July 19, 2002

オタクの語源、発生の瞬間

●クラシック・オタク→クラオタ、クラヲタという言葉がすっかり定着している。考えてみると、オタクという言葉もすでに20年程度も使われているわけで、なかなか寿命の長い新語である。で、ある人と話していて「オタク」の対語として「オソト」という言葉が使われていた。この用法はこれはこれでありかなとも思うのだが、オタク(ヲタク)の語源を考えるとこれは誤りである。オタク=宅、家の中のインドア派、非オタク=オソト=アウトドア派という解釈は成り立たない。オタクという言葉の初期を知っている人はいまでは結構な年齢になっているはずだから、こういう誤解が生じてしまうのもしょうがない。
●「オタク」というのは、本来の語義と同様、「あなた」「キミ」という二人称としてある種の人々の間で使われていた言葉である。コミケあたりに集った「オタクな」人たちが互いを名前ではなく「オタク」と呼び合っており、この集団のことを「オタク」と呼ぶことになったというのが語源の定説らしいが、実際にはコミックだけでなくほかのジャンルにおいても同時発生的に始まったような気がする。一つの事柄にきわめて強い関心と探究心、執着心を持った若者がいて、彼らは情報交換のためにグループ化する必要があった。しかし見知らぬ者同士が集まったときに円滑なコミュニケーションができるほどには成熟した社会性を持っていなかったため、相手に自然に話し掛けることもできなかった。そんなときに便利な言葉として発明されたのが「オタク」。「オタク、×××から発売された○○○、もう見ましたか」みたいに実際に使用されていた言葉である。他人の名前を尋ねるとか、自己紹介をするとか、そんなことが苦手な内気な者にはとてつもなく便利な二人称だったわけだ。
●ワタシ自身がはじめてこの語に実際に出会ったのは1981年頃のマイコン(パソコン)・ショップであった。オタクというのはオバサン同士が世間話の中で使う言葉くらいに思っていたワタシは、自分と同年代や年少のコドモが互いを「オタク」と呼び合うのを目の前にして、とても強い印象を受けた。その後、ワタシはコンピュータ・オタクの世界には深入りしなかったが、この瞬間の場所や人の記憶は鮮やかに残っている。(2002/07/19)

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