●ああ、久しく忘れていたこの芳しい香り。コンフェデレーション・カップ第2戦、ニッポンは地元フランスと対戦。ワタシとしてはこの試合を近年のニッポン代表ベスト・マッチに挙げたい。少なくともトルシエ政権下では存在し得ないものを、ジーコは見せてくれた。ただ一つ、結果だけが伴わなかったけど。
●ニッポンは第1戦とまったく同じメンバー。GK:楢崎-DF:アレックス、宮本、坪井、山田-MF:遠藤(保)、稲本、中村俊輔、ナカタ-FW:大久保、高原。相手のフランスは過密日程を考慮して、メンバーをほとんど入れ替えてきた。とはいえ、単に控えメンバーというわけではない。第1戦でベンチスタートだったピレス、バルテズを先発させた。それに控えでも十分ワールドクラスのメンバーが揃ってしまうし、なにしろ敵は開催国、「相手が弱かったから」などという逆向きの言い訳は要らない。ニッポンがゲームを支配した。個人技の高さと華麗なパス回しを見せたのはニッポンだった。
●俊輔の完璧なフリーキックもすごかったし、その後の遠藤(保)の鏡像のようなフリーキックも惜しかった(バーを叩いた)。ナカタのボレーもあとわずかで入っていたし、高原にもチャンスはあった。
しかしそれ以上に、中盤のパスワークの見事さ、俊輔やナカタのキープ力、プレイの正確さ、開放感溢れるフットボールの楽しさが素晴らしかった。圧巻は後半の俊輔の個人技。左サイドから左足裏を使った「ターン」で相手を交わして切り込んで、流れるようにそのまま右足でシュート。入っていれば伝説だった。しかしこのターンにフランスの観客がどよめくのは当然だ。これを見て不在のジダンの「マルセイユ・ルーレット」を思い出さないフランス人はいない。いやあ、美しすぎる。ジダンはフランスではなくニッポンにいたよ!
●失点は1点目はヴェンゲルがいっていたように不運。稲本のエリア内のファウルをとられてのPK。あれをPKというなら、しょうがない、くれてやる。2点目はこちらのディフェンスのミス。ジーコ・ジャパンになって、トルシエ時代よりディフェンスのミスが目立つ。そしてこれまでもこれからも、トルシエ・ジャパンほど好成績は残せないだろう。でもその代わり、トルシエのもとでは固く禁じられていた、「楽しいサッカー」がある。最後にはいつもの問題に行き着く。フットボールで優先されるのは、ファンタジーなのか、リアリズムなのか。(06/21昼)
June 21, 2003