●何日か前に、昨年のワールドカップでのロナウジーニョの超人的フリーキックについて「あのゴールはまぐれだった」というニュースが流れていた。準々決勝ブラジルvsイングランド、ゴールからはるか35メートル離れた地点でのロナウジーニョのフリーキックが、イングランドのベテランGKシーマンの頭を越えてゴールに入ってしまった。シーマンのミスでもあるが、それにしても35メートルもの距離があって、あそこを狙うのは人間業ではない。が、当日はロナウジーニョは「狙ったゴールだ」と話していた。
●それが、チームメイトの談話から「ロナウジーニョ本人がミスキックだと認めていた」という話が伝えられてニュースになったわけだ。ああ、嘆かわしい。
●ワタシはそのゴールを目の前で見ていた。実際、ボールが高く上がって風で流れたようにも見えたが、しかしあれをまぐれと言ってはいけない。たとえロナウジーニョが私的な場でまぐれだと認めたとしてもそんなことは関係ない。重要なのはワールドカップの物語性であり伝説性である。あれはロナウジーニョがシーマンのミスを予期して狙ったゴールでなければならない。狙ったコースから20cmとはずれていなかった。あの大会において数少ない奇蹟の瞬間だった。ロナウジーニョ本人がいくら狙っていないと言い張ってもダメである。フットボールは物語が事実に優先するファンタジアなのだから。(03/07)
March 7, 2003