●イングランドのマンチェスターで行われた親善試合アイスランド代表vsニッポン代表、成果も課題も目新しくはないが、ワタシは楽しめた。アイスランドでは9番のグジョンセンがすべてを備えたスター選手なんだろうが、チームとしてはパワーで押すタイプ。最終ラインでの競り合いになるとニッポンは弱い。開始早々の失点も不運といえば不運だが、いきなりパワーの差というか、競り合いでの弱さを感じさせられて、がっくり。
●が、その後の逆転劇は見事。どちらも小野と久保の絡みから生まれたもので、久保のゴール前での落ち着きを見ていると、日本のアンリかトレゼゲかという頼もしさ。2点目の小野のアシストは軽くアウトにかけながら逆回転気味に出したパスで、魔法だった。
●前半は3バックでトップ下に俊輔。これだけ理想的なポジションでプレイしても俊輔は攻撃力を見せられず。残念。後半は3バックにしたこと以上に選手の入れ替えが大きく、この試合だけを見てシステムの比較をするのは難しい。中澤はニッポンのディフェンスでいちばんパワーに信頼がおけ、いちばん足元の不確かさを狙われる。前半、やたら中澤起点でボールが出てくる機会が多かったのは、相手が中澤にはプレッシャーをかけなかったからなんだと思う。
●結果3-2で勝利、最初はあたふたしたものの、確かにニッポンのほうが質の高いサッカーをしていた。終盤、相手が一人減ってから次々とチャンスをムダにしてしまったのはいただけないが、しばらくの時間帯、攻撃陣が柳沢、鈴木タカ、本山、小笠原で、ジーコ監督も含めてオール・アントラーズ状態になっていたのが味わい深かった。
2004年5月アーカイブ
アイスランド代表vsニッポン代表@マンチェスター
ポルトvsモナコ@チャンピオンズ・リーグ決勝
●うまく時間をとれず、ようやく録画を見ることができたチャンピオンズ・リーグ決勝。ポルトは名門クラブであってもビッグ・クラブではない。モナコは金持ちクラブだがビッグ・クラブとは呼ばれない。こんなフレッシュな対決であるから、失うものなどない、互いに攻撃的でオープンな試合になるのではないかと期待した。
●が、そうはならないんだな、これが。互いにこんな機会がめったにないからこそ、慎重になる。ともにリスクを冒さない、決勝戦らしい試合になってしまった。モナコはジュリが早々に負傷退場したのも痛かった。で、積極性のかけらもない展開の中から、相手ディフェンダーの小さな不幸なミスをついてモナコが先制。その後は得点のアドヴァンテージを活かし、追加点を奪ったとはいえ手順を踏んで逃げ切ったという印象。
●もっともこれはどちらも好感持てるチームだけに、「どっちもがんばれ」的な視点で観てしまったせいかもしれない。他人事として見ればサッカーはつまらない(そうじゃないという方もいるが)。一方への愛、そしてもう一方への(擬似的な)憎悪が、ワタシに欠けていた。
しまった! 許せ、今野
●い、いかん。サッカーU23代表vsトルコ選抜(ってなんだろね)、もう完璧パーフェクト100%その存在を忘れて、中継も見てなけりゃニュースも見てない、自分的にはもはやなかったことにするしか。うう、不覚。でもいっか、テストみたいな試合だし。しかもU23だし。どうせ録画してても観る時間なかったし、それに今晩つうか明日の早朝は、
●欧州チャンピオンズリーグの決勝があるではないか。忘れずにビデオ録画をセットしておくが、これももちろん生放送では見れない(ラ抜き言葉、わざと)。とりあえず本日中は結果バレのメール送るのだけはご勘弁を。しっかり録画設定に抜かりがないことを確認して(ワタシはやたらとビデオ録画失敗率が高い)、攻撃的でオープンな戦いを強く強く期待しながらバタンキュー。
中野、クラシック、オタク
●東京・中野の名曲喫茶「クラシック」はまだ健在だったのかあ(参照:k-tanakaの映画的箱庭、中空庭園)。あの一角だけ、時間が止まっているのかもしれん。古い記憶だが、最初に入ったときには本当に驚いた。なにしろ、コーヒー、音、居心地、すべてが凶悪(笑)。え、どうして、ここ有名なの? ワタシがなにかまちがえてるのかな?みたいな、ものすごい困惑があったっけ。実際、ワタシがなにかをわかっていなかったんだろうけど。
