●深夜というか早朝に生中継されたチャンピオンズ・リーグ決勝はユヴェントスvsACミランのイタリア勢対決。ビデオ録画のつもりだったのだが、試合開始時刻にうっかりテレビを付けたら、あまりにスタジアムの雰囲気がいいので、そのまま観続けてしまった。
●しかし0-0のまま延長、しかもPK戦まで突入したのにはさすがに参った。こっちは後半から早くも意識朦朧、試合を観てるのか夢を見てるのかわからない。でもスゴい試合だったなあ(と半分寝ていたのに言うか)。ユヴェントスの激しさとパワー、ミランのテクニック、そして両者のパスのスピードの速さ。まるで夢のようだった(というか夢だったかもしれん)。
●本来なら前半のシェフチェンコのゴールはオフサイドで取り消されるべきではなかった。入ってしまったシュートに対してオフサイドを宣告してはいけない。あそこはルールの厳密な適用よりも、慣例、すなわちサッカーを楽しくするための経験的叡智を優先させるのがフツーだと思う。だから、PK戦でミランが勝ってくれてホントに良かった。っていうか、ミランのほうが好きだから(笑)。いやあ、まさかミランがチャンピオンになるなんて、シーズン前には夢想だにしなかったよなあ。リバウドが出てなくて寂しかったけど。
●地上波民放(TBS)は途中で試合を打ち切って、朝の通常番組を放映したらしい。やれやれ、酷すぎる。日テレで中継していた頃にも時間が足りなくなったことはあったけど、たしか朝の番組のなかにさしはさんでムリヤリ中継してくれたことがあったと思う。あれ、どことどこの試合だったっけ?(05/30)
2003年5月アーカイブ
CL決勝ユヴェントスvsACミラン
ベリオ、逝く
●イタリアの大作曲家ルチアーノ・ベリオ死去。享年77歳。もはや今世紀ではなく前世紀となってしまった20世紀を代表する作曲家の一人だった。
●前衛の作曲家としては、録音も含めて作品の演奏頻度が非常に高かったと思う。CDは山のように出ている。「シンフォニア」のような「ヒット作」(?)もある。「シンフォニア」はブーレーズ指揮のディスクが千円盤として発売されているという身近さ。ワタシは自分が最初に聴いたベリオというのをはっきり覚えていて、DGから出ている「コーロ」だった。免疫がなかったので素直に嫌悪感を感じつつも、感動してしまったというヘンな体験だったなあ。ベリオではこれが一番繰り返して聴いた曲かも。
●様々な楽器(と人声)のソロのために書かれた一連の「セクエンツァ」を、まとめて聴くなら、アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーによるこのセット。ベリオを情熱を燃やして聴くぞ、なんていう気力がなくても、ちょっとずつ短い曲を聴けるところがいい。(05/29)
最強Xスポーツ
●ベートーベンの「第九」直筆草稿、4億円で落札。この4億円で落札した個人とは、実はワタシです(大ウソ)。などと投げやりな嘘をつかれてもちっとも楽しくなれないあなたにとびっきりのバカネタを。
●出ましたっ! 最強のXスポーツ(っていうの?)、Extreme Ironing! バ、バカすぎる。Galleriesはもちろんだが、FAQやWho's Who、Reviewsに至るまで必見のバカ・サイト。高い山を登ったり、深い海に潜ったりする機会のある方は、ぜひアイロン(とアイロン台)を持ってExtreme Ironingに挑戦してみれ!(05/28)
邪念ゴルゴル
●草をやった。草ってのは草サッカーなんである。草サッカーは良い。なにがいいかっていうと、これくらい自分の無力さを教えてくれるものもないんである。ああ、今日もなにもできなかったぁ、ワタシは無力で世界は理不尽だなあ、いい汗かいたよ!みたいなところが爽快であり、要するに自分シュート0本。厚かましくもフォワードやっててゼロ。っていうか、シュート以前にダサダサ感横溢、どうしてこんなにボールってヤツぁ、ワタシの足元に収まってくれないものか。
