●ニッポンはこの試合、少なくとも2点差以上で勝たなければ決勝トーナメントはない。しかし勝点計算以上に、ワールドカップでブラジルを倒すことに、夢物語ではなく現実のテーマとして挑むというこの状況自体が恐るべきことである。この大会、ここまで大番狂わせは起きていないと思うが、しかしどんな新興国も強豪国に恐れずに立ち向かっているのが印象的だった。
●選手入場の場面から、ニッポンがブラジルを恐れてなどいないことがわかった。入場前、ナカタはロナウドとカカと楽しげに談笑している。巻はなにものかが憑依したかのような顔つき。そうそう、先発メンバーも変わってた。川口-加地、中澤、坪井、アレックス-稲本、ナカタ、小笠原、中村俊輔-巻、玉田。巻が伝説を作る予感がした(全然この予感は当たらない)。
●前半34分、アレックスのスルーパスに反応した玉田がジダのニアサイド上を豪快にぶち抜いてゴール。ニッポンがまさかの先制。ここから前半ロスタイムまで、とてつもなく甘美な夢を見ることができた。ワールドカップでニッポンがブラジルに勝つ! それはもう一生語り継げる伝説だ、マラドーナ級の。
●前半ロスタイム、右サイドで大暴れしていた光速シシーニョがどフリーでクロスを挙げ、左右に振られたニッポンのディフェンスはロナウドを見失って1失点。ここまで川口がよくセーブしていたのに。「もしここでニッポンがリードしたまま前半を終えていれば」。ジーコじゃなくてもそう思う。でも本当はそんなこと関係ないと思うんだよなあ。
●後半、ジュニーニョ・ペルナンブカーノ、ジルベルト、ロナウドと次々得点を奪われるのだが、この試合、ブラジルは美しいゴールを生み出そうとしていた。すごいバカくさい話だけど、以前ワタシがゲーセンで「バーチャストライカー」の対戦プレイしてた頃を思い出したですよ。相手が自分よりはるかに上級者で、なおかつ趣味がいい場合、決して簡単にゴールなど決めやしない。そいつはいつも散々パスを回し、華麗かつ奇妙な展開を経て芸術点の高いゴールを決める。こちらのうっかりミスでつまらないゴールが決まらないよう、ときには絶好のシュート・チャンスでバックパスをして組み立てなおし、試合内容を高めようとする。ブラジル代表とはそういう相手で、これが彼らのジーコへの敬意。
●ブラジルはオーストラリアやクロアチアを相手にしたときは、こんな快適なクルージングみたいなパス回しはできなかった。どうしてこんなに楽しいプレイをニッポン戦ではできるのか。たぶん、ニッポンも楽しくてきれいなサッカーに憧れるためか、ディフェンスの当たりが弱いから。ファウルになってもいいセンターライン付近で、敵がケガを恐れるようなキツいタックルをガツンと見舞ったりしない。でもこれは悪いことばかりじゃないからなー。
●1-4で負けて、ニッポンは3試合で勝点1。4位。試合終了後、ナカタはピッチ上でずっと仰向けになったまま。泣いていたように見えた。やはり代表からは引退するんだろうか。残念な結果に終わったが、ワールドカップでベスト16になれなかったからといってへこんでいてはニッポン代表の応援なんてやってられない。4年後、アジアの出場枠は減るだろうし、オーストラリアという難敵があらわれることを考えると、ワールドカップに出場することも今より難しくなる。でもそれがフツーのワールドカップ予選。サッカー・ファンであることをいちばん実感できるのは、敗退した瞬間。ヤだけど。
●で、今日からある意味ワールドカップは後半戦に入る。ここから先は自分のところが参加してないから、通常状態の(?)ワールドカップ。おもしろいのはここからっすよ! ワタシはアルゼンチンを応援する! メッシが伝説作るかも!
June 23, 2006