June 1, 2004

「パレード」 吉田修一

パレード●あちこちで評判よさげなので、文庫化された吉田修一「パレード」(幻冬舎文庫)を読む。第15回山本周五郎賞受賞作。登場人物は東京・千歳烏山の2LDKのマンションに暮らす5人の若い男女。家族でも恋人でもないんだけど、成り行きでともに仲良く暮らしている。学生、無職、会社員、みんな適当に快適で稀薄で、まあまあ幸せなような不幸せなような日常を送っていて、絵に描いたようなイマドキの若者たち。
●が、日々は淡々と過ぎていて、表立って何もおきないのだが、読み進めるうちに登場人物5人全員が「壊れている」ことに気づく。本当は全員不幸で全員大きな問題に直面しているにもかかわらず、みな一様に苦悩する自我というものを欠いていて、空気みたいな日常にすすんで埋没してしまっている。5人とも仲がよく、面倒見もいい、それぞれに友達もいて、恋人もいたりいなかったりで、充足しているように見えて、誰もが孤独。フツーすぎる若者という外見と、壊れた人という内面がなんの問題もなく一人物に同居できてしまうという怖さには、リアリティがある。この危なっかしさとは20代そのものっすね。ああ、生きるって大変だね、若者も。
●5人の登場人物を5つの章で、視点を変えながら一人ずつ描いているのだが、後に出てくるほど重症で、仕掛けが巧い。短いので一気読みが吉。オススメ。

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フジの月9ドラマ「東京湾景」の原作者、 吉田修一の出世作とも言える作品である。 発売直後から各紙誌の絶賛を浴び、 彼は本作で第15回山本周五郎賞を受賞。 人気を不動のモノにした。 そして、後の「パークライフ」での芥川賞受賞に つながっていくわけであ... 続きを読む

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