●せめて惜しいプレイがひとつあれば脳内補完して妄想反芻できるのになあ。もはや別段巧くなりたいなどということは思っておらず、期待するのはまぐれ当たりでもなんでもいいから、というかまぐれでもなければあり得ないのだが、まずは第一にゴールであり、そして次いでアシストであったり、効果的なインターセプトであったり、機能的なパスであったりするわけであり、そしてチームが勝てばいうことはない……と書いていて自分でもウソだなあと思うのは、ホントはゴールしたいだけでゴールできればあとはなんでもいいやってな浅ましさを知ってたりするんである、でも体の動き、全体的に自分、ぎこちなくない? っていうか、どんくさい? せめてヘタなりに皆の役に立とうという助け合いの精神を持ったらどうなのだよ。と思いながらも邪念はゴルゴル。(05/22)
失われた五月
●退け、黒雲よ、立ち去れ、白雲め。東京において一年でただひと月だけ天候の良いと言える五月も気がつけば下旬に入っているが、雨だの曇りだのが続き、しまいには日常的挨拶として「そろそろ梅雨ですか」などといわれてしまう始末。これはおてんとうさま的にも忸怩たるものがあるんではないか、ひょっとして冴えない五月を反省して一発大逆転、今年は快晴スペシャルで梅雨省略かと期待するが、そんなことあるわけないし、水不足で節水しろとかいわれるのもヤだよなあと軽く嘆いてみてから天気予報サイトへジャンプ。明日21日は「晴れ時々雨」でしょう。どうしたことだ、曇りはないのか。あー、あー、本日は非曇天なり、非曇天なり。(05/21)
「ミーン・マシーン」はサッカー映画の伝統を守った
●以前から思っていたのだが、野球映画に比べるとサッカー映画というのは質でも量でもずいぶんと見劣りする。いや、そりゃあることはある。「少林サッカー」とか「シーズン・チケット」とか、傑作といえる映画が。しかし、本格サッカー・ファン(笑)のワタシとしては、シリアスな試合シーンを収めたサッカー映画も観てみたい。スタローンの「勝利への脱出」みたいなウソ・サッカーじゃなくて(ましてや中居正広の「シュート!」みたいなお笑い青春映画じゃなくて)、本物のサッカーの香りを映画ならではのフィクションのなかにファンタジー豊かに盛り込んだ名作を観たい。そんな映画があってもいいはずだ。
●で、ついに出たかと思ったですよ→ヴィニー・ジョーンズ主演の「ミーン・マシーン」。ヴィニー・ジョーンズといえばガイ・リッチー監督の「スナッチ」や「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」。技巧的で洒落た映画の中で、脇役ながら強面の渋いオッサン役として、実に味わい深い存在感を醸し出している。しかもこの人、役者になる前は元ウェールズ代表という実績のあるサッカー選手だったのだ。「プロ」なんていうレベルじゃない、代表選手でイングランドのプレミアリーグでプレイしていたんである。そのヴィニー・ジョーンズが八百長でサッカー界を追放された元選手の囚人役として登場、刑務所で囚人チーム対看守チームの熱すぎる試合が繰り広げられるっていうんだから、こりゃ期待するなというほうがムリ。
●と胸躍らせながら観ると、これがかったるいB級映画で、筋は凡庸、役者は大根、アイディア不足、つまらないギャグで、しっかりと「本格サッカー映画に名作なし」の伝統を守ってくれているのだ。「スナッチ」じゃあんなにカッコよかったヴィニー・ジョーンズがボロボロに。うう、悲惨。ただし、映画としては駄作でも、サッカー・シーンはお見事。ヴィニー・ジョーンズが巧いのは当たり前だが、他のメンバーもかつてないほどちゃんとサッカーしている。なんだかこれ見てるとボールを蹴りたくなるんだよなあ。いいなあ、サッカー。あ、悪口言いながら、結局楽しんでるじゃないか、ワタシは(笑)。
●字幕について1つ。Managerを「マネージャー」と訳してはいけない。日本語でマネージャーだと女子マネみたいな雑用係になりかねないが、これは「監督」である(アーセナルのヴェンゲルやマンチェスター・ユナイテッドのファーガソンがManager)。監督と訳さないと、気のいい小柄な黒人囚人がManagerを引き受けたおもしろみや、選手交代を巡ってマネージャーとオーナーの意見が対立したシーンで、審判がマネージャー(監督)に従う意味がわからない。(05/20)
