(!)。でも、詳しくは知らないと言われる。さらに歩くと、青山門の大きなブースの前にもっと大勢の行列が出来ているではないですか! これは確かに当日券がある。で、もう一度列の中の一人に訪ねたところ、「昨日主催者に電話したら、4時半からSとF券を売ると言われたんですよ」と仰る。ナニッ、5000円の券があるのか。それなら行ってもいいな。やっぱり観たいよーと、はやる気持ちを押さえつつ、青山一丁目までダッシュ。すぐに友人と落ち合い、「お願いっ。3大テナー、買えたらそっちに行かせて」と拝み倒し、一緒に行列に並ぶことに。再び国立競技場へ戻ると、最初に見つけた行列の人達も青山門のほうに並び直し中。係員が来て初めて自分たちが並んでいた場所は間違っていたことに気づいたらしい。早くから待っていたはずなのに、主催者側の案内不足で後ろの方に並ばされ、本当に気の毒。

と友人もその最後尾に並ぶ。前から100〜150番目ぐらいといったところか。列はさらに長くなり、我々の後ろにも50人位は並ぶ。肝心のチケット発売は遅れに遅れ、イライラする行列の人々にダフ屋が甘い声をかけまくる。
 ダッフィーズの機動力はすごい。千駄ヶ谷駅前の仲間にケイタイで連絡をとり、当日券の発売情況や行列の人数を逐一報告していく。それで駅前での余り券購入数を調節する様子。また、逆に行列の中に需要があれば、「そっちに2枚連番あるだろ?」などと駅前で買い取ったチケットを直ちに調達。実に見事な連携プレーでほとんど人力チケットぴあ(あまりお友達にはなりたくない)。そのダッフィーズの誘いに乗るのは、大抵オバサマ。私の後ろでも「子供迎えにいかなくちゃ」とママチャリ携えたオバサマの一群が「ねー、いくら持ってきた?」「8万」「私は5万までね」と豪気な会話が。ダッフィーが近寄ると、小声で呼び止め値段を尋ねる。ここで若者や男の方なら、言われた額を持っていても最初は渋い顔して見せるのに、オバサマ達は何の駆け引きもなく高額なチケットをスパッと買ってしまう。その思い切りの良さと熱心さには心底感服いたしました。

うした我々の横を、ヤクルト−阪神戦を観に行く緑のビニ傘or黄色いメガホン持った方々がゾロゾロ通り、「オペラやて。整然とならんではるなー」「やっぱ客層違うよね。品があるよ」「我々もこうあるべきやなー」等々と…いいえ、私も戦いに破れたらすぐに後を追いますわ、と心のなかで叫びつつ、しかし万が一でも5,000円の券が手に入らないかと密かに期待高まる。
 5時すぎ、ようやくチケット発売開始。列がゆっくり前に動き出し、50人も進まぬうちに「F券は売り切れました。残りは7万5千円のS券のみです」と係員の嘲るような声。同時に一斉に行列がザワザワ崩れていく。仕方ない。気分を切り替え「さ、野球だ」と言った私に、友人が「ちょっと待って。どんな人が残るか見ていようよ」と引き留める。大半の人が去った後、ブースに詰め寄る7万5千円をお持ちの20名ほどの方々。老若男女色々だったが、最後まで諦めきれなかったのね…。帰りの交通費は大丈夫かい?とお聞きしたい気分でした。
 それにしても、行列は発売時間の遅れに少々ザワついたものの、終始なごやか。「ダメもと」みたいな軽い気持ちの人が多かったし、94年のクライバーの「薔薇の騎士」目的の5日間連続点呼みたいな殺気は、全然なし。

時30分を回り、我々は神宮3塁側のチケットを購入し、時間があるので外苑まで行ってお茶。秩父宮ラグビー場の前で「あらー、3大テナーやってないのかしらー」と(笑)チケット握って佇むオバチャン数名。「違うよ、国立競技場はあっちだよ」とタコ焼き屋台の兄ちゃんに諭され、国立競技場とラグビー場は別物だとようやく理解した様子でしたー。ちゃんちゃん。


[HOME]