●今年の花火大会、ウンチク男なら背中を丸めながら渋く語るが吉。「花火には割れ物とポカ物があってね」。ビバ、ストロンチウム。ラヴリー、菊物、牡丹物、ポカ物、型物。
●昨日朝は11月のアーノンクール指揮ウィーン・フィル、一般チケット発売日。先行発売だとかいろいろあるから、一般チケット発売日の時点では争奪戦最終章って方もいらっしゃるのかもしれない。ワタシは一般チケット発売日になって参戦。最善ではないが一応の成果。去年のムーティよりずっと競争率が高かったような気がする。勝負は5分、みたいな。ひょっとしてケータイ・サイトで狙うともっと競争率低かったのかもしれん。年齢層高いと「ケータイは電話にしか使わない」率が急激に高くなるから。ともあれ、参加したみなさま、おつかれさまでした。
●見た、「エスクァイア」9月号のクラシック音楽特集。96頁カラー、CD付き。すばらしすぎる。あらゆる面で投じられるリソースが音楽誌とは全然違う。誌面が美しいということは記事の価値を高めるとかいう「程度の問題」にとどまらず、「本質の違い」にまで及ぶのだと、改めて確信。その本を買うのが楽しいかどうかってことなんだけど。
2006年7月アーカイブ
夏の風物詩
本日の一缶。ドクターペッパー チェリーヴァニラ
●見れ、このドクターペッパー・チェリー・ヴァニラの勇姿を。単なるドクターペッパーではなく、ドクターペッパー・チェリー・ヴァニラである。きっとあなたも半径5km以内のドクターペッパー自動販売機を脳内地図にインプットしているくらいのドクターペッパー好きではないかと確信するのだが、ワタシはチェリー・ヴァニラがあるということを近所の輸入食材店でようやく知ったのであり、即ゲットした、ビバ梅雨明け。
●そもそもドクターペッパーとは何者か。1885年アメリカ、テキサス州にて、ウェード・モリソン氏の経営する薬局で働くリチャード・アンダーソン青年が開発した、アメリカ最古の炭酸飲料、それがドクターペッパーである。モリソン氏の奥さんの父がチャールズ・ペッパー博士。その名が商品名となった。1885年といわれてもピンと来ないクラシック者のために説明すれば、それはR・シュトラウスが歌曲「献呈」を作曲した年であり、フランクが交響的変奏曲を書いた年でもある。えっ、わからん? ヨハン・シュトラウス2世「ジプシー男爵」が初演された年っていうか、チャイコフスキーのマンフレッド交響曲が作曲された年。オットー・クレンペラーが生まれた年でもある。これがアメリカではドクターペッパーが誕生した年として記憶され、偉大なる炭酸飲料伝説がスタートするわけだが、ところで。
●ドクターペッパーには20種類以上のフルーツフレーバーがブレンドされている。そこで新たにドクターペッパー・チェリー・ヴァニラ。じゃあ聞くが、フツーのドクターペッパーにはチェリーとバニラは入ってなかったのか。そもそもそれだけ大量にフレーバーぶち込んでて新たに2種類加わったからといって、なにが変わるというのか、いや実際飲んでみてもその違いは確かめられず、かすかな挫折感とともに爽やかに飲み干したのである。ワタシは違いのわからない冴えない男なのだ。ドクターペッパーとドクターペッパー・チェリー・ヴァニラの違いが。
花火には割れ物とポカ物がある
●一日遅れで「結婚できない男」第4回を見る。ていうか、毎週見ることになるのかワタシは。今週登場のクラシック曲はシューベルトの「魔王」、そしてなぜか日本語訳詞。ありえねー。日本語はないっすよ。またマーラーとかショスタコーヴィチを聴いてほしいものである。っていうかブルックナーとかマストだと思うが、この阿部寛の役には。
●むしろヲタ的にウケるポイントとしては、打ち上げ花火だの寅さんだの自分の好きなものには蘊蓄垂れなきゃ気が済まないっていうところか。今回も笑った。……とはいえ、話の運びがやたら「偶然ばったり出会う」パターンに頼るのが少々辛くなってきたかも。きっと次週は偶然出会わない!
