●「いいニュースと悪いニュースがある。どちらから聞きたい?」 一昨日は日本のサッカー好きにとってはそんな日だった。ロンドンのフラムで稲本がハットトリックを決めた。こんなこと、想像だってできなかった。自分的には超現実的活躍。2点目のボレーシュートは見事の一言。
●一方で、チャールトンへのアレックス移籍が消滅したという知らせが。あまりにも残念。英国はサッカー選手であっても外国人が働くためにはワーク・パーミットが必要で、その基準もなかなか厳しい。先方も本気で獲得しようとしていてくれたようだし、いきなり完全移籍、しかも日本人相場より高額という好条件だったので、実現すればこれまでの日本人の欧州移籍のなかでもっとも成功したケースになるはずだった。結局、清水に戻ることになるらしいが、まだ移籍市場が開いている間になんとかポルトガルかスペインあたりへ渡って欲しいものである。もう一度、清水でモチベーションを高めるのはかなりの難事と見た。(2002/08/30)
2002年8月アーカイブ
幻のチャールトン移籍
キングのテレビ版「シャイニング」その2
●(承前) そんなわけで、キングは自身が小説「シャイニング」に込めたいくつものテーマを忠実に再現した映像を作ろうとしたわけだ。実際、このキング版「シャイニング」は(記憶に残っている限りでいうと)恐ろしく原作に近い。というか、考えてみればこんなに長い映像を観るんだったら、同じくらいの時間で原作を読めてしまうんじゃないか(笑)。
●ただし、作家本人が脚本を書いてしまったゆえの弱みもあるとは思う。なにしろ、あるテーマ、あるプロットを割愛するということができないらしく、いろいろと伏線を盛り込んだおかげで序盤はやや退屈である(いや、原作を知らなければそんなことはないのかもしれないが)。原作の再現にこだわっている割には妻役のレベッカ・デ・モーネイはちょっと違うんじゃないのとか余計なことを考えさせられたりもする。しかし中盤からはぐっとテンポが良くなる。映像化の難しそうな場面もあるのだが、かなり巧く処理しており、終盤の幽霊ホテルのパーティ・シーンなどは圧巻。父と子の対決の場面も見ごたえ十分。改めて「シャイニング」というのは恐るべき傑作だなと感心させられる。
●このタイトル「シャイニング」の意味は、キューブリック版では説明されていたのだろうか。BSでは吹き替えだったので「輝き」と訳されてしまっていた。これは少年が持っている一種の予知能力を指している。ただでさえ「幽霊屋敷」ものなのに、そこに「超能力少年」。一見安直な設定に見えるが、わざわざタイトルが「シャイニング」となっているように、この仕掛けには物語上の必然があり、語られるテーマはリアリズムの範疇にあるというところが、キングの凄さ。偉大なり。(2002/08/29)
キングのTV版「シャイニング」その1
●スティーヴン・キングの「シャイニング」を観た。スタンリー・キューブリックが監督した映画のほうじゃなくて、最近キング自らが脚本を書いた新しいほう。レンタル・ビデオ屋で2本組になっているのを見かけて「いずれ観なければ」と思っていたら、先日BS2で放映してくれたのだ。それにしても長いっすよ、これは。90分で3夜連続なんだから呆れるほど長い。映画としては成立しない長さなので、テレビ用に作られたのか。でも予算もしっかりあったようで、決してチープな映像ではない。
●で、これは有名な話だけど、キングはことあるごとにキューブリックの「シャイニング」がいかに原作の意図を汲み取っていないかを語っている。確かに原作を読めばキングの不満はもっともなもので、キューブリック版は原作で丹念に書き込まれている家族の問題を描いていないために、ずいぶんお手軽な恐怖映画になってしまっている。物語はいわゆる「幽霊屋敷」もので、由緒ある高級ホテル「オーバールック・ホテル」で親子3人が管理人として一冬を過ごす。冬の間、このホテルは雪で閉ざされてしまう。ホテルに憑いた禍々しい存在が、この家族を襲い、ある意味でもっとも弱い存在であった父親が狂気に抗えなくなる。真に怖いのは幽霊そのものではなく、この豹変してゆく父親であり、怖くて哀しい物語だったわけだ。
●このテーマをキューブリックはほとんど省略し、父親役ジャック・ニコルソンの圧倒的な存在感が支配する映画に仕立てた。これはこれで十分おもしろいと思うのだが、家族の絆をとりもどそうとする善である父親が徐々に悪に蝕まれていくというテーマは犠牲になった。ジャック・ニコルソンは最初からいかにもヘンである。しかもストーリーが完全にキューブリック流に換骨奪胎されたわけでもなく、原作にある亡霊のバーテンダーからアルコールを注がれるシーンであるとか、本来なら背景が描かれていなければ意味がわからないようなシーンがそのまま映画に残ってしまったりしている。一番困ってしまうのは、映画のラスト・シーンにある写真「オチ」。あれはどう考えても物語の整合性を欠いてしまうだろうと思うんだけど、映画「シャイニング」にはどうしてもホラー映画の「お約束」が必要だったんだろう。
