●試合前、あらゆるドラマが開催国の優勝という、もっとも劇的でハッピーな瞬間へと向かっていたように見えた。これでポルトガルが優勝しなくてどうする。フィーゴ、ルイ・コスタら黄金世代の最後の大会、しかも開催国、チャンピオンズ・リーグのポルト優勝に続く偉業「ポルトガル・フットボール・イヤー2004」……。でもダメだった。サッカーに予定調和はない。楽しくて美しいサッカーは散った。
ポルトガル 0-1 ギリシャ
●新欧州チャンピオンのギリシャは、これまでユーロでもワールドカップでも一度も本大会で勝利がない。誰一人ギリシャの優勝なんて予想できなかっただろう。ギリシャを率いるのは大ベテランのドイツ人レーハーゲル。奥寺さんブレーメン在籍時代の名監督で、ワタシはこの人がまだ現役だとは知らなかった。で、レーハーゲルは20年位前のサッカーを今でもやっている。参加国中唯一、マンマークの守備を敷く。マーカー+ひとり長身のデラスをあまらせる。攻撃はシンプルで、サイドからクロスボールをしつこく何度でも入れる。まいったね、こりゃ。モダン・サッカー、くそくらえみたいな古典派である。偉大なドイツ人マイスターが教えてくれたのはこういうことだ。「サッカーはスタイルで勝ち負けが決まるのではない」。優れたものはいつの時代でも(それを極めさえすれば)優れている。
●「いま世界で勝つためには×××が必要」みたいなキーワードを呪文のように繰り返してきた人たちは、どうすりゃいいのさ。現にギリシャが勝っちゃったんだから。レーハーゲルなんて、下手したらこのままドイツ代表監督に呼ばれちゃう。
●ギリシャは優勝に値するチームだった……そりゃ優勝したんだから。楽しさ、美しさはない。規律と根性、情熱がある。ギリシャこそ現代の「ドイツ」だ(涙)。