September 27, 2005

映像で見る、カラヤンのベルリオーズ

カラヤン 幻想交響曲●む、今週のNHK-BS2「クラシック倶楽部」(←この「倶楽部」ってどうにかならんか)は珍しく古い映像をやっているではないか。どれもDVDで見れると思うが、未見の方にはオススメで、昨日はカラヤン指揮パリ管弦楽団のベルリオーズ「幻想交響曲」。カラー映像/モノラル音声、EMIからDVD発売済だが、未見だったのでこれを機に堪能。
●なにしろスタジオ収録なんすよ。オーケストラのスタジオ録音すら減ってきている今時からすると、1970年当時はクラシック音楽の映像媒体にかける夢みたいなのがスゴく大きかったのがわかる(少なくともカラヤン的には)。演奏会を撮るのとは対極で、スタジオで照明とかカメラワークの演出をきちんとやって、「芸術作品」として映像を撮る。結局そんなやり方は受け入れられなかったことを2000年代のワタシらは知っているが。
●で、ワタシはカラヤンは20世紀最大の指揮者だったと思っているし、いまだにその録音を聴くのが猛烈に大好きなのだが、それでも感じるのは「カラヤンの録音はちっとも色褪せないのに映像はことごとく古びている」ってこと。あまりに古びていて、ここでのカラヤンの指揮姿が戯画的に見えるんである。なんというか、クラヲタの指揮マネ芸みたいな印象。これは栗田貫一がルパン3世役の声優をやっているという倒錯的な現実に近い。この映像を見ててもすべてが作り物、演出過多なので(カメラワークだけじゃない、カラヤンの表情すらも)、カラヤンの指揮棒に反応してオーケストラが鳴っているという気がまったくしない。別収録の音声に合わせて、みんなで演奏しているフリしてるでしょ、みたいな。1970年にはそこまではやってないと思うが、そんな感じ。
●だってずっと目をつぶって指揮してるんすよ。目をつぶったまま、深刻ぶった表情を見せたり、ちょっと和らいだ顔つきになったり、この意識の過剰さは「瞑目のカメラ目線」って言ってもいい。それに生前はこの帝王ぶりをみんなで自然と受け入れたけど、今になって考えると、目を閉じて指揮するなんて、やっぱりありえない。ワタシがプレーヤーだったら、そんなコミュニケーションを拒絶するような不気味な指揮者はイヤだ。
●あと映像演出。たとえば「ワルプルギスの夜の夢」だと、赤い照明をバックに、カラヤンに強い逆光を当ててみせたり、オーケストラのプレーヤーを完全にシルエットだけにして浮き上がらせたりとかする。想像だけど、1970年時点ではカラヤンじゃなくても、こんなふうに曲調と同期させた映像演出をしようっていう考え方はさほど妙なものじゃなかったんじゃないか。でもこれはもうムリ。映画やドラマで主人公の不安な胸中を表現するために、高い木に止まったカラスが「クァー、クァー」って鳴くシーンを挿入するとかいうのと同じで、視聴者はあまりのダサさに逃げ出したくなる。
●あれ、なんか悪口書いてるみたいだな、これ。「だからカラヤンはカッコいいのだ」っていう話を書くつもりだったのに。まあいいか。カラヤン超オススメなり(←なんだその投げやりな賛辞は)。
●DHCさんのFROM 40にて「オトナのためのクラシック音楽入門」第6回掲載中。よろしければ。

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