●中野は昔は普通の街だったけど、今や完全にオタクの街で、東の秋葉原、西の中野ってことになっている(と思う)。10年くらい前に「まんだらけ」が北口ブロードウェイに入ってからの変貌ぶりはすさまじく、既存の商店、つまり洋服屋だの食堂だの医者だのが、次々とまんだらけ×号店と化していった。今やまんだらけを核として、他にも同人誌、アニメのセル画、コスプレ、アイドル生写真、なにかすらよくわからないコレクター・アイテムなどが堂々と売られるオタクの牙城である。フツーにメーテルとかラムちゃんのコスプレがショーウィンドウに並んでいて、近隣の非オタク系住人は怖くて近づけない(かもしれない)。もちろんあなたやワタシのようなクラヲタは大丈夫、オタク文化に耐性があるから、ANIME大好き白人が嬉々として買い物しているのを見ても平然としていられるはずだ。
●しかしオタクの街にも弱点がある。やたら夜が早い。これは秋葉原とも共通するのだが、夜8時、せいぜい9時になると、お客は退散、お店は閉店。これは不思議。近くのスーパーマーケットは夜11時とか12時まで開店している。中野は夜になると普通の街に戻る。
読切小声小説「ぁぃιぁぅョゥヵィ」
●
ぁゃぅぃヵヶゃ....ゅぅぅっゃゎ。
ぁぃっ、っょぃヵ?
っょぃゎ。ヮヵぃι、ぁっぃゎ。
ゎι、ょゎぃゎ、ヮヵぃャッ。
ぃっ、ιぁぃιょ?
ョゥヵ、ヵョゥゃ。
ォッヶ-、ぇぇょ。ょゅぅゃ。
ぁ、ぉっゅゎ?
ァヵぃゃっ、ぉぃιぃゎ。ιょぅゅ、ヵヶょ。
ゎι、ぇぇゎ。
ぁι、ヵュぃゎ……。
ゎι、ヶッヵュぃ。
ぁぃっ、ィャゃゎ。
ぇ?
ァィ㌦。ぁゃιぃ。
ヵヮぃぃょ。ぃゃιヶィゃι。ょι、ォッヵヶιょ。
ょぅぃぅゎ。ゥッヶ。
小島芳子さん逝去
●夕刊でフォルテピアノ奏者、チェンバロ奏者の小島芳子さんの訃報を目にした。驚いた。日本の古楽器演奏の分野では知らぬ人のいない存在だったが、まだ43歳である。先日のパーカッションの金田真一さんも同じような年齢だった。あまりにも早すぎる。
●ご冥福をお祈りいたします。
だらだらと不連続にラジオ
●ネットラジオくらいCDの販促ツールとして有効なものはないんじゃないだろか。前にもご紹介したradioio classical、これを聴いているとホントにそう思う。実際、何枚も買ってしまってるし。FM放送と違って、オンラインで購入まで持っていけるところが強い。もうちょっとレコード会社のプロモーション・ツールとして活用されてもいい気がする。逆に言うと「なんという曲の誰の演奏か」がすぐにわかんない局はダメすぎ。ある局なんて、どこ見ても演奏者名がわからなくて、それでクラシック専門局はないだろうっつうか。
●たまにCDを所有しているものをradioioで聴いてしまっていることがある。もちろんPC付属の貧弱なスピーカーでビットレート低そうな、オーディオ・マニアなら悶絶死しそうな音しか出ないわけで、だったらCD聴けばいいじゃんと一瞬思うが、やっぱりそれは反則。
サッカー史、オウン・ゴールNo.1(たぶん)
●あ、ああああああっ、柏レイソルの南雄太、見たですか……。サッカー・ニュースを見てたら、よくわかんない光景が。レイソルのキーパー南雄太がボールを前方に投げる……と見せかけて投げるの止めたのかな、するとスルリとボールが手からこぼれて、あれれ、真後ろに転がってそのままゴールしちゃったよ(滂沱)。えっと、キーパーが後ろにボールを投げてオウン・ゴールした、と。しかもかなり豪快に。ごめん、南、悲劇ではあるがここまで来ると伝説だ。たぶん、これから全世界で何十年にわたって放映される珍プレー。今後、この種のオウン・ゴールはMinamiって名前が付いちゃうと思う、マジで。日本中の草サッカーでマネするキーパー続出必至。ああ、かわいそすぎる、南。でも絶対これからいいことあるから→南。ワールドユースだって決勝まで行ったじゃん。きっと将来、ワールドカップでも活躍できるから、落ち込むなって。すぐに笑い話になるから。
FIFAから02年ワールドカップ功労賞をもらったよ