レッジーナvsユヴェントス
●とほほ。やっぱり負けたか、マリノス。次節、磐田と対戦する名古屋が勝ってくれないと、優勝争いからは脱落決定。勝点差は3だが、得失点差を考慮すると実質3.5差だしな。
●中村俊輔@レッジーナvsユヴェントスの試合を日テレで。ユヴェントスはすでにリーグ優勝を決めており、しかもチャンピオンズリーグ決勝が残っているということで、大量に控えのメンバーを出してきた。しかも中盤でのプレスをかけてこない。レッジーナがユヴェントス相手に自由にボールを回せるという不思議な展開で、俊輔ものびのびトップ下でプレイ。レッジーナが快勝、最終節で1部残留をかけて戦うことに。
●このユヴェントスは、夢のレアルマドリッド相手を潰したあのユヴェントスとは到底同一チームに見えなかった。この日、余裕たっぷりに個人技を見せようとして負けてしまったユヴェントスのほうが、むしろレアルマドリッドに近い偉大なチャンピオンの精神を持っていた。(05/19)
1958年、LPの価格
●筒井康隆の「腹立半分日記」のなかにこんな記述がある。「大月楽器店でルビンシュタインのショパンを買う。千九百円」。いつの話かっていうと、なんと1958年だ。同じ年の記述に「ぼくの当時の給料は七千円」なんて書いてあるわけで(作者サラリーマン時代の日記なんである)、LPがいかに高価なものであったかが想像できる。っていうか、1900円っての、今だってそんなもんだ。物価と上昇と無関係なんだよな、音盤一枚の価格は。いや、むしろ今ならもっと下がってるか。すごいことである。
●この価値体系が崩れるのは、きっと音楽の非パッケージ化が本格化するときなんじゃないだろか。1枚っていう概念がなくなって、代わりに「1回聴くのに××円」って形に変わると。そのとき初めて1回しか聴かない演奏と、10回聴く演奏とに価格差が生まれることになるのかも。これはこれで妥当な気がする。(05/17)
ユヴェントスvsレアル・マドリッド
●欧州チャンピオンズリーグの影響で、テレビ時差ぼけ状態。やたらと早く眠くなり、ヘンな時間に目が覚めてしまう。しかし、これもあと決勝1試合を残すのみ。ヨーロッパのシーズンが終わろうとしている。
●っていうか、ホントに負けるかよ→レアル・マドリッド。1点をリードして迎えた敵地でのユヴェントス戦、1-3で敗北。あーあ、こりゃ伝説だよ、宇宙一偉大なチームが負けてしまって。神々のサッカーvs現実主義のサッカーのはずだったんだけど、こともあろうにレアル・マドリッドがゴール前で必死のクリアをしたり、時間がなくてロングボールを蹴り込んだりしていたから(いったい誰の頭に合わせようというのか)、ふさわしくない行いで自らの遊戯性に基づく偉大さを否定してしまったとも言える。ユヴェントスの堅守に屈したっていうか、プレッシング・サッカーに負けたというか。おかげで決勝がミランvsユヴェントスのイタリア国内対決になってしまった。やれやれ。
●国内に目を向けると、東アジア選手権が直前になって延期。開催地横浜市の要請に東アジア・サッカー連盟が折れた形。「SARSの影響」で片付いちゃいそうだが、ってことは今、中国から日本への渡航って誰もできないわけ? だったら分かるんだけど、これはなあ。(05/16)
Jリーグ10周年の日
●今日はなんの日? Jリーグ10周年の日らしい。他より1日早く開幕した読売ヴェルディvs日産横浜マリノス(って名前だったかどうかは忘れた)の一試合が国立競技場で開催されたのが10年前。異常なほどのJリーグ・ブームが起きて、とにかくどんな試合であろうがチケットはすべて入手困難、しかも毎週水曜と日曜の2試合もやっていたという凄まじさ。あんなに大勢いた人たちは今どこへ(笑)。でも今のほうがずっと正常で、試合もおもしろい。
