●最近の野球界のニュース聞いてると、すごいっすね。合併だとか1リーグだとか、オーナーの話し合いで何でも決まるところが。ファンの幻想なんてものを受け入れる余地がまったくない興行の論理で物事が進む。Jリーグだって興行にちがいないんだけど、野球に比べるとサポーターに幻想を持たせてくれる(ビジネス規模が小さいから可能なのかもしれんが)。
●で、新潟である。昨季、2部リーグにいながらJ全チーム最高の集客力を誇ったアルビレックス新潟は確かに「現象」だった。スタジアムだけでなく、新潟市内いたるところがオレンジ色に染まっていた。ホームタウン幻想が強固な現実を生み出した一例だと思う。
●「ニイガタ現象 日本海サッカー天国の誕生をめぐって」(「サッカー批評」編集部/双葉社)はそのアルビレックス新潟という現象をさまざまな角度から論じている。大学の先生の分析よりも、断然、現場の人間の話のほうがおもしろい。たとえばゴール裏の住人。
H:ウチと(ベガルタ)仙台には、いろいろとあるんです。
A:99年も、00年も新潟より下だったんです。なんで、こいつらがJ1に上がるのかという意識もある。(中略)以前、仙台サポーターとサッカーやったんです。結果は、ウチらの圧勝だったんですけど、向こうは全然認めない。
H:「木澤カップ」だね。木澤っていう選手は、仙台戦で何かと因縁があってね。退場も何度かあった。それで、向こうが「木澤カップ」やろうって提案してきた。呼んでくれた人は、物腰柔らかだったんだけど、実際の試合には武闘派が出てきて大変だった。声と態度のでかさで勝負してくるんだから! さらに向こうは天童よしみのCD持ってきて、試合中にガンガン流す。一昔前のイラン対イラクの試合みたいな雰囲気でしたよ。
●プロ野球のオーナーには想像もつかない世界だと思う、このサポーター間で試合して決着つけようみたいなロジックは。
------
五輪を前に「山本昌邦備忘録」が文庫化。トルシエ・ジャパンを振り返るために必読。