●「日韓サポーターが功労賞 FIFAが02年W杯で」。なぜ今頃という気もするが、FIFAの創設100周年記念功労賞サポーター部門で、2002年の日韓サポーターに賞を与えた、と。つまり、ワタシたちが受賞したわけっすね。もうちょっと噛み砕いて言うと、「ドイツ大会の何倍もする高額チケットのために仕事を休んで1週間ほど毎日腕がしびれるまで電話をかけ続けて、しかも全部それが話中だったりして、やっとつながって取れたチケットがエクアドルvsクロアチアだったりして、もう全国どこでもどの試合でもいいやと思っているサッカーファンがあまりの電話のつながらなさ具合に討ち死にし、精根尽き果てて泣く泣く弁当つきチケットに何十万も支払ったり、海外の怪しげなチケットを高額プレミア付きで購入したり、しまいにはFIFAの販売システムの裏をかいたトンデモないウラワザを使って本来日本国内在住者は購入資格のないチケットをネットからゲットしたり、開幕するまでチケットが英国バイロム社から送られてこなくて胃が痛くなったり、ポチ名義の申し込みが当選した人がいて身分証明どうなるかと思ってたらやっぱり本人確認なんかなかったじゃねーかよ正直者はバカを見るのかよと世間を知ったり、あまりに不合理な販売方法に発狂して有楽町のFIFAオフィスに行ってガラスを蹴破ったり、開幕しても毎晩徹夜でブラウザ画面をリロードしていつ売られるかわからない余りチケットを探したりして、ついに試合が始まったらごっそりワンブロックとか売り忘れの空席出ててみんなそのむごたらしい仕打ちに号泣した」という、われわれサポーターに功労賞が出たってことだよっ!
●ありがとう、FIFA! よくがんばった、ワタシたちっ!
「KGBの世界都市ガイド」
●前から気になっていた「KGBの世界都市ガイド」(晶文社)をようやく読んだ。旧ソ連のKGB職員、つまりスパイが書いた各国都市案内っていう体裁なんだけど、まあスパイ日記みたいなもので、そりゃもう抜群のおもしろさなんである。ロンドン、ベルリン、ワシントン、東京、リオ・デ・ジャネイロ……。それぞれ都市ごとに書き手は違ってるんだが、共通項はいくつかある。旧ソ連のスパイのみなさんは、みな知性と教養、ユーモアとウィットに富んでいる。実質、裏外交官みたいなもので、人をひきつけることが仕事の第一歩だから。これガキの頃に読むと、「大きくなったらソ連のスパイになりたい」と思う、きっと。
●本書では、例外なくスパイは赴任地の文化に魅せられる。ではロンドンでリュビーモフ大佐の告白を。
イギリスに対する禁断の情熱は身震いするほどで、このたわむれの恋はほとんど背徳の感じすらした。そのとき、イギリスの方へ韻を踏んだ鉛の弾丸が飛んできた。わたしは淫蕩にふけるソーホーの居酒屋、山高帽をかぶり、お定まりの傘を持ったうんざりするような聖職者たち、礼儀正しすぎる猫かぶりのレディたちを意地悪い詩で笑いとばした。
イケてます、リュビーモフ大佐。あと、みなさん逸話好きっすね。拷問博物館に立ち寄って、恐ろしげな蝋人形を見てこうおっしゃる。
それでも過去には善も存在した。死刑囚をラドゲイトから絞首台が心地好く配置されたハイド・パークまでの長い道を連れていき、途中ではより陽気に吊られるようにパブでたっぷり飲ませた。そのうえ、市民は男女を問わずに誰でも犠牲者と結婚を希望すれば死刑囚を解放することができた。
処刑の運命にあったイギリス女性が、見物の群集の中の男から受けた申し込みを、あんな出来損ないと二人きりの生活よりも絞首台を選ぶわと言って拒絶したというケースが有名である。
●しんみりするような「いい話」もあって、「東京」の章など、涙なしには読めない。ワタシゃこれ読んで、もしKGBのスパイからエージェントになってくれと頼まれたら、喜んで打倒米帝のために協力したいと思った。もうソ連なんて存在してないけど。
テリトリー