●ワタシはその記念すべき開幕試合をスタジアムで観ていたのだが、その時に全員に配られた記念の品だとか、半券をちぎられないようになっていたチケットだとか、その種のものは一切残していない。チェアマンの開幕宣言も忘れた。でもリーグ初ゴールとなった読売のマイヤーのゴールは覚えている。「ああ、どうしてこんな無名選手が初ゴールなんだ!」と落胆したから(笑)。井原のオウンゴールとかだったら、伝説になったのになあ。
●昨日のチャンピオンズリーグのインテルミラノvsACミラン、スゴかったっすね。技巧じゃなくて、熱さ激しさが。選手全員ブチ切れてた。レアル・マドリッドがやってるのと同じ競技とは思えない。あれはあれで究極のフットボール。(05/15)
ワタシvsフランス人@ゲーセン[2]
(承前:ゲーセンでフランス人と対決)
●ロスタイム、ほとんど0対0で凡戦で終わりかけたその直前、ゴール前約25メートルの地点で、ニッポン、フリーキックのチャンス。蹴るのはナカタ。よし。この位置からのフリーキックを決めたことは一度もないが、ナカタならなんとかしてくれる(ていうか、なんとかするのはワタシなんだけど)。壁の右を巻いてゴールを狙う。
●ボールは壁の上を越えて、バーに当たり、そして、えっ、ゴールに入っちゃったよ! なんてワタシゃ本番に強いんだ。ニッポン1-0フランス。「ニッポン、やりました! 世界の強豪フランスを倒しました!ワーワー!」(←心の中で聞こえる声)
●ゴールシーンのハイライトをうっとりと眺めていると、筐体の向こう側から「チャリン」の音。おお、フランス人、意外にしつこい、オレサマ(←増長)ともう一度戦うというのか。するとこんどはフランス代表ではなく、なぜかイングランド代表を選択してきた。フランス人なのか、イギリス人なのか、どっちなんだよ、ガイジン。
●もうこっちはかったるくなって、「あんまり負けさせても悪いしなー」とテキトーにボール回し。するとフランス人、サイドからセンタリングを上げて、中央でオーウェンがヘディングでゴール。なんか、筐体の向こう側でガッツポーズとってるみたいな音が聞こえるよ(笑)。熱いな、フランス人。嬉しそうだ。
●別に負けてもいいやと思ってプレイしていたが、だんだんこちらも壊れたレバーの扱いに慣れてきて、フランス人が絶対にできないようなボール捌きをときどきうっかり見せてしまう。ついでに、うっかりサイドからセンタリングしてしまう。うっかり中央で柳沢が胸でワントラップしてそのままボレーでうっかりゴール! おお、巧すぎる。本物の柳沢より巧いな、ワタシの柳沢は(笑)。しかも向こう側でフランス人、なにかを軽く叩いてるみたいなんだけど、もしかして「ブラボー」って拍手してくれてるわけ?
●すっかり調子に乗って、スルーパスに飛び出したナカタの逆転ゴールまで決めてしまった。今度は台の向こう側は完全なる沈黙。ああ、これって勝てるはずの試合をひっくり返されたときの沈黙だよね……。わかるわかる、スマソ、フランス人。これもサッカーだ。ニッポン2-1イングランド。逆転負けをくらった失意のフランス人はどこかに消えてしまった。ちぇっ、シャツを交換しようと思ったのになあ(ウソ)。(05/13)
ワタシvsフランス人@ゲーセン[1]
●すっかりごぶさただった近所のゲーセンを覗いてみると、「バーチャストライカー2002」でコンピュータ相手に戦うガイジンが! 白人男性推定年齢28歳。フランス代表を操っていたので、これはどう見てもフランス人だ(決めつける)。思い出すなあ、かつて日本がW杯初出場を果たした直後に、対戦してくれたイラン人。っていうか、一人プレイをするイラン人を見つけてワタシが勝手に対戦台に座ったわけだが。サッカーは世界の共通語、ゲームも世界の共通語、サッカー・ゲームはなおさら共通語。言葉なんか要らない。VIVA!セガの筐体を挟んだ電子的無言の国際交流!
●ってわけで、もちろんワタシはフランス人の対面に乱入(笑)。さあ、フランス代表め、ワタシの操るニッポン代表と勝負せよ。今ここでサンドゥニでの雪辱を果たす! サッカーでは負けてるが、ニッポン人、ゲームならマケナイ、100円硬貨投入してコマンタレブー!