●Jリーグ、ジュビロvsマリノスをテレビ観戦して軽くショック。マリノスは久保からハーフナー・マイクにいたるまで、どフリーで打ってもシュートが枠に入らない病に罹っている。
あれこれちまちま携帯してられなくなった男
●あ、今週の阿部寛のクラヲタ・ドラマ、まだ見てないっすから(笑)。録画を今晩見るつもり。あー、あちこちのブログやらmixiやらで話題になってるのに、落ち着いて読めないからいかん。なるべくドラマは生だな。ん、ドラマに生って言うのはヘンか。
●地下鉄の駅を乗り換える途中、スタスタと歩きながら片手にノートPCもって片手でキーボード打ってる男性を見たのですよ。人ごみの中で。PDAとかそんな甘いもんじゃない、フルにWindowsが動くB5ノートを堂々と。秋葉原とかでよく見かけるような雰囲気の男性で、すなわち華麗かつクールに電脳武装しているのであって、ワタシの予想では「ケータイなんて持ってられっか、オレはWindowsが完璧に動かんマシンは認めん」と豪語する漢であり、きっと右手が打っていたのは相棒との待ち合わせメール。「今、新宿に着いたよー。東口に向かうね」みたいなのをOutlook Expressで。シブすぎるぜ。
●恒例、DHC FROM 40にて連載「オトナのためのクラシック音楽入門」第20回掲載中。仕事関係ではきっと今年最後のサッカー・ネタ。
音楽の旅人 ある日本人指揮者の軌跡
●雨、止まんっすね。このまま来年の6月まで梅雨だったらヤだなー。無間梅雨。
●「音楽の旅人―ある日本人指揮者の軌跡」(山田治生著/アルファベータ)を読んでいる。えっと、この書名と表紙ではなんの本だかわからないかもしれない。これは小澤征爾の評伝である。大人の事情で小澤のオの字もないが、中身はごくストレートに評伝。
●で、評伝なのでその生い立ちを時系列に辿って、今ボストン響音楽監督時代。やっぱりエピソードとしてはヨーロッパに渡った直後あたりが一番おもしろい。だってスクーターといっしょに貨物船に乗ってパリを目指すんすよ。なんにもパリで待ってないのに。ここから快進撃へと至るスピードが凄まじい。
59年 貨物船で欧州へ。ギター担いでスクーターに乗ってる無名の日本人。
60年 ブザンソンで指揮者コンクールのことを知って出場したら優勝。
61年 ニューヨーク・フィル副指揮者に決定。
62年 N響事件。ラトヴィア音楽祭で成功、翌年からの音楽監督就任決定。
65年 トロント交響楽団音楽監督就任
70年 サンフランシスコ交響楽団音楽監督就任。
73年 ボストン交響楽団音楽監督就任。
ありえんでしょ、この猛烈なスピード感は。サンフランシスコ響就任時点でまだ35歳、ボストン響で38歳。こんな人、いないっすよ、今。千秋真一だってここまでやらんだろうっての(あ、「のだめ」の登場人物です、念為)。
●この辺の小澤ヒストリーは知識としてはみんな聞いたことのある話だと思うんだけど、評伝っていう形で読むと、「人生がとんでもない勢いで流れはじめ、加速して、そのまま突っ走る」っていう感じがよく伝わってくる。もしリアルタイムでこの成功譚を見聞きしていたら、どれだけ興奮しただろか。伝説度★5つだったかも。
梅雨も明けずに、もうバイロイト
●プロムスに続いて、25日にはバイロイト音楽祭がスタート。マルク・アルブレヒト指揮の「さまよえるオランダ人」で開幕、ティーレマン指揮の「ニーベルングの指環」四夜、ペーター・シュナイダーの「トリスタンとイゾルデ」、アダム・フィシャーの「パルジファル」と続く。生中継および再放送の予定は、operacast - Bayreuth 2006 に一覧あり。GMTは+9時間するとJST。
●ネットでオペラを楽しむための日本語情報では、おなじみオペラキャストさんが役に立つ。またネットラジオのクラシック音楽番組表としては、番組表wiki - 海外ネットラジオのクラシック音楽番組がある。こちらはwikiシステムを用いた共同編集サイトで有志によって作成されている。大変便利。管理人さんおよび番組情報を提供してくれている方々に深く感謝。