●いまさらの話だが、ひとさまのブログとか、日記系サイト見ていると、本当に感心するっつうか敬服するつうか、よくもまあこんなに毎日のようにおもしろいことを書けるよなとしばしば思うんである、ネタは無限なのか、あなたは何者なのか、しかもその楽しみ感は少し中毒性含んでて、ワタシにはいくつか「更新してるかな、してるかなー、あー、してねー、10分後にリロードしよ」とか思ってしまうサイトまであり、そこまでいかないとしても更新してくれてたら嬉しいサイトはいくつもある、といってもそれはこのページの右下のリストにあるようなブログ、リンク集に載せたサイトに限っての話であって、ためしにMyblog Japanとかに並んでいるなんの縁もないブログを無作為に選んで読んでみると、これがもう大変なことであって、どいつこいつも退屈死しそうなくらいつまらなく、この落差はなにか、関心空間の違いだけで説明できるとは思えないほどの断崖絶壁、ウソだと思ったら試してみよ、しかしワタシは今見たMyblog Japanの悪夢を忘れることにして、巡回範囲内のあちこちへさらなるリスペクトを捧げることにしてみた、これマジで。
「トンデモ科学の見破りかた」
●「トンデモ科学の見破りかた -もしかしたら本当かもしれない9つの奇説」(ロバート・アーリック著/草思社)を読んだ。似非科学のインチキを暴くような本はいくらでもあると思うのだが、この本の視点はありふれた啓蒙書とはちょっと違っていて、「一見、インチキのように思えるけども、ちゃんと確かめてみると本当かもしれないので検討してみる」というスタンスである。わかりきったインチキ糾弾はおもしろくもなんともないが、インチキ臭い奇説に一面の真実ありって話はおもしろい。検証方法はまっとうな自然科学、統計学の手法に依拠したものである。
●で、その検証の対象となるテーマが「銃を普及させれば犯罪率は低下する?」といった身近な(?)ものから、「未来へも過去へも時間旅行は可能?」というスケール大きすぎるものまで様々なのだが、ワタシは十分に楽しめた。特に一つ、腰を抜かしそうなくらい驚かされた「真実かもしれないトンデモ」があったのだが、どれかは言わない。ネタバレになるので。
●一つだけ残念な点。章立ての順番が違っていたらもっとおもしろかった。序盤が退屈なのである。「とっておきのネタ」は後にとっておくよりも、一番頭に置いて、グワシッ!と読者をつかんだほうがいいと思うがなあ、書籍の場合。
追悼
●作曲家・打楽器奏者の金田真一さんが昨日亡くなったと聞き、愕然とした。老舗サイト音楽実験工房の辛口音楽鑑賞日記が楽しみで、一頃はよく読ませていただいていた。直接お会いする機会には恵まれなかったが、メールでは何度かやり取りがあった。サイト上の日記にはある日突然に始まった闘病生活の様子も記されている。批評精神やユーモアを通して、個人の尊厳、成熟した知性が伝わってくる。死は誰にも必ず訪れるものと定められているが、いつ訪れるかはまったく不定であり、平等性も統計的期待値もあてにできない。金田さんは1960年生まれという若さである。謹んでご冥福をお祈りいたします。
欧州サッカー・シーズン
●欧州のサッカー・シーズン、実質的には今季はもうおしまい。地上波のレッチェvsレッジーナに久々に中村俊輔が先発しているのをちらちらと見ていたのだが、すでにチームで居場所を失っている10番を見ても物悲しさが募るばかり。ケガの問題があったとはいえ、それだけであるはずはなく、チームでいちばん巧いのにチームメイトから信頼を得ていないというのは厳しすぎる。ホント、環境変えて欧州再デビューしてほしい。
●今季はスペインのレアル・マドリッドの試合をかつてないほど見た。もともと王者といえるチームが、フィーゴ、ジダン、ロナウド、ベッカムとスーパースターを毎年一人ずつ加えていったおかげで、ついにこの地球上に存在したこともない史上最高の美しいサッカーをするチームが誕生した。毎試合のようにスペクタクル・ショーを見せてくれて、あまりのスゴさにワタシはなんども大笑いした。あり得ない、この巧さ。
●だが真のレアル・マドリッドの偉大さは、これほどのサッカーをしながら、なに一つタイトルを獲得しなかったというつつましさにある。美の探究に耽っていると、モダン・フットボールでは勝てないという証拠だろうか。それとも「サッカーは守備がヘッポコだと勝てない」という当たり前の事実を証明したにすぎないのだろうか。
「エジプトのヘレナ」
