●ビデオで映画「裏切り者」。ジェームズ・グレイ監督。地下鉄工事入札に際しての実在した汚職事件をもとにしているというこの映画、社会派サスペンスのように分類されているようだが、そんなはずはない。実際には「告発の姿勢」なんかほとんどなく、実はこれは「裏青春映画」なのだ。
●主人公は刑務所から出所したばかりの若者(マーク・ウォルバーグ)。父なし、母貧乏、本人ムショ帰りという苦境、そこに親友が裏稼業でそこそこカネを稼いでいるとなれば、主人公が悪の道に入るのは当然。でもやっぱり悪人になるには不器用すぎてウロウロしているうちに、のっぴきならない状況にまで追い込まれ、最後の最後に決断をする……という物語、すなわちどうやって生きたらいいかわからない若者が翻弄されながらも自分にとって正しい生き方をみつけるというわけで、きわめてまっとうな青春映画である。ただし、舞台がカリフォルニアの太陽のもとなんかじゃなくて、地下鉄車両保守会社の裏工作のヤクザ世界であるがために、雰囲気は最初から最後まで暗い。でも青春映画だから暗いんだっていうのも正しいといえば正しい気がする。(2002/10/01)
October 1, 2002