●名曲名盤ならぬ「駄曲名盤」。これぞ夢と憧れ、男のロマン(笑)。だってスゴいっすよ。クラシック音楽なんてものは淘汰された後に残ってるものなんだから、名曲ばかりなわけだが、そのなかからわざわざつまんなさそーな曲を掘り出して、しかもそいつを猛烈に立派に演奏して名盤に仕立てちゃう。そんな指揮者や演奏家には駄曲王として讃えられる資格がある(讃えられたくないだろうけど)。
●で、そのためにはまず有名駄曲作曲家が必要なわけである。バッハのように高品質な曲ばかり書いてたり、モーツァルトみたいにそれなりの作品にも天才性がうかがえたりする人はダメ。その点、ベートーヴェンは立派である。「ウェリントンの勝利」とか、ぞんざいに扱われがちな作品が結構ある。で、このオラトリオ「オリーヴ山のキリスト」を聴いたんだが、これはかなりツボ突いてくれた。ケント・ナガノ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団はとっても立派な演奏してくれてて、なぜかドミンゴまで共演してて、でも曲が「オリーヴ山のキリスト」。
●なんだか聴いてて、ちょっと「フィデリオ」を髣髴させるところがある曲なんだけど、でもそもそも「フィデリオ」だっていくつか最強にすばらしい場面を除くと全体には駄曲っぽい雰囲気漂ってて、あくまで髣髴させるのはその最強場面以外であって、そのあたりの冴えなさかげんが味わい深い。でもCDとしてはずっしり聴き応え大ありなわけで、すなわちケント・ナガノ偉すぎ。かつて「ウェリントンの勝利」をウィーン・フィルと本気で録音してしまったロリン・マゼールと同じくらい、駄曲王。
●あと、Hybrid SACDと書いてあるCDがフツーのCDで再生できるかどうかイマイチ自信なくてドキドキしてしまった自分はズレすぎ。もちろん再生できる。
May 6, 2004