●今年の2月、二期会がR・シュトラウスのオペラ「エジプトのヘレナ」を初演した。これまで録音はあったとはいえ、さすがにこのオペラに馴染み深い方は少なかっただろう。その公演のプログラムに掲載された、野口方子さんのエッセイ「トロイアのヘレナとエジプトのヘレナ」を本サイトに再掲載した。掲載を許可していただいた二期会に感謝。
●野口さんのR・シュトラウス関連原稿がCLASSICAに載るのはこれで4回目で、第1回は97年の日本のウェブ石器時代くらいまで遡る。次々に古いサイトが消え、新しいサイトが生まれる現在のウェブ爆発時代に至るまで、CLASSICAは2~3年に一本の周期でR・シュトラウスの記事を掲載しているわけで、ドッグイヤーの世界における雄大すぎる歴史的連載というか(笑)、彗星みたいに忘れた頃にやってくる天文学的ズレっぷりみたいなところがあって、これはワタシとしてはかなり気分よい感じである。確実に誰もマネできない。
携帯するなら
●プレイステーション・ポータブル(PSP)がついに公開。携帯ゲーム機の必要性なんかまるで感じないワタシでも「うおお、これはっ!」と思う。「PSPなんて要らない」っていう理由をいくつも考えて、自分に言い聞かせておかないと、うっかり欲しくなってしまいそうな危険な香りプンプン。
●いよいよ電機メーカーが参入してきた「電子ブックリーダー」にも、こういう欲望喚起力を期待していたんだが、今のところギミック路線度ゼロで、むしろ活字(とマンガ)の特権性健在なりな空気がなにかとビミョー。実物触ったけど、ソニーのリブリエには「電子機器、技術としてはこんなにもスゴいのに、それでもまだ読めるという実用性を信じられない」ってところで困惑した。
「地獄の黙示録」再見
●「地獄の黙示録 特別完全版」を観た。もともと2時間半あったあの大作が、3時間超で帰ってきた。20年以上前、ワタシはこの映画のオリジナル版を映画館で見ている。当時はあまりにもガキだったので、この作品のほぼすべてを理解できなかった(一方でガキ特有の記憶力によって、ほとんどの場面が鮮明に頭の中に焼き付けられた)。これを大人になった今見ると、どうなるか。
●表面上のストーリーはとてもシンプルである。舞台はベトナム戦争。元エリート兵士だったカーツ大佐が、密林の奥地に自らの王国を築いた。主人公ウィラードはカーツ暗殺という特殊任務を遂行しようと、ジャングルに向かう。ただそれだけの筋がうまく追えなかったのは、自分が子どもだったからに尽きるが、しかし物語の意味は大人の目で見てもやっぱり晦渋で、重層的である。
●神話的な人物カーツ大佐の行動をどう解釈するか。白人が未開社会で王として君臨するという定型に押し込められる物語ではない。戦時という特殊な条理の世界の中で生き残るためには、あらゆる人々が自分だけの条理をゼロから組み立てなければならなかった。カーツは全能性を持った人物であったがゆえに、ゼロから王国を築き、カリスマと狂気、無慈悲さによって人を支配した。だが、今回見て思ったのは、カーツだけがカーツではなかったということ。
●たとえば、あまりにも有名な「ワルキューレの騎行」のシーン。ヘリコプターをヴァルキリーに見立てて、名曲に乗せてベトコンが潜伏する村を強襲する場面。ここで登場するタフガイのキルゴア中佐は、カーツにはなれなかったカーツである。彼も戦場のなかで、ゼロから自分の条理を組み立てた。キルゴア中佐はサーフィンをしたかった。サーフィンをしたいという理由で、ワーグナーをかけながらベトナム人をヘリから襲撃する。しかし傷ついた子どもをどうするかと問われるとヘリに乗せて病院へ運べと命ずる。隊員の元プロサーファーに最大の敬意を払う。敵から攻撃を受けても絶対に被弾しないと信じており、まったく動じることがない。部下からの信頼は厚い。つまり常時であれば奇人であるが、キルゴア中佐はゼロから組み立てた自身の条理によって、彼の部隊という縮小形の「カーツの王国」を築いていたように見える。同様のことは完全版で追加されたジャングルの中に植民するフランス人一族にもいえ、ここにもささやかな王国がある。
