●図書館で突然、ケータイの音が鳴り響いた。閲覧室から男の声が聞こえてきた。「はい、××です。ああ、○○さん、どーもどーも、大変お世話になっております~。いや、先日は本当にありがとうございました。あれからね、もうウチの連中も盛り上がっちゃいまして、ハハハハ……」。驚くべきことに、フツーに営業トークが延々と続いたのである、静かな図書館で。見ると40代後半くらいのオッサンである。みんな凍りついた。図書館員は寄って来ない。
●しばらく調子のいい話が続き、ようやく営業マンは電話を切った。図書館員も含めて誰も注意をしようという者がいない。たまりかねて隣のお爺さんが、そのオッサンに何かを小声で言った。ごにょごにょ。その数秒後、大爆発が起きたのだ、お爺さんの。ケータイ男の256倍くらい大声でジャイアント癇癪玉破裂。
「うるさい!! うるさい言うとるんじゃ、黙れこら、やかましいんじゃ、こらぁ!!!」
●もう誰もしゃべらない。ここ図書館。怖いよ、あのお爺さんが怖いよ。どす黒い善意。