March 28, 2003

オススメ、「ディナーラッシュ」

●ありそうでなかなか見つからない「ちょっとした気の利いた映画」が、この「ディナーラッシュ」。舞台はニューヨークのイタリアン・レストラン「ジジーノ」。このレストランで起こる、ある一日の出来事をほとんど店内の描写だけで描ききってしまう。
●一応、テーマは「時代の移り変わり」。「ジジーノ」は三ヶ月先まで予約が入っているというお洒落なレストランである。ニューヨークで活躍する名士たち、著名な料理評論家たちもやってくる。シェフのウードはこの業界で話題の新星なのだ。しかしここはニューヨーク。店のオーナーはウードの父ルイ。ルイはイタリア移民としてニューヨークで生き抜き、店を興してきた人物である。マフィアとも無縁ではなく、裏賭博の胴元の顔を持ち、南イタリアの伝統的家庭料理を愛し、同郷の仲間とはイタリア語で話し、移民社会にどっぷりと浸かってきた男なのだ。なのに、二代目の息子はニューヨークの気取った似非アーティストどもが気に入る創作料理で人気者だ。やれやれ!
●小さなエピソードの集積が一夜の出来事を形作る。ラストは鮮やか。この映画は、オーナーの父からシェフの息子へと、そして叡智と機転がものをいう猥雑な街ニューヨークから華やかさと虚飾が混淆する都市ニューヨークへと、時代が移り変わった瞬間を切り取ったものである。でもまあ、小ぢんまりとした映画なので、「ああ、このお料理、おいしそうっ!」とか思って涎を垂らしながら観るのもアリ。ちなみに舞台となったレストランは監督自身がオーナーの実在の店舗だという。
●料理ありユーモアあり皮肉あり、恋あり犯罪あり。かなり強くオススメ。 (03/28)

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