●で、キングは「シャイニング」を自ら映像化することになった。この続きは、また明日。(2002/08/28)
祝! CLASSICA開設7周年
●猛祝! CLASSICA開設7周年。WWW黎明期の1995年8月21日にスタートした当サイト、なんと8年目へと突入するわけである。ドッグ・イヤーのインターネットの世界で7年といったら大変な長さである。もう気分は真っ白なあごひげを生やしたウェブ界の長老、右手には杖、左手は腰の後ろで軽く握ってそうな古さである。あの頃はまだ日本にYahoo!すら存在しなくてなあ……という話は毎年書いているような気がするのでもう省略。まさか軽い気持ちで作り始めたものがこんなに続くとは思っていなかったという話ももう省略。これまで同様、みなさまどうぞご愛顧を。左クリック養成ギブスを装着して、日々CLASSICAへのアクセスを欠かさぬことが吉!(2002/08/21)
CLASSICA7周年記念式典にて、記念ケーキを囲む筆者と愉快な仲間たち(ウソ)
東京ダービー(案)
●東軍対西軍、Jリーグ・オールスターな掟において横浜Fマリノスが西軍に入っているワナ。日本を二分する線はどこに引かれているのか、つう一般的疑問はJ1所属チームの半数を東西に分け、なおかつJ1の構成が変動することで氷解する。でも横浜が西日本(笑)。いっそ北軍南軍に分けたらどうかとも思ったが、これもとんでもない場所が北軍に入ってしまいそうで危なすぎ。
●東京を二つに分けるのもJクラブ的にはムズい。ヴェルディとFC東京はどうやって東京都を二分すればいいのか。スタジアムが同じなんだからどちらも調布というか西東京なんだが、ワタシの感覚的にはFC東京は東京ガス時代のことも考えると東東京である。なので、西東京はヴェルディ、東東京はFC東京としたい……ってのもいまさらムリか。ではよりダービーが盛り上がるようにこうやって対抗意識を強めたらどうか。東京育ちはFC東京、地方出身者はヴェルディ。これは絶対に熱いダービーが成立すると思うぞ。で、ワタシゃヴェルディを応援すればいいんだなと(笑)。(2002/08/20)
マリノス、ジュビロに完敗
●ジュビロにゃ負けたよ。いや直接対決では勝ったんだけど、地力で負けた。優勝おめでとうございます>磐田サポーターのみなさま。
●それにしても、優勝の可能性のある試合に立ち会うというのは、なんともジリジリとさせられるもので、おまけに試合内容が攻め続けているのにゴールできないという展開だったものだから、シリアス度全開、到底試合を楽しむなんていう気持ちにはなれなかった。でも、この焦燥感っていうのもまちがいなくサッカーの魅力の一つなんだよな。
●私見では、今季のマリノスは中盤までは個人技で解決するだけの強さだったのが、俊輔の移籍が決まったあたりから少しずつチームとして固まり始め、ボール保持率を高くして攻めるスタイルを身につけてきた。チームの柱となる選手はドゥトラ、ゲームを支配するのは奥。もともとマリノスは守備的MFの上野、遠藤の技術が非常に高いので、保持率重視のスタイルは悪くない。ただ安定感まではなく、鹿島戦の一敗だけで済んだのはできすぎといえばできすぎ。優勝の資格まではなかった……。
●とムリヤリ自分を納得させてたんだが、夜のテレビで優勝した磐田の選手たちがはしゃいでいるのを見ていたら突然に悔しさが湧きあがってきた。やっぱり諦めきれん。セカンドでの優勝を猛烈強まって願うっ!(2002/08/18)
キングのTV版「イット」(IT)
フェイエノールトvsフェネルバチェ
●昨日の深夜、WOWOWが無料放送していたフェイエノールト(オランダ)vsフェネルバチェ(トルコ)@チャンピオンズリーグ予選を観た。フェイエノールト、つまり小野のチームっすね。小野がファン・ホーイドンクとのワンツーから、左足で非常に技巧的な決勝ゴールを決めて1-0で勝利。で、フェイエノールトのサッカーってのは異次元のおもしろさで驚愕。
●なにしろ、ボール保持率至上主義。ゴールよりもシュートよりもパスをつなぐほうが大切だ、みたいなアンチ・リアリズム、アンチ・ダイレクト・フットボール。美しくて楽しければ負けてもいいのか(勝ったけど)。パスをつなぎ続けるために、やたらとキーパーへのバックパスが多く、しかもゴール前でもかなりアドベンチャーなつなぎ。気がつくと小野とボスフェルトの二人のボランチが同時に前線まで上がっている破天荒攻撃サッカー。奇跡的に失点がなかったけど、もはやこんなサッカーはオランダにしか生き残っていないんじゃないかというような美意識で貫かれたサッカーだったのだ。
●美よりも勝利(または負けないこと)を優先するイタリアのクラブがヨーロッパじゃ全然勝てなくて、美しさと楽しさしか考えていないようなフェイエノールトが昨年UEFAカップで優勝してるんだから、案外サッカーの常識ってのも怪しいもんだよな。(2002/08/15)
ベンチの人数を増やしてくれっ!