ヒストリー・オブ・バイオレンス(デイヴィッド・クローネンバーグ)
●クローネンバーグ監督の映画「ヒストリー・オブ・バイオレンス」、見逃していたのだが、新文芸坐が拾ってくれたので「もうすぐDVD出るんだろな」と思いつつも映画館へ。これは完璧。史上最凶の後味の悪さも見事だけど、頭からおしまいまでまったくムダなく気分を悪くしてくれる傑作。
●田舎町で小さなダイナーを営むトム(ヴィゴ・モーテンセンっすよ、「ロード・オブ・ザ・リング」の)がある日、強盗に襲われる。トムは相手の一瞬の隙をついて強盗を射殺。町のヒーローとなるが、以来マフィアがトムにつきまとう。トムの妻と子供たちに疑念が生まれる。この人、ホントは何者? どうしてこんなに上手に人を殺せるのかしら。
●タイトルからしてヤでしょ。暴力履歴。もうこの世に暴力くらいイヤなものはない。みんなそう。暴力反対。で、ほら、暴力なんてものはこんな負の結果しか生み出さない、暴力には再生産性がある、暴力がいかに重い十字架を背負わせるか、あんたたちにもわかったでしょ。そこまではだれでも描く。でもクローネンバーグは同時に暴力がいかに快楽と相性が良いかまではっきりと見せ、しかもこれで観客を喜ばせてしまう。フィナーレはあの沈黙の最凶シーン。「スキャナーズ」の頃から気分悪くなったけど、これも本気で気分が悪くなる映画。クローネンバーグって天才。
「人生ゲーム」にはワーグナーがよく似合う
●日頃テレビドラマは見ないんだけど、どうも阿部寛のクラヲタぶりが気になって、「結婚できない男」第3回放映を見る。あ、録画しておいたので一日遅れ。
●今回もなかなか見事な展開である。「指揮するだろ、フツー」とか大ウケ。で、阿部寛は「人生ゲーム復刻版」というのを通販で買うんである。これを自宅で一人プレイ、しかもワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲をかけながら(笑)。文句の付けようのないすばらしい演出である。この調子で行くと放映終了までにコンピアルバム「結婚できない男 クラシック・セレクション」が作れそう。
●次週予告を見ると、阿部寛と夏川結衣が遊園地に行くようである。惜しい。ワタシの脳内脚本では二人でディスクユニオン行ってエサ箱漁るあたりなんだが。
日本の夏、東京の夏、そして2番目のキス
●おおっと、プロムスがどうとか言う前に、国内も音楽祭の季節ではないか。出遅れ感全開で気がつく、<東京の夏>音楽祭2006はもう始まっている。今年のテーマは「大地の歌・街角の音楽」。一部話題沸騰中の異色ヴァイオリニスト、ジル・アパップの「四季」(ヴァイオリン、アコーディオン、ツィンバロン、ベースで弾く)とか、セネガルのユッスー・ンドゥール等々多彩。音楽祭中のアパップ「四季」公演(武蔵野市民文化会館)はすでにチケットが完売しているようだが、明日20日の紀尾井ホール「アフタヌーン・コンサート」でも同じ「四季」公演あり。こちらはまだチャンスあるかも。ただし、その名の通り平日昼であるが……。
●以前、サッカー馬鹿のバイブル、ニック・ホーンビィ著「ぼくのプレミアライフ」(Fever Pitch)が映画化されるんだけど、ハリウッドではなんと「サッカー」が「野球」に置き換えられてしまったって話を書いたじゃないっすか。もうそれ野球じゃ話が全然違っちゃうでしょうが、ホントにスポーツのわからん人だなあ、ハリウッドの中の人は、と呆れた方々にトドメの一撃を。「ぼくのプレミア・ライフ」の映画版邦題は「2番目のキス」。イングランドのペシミスティックな自虐ノリのサカヲタ話が、ボストンの若い恋人たちのラブ・ストーリーになってしまうとは。しかもクライマックスでレッドソックス優勝って、なんじゃいそりゃ。
歓びを歌にのせて(ケイ・ポラック監督)
