●映画館で「バットマン・ビギンズ」。なんと、「メメント」や「インソムニア」のクリストファー・ノーランが監督。ってことで非常に期待していたのであるが、予想よりはフツーに「バットマン」、でも楽しめた。クリストファー・ノーランってことを意識しなければ十分に斬新だったかも。「スパイダーマン」と大雑把に言えば同じ話で、無力な若者が変身して大きな力を得る、恋人は幼なじみ、カッコいいギミックなど、男のコの願望世界そのものが全世界の善と悪の対立にまで拡大されている。って、アメリカンコミックなんだから当然か。
●ただ「スパイダーマン」と違うのは主人公の出自。「スパイダーマン2」では主人公は家賃を滞納しながらアルバイトとヒーローのかけもち生活に苦悩する。バットマンはとてつもない大金持ちの御曹司で、その場の思いつきで小切手を切ってホテル一軒まるごと買収したりできる。忠実な執事もいて的確なアドバイスまでくれる。いいなあ、バットマン家。ワタシも側近にほしいぞ、執事とか天才発明家とか。
●バットマンに莫大な財産を遺した亡父は、生前、貧者にも救いの手を差し伸べようとした篤志家でもあった。しかしバットマン家の極端な富の集中は、ゴッサム・シティに広がる荒廃したスラム街の裏返しとして存在してるわけで、これで弱きを助けようってのはかなり自己矛盾的な気もするんだが、そこはそれ、コミックのお約束、少年の夢だから必要であって、むしろ潔く正統派ヒーロー映画って気がする。「スパイダーマン2」のほうがおもしろかったけど、あれは青春映画の楽しさなんだろうな。
以下に続く: 「バットマン・ビギンズ」のオペラ場面