November 12, 2003

「憎しみの連鎖」

●スチュアート・カミンスキーの「憎しみの連鎖」(扶桑社ミステリー文庫)を読んだ。シカゴのユダヤ人老刑事エイブ・リーバーマンを主人公とした警察小説で、シリーズ5作目(たぶん)。ワタシはこのシリーズの大ファンで、新刊を見たら必ず買うことにしていたのだが、1月に発売されたらしい本書を完全に見落としていた。小さな(つうかフツーの)書店だと扶桑社ミステリー文庫は置いていないところも多いっすからね。「読みたい読者」と「売りたい出版社」の間を結ぶ糸は細すぎる。
●で、期待通り、すばらしく傑作。大体毎回テーマになるのは現代アメリカの人種問題と家族の問題。今回はイスラム対ユダヤという対立を軸に、アフリカ系、ラテン系、アジア系など様々な人種が交叉するシカゴの街に起きる犯罪と、それに立ち向かう警察を描く……ってところはそれほど読みどころでもなくて、楽しめるのは奥行きのある人間ドラマの部分。主人公もその相棒の刑事もタフガイなんだけど孫がいる程度には老いているってところがミソで、「人間歳をとっても枯れるばかりじゃなくて、いろんな問題抱えながら毎日やっとこさ生きているんだなあ」って感じが味わい深いんである。登場する大人はしっかりと成熟していて、若者はちゃんと青臭く描かれている。そこがいい。シリーズまるごと強くオススメ。(11/12)

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