December 5, 2005

ブラザーズ・グリム(テリー・ギリアム)

●テリー・ギリアムの「ブラザーズ・グリム」、今週中には終了してしまいそうなので、あわてて映画館へ。19世紀、フランス占領下のドイツが舞台。主人公はグリム兄弟なのだが、童話作家ではなくインチキ魔物狩りで生計を立てるペテン師。しかし彼らが本物の魔物や魔法が支配するおとぎ話的世界に出会うというファンタジー。テリー・ギリアムの映画となると、永遠の名作「未来世紀ブラジル」をつい期待して見てしまうんだが、同じ映画が二度作られるはずもなく、少し予想したものとは違っていたという印象が残った、映画館を出たときは。おもしろいことはおもしろいんだけど、ブラックな味わいが薄いし(あることはある)、ユーモアにもさらに切れ味があってもいいんじゃないか、エンディングももっと暗いほうがいい、とか。
●でもそんなことないな、やっぱり。後から思い起こすと完璧に傑作、もう一度見たくなる。グリム兄弟の兄がリアリスト、弟が夢想家というのは、テリー・ギリアムが加えた脚本になかった設定なんだそうだけど、おかげで弟視点の物語が魅力的なものになっている。ここでは魔法ってものにきちんと敬意が払われている。魔法は呪文ひとつでかけることができたりしないし、この世に所与のものとして存在してたりはしない。それどころかグリム弟は魔法なんか信じたばかりに、少年時代に大切な妹を失っている。でもペテン師を続けながらも本物の魔法を待望し(ずいぶん倒錯的だ)、ついにこれに出会う。魔法は強固な信念からしか生まれず、時にそれは容赦なく代償を要求する……っていうのがいいんだよなあ、魔法モノの話は。魔法なんてどこ探したってないんだけど、でもこの世は魔法に支配されているんだから。
●登場人物の中ではパルマ出身の拷問の大家カヴァルディがかなり素敵。

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