●この試合、おもしろかったか。確かにおもしろかった。この試合、つまらなかったか。確かにつまらなかった。ドラマティックな瞬間、活躍するポストとバー、卓越した個人技、歓喜と落胆、その一方で消極性と疲労、ゴールなき120分間があった。
スウェーデン 0-0 オランダ
Ex.Time 0-0
PK 4-5
●攻めるイブラヒモヴィチと守るスタムを見ればわかるように、ともに欧州屈指の大型チーム。お互いにパワーというサッカーにおける基本的な優位性があって、なおかつ技術やセンスのある攻撃のタレントを持ち、しかもオープンな戦いをしようというスピリットがある。だから2-3くらいのスペクタクルを期待していたのだが、特に前半は慎重な試合で、中盤のつぶしあいに終始した。
●後半からはチャンスも増えた。しかしオランダが持ち前の攻撃的なポゼッション・サッカーを放擲して、ロッベンらの個々の能力に頼ってしまったため、ゴールは遠い。先日のチェコ戦でも感じたが、オランダのアドフォカート監督の采配は慎重である。ダーヴィッツをベンチに下げてコクに上がり目のポジションを取らせるなど、「これからさらに消極的な試合をしますよ」と宣言しているようなものである。たとえブラジルが相手でも点を取り合って勝ってみせようとするのが本当のオランダだと思うのだが……。疲労が試合からスペクタクルを奪ったのだと希望的に解したい。
●スウェーデンは2002年のW杯でもそうだったように、強いチームである。今も強いし、以前から強かった。ブロリン、ケネット・アンデションらを擁した94年アメリカ大会では3位(この大会ですでにラーションは出場している。ドレッド・ヘアの快足フォワードだった)。この日だってスウェーデンが勝っていてもおかしくなかった。優勝していたとしても驚かない。交代出場したシェルストレムをはじめ、若い才能に恵まれているので、いずれさらに強くて楽しいチームになるかもしれない。
●PK戦、リュングベリの蹴ったボールがポストに弾かれ、それがファン・デル・サルの背中に当たってゴールに入ったときには、つくづくファン・デル・サルの運のなさに同情した。つられてか、精神的支柱のコクがはずしてしまう。これでオランダは負けるだろうと思ったが、そうならなかった。いつも仲間割れを起こしている集団が一致団結したことへの神様からのご褒美だろうか。