●王国を持たない主人公ウィラードは、ジャングルの川を遡り、カーツに到達する。牛の屠殺シーンを挿入しながらの暗殺の場面を経て、ウィラードはカーツから王国を引き継いだ……と一瞬思わせた後、彼は武器を捨ててカーツの王国を後にする。ここも初見ではまったく意味不明の場面だった。ドアーズの「ジ・エンド」が被さって、その歌詞内容からも「父殺し」が示唆され、最悪の通過儀礼とも見て取れるが、むしろ今回改めて印象に残ったのは、強大な父権的存在であったカーツの実像が、案外と矮小であるということだった。ワタシは終幕をウィラードのカーツに対する失望の場面と解した。幻視の王国は現実の狂気と対峙し、崩落したのだと。
P.S.1
今回の特別完全版は初回公開時は見逃したが、なんとか名画座系映画館での上映スケジュールを追いかけ、スクリーンで見ることができた(とっくにDVD出てるけど)。「ワルキューレの騎行」は鳥肌モノ。さらにドアーズの「ジ・エンド」も猛烈に懐かしかった。多感な時期に感動した音楽って、色褪せないものっすね。
P.S.2
この映画、20年前だから訳題が「地獄の黙示録」だったけど、今初公開されたら絶対カタカナでそのまんまだろう。すなわち、「アポカリプス・ナウ」。萎えそ……。
美しい5月
●初夏を思わせるうららかな一日、これぞ圧倒的に正義な5月、こんな日にコンクリートの箱に入って労働している場合ではない、ニッポンの祝日は天気連動制にしてみてはどうかと一瞬本気で考えた、というのはウソ度100%、しかし無慈悲な気象庁は明日から一週間の曇天を東京に宣告してくれやがって、どんより警報発令、対抗して美しい5月を祈るために、ゲーセンに飛び込んでバーチャストライカーのなかに祀られるブラジル9番ロダウド選手のてるてる坊主パワーにすがってみることにする、うらら! 散歩ッシブルな5月よ、だが対面から乱入してきた開幕パターン・ゴールなほぼハメ野郎に妨害されて、0-5のスコアボードに嘆息、軽い失意の中で呪詛の言葉をつぶやきながら、明日に向かって小ヨガファイア。
「西瓜糖の日々」/暗いニュース
●リチャード・ブローティガンの「西瓜糖の日々」(河出文庫)。若者は今これ持ち歩くとカッコよさげです(ウソ、たぶん)。
●アイデス(iDEATH)という死んだような静的な世界がある。そこには穏やかなコミューンがあって、主人公は名前も必要としない。世界の大部分は「西瓜(スイカ)糖」でできているという淡さ。同じ世界の中にインボイル(inBoil)という異質な世界がある。ここには野卑な飲んだくれがいて、暴力がある。両者が微かに対立し、アイデスが残る。これ、どんな風に受け取られているんだろう。これはハッピーエンドではなく、アイデスという静かな世界の残酷さ、救われなさを描いたものとして読んだ。アイデスへの羨望を感じるがゆえに。
ここの太陽のことは、おもしろい。毎日、違った色で輝くのだ。(中略)灰色の日に採られた灰色の西瓜の種子を灰色の日に蒔くと、灰色の西瓜がとれる。そういうふうにやる。
じっさい、じつに簡単だ。日々の色彩と、西瓜の色の関係は次のとおり--
月曜日 赤い西瓜
火曜日 黄金色の西瓜
水曜日 灰色の西瓜
木曜日 黒色の、無音の西瓜
金曜日 白い西瓜
土曜日 青い西瓜
日曜日 褐色の西瓜
きょうは灰色の西瓜の日だ。わたしは明日がいちばん好きだ。黒色の、無音の西瓜の日。その西瓜を切っても音がしない、食べると、とても甘い。
そういう西瓜は音を立てないものを作るのにとてもいい。以前に、黒い、無音の西瓜で時計を作る男がいたが、かれの時計は音を立てなかった。 (ブローティガン「西瓜糖の日々」より)
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●社会や世界との隔たりを感じさせられるニュースばかりだと、ホント、自分ヤバすぎって気になるっすよね。京都府警が Winny 開発者を著作権違反幇助容疑で逮捕。ワタシには開発者が逮捕される理由がまったくわからない。
スタジアムに来たのは誰か
