●「片付けない作家と西の天狗」(笙野頼子著/河出書房新社)、この美しい装幀はどなたであるかと確かめるとミルキィ・イソベ。さすが、美しい。美しい本に、美しい日本語。
特にどうしようもなかった居間と仕事部屋の床が入居当時のままの色で、傷ひとつなくあらわになっていた。それらは越してまもなくから三年以上も私が散らかした、紙や布やバッグに覆われていたため、片付け後は「未入居」同然の状態で出現したのだった。積もりに積もった埃と猫毛の中には何年か前の雛祭りに飾ったドライフラワーのような桃の蕾と、それについていた芋虫のミイラが混じっていた。
●これには魔窟王を自認するあちこちのヲタクの王様たちも敵うめえ。
またそのあたりで台所の床の洗ったガラス瓶の間から覗いていた土の固まりが、二年前のじゃがいも一個であると気付き、というより思い出して植木鉢に入れた。台所の床には瓶を入れたザルと野菜を入れた籠位しか置いてなかった。そしてザルと籠の間にそれは眠っていた。
じゃがいもの事は一年半位はずっと気にしていた。毎日毎日神経質に気にして、そしてああ、と落ち込み放っておくのである。
●おお。えっ、バッチい? うーん、でもいいっすよ、あ、掃除と猫の話ばっかじゃなくて、純文学だから。生きるのって大変。