July 9, 2002

「クローン」ゲイリー・フレダー

●レンタルビデオで映画「クローン」(ゲイリー・フレダー監督)を観る。失敗作の香りがぷんぷんと漂ってくるパッケージなんだが、とにかくP・K・ディックの原作だから観ておこうと。舞台は近未来、地球はアルファ・ケンタウリ星人と戦争中。侵略に対する兵器を開発している科学者である主人公は、出勤途中に突然拉致される。目覚めると彼は、地球保安局の人間に「お前はケンタウリに胸に爆弾を埋め込まれたクローンで、本物のおまえはすでに殺された」といわれる。人間爆弾にされてしまった主人公は逃走し、自分がクローンなどではなく本物であることを証明しようとするが……といった話。「自分は自分なのか/本物なのかニセモノなのか」というディックおなじみのテーマを扱う。ディック好きには「アルファ・ケンタウリ星人と戦争中」なんていうのがまったくなんの抵抗もなく「ああ、それね」と受け入れられるわけだが、フツーはそうはいかないよな(笑)。B級テイストに対して寛大になれる人向け。
●もともとの原作がオチ話の短編で、あまりラストシーンに驚きを期待してはいけないんだけど、それにしても映画のラストは破綻していないか。あれ、どうしてこうなったんだっけと慌てて本棚からサンリオ文庫の「ベスト・オブ・P・K・ディック」を引っ張り出して原作「偽者」を開いてみたんだけど、やっぱり映画は整合性とれていないよう気が。でもいいか。「ブレードランナー」が例外であって、ディック原作の映画はみんなどこかで破綻しているようなのばっかりだから。(2002/07/09)

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