●映画館で予告編を見て以来、激しく気になっていたのだが、結局ビデオで鑑賞。ノルウェー/スウェーデン映画の「キッチンストーリー」(ベント・ハーメル監督、作品紹介@映画生活)。設定が可笑しい。スウェーデンの「家庭研究所」が「独身男性のキッチンでの行動パターン」を観察しようと、ノルウェーの老人のもとに調査員を派遣する。調査員は老人のキッチンの隅に、テニスの審判が座るような椅子を置いて、ずーっと黙って老人を観察する。調査員は調査結果に影響を与えないように、調査対象の老人とのコミュニケーションを一切禁じられている。
●ヘンな話っすよね。でも人間はコミュニケーションせずにはいられない動物だから、最初は頑なにルールを守っていても、だんだんお互いのことを知り合うようになり、友人になっちゃう。途中、ノルウェーとスウェーデンの違いみたいなのが何度もネタにされるんだけど、このあたりはワタシには全然わからなくて、たとえば車線が右側通行と左側通行で違ってるのが、どうしてそんなにおもしろいのかピンと来ない。でも現地じゃ大ウケなのかも。
●この映画、若い女の子向けに「ビバ!スローライフ、田舎の素朴な暮らし礼賛!」って売られ方をしてたみたいだけど、そんな要素はまったくないと思う(舞台は1950年代なんだから、世界のほとんどはスローライフだろう)。暖かい話だけど容赦のない話でもあって、家族と死別したかもともと独身なのかはわからないけど、孤独な老人が独り暮らしをしていて、そこにやってきた中年の調査員もやっぱり独り身なんである。独りの人間が晩年をどうやって幸福に生きるか/そして幸福に死ぬか、っていうのを現在進行形の老人とその予備軍の中年の視点からユーモラスに描いている。老人と男の関係は友情なんて微温的なものじゃなくて、崖っぷちで生きる人間同士の命綱であって、「スローライフいいわ~、おじいさんかわいいー」とかぬかしておる場合ではない。
August 30, 2005
「キッチンストーリー」(ベント・ハーメル監督)
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ゆっくり、ともだち お薦め度:.★★★☆. 可愛いノルウェーの田舎のおじいちゃんのお話。今ならビデオカメラを設置すればいいだけのお話なのですが、それを人間の調査員をわざわざ派遣する。こういったレトロで非効率な†... 続きを読む