●映画「コンフェッション」を観た。ジョージ・クルーニー初監督作品。実在するテレビ・プロデューサー、チャック・バリスのとんでもない自伝(原書 Confessions of a Dangerous Mind)を映画化したものである。どうとんでもないかというと、テレビのプロデューサーとして数々のヒット番組(日本でいえば「パンチDEデート」とか「新婚さんいらっしゃい」。というかそれらの元ネタっすね)を制作する一方で、実は彼はCIAの工作員として極秘裏にこれまで33人の人間を殺してきた、っていうんである。
●フツー、こんな自伝を書いたらタダの気のふれたジジイとしか思ってもらえないだろうが、なんと映画にまでなってしまった。アメリカじゃこれって真実と思われてるのかねえ。ってのはともかく、映画のほうはなかなかよくできている。元々は「ユージュアル・サスペクツ」のブライアン・シンガーが監督、チャック・バリス役にジョニー・デップの配役だったそうだが企画が頓挫、できあがっていたチャーリー・カウフマンの脚本をジョージ・クルーニーが助け出して、スティーヴン・ソダーバーグとプロデュースし、クルーニー自ら監督をしたということだが、初監督とは思えないくらいそつなくできている。
●工作員チャック・バリスが最初は人殺しに抵抗を覚えながらも、そのうち「殺さずにはいられない」状態に陥るあたり、罪やら欲望やら葛藤やらが渾然となっておもしろい。ところが一方で美しき女スパイとの逸話など、B級スパイ映画のパロディかと思うようなトンデモ系のテイストもあり、さらに少々濃すぎるユーモア・センスまである(この辺が好き嫌いが分かれそうなところ)。どうあがいてもハッピーエンドにはならない話だから、こんなふうに混沌としたスタイルで正解だったのかも。チャック・バリスの才人ぶりとダメ男っぷりがちゃんと描かれているのもいい。観ているこっちも妙に元気になりますね。「さあー、明日も仕事がんばって、ばりばり人殺すぞー」とか(ウソ)。(09/12)
September 12, 2003