●埼玉スタジアムでのニッポン代表vsアルゼンチン代表親善試合。いまや代表の試合のチケット争奪戦は大変なことになっているようだが、幸運にも「取ってもらった」チケットを手にすることができた。感謝。試合は堪能できた。が、代表戦のスタジアムの雰囲気は大変なことになっている。「ジャニーズの運動会」と揶揄した人を見かけたが、まったくその通り。ワタシゃ基本的に寛容派なので、試合を真剣に応援するのも、ピクニック気分でのんびり眺めるのも、ブツブツぼやきながらビールを飲みつづけるのも、等しく正しい観戦スタイルだと思うのだが、ピッチ上のできごとと無関係に大騒ぎしたい人たちだけは理解できない。フランス大会予選の頃が夢のようだ。
●で、試合である。ビエルサ監督が率いるアルゼンチンは日韓大会では期待はずれの結果に終わってしまったわけだが、それでも大会予選の頃とまったく同じシステムとほぼ同じ選手を継続しながらも、ゆるやかに世代交代を進めている。W杯であっさり敗退したといっても、内容はやはり世界最強レベル。システムは3-4-3というか3-4-2-1というか、3人のセンターバック、中盤をワイドに4人並べ、前線はトップに一人(クレスポ)、左にクラウディオ・ロペス(→キリ・コンザレス)、右にオルテガ(→サビオラ)というおなじみの形。サイドアタックが非常に強力で、左右のウィンガーはもちろんだが、中盤でもソリンあたりがワイドに開いて攻撃の基点になれる。中央にはアルメイダとベロン。ベロンは技巧をひけらかすためのプレイが多すぎるが、唖然とするほど巧い。
●日本はジーコ式、つまりブラジルの伝統的4-4-2。中盤の4人はワイドに開かずに、下がり目の福西、中田コ、上がり目の俊輔、小笠原という役割分担。アルゼンチンの中盤のサイドの選手が開くと、ほとんどノーマークになってしまう。2人のボランチがケアするには遠すぎ、サイドバックはウィングを見なければいけない。
●前半の45分はアルゼンチンには準備運動のようなもの。予定調和的に0-0で終わり、後半開始早々には「序盤に点を取ろう」という共通意識があったらしく、2分にソリン、4分にクレスポと立て続けに2点を奪ってしまった。ある意味、本当のアルゼンチンが見れたのはこの4分間だけだったんだが(苦笑)、アルゼンチンはベストメンバーを組んできたのだ。もともとレベルが違いすぎる。70%の力でプレイしても芸術。欧州クラブレベルでは独りよがりなオルテガのドリブルだって、ニッポンにとってはとてつもない脅威。2ゴールを奪ってからは明らかに「これくらいでいいだろう」という雰囲気になっていたので、ニッポンの攻撃も目立ったが、後半立ち上がりの4分間での彼らのスピードは、サンドゥニでの対フランス戦の惨敗を予感させるものだった。
●ニッポンでよかったのは鈴木タカ。巧いプレーヤーに豹変していた。名良橋、松田もよかった。ただし2点目を奪われたシーンは松田と秋田のセンターバックのコンビに問題あり。アレックス、高原もまずまず。俊輔はいつものように技巧的で、非実用的。途中から入った中山は、中山にとってのベストのプレイをしてくれたと思う。いずれにせよ、プレイス・キックか相手のミス以外では得点が生まれそうにもないという試合だった。でもまあしょうがない。世界のどんな強豪国だって、ベストメンバーのアルゼンチンとは五分に戦うのが精一杯だろうから。(11/21)
November 21, 2002