●「ふっ、ぎこちないプレイしかできないフランス人に、本物の華麗なるシャンパン・サッカーを教えてやるぜ」と意気込んだものの、いざプレイをはじめて愕然。方向レバーが壊れておる(苦笑)。うう、左と右は入るが、上下方向がたまにしか入ってくれない。おかげで「ぎこちないフランス代表」対「不思議な踊りを踊る日本代表」に。こ、こんなはずでは。(以下、明日につづく) (05/12)
白ずくめ集団
●最近ニュースにやたら出てくる「白ずくめ集団」ってヤツなんだけど、「もうオウムで飽きたから」感ありあり、全然興味がわかない。なので、どういう団体でなにが事件になっているのかさっぱりわからないというか、知ろうともしていないんだが、とりあえず見出しだけ見ていると、山梨に入ったとか、岐阜にいるとか、福井に向かったとかいうことだけわかる。なんだか台風とか梅雨前線みたいな気象現象のように思えてきた。最終的にはオホーツク海に抜けていくんじゃないか。(05/09)
レアル・マドリッドvsユヴェントス
●見ましたか、地上波でも中継してくれたチャンピオンズリーグ準決勝、レアル・マドリッドvsユヴェントス。ユヴェントスってのはたぶん守備最強な非常にイタリア的なチームなんだけど、なにしろ相手はレアル・マドリッド。こりゃあ点がバカスカ入るんじゃないかと期待してたんだが、なんと、さすがユヴェントス、よく守るじゃないっすか。レアルがいつものようにプライドの高い対戦チームを翻弄してくれると思ったら、特に前半なんて強固な守備陣を打ち破るのに四苦八苦していて、スペクタクルは少なめ。なんだかなあ。基本的にイタリア好きなワタシだが、軽くイタリアの守備サッカーに憎悪を覚えてしまったり。
●結局、2-1でレアル・マドリッド勝利、ユヴェントスのホームでの第2戦へと続く。ユヴェントスが守るから、両者合わせて、たった3ゴールしか入らなかったよ……って、あれ? (05/08)
クリストファー・ノーランの「インソムニア」
●遅ればせながらレンタルビデオでクリストファー・ノーラン監督の映画「インソムニア」を観た。前作「メメント」と対をなす傑作。前作は前向性記憶障害を題材に実験的手法を採りながらも、実は「人はいかに生きるか」という普遍的な主題を扱った作品だった。要約すれば「人が生きるために必要なのは記憶ではなく物語である」(ここに書いた)。今回はインソムニア、すなわち不眠症に苦しむ刑事(アル・パチーノ)を主役としたサスペンスの形式を装いつつも、「真実と嘘」、換言すれば主観的事実(=嘘、物語とも言える)と客観的事実(公的な真実)の境目に焦点を当てている(以下、少しストーリーを割っているが、ネタバレというほどではない)。
●ロス市警の辣腕刑事ドーマーは、白夜のアラスカで起きた猟奇殺人事件を捜査する。白夜のために不眠症に悩まされながらも、現地の警察と協力して捜査を進展させる。ドーマーは優れた現場のヒーローであるが、一方で警察の内務調査の標的にもされている。ドーマーの相棒は内務調査班と取引をしたという。裏切りである。ドーマーには表沙汰にしたくないなにかがあるらしい。ドーマーは捜査のなかで、深い霧の中で犯人を追いかけようとして、誤って相棒を撃ってしまう。そこから罪と正義の間でドーマーは揺れ動く。
●「白夜」は不眠症へと主人公を追い詰めるための舞台設定でもあるが、同時に「すべてを明るみに曝す」ことを意味し、内務調査と呼応して「客観的真実」の世界を象徴する。一方、深い霧あるいは眠り、闇はその逆、「主観的真実」の世界にある。人が眠りを奪われたらどうなるか。嘘のない白夜のなかで、ドーマーは理性を奪われ、進むべき道を見失う。不眠は続く。正義のために隠蔽された過去は正義のために明るみに出さなければならない、しかし真実を剔抉することが善であるというのは果たして成熟した正義感といえるのか……。
●結末ではあえて不明瞭さが残されている。「人は物語がなければ生きていけない」という点で「メメント」と同じ主題を扱った作品であるとも言える。形式上はサスペンスとして成立している点も共通する。見終わった後の切なさも同じ。あまりに似ているのでノーラン監督自身が脚本を書いたのかと思えば、そうではない。「インソムニア」はノルウェー映画のリメイクだという。優れた脚本を、それにもっともふさわしい監督が映画化したということか。必見の傑作。(05/07)
レアル・マドリッド1-5マジョルカという矛盾
