●あー、テレビつけたらたまたま映画「さらば冬のかもめ」(ハル・アシュビー監督、1973)が放映されてて、すっかり見入ってしまった。アメリカン・ニューシネマの傑作(とどこにでも書いてある)。この写真、若い頃のジャック・ニコルソンなんだけど、ほぼ同時期の「ファイブ・イージー・ピーセズ」でムンムンとフェロモン出しまくってたのと同じ人とは思えない。口も品行もよろしくないけど情の厚い海兵隊員って役柄。
●どういう話かというと、万引未遂という小さな罪で8年の実刑をくらってしまった気の毒な若い水兵がいる。そいつをジャック・ニコルソンはじめ二人の海兵隊員が遠く離れた刑務所まで護送するというロード・ムービー。
●万引水兵はまだ18歳で、ろくに人生の喜びも知らない。こんな無垢ないいヤツが18歳からの8年を刑務所で失うとはなんたる不条理、三人は旅をしながら、友情を深め、ハチャメチャに遊ぶ。刑務所に入る前日には売春宿にまで連れていって、女を教えてやる。気の毒だ、できるもんなら逃がしてやりたい、でもそんなことできるわけない。なんとかしてやれんのか、募金箱から40ドル盗もうとしただけだぞ、この若造は……。
●で、最後にどうなるか。これはもう結末は決まっている。今の大作映画だったら、ご都合主義でハッピー・エンドもありうるかもしれないが、これは古いシンプルな映画なので、主題に沿った結末しか訪れない。つまり、理不尽にも刑務所に入れられてバッド・エンドを迎える。これは旅をして酒を飲んだり女を知ったりしながら、最後には不条理を受け入れる(=コドモが大人になる)という物語だから、これ以外の結末はありえない。護送中はあれだけ葛藤していたのに、刑務所での引渡しはあっさり事務的に終わるところなんて絶妙。
July 13, 2004
さらば冬のかもめ (ハル・アシュビー)
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