●ワタシはホラー映画が苦手である。特にゾンビもの。これは怖い。このジャンルの嚆矢となったジョージ・A・ロメロ作品以来、ゾンビ映画には数多くのトリビュート作品やリメイク作品が生み出されてきた。なかにはザック・スナイダー監督の「ドーン・オブ・ザ・デッド」のように、ハリウッド化されて文明批評の精神を失ったゾンビなどと揶揄される作品もあるようだが、ワタシなどはそれすら十分ショッキングで、怖すぎて正視できない。他にもダニー・ボイルの「28日後……」とか、「バイオハザード」なんかも「ゾンビ」の子どもたちなんだろうけど、どいつもこいつもじっと画面を見てられないのだ、恐怖と緊張に耐えられなくて。
●しかし! そんな怖がりなワタシにぴったりのゾンビ映画についに出会うことができた。朗報である。英国発、エドガー・ライト監督の「ショーン・オブ・ザ・デッド」。これはきわめてイギリス的なゾンビ映画である。たとえば主人公とゾンビの遭遇はいかに描かれるか。さっきまで平和だった街で、ゾンビが道の真ん中を歩いている。主人公ショーンはそれをちらと一瞥して、こう解する。あー、また真っ昼間から飲んだくれの失業者が歩いているよ。ゾンビはロンドンの風景に溶け込んでしまっているのだ。
●ショーンは電器店の店員。男友達と同居して、日々かったるく過ごす冴えないヤツである。出かけるとなると行き先は決まって行きつけのパブ。パブで同じくらい冴えない男たちと飲んでしゃべる。そんなショーンにも長年付き合ってるガール・フレンドがいる。彼女とのデートの行き先は? そう、やっぱりパブだ。とことん気の利かないオトコなのだ。彼女はうんざり。でも街にゾンビがあらわれた。ここでダメ男ははじめて自分の力で人生を切り開くことに目覚める。ゾンビと戦い、ガールフレンドを守り、ついでに彼女を両親に紹介したり、親子の関係を見つめなおしたりしながら、必死で一人前の男への階梯を昇る。これはゾンビ映画でありながら、なんと大人の男になるという成長の物語でもあるのだ。クリスマス直前12月23日に超廉価DVDとして発売される意味は明白である。家族と、あるいは恋人と、ほのぼの気分で鑑賞できるちょっぴりブラックなクリスマスにぴったりのゾンビ映画、それが「ショーン・オブ・ザ・デッド」なのだ。
December 22, 2005
クリスマスにいちばん見たいゾンビ映画はこれ! 「ショーン・オブ・ザ・デッド」
トラックバック(1)
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/532
「ショーン・オブ・ザ・デッド」って映画なんですけど。 Read more... 続きを読む