●ちっともゴールデンじゃなかった連休、しかしJリーグの日程は詰め込まれ、マリノスが久保のハットトリックで難敵鹿島を敵地で下すというウソみたいな話があったり、ジュビロがヴェルディ相手に7点取ったのであまりの悲惨さにちょっぴりヴェルディを応援してみたくなったり、JEF市原のオシム監督語録はおもしろすぎると思ったりするが、一番印象に残ったのははるか彼方のスペインのできごと。
●レアル・マドリッド1-5マジョルカ。ああ、これはもう奇跡だ! ロナウドもジダンもフィーゴもちゃんと出場してたっすよ。開始早々にロナウドがスーパーなゴールを決めて、いったいこりゃ何点獲るんだろうと期待したら、5点も獲られたよ(笑)。ホームで大敗。
●これってスゴすぎない? 天下のマンチェスターユナイテッドを相手にすると、超絶技巧を連発して敵がボールを奪えなくて半べそをかいてしまうくらいに強いのに、国内リーグだとホントによく負けるよな(笑)。世界のどんな強豪もレアル・マドリッドと対等に戦うことはできないけど、スペインのどんな弱いチームにもレアル・マドリッドを倒すチャンスがある。なんという矛盾。このリアリズムを徹底的に無視したトホホな神々をますます好きになってしまった。(05/06)
英国音楽留学セミナー
●5月27日、東京・神楽坂のブリティッシュ・カウンシルにて、英国音楽留学セミナーが開催される。これは英国の国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシルが、若手作曲家藤倉大さんを招き、英国への音楽留学を検討をしている方を対象にその留学経験について語ってもらうというもの。今年度の武満徹作曲賞のファイナリストにノミネートされた藤倉氏は、トリニティ音楽大学、英国王立音楽大学で学び、本年1月より博士課程をロンドン大学キングスカレッジでジョージ・ベンジャミンに師事。聞き手はやはり英国と縁の深い音楽学者の岡部真一郎さん。
●入場は無料、ただし事前予約が必要。これから英国に音楽留学したい/するかもって方はぜひ。詳細は以下まで。
http://www1.britishcouncil.org/jp/japan-arts-events-dai-fujikura.htm
(05/03)
ニッポンU23vsミャンマーU23
●やれやれ。五輪予選、ニッポンU23vsミャンマーU23。結果を知らずに帰宅して5-0か10-0かと期待しながらビデオを観ると、なんと前半終わった時点で0-0じゃないっすか。いやー、技術、体力、スピード、あらゆる面で明白に相手を凌駕しているというのに、なんすか、この若者たちの消極的なプレイは。鼠に怯える猫だな、こりゃ。
●いや、そりゃ相手が8人で自陣を守ってりゃそうそう点を取れるもんではないってのはわかる。でもなあ、なにも怖がらなくても。ちょっとトルシエが懐かしくなったっすね。トルシエだったらハーフタイムに前田あたりの胸をバーンとどついて、顔を真っ赤にしながらわめきたてたかもしれない。
●っていうか、彼らも所属チームではたくましいプレイを見せてるんだよなあ。それなのに若者同士で集合しちゃうとああなってしまう。あのメンバーで比較的しっかりしてそうなのが、下のユース年代から入ってきた角田だったりするから、U23はメンタル的に「谷間の世代」なのかも。ミャンマーなんて16歳の選手が果敢なプレイを見せているではないっすか。
●結果はロスタイムの追加点もあって3-0、主審がまちがえてオフサイドで取り消した点も認めれば4-0。帳尻は合わせた。でもやっぱり、だれかキャプテンシーを持って味方を鼓舞する選手がいないと、実力の半分も出さないうちに消えてしまいそうだ。大久保、松井、阿部、石川と巧い選手はいくらでもいるんだけどなあ。ああ、じれったい。(05/02)
振動がコピーされる現象
●駅のホームを歩いていると、胸ポケットで存在しない携帯電話がブルブルと震えた。ポケットにはタバコの箱しか入っていない。一瞬戸惑ったが、次の瞬間に納得した。隣を並行して歩いていた若者がどこからともなくケイタイを取り出して、会話を始めたのだ。そうか、隣のケイタイの振動が、ワタシのタバコの箱にコピーされたのだ。初めて遭遇したこの現象に、なにか名前を付けてやらなければ。名前さえ付ければ、次はワタシのポケットのタバコを隣の人物のケイタイにコピーすることも可能になるに違いない。(05/01)