●スチュアート・カミンスキーによる刑事エイブ・リーバーマン・シリーズの第4作「人間たちの絆」(扶桑社ミステリー)は、これまでの第3作と同様、きわめて質の高い警察小説の傑作である。といっても、このシリーズ、世間的には全然ヒットしていないようで、うっかりすると新刊でも見落としてしまいそうだ。新作が出るたびに前作との間隔が開いているような気がして、次がちゃんと翻訳されるのか心配になってしまう。
●話は毎回同じようなものである。シカゴのユダヤ人老刑事リーバーマンが相棒のハンラハンとともに事件を捜査する。その合間にリーバーマンの周囲の人々についての、現代アメリカの都市部の世相を反映したいくつかの人間ドラマが描かれる。最後には事件は一応解決されるんだけど、苦い味わいが残る。すっかりパターン化しているが、このシミジミ感がよろしいので、ぜひこれからもマンネリであってほしい。
●このシリーズの不幸なところは、作品中の時系列を無視していきなり第3作「冬の裁き」から翻訳されてしまったこと。なぜそんなことになったかといえば、この作品だけがいわゆる「ミステリーらしい」趣向(まあ、トリックっすね)を持っているからだと確信しているんだが、本来そういうシリーズではまったくない。これから読む方は第1作「愚者たちの街」から読むべし。つうか、早くしないと品切になっちゃうかも。(05/28)
May 28, 2002