●もうすぐクリスマス。となれば、チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」が定番。ところであなたは「くるみ割り人形」の筋を言えるだろうか。ワタシはよくわかんなかった。クララ(またはマーシャ)がクリスマスにくるみ割り人形をプレゼントされて、夜中になるとネズミ軍団とくるみ割り人形部隊が戦闘して、でクララが人形を手助けして勝つ、するとくるみ割り人形が王子様になって、いっしょにお菓子の国に行って、えーと、それで楽しく踊って終わるんだっけ? で、ぜーんぶ夢でしたみたいなオチが付いたりとか?
●大元の原作、E.T.A.ホフマンの「くるみ割り人形とねずみの王様」からチャイコフスキーのバレエに至るまでは、間にデュマとプティパの手が入っているから、ずいぶん雰囲気が違ってるらしい。いや「らしい」ってのもなんだなと思って、ホフマン原作を読んでみた。これ、おもしろい! これが本来のメルヘンなんだと思うけど、なかなかダークな味わいがあって、かわいくもありグロテスクでもあり、夢もあるけど苦味もあって味わい深い。そもそもネズミ軍団とくるみ割り人形部隊はなぜ戦わなければいけなかったのか。その戦争にいたる歴史(笑)まで克明に記されていて抱腹絶倒。あと、原作だとこの戦闘で主人公マリー(バレエではクララまたはマーシャ)とくるみ割り人形は敗退するんすよ。王子様には簡単には会えなくて、そこに至るまでにマリーにもささやかな喪失があったりとか、子ども視点で見てもドキドキする物語になってる。もちろん夢オチなんていう即物的な結末にはならない。
●ちなみに、マリーとくるみ割り人形がお菓子の町チョコレート菓子市(コンフェクトブルク)に着いたところの描写、家々が砂糖菓子でできてて、レモネードとかの泉が吹き上げてたりするシーン、ここで「愛らしい小さな人間たち」が登場する。彼らは何千もいて、笑ったり、冗談を言ったり、歌をうたったりするとあって、まさにこれって「チャーリーとチョコレート工場」なんじゃないか!と思ったんだけど、あれは映画のほうしか見てないんだよなあ。
●チャイコフスキーの曲、どうせCDで聴くなら全曲盤。ゲルギエフ盤は80分以上を1枚に詰め込んでるのが吉、輸入盤のほうはジャケもクリスマス向き。
P.S. ワタシが読んだのは本文中写真にある種村季弘訳の「くるみ割り人形とねずみの王様」(河出文庫)。しかしこれはどうやら品切っぽい。大河原晶子訳「くるみわり人形」(ポプラポケット文庫)や上田真而子訳「クルミわりとネズミの王さま」(岩波少年文庫)などが入手しやすいようだ。
December 20, 2005
くるみ割り人形とねずみの王様
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