●Jリーグ新チェアマンの意向で、来季から正式に延長Vゴールが廃止されそうである。もちろん歓迎。90分の中身が濃くなるし、勝点計算もすっきりする。今季から延長に入ると4人目の交代が可能になっていたわけだが、この新ルールは一年で不要になるわけだ。で、ついでにぜひ実現して欲しいルールを一つ提案(ここで提案しても意味ないんだけど)。
●ベンチ入りの人数を5人から7人に、せめてそれがムリなら6人に増やしてくれっ! もうこれは声を大にして言いたいっすよ。イタリアだってスペインだってベンチは7人、ドイツは6人。現代のサッカーじゃ5人の控え選手では厳しすぎ。5人のうちの一人はどうしたってキーパーだから、あとはセンターバック1、ミッドフィールダー1、フォワード1、残ったもう一人はまあフォワードかな……。って、これは中央で使う選手、サイドの選手(サイドバックとかウィングバック)の区別をしてない場合で、だれが負傷退場してもちゃんとポジションを埋められるようにしようと思えばやっぱり7人は欲しい。監督になったつもりで考えてみればだれもが5人じゃ足りないって感じるんじゃないかなあ。
●FC東京の原監督が控えキーパーなしで試合に臨んだことがあるじゃないっすか。あれは分かる。選手だって「試合に出るかもしれない」と思ってベンチに座っているのと、客席で見ているのではモチベーションも大違い。なんとかしてほしいっすよ→新チェアマン。(2002/08/14)
鹿島vsマリノス
●かなりヘコんだ→鹿島vsマリノス戦。試合内容は実にすばらしかったのだ。レベルの高さでは今季屈指の好ゲーム、特にお互いにゴールへの意欲が強く、放つミドルシュートがことごとく枠を捉えたことといい、決勝点になってしまった本山の浅い角度からの強烈なシュートの正確さといい、鹿島名物となりつつある濃霧といい、「これはホントに日本のサッカーなのか!?」的な幸福な驚愕大あり。10年前に机の引出しからドラえもんが出てきて、この試合のビデオを見せながら「これが10年後の日本のサッカーなんだドラ~」(語調ウソ)と言ってくれたとしても、ワタシは絶対に信じられなかったと思う。
●でも、負けてしまったんだよな、マリノス。得失点差で負けていることを考えると、残り1試合、ジュビロが柏に負けてくれない限りマリノスの優勝はなく、しかも今のジュビロは真に強い。もちろんマリノスが清水に勝つことだって簡単ではない。冷静に考えると、マリノス優勝の可能性はこの日の一敗で突然に低下してしまった。
●Jリーグ初期からそうなんだけど、いつも大事な試合では鹿島に負けているんだよな。チャンピオンシップはまたまた磐田vs鹿島になってしまうのかと考えてしまうのはいくらなんでも気が早すぎだが。(2002/08/12)
スティーヴン・キング・ドキュメンタリー
●BS2でスティーヴン・キングのドキュメンタリーを観た。なぜかBBC制作。キングって写真もそんなにいくつも見かけないけど、本人を映像で見たのはこれが初めてじゃないだろうか。キング作品の大半を読んでいるにもかかわらず、これまで作家本人の顔というかキャラクターというのがほとんど定着していなかったので、「動いていて喋るキング」の映像というのがどうしても「スティーヴン・キング」と結びつかない。キングについて語るために出てきたピーター・ストラウブの顔なんかはいかにもって感じなんだが(ほとんど読んでないけど)。
●で、キング作品ではおなじみ、メイン州の映像が出て来るんだが、これはもう作品中の描写通りで納得。キング自身が語っている過去のエピソードなんかはそう目新しくはないのだが(アルコール依存症だったこととか、「シャイニング」を映画化したキューブリックはホラーをわかっていないとか)、地元のオッサンたちと毎週ソフトボールをしているスティーヴン・キングの絵を見るとやっぱりインパクトあり。こんなベストセラー作家がフツーの人として地域社会になじむことができるのか、でも妙なヤツが近づいてきたりとか、大変なんだろうな、と。
