●「刑務所の王」(井口俊英著/文春文庫)を読んだ。あの大和銀行の巨額損失事件で投獄された著者(「告白」の人っすね)が、アメリカでの刑務所で出会った囚人を描いたノン・フィクションである。おもしろいので、あっという間に読める。
●実はワタシは刑務所物語マニアなんである。小説でも映画でも刑務所ものって聞くと興味16倍増。おかげで映画「ショーシャンクの空に」(原作はキングの「刑務所のリタ・ヘイワース」)みたいな甘口の刑務所話を見ると、「あれあれ、そんなんじゃないだろ、やっぱりそこはインテリの主人公が人気のない用具置き場でマッチョな黒人に羽交い絞めにされて、抵抗できなくなったところをボス格の囚人にたっぷり可愛がられなきゃウソだよなー」などと思ってしまう刑務所観を植え付けられているわけだが、この「刑務所の王」を読むとその種のいかにもな話がフツーにある。フィクションで描かれていた紋切り型の刑務所描写っていうのは、物語上の「お約束」じゃなくて、現実そのものだったんすね。
●ワタシはこれを読んで、ノンフィクションであるにもかかわらず、ピカレスク・ロマンを堪能したような気分になった。元銀行員だが筆力は確か、「告白」よりもさらに読ませる。(08/08)
August 8, 2003