●先週末にNHK-BSで「バイオリンの芸術」が再放送されていた(DVDでの題は「アート・オブ・ヴァイオリン」)。改めて見たけど、やっぱりこれっておもしろいっすね。モンサンジョン制作のドキュメンタリーはみんな質が高い。
●海外盤DVDではArt of ViolinのタイトルにDevil's Instrumentの副題が付いているようだが、これは本当に痛感した。ヴァイオリンくらい悪魔的な楽器はない。パガニーニのイメージのせいもあるが、このドキュメンタリーに登場する数々の名ヴァイオリニストの映像を見ていると、みなテクニックなんかとは別の部分で人間離れしていると思ってしまう。
●「電話ボックスで弾いているみたいだ」って言われたのはシゲティだっけ。長身痩躯で貴人の風格でヴァイオリンを自在に操ればそれだけも十分悪魔風だ。ミッシャ・エルマンは水木しげるのマンガに出てきそうで、悪魔を超えて妖怪風。ハイフェッツは機械でできているみたいでメカデビルと呼ぼう。右腕の運動速度が光速を超えていそうな感じだ。メニューインは悪魔じゃなくて神の子、天使、実に神々しい。オイストラフは土の香りがプンプンしてて、体からなにか芽吹いてきそうなくらいの大地の精、巨人。伝説クラスの巨匠はみんな人ではない何かになっている気がする。
●ピアノだと人が作った機械だけど、ヴァイオリンは弾いているうちに人間と楽器が合体しているような雰囲気がある。名刀ならぬ銘器に魂宿るで、弾きこむうちに人間が楽器を弾いているんじゃなくて、楽器が人間に弾かせているんじゃないか、みたいな。映画「レッド・ヴァイオリン」をちょっと思い出した。もっとも、これはやっぱり巨匠の映像だからそう思うわけで、現代の名手に同じような悪魔性を感じるかって言われるとビミョー。
June 8, 2004
ヴァイオリン、悪魔の楽器
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