「僕は海老ドリアも好きなんですがサンプドリアも好きで……」
「ブランコはブランコだけに左右に動いてますね」
「果報は寝てマテラッツィ」
「ミドあることは三度ある」
●信じられないニュースなのだが、ジャンルカ富樫氏がアフリカで急死した(nikkansports.com)。享年54。エジプトでのサッカー・アフリカ選手権を取材中、就寝中に痰を詰まらせて窒息したという。
●ジャンルカ・トト富樫(本名は富樫洋一)氏って誰だって言われると、サッカー解説者っていえばいいのか評論家っていえばいいのかライターっていえばいいのか、それともCALCIO2002の編集者が本業なのか、よくわからないんだけど、本質的には「愛すべきサッカー好きのオヤジ」ってことだったんだと思う。イタリアやアフリカ事情に通じていて知識や体験の量と質も高かった。でもそれがジャンルカ富樫の偉大さかっていうとそうじゃない。過剰に連発されるダジャレに代表されるサービス精神と、イタリア・サッカーからJリーグまで分け隔てのない全肯定的な愛、これがジャンルカの偉大さじゃないだろうか。
●テレビでも活字でも、ジャンルカ富樫が出てくると、「ああ、サッカー、すばらしい、大好きだぁ」っていう気持ちをメディアを挟んだ向こうとこっちとで共有できた。目からウロコが落ちるようなサッカー観を披瀝したり、素人目にはわからないピッチ上のできごとを鋭く観察してとらえたりとか、そういうことを一切しなくても、ワタシたちを喜ばせることができた。だからジャンルカはスゴい。つまらないヒエラルキーをサッカーに持ち込まない。お前らはわからないだろうがオレにはわかるといった傲慢さとも無縁。ジャンルカは「セリエAの解説をしている自分」を第三者の視点で眺めたときに、自分は本当に幸福である、こんな仕事できて嬉しいなあと感じていたにちがいない。だからワタシたちもいっしょに楽しい気分になれた。
●謹んでご冥福をお祈りいたします。