●「ミザリー」の話に続いて、実際にキング宅に見知らぬ電波野郎が爆弾と称するものを抱えて不法侵入し、お前の作品は私の盗作だと主張したっていう実話が披露されていた。短編「秘密の窓、秘密の庭」(「ランゴリアーズ」収録)はこの本人の体験から書かれたんだろうな。前にも当欄でちょっとだけ紹介した(→ Side_B)。(2002/08/11)
「BSクラシック夜話」希望
●「長嶋茂雄前監督宅に刃物男」。しかし刃物男の要求が「長嶋三奈の写真を撮らせろ」だったってのは、相当味わい深い。
●深夜にテレビをつけたら「BSマンガ夜話」。ワタシはほとんどマンガを読まないんだが、それでもこの番組はおもしろいんだよなあ。えっ、「空手バカ一代」って、つのだじろうが(途中まで)絵を描いていたのかとか、そのレベルなんだが。何日か前に放映していた「マカロニほうれん荘」の回もかなりよかった。この番組のクラシック音楽版とかやってくれたらいいのに。夏目房之介役はいくらでもいそう、岡田斗司夫役も探せばいそうだが、いしかわじゅん役が難しそう。(2002/08/09)
ヤバすぎる、カードゲー
●まだ一度もゲーセンで実物を見たことはないんだけど、こりゃ絶対ヤバいだろうと思うのがセガのWORLD CLUB Champion Football SERIE A 2001-2002。ウワサを耳にした瞬間、ピピッと来たっすよ。要するに「トレーディングカードを使ったゲーセン版サカつく」ってことだと思うんだが、このアイディアは天才的すぎる。トレーディングカードと「サカつく」っすよ。ハマリ度で両者最強と思われるものの合体につき、こいつと付き合いはじめたら中毒死確実。最期の場所をゲーセンにしたいとまでは思っていないので、近所で見かけても近寄らないことに即刻決定。偉大にして無慈悲なセガの瞬発力に眩暈。(2002/08/07)
広山望vs中村俊輔、日記対決(笑)
●自販機の返却口に手を伸ばして硬貨に触れるとジリッと熱い、夏。
●元JEF市原→セロ@パラグアイの広山望がポルトガルのブラガと契約。移籍に関して完全に蚊帳の外だったJEFはブラガに移籍金を要求するとかいっているが、どうなることやら。FIFAの移籍ルールを適用すれば、広山はJEFとの契約切れに伴って自由に移籍できるわけだが、Jリーグには独特の国内ルールがあり、契約が終了しても元所属チームが保有権を持つことになっている(だから1年契約の選手が多い)。この件については複雑な事情もあるだろうが、一般論としては「契約切れの選手に移籍金が発生する」というのはどう考えてもおかしいので、今後はJもFIFAのルールに従わざるを得ないだろうな。
●ちなみに広山の公式サイト、今回の契約の経緯について本人のメッセージが載っているが、まあこりゃサッカー選手の文章とは思えないくらい、しっかりしていて、山のようにある選手公式サイトの「日記」とはレベルが違いすぎる(改行を知らないウェブ制作者はダメすぎだが)。書き出しがこうっすよ。『日本語だと一つ一つ別の意味を持ってしまうが、スペイン語では「命」も「人生」も「生活」も「la vida」である』。お前は職業ライターかっ! ちなみにW杯期間中に中村俊輔が書いた伝説的日記はこうだ。「夕方に友達と会って、家でサッカーゲームをして、メシを食いに行って、それからゴルフの打ちっぱなし。おわり。だめか、これじゃ」。ダメです。いや、俊輔のほうがフツーの若者なんだけどさ。(2002/08/06)
イナのトップ下
●祝、稲本潤一デビュー@フラム。インタートトカップ(公式戦である)で後半から出場、映像は見ていないんだけどまずまずの活躍でチームを1-0の勝利に導いたらしい。つうか、なぜか稲本がコーナーキッカーに指名されていて、ちょっと勘違いされているっぽいんだが(笑)。さらにいうとYahoo! UKのInamoto relieved after Fulham debutでInamotoとして紹介されている写真は日本代表ユニを着た森島だったりする(爆笑。もしかしたら後で訂正されているかもしれんが)。
●ともあれYahoo! UKでのFulhamのページにあるように、稲本はちゃんと注目されていたと。日本人票があるかもしれないが、フラム公式サイトの投票でもこの日のMOM1位。快挙なり。(2002/08/02)