●Jリーグの「観戦者調査報告」というのがおもしろい。この統計を見てるといろんなことがわかるんだけど、まずは年々観戦者の年齢が順調に上がっていて喜ばしい。Jリーグは若者文化としてスタートしたので、ファンが離れなければ(=10代、20代で見始めた人が20代、30代になっても観戦を続けていれば)こうなって然るべき。リーグ平均は33歳。男女比は6:4でほぼ固定。これは欧州でも南米でもあり得ないような女性率の高さ。
●同伴者の項は見もの。クラブ別の事情の違いがよく出ている。友人・カップル率が高く、ファミリー率が低いガンバ大阪、京都、その逆にファミリー率が高く友人・カップル率が低いのが清水、仙台。おおむね地方の中核都市はファミリー率が高く、東京・大阪は低い。
●極端な違いが出たのは「一人観戦率」。仙台4%、新潟5.5%、大分6.5%、川崎0.0%。このあたりじゃ一人観戦は変わり者である。「お前、友達いないのか」とか言われそうだ(笑)。が、J1ではヴェルディ東京20.6%、J2ではFC横浜26.0%がそれぞれトップ。ここらじゃ一人観戦なんて当たり前の世界である。都会者は孤独なのか、人と交わるのがメンドくさいのか。いや、山形24.9%、鳥栖23.1%という数字もある。なんでだろ? ワタシは人と観戦するのも一人観戦もどっちも好きだが、楽しむポイントがそれぞれ違う。
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●チェロ奏者のボリス・ペルガメンシコフ氏が逝去。驚いた。まだ55歳だったというではないか。日本ではN響との共演でよく知られていたと思う。ご冥福をお祈りします。
審判のスライディング・タックル
●ナイキのCMって毎回ホントにスゴい。今放映しているブラジル代表vsポルトガル代表バージョン、見たですか。こりゃ、サッカー・ファンの夢だよね。選手入場直前、両チームの選手が入場待ちしているところで、ロナウド、ロベルト・カルロス、フィーゴがふざけてお互いを挑発したら、そのままボールの奪いっこに熱くなって、ロナウジーニョやらみんな超絶技巧見せまくりの全員サッカー小僧化。ボールがスタジアムの外に出たら、なぜかそこにトッティがいて、ボールをリフティングした後で蹴り返してくれたりするのも気が利いている。で、そのままの勢いで本気でピッチ上でじゃれあっていたら、審判がスライディング・タックルを食らわして(笑)、試合開始を促すと。
●国歌斉唱の頃にはロナウドもロベルト・カルロスも顔がすでにあざだらけになってて、これぞサッカーの原点みたいなファンタジーがある。逆に言えば、マーケティング主導で徹底的にビジネス化された現代サッカーの世界で、スターたちが無邪気なサッカー小僧に立ち返ることなどあり得ないことをみんな承知しているわけで(しかもそのスポーツ・ビジネスの先端にあるのが当のナイキ)、失われたものを失わせた側が虚構で描いているという複雑な味わいがある。
●それにしても「審判のスライディング・タックル」なんて絵を思いついたこの映像作家は天才っすね。
名刺自動販売機
●っていうものを新宿駅で見かけた→名刺自動販売機。調べてみると、新宿だけじゃなくてあちこちに置いてあるらしい。30枚で1000円。「こりゃ突然名刺が切れたときに便利だ!」とは思わなくて、誰が使うんだろうかこれは、いったい。しかし2回見かけて、2回とも誰か使っていたから、実はフル稼働してるんじゃないかとの疑い。
●「トリビアの泉」でサティの「ヴェクサシオン」とかケージの4分33秒が紹介されたそうである。ワタシはサッカーと音楽関係以外でテレビを見ることはないので、「トリビアの泉」も一度も見たことがないのだが、こういうときにちょっと悔しい。
駄曲名盤の夢
●名曲名盤ならぬ「駄曲名盤」。これぞ夢と憧れ、男のロマン(笑)。だってスゴいっすよ。クラシック音楽なんてものは淘汰された後に残ってるものなんだから、名曲ばかりなわけだが、そのなかからわざわざつまんなさそーな曲を掘り出して、しかもそいつを猛烈に立派に演奏して名盤に仕立てちゃう。そんな指揮者や演奏家には駄曲王として讃えられる資格がある(讃えられたくないだろうけど)。
