●4人連続して相手のPKを止めた(ないしは失敗させた)ゴールキーパーなんて、見たことがない。一人目と二人目のキッカーが失敗してPK戦に勝ったチームというのも記憶にない。川口能活は今大会で再びニッポン代表の正GKに返り咲いた。逆境に立つと異様な力を発揮する。川口が神のように見えた……が、サッカーの神様は最初からニッポンのベンチにいるではないか。
●ジーコの采配に批判が集まるのは当然で、とにかくどんなに暑くて日程がつまっていても、レギュラー選手を固定する。すでに決勝トーナメント進出を決めていたグループリーグの第3戦ですら、固定メンバーで戦った。いくら「勝っているときはチームをいじらない」が基本原則とはいえ、試合ごとにどんどんと選手のコンディションは下がっていく。試合中も手を打たずに、選手に任せる。プレ・モダンな監督である。
●しかしワタシはジーコを批判する気になどなれない。選手としてあまりにも偉大だったので、ニッポンのベンチにいてくれるだけでも奇跡のように思える(不合理な話だということは承知)。さらに、ジーコは人格者である。試合後にジーコが以下のような談話を残しているのだが、これは嬉しかったし、ワタシはこういう考え方がとても好きだ。
今日のPK戦のときに相手の選手は、われわれが外すたびにおどけてみたり、自分たちの勝利をアピールしたりしていた。あれはやってはいけないこと。わたしも絶対自分のチームにはやらせない。互いの尊重あってこそのスポーツ。その結果、彼らは家に帰らなければいけなくなった。(ジーコ)
怪しげで反スポーツ的な大会に堕ちつつある China2004 のなかで、サッカーの尊厳が守られた瞬間である。仮に次のバーレーン戦でニッポンが負けたとしても、今大会の代表に対しては十分誇らしい気分になれる。