●「リヴァプールより悪意をこめて」(トニー・クロスビー著/双葉社)を読んだ。トニー・クロスビーってのが誰かっていうと、よくフジテレビの深夜のサッカー番組なんかでジローラモさんと絡んでいるリヴァプール・サポーターのガイジンである。あの人、本職はスタイリストなんすね。で、そのトニー・クロスビーの本、タイトルも装幀も気が利いているが、中身は一言でいうと「元悪ガキだったオヤジのバカ話」。これが実におもしろい。
●ガイジンから見た日本と英国の違いみたいな話もあって、それはそれでおもしろいんだが(イギリスの庶民は風呂なんかに関心なくて、シャワーも浴びないとか、リヴァプールといえば泥棒の街だとか)、中心になるのはフットボール。英国フットボール文化の奥深さを知らせてくれる……ってのは、どういうことかというと、日本のように作られたスタイルじゃなく、みんな自然体でサッカーに向き合っているってこと。自然体だとどうなるか。つまり、サポーターたちはフツーに行儀が悪くて、フツーに悪たれで、フツーにバカ(笑)。とにかく日本のサポーターと違って底意地が悪い。サポーターズ・ソングにその違いは顕著で、いくつも紹介されているんだけど、要は相手チーム(または審判)をバカにしたり、からかったり、聞きたくないことを聞かせるといったものが多い(醜聞は格好の材料となる)。悪意のこもった機知が働いているんすね(そして下品)。こりゃ到底、日本はかなわない。
●一つだけ紹介。マンチェスター・ユナイテッドのチャント。United, United, Rah, Rah, Rah. City, City, Ha, Ha, Ha. Leeds, Leeds, Baa, Baa, Baa. Scousers, Scousers, Lock your car. これだけじゃワタシらには意味はわからない。込められた意味はこう。「ユナイテッド、イェー!、(マンチェスター・)シティは笑いもの、リーズはメエ、メエ、メエ(=ヨークシャー州の山の中だから、羊とやってんだろ、お前らってニュアンス)、リヴァプール(Scousers)、クルマにカギをかけろ(リヴァプールのヤツらはみんな泥棒だから)」。ったく、しょうがないよね(笑)。(05/07)
May 7, 2002