●で、そのためにはまず有名駄曲作曲家が必要なわけである。バッハのように高品質な曲ばかり書いてたり、モーツァルトみたいにそれなりの作品にも天才性がうかがえたりする人はダメ。その点、ベートーヴェンは立派である。「ウェリントンの勝利」とか、ぞんざいに扱われがちな作品が結構ある。で、このオラトリオ「オリーヴ山のキリスト」を聴いたんだが、これはかなりツボ突いてくれた。ケント・ナガノ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団はとっても立派な演奏してくれてて、なぜかドミンゴまで共演してて、でも曲が「オリーヴ山のキリスト」。
●なんだか聴いてて、ちょっと「フィデリオ」を髣髴させるところがある曲なんだけど、でもそもそも「フィデリオ」だっていくつか最強にすばらしい場面を除くと全体には駄曲っぽい雰囲気漂ってて、あくまで髣髴させるのはその最強場面以外であって、そのあたりの冴えなさかげんが味わい深い。でもCDとしてはずっしり聴き応え大ありなわけで、すなわちケント・ナガノ偉すぎ。かつて「ウェリントンの勝利」をウィーン・フィルと本気で録音してしまったロリン・マゼールと同じくらい、駄曲王。
●あと、Hybrid SACDと書いてあるCDがフツーのCDで再生できるかどうかイマイチ自信なくてドキドキしてしまった自分はズレすぎ。もちろん再生できる。
FC東京vsマリノス@Jリーグ
●5月2日の試合を今頃ビデオ録画で見ているのだが、なかなか悲惨な試合だったようである。味スタ。0-2でアウェイのマリノスが勝利を収めたと知った上で見た。内容的にはかなり厳しく、しかし相手も同じくらい厳しくて、奥のフリーキックからのゴールを除けば凡戦度かなり高。開始早々に土肥のミスでアン・ジョンファンの先制点が入ってしまうという、サッカーで一番見たくないシーンあり。FC東京がいくつもあった決定機をはずしたためにマリノスが勝ってしまったが、なんだか申し訳ない気になる。
●主審の活躍にも参った。後半途中、リードされているFC東京から三浦フミタケが退場に。すでに1枚イエローもらってたんだから、口頭での警告ですませてほしかった。ホーム側が2点負けてて、しかも交代出場して入ってきた選手なんだから、その辺は臨機応変でいいじゃないっすか。お客さん、たくさん入っていたんだしさ。おかげで試合がさらにつまらなくなってしまった。
●マリノスは松田、中澤、ドゥトラというディフェンス・ラインのレギュラーを3人欠いていたが、それでも河合、那須、中西で3バックを組めるところがスゴい。河合は相変わらず技術ではなく魂で守っていた。久保は休養。久保とアンを併用できないというのは大問題だが、交互にローテーションで出せば週に2試合を乗り切れる。久保&清水組とアン&坂田組。欧州のスカッド・ローテーション・システムみたいっすね。
CG90%未使用!
●あるアクション映画のCMで見かけたんである。
CG90%未使用!
この思い切りの悪さは何か(笑)。つーか、狙ってるのか。合成着色料90%未使用!ってのはどうか。
でっきないかな♪ 第2回
●♪でっきないかな、でっきないかな、はてさてふふ~(♪はてふふ~)
♪でっきないかな、でっきないかな、はてさてふふ~(♪はてふふ~)
ゴソ太くん「フガァ! フガァ!」
のっぱさん「……」(ガチャガチャ)
のっぱさん「……」(ショ~リュ~ケン!、ショ~リュ~ケン!)
声「あれー、のっぱさん、なにやってるのかなあ~。あー、のっぱさん、昇竜拳出してたんだー」
ゴソ太くん「フガァ! フガァ!」
のっぱさん「……」(ガチャガチャ)
のっぱさん「……」(ブンブン!)
声「……」
ゴソ太くん「フガァ! フガァ!」
のっぱさん「……」(ガチャガチャ)
のっぱさん「……」(ブンブン!)
声「……」
のっぱさん「……」(ガチャガチャ)
のっぱさん「……」(ブンブン!)
声「あー、のっぱさん、左向くと昇竜拳出せないんだー」
ゴソ太くん「フガァ! フガァ!」
のっぱさん「……」
声「……」
ゴソ太くん「フガァ! フガァ!」
声「……続きはまた来週だよー!」
♪でっきないかな、でっきないかな、はてさてふふ~(♪はてふふ~)
♪でっきないかな、でっきないかな、はてさてふふ~(♪はてふふ~)