●この6月、英国よりマイケル・ナイマン・バンドが来日、東京と大阪で公演を行う(詳細:マイケル・ナイマン・バンド コンサート2006@ホリプロ)。映画「ピアノ・レッスン」や、一連のピーター・グリーナウェイ監督作品(「プロスペローの本」とか「英国式庭園殺人事件」とか)で知られるマイケル・ナイマン、日本との縁も深く、かつてはトヨタ・クラウンのCMだとか、セガサターンのゲーム「エネミーゼロ」の音楽でも話題になったっけ。
●で、今回、旧作に加えて意外な曲を世界初演してくれる。タイトルは「エレンディラ」。以前、当欄でもご紹介した、あのガルシア・マルケスの「エレンディラ」が題材である。蜷川幸雄演出の舞台「エレンディラ」の音楽をマイケル・ナイマンが担当、公演に先駆けて音楽を来日コンサートで演奏するという。
●クールなナイマンの音楽と幻想的なガルシア・マルケス文学とはずいぶん異質な組み合わせ。短篇「エレンディラ」の題は本当はこんな長い題だ。「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」。孫娘エレンディラに、ある晩、不運な風が吹く。風はエレンディラの置いた燭台をカーテンへ蹴倒す。屋敷は燃えてしまう。祖母はその日からエレンディラに償いをさせる。来る日も来る日もエレンディラは春を売り、砂漠中の男たちが毎日長い行列をエレンディラのベッドに作る。祖母は金箱を破るほど稼ぐ。ある日、若い男がエレンディラに恋をするが……という物語。怪物的な老婆の禍々しさが凄まじく、ガルシア・マルケス作品では「族長の秋」を連想させる。
●ちなみにクラヲタ的に「族長の秋」にはツボに来るモチーフがある。政敵たちをブルックナーの音楽が鳴り響く建物に閉じ込め死の拷問を味わわせるのだ。
May 1, 2006