●プロムス開催中 → BBC - Proms - Listen Online。時差的に生中継ムリって方は Listen again to Proms for 7 days after broadcast でアーカイヴを聴ける。あー、パソコンにこんなしょぼいスピーカーつけてていいんだろうか。
●映画館で見損ねたので、DVDでスウェーデン映画「歓びを歌にのせて」(ケイ・ポラック監督)。主人公は世界的な指揮者ダニエル。8年先まで公演予定が埋まっているという多忙な生活を送っていたが、ある日体調を崩して倒れる。スケジュール帳が真っ白になったダニエルは生まれ故郷の小村に一人赴く。村人に心を開こうとしないダニエルだったが、地元教会の聖歌隊の指揮を頼まれる。音楽を通じて次第に打ち解けたダニエルは、再び音楽のすばらしさに目覚め、生きる喜びを獲得する……という喪失と再生の物語。
●こう書くと「やれやれ、都会の忙しさに疲れた人が、素朴な田舎の人々の暖かさに出会っちゃう自分探し系の話でしょ。田舎最高、スローライフとかロハスとか言い出しそうな」と思われるかもしれないが、そうではない。田舎が素朴だなんて一言もいわないどころか、閉塞した村社会で崖っぷちの人生を送る人々の醜さを、容赦なく率直に描いている。都会の人間も怖いが、田舎はもっと怖い。怖いから、コミュニティにはハーモニーが必要なんである。都会人の都合のいい田舎幻想とはまったく無関係に、人が自分の人生を自ら選択して生きてゆくこと、愛することのすばらしさを力強く礼賛する。王道。
ワールドカップ2006ドイツ大会をダラダラと振り返りつつ、4年後へ
●大会後、ジダンとマテラッツィの頭突き事件が話題の中心になってしまっているが、最後に大会そのものを振り返って雑談。
●マテラッツィの狼藉があったとはいえ、チャンピオンがイタリアだったことは事実。あそこでジダンの退場がなかったとしても結果はたぶん変わっていない。決勝でジダンがフワリと浮かすループ気味のPKを決めたけど、大会でのイタリアの失点はこのPKとオウンゴールの2点のみ。驚異的な守備力だった。でもこれは全然「カテナチオ」じゃない。まるでブラジル代表のごとく、4バックの両サイド、グロッソとザンブロッタが攻撃でも活躍した。しかも中盤の底はACミランと同じくピルロ。ピルロはトップ下の選手として若い頃から才能を嘱望されてたけど、インテルでポジションを取れず、レンタル移籍を繰り返し、ミランに完全移籍。そこでまさかのボランチ転向。これが大成功、しかも代表でも同じ役割を担うようになるとは。中盤の底からゲームを組み立てるスタイルを確立、トッティが不調でもチーム力が落ちなかった。
●大会自体は(特に欧州の)強豪が順当に勝ち残ってくれて、好ゲームが多かった。でもなー。ベストマッチを選ぶのはなかなか難しい。強いて挙げると準決勝のドイツvsイタリアか、ベスト16のスペインvsフランスかなあ……。いや、邪道だけど、一次リーグのアルゼンチンvsセルビア・モンテネグロかも(6-0の試合)。ベストゴールは躊躇レスにこの試合のカンビアッソ。パス何本つないだんだろう。あのとき観客席でマラドーナが狂喜してユニ振り回してたけど、これが今大会の裏クライマックス。そっか、今わかった。終盤、質の高いゲームが連続したにもかかわらず、どこかこの大会に割り切れないものが残っているなと思ったら、いちばん魅力的なチームがベスト8で終わってしまったからだ。どうしてドイツ戦には応援に来てくれなかったのだ、マラドーナ……。
●伝説としてはジダンとフランスの復活、そして頭突きということになるけど、まあこれはもういいか。
●結果のみ見ると予定調和的だったけど、新興国のレベルアップもとても印象的だった。が、オーストラリアを除くと、アジア勢は惨敗。4年前の日韓大会が特別だっただけで、もともとアジアはワールドカップではアウトサイダーで、地域枠があるから何ヶ国も出ているだけという、見ないことにしている現実を突きつけられた気もする(苦笑)。でもアジアにも希望が。次回よりオーストラリアという強豪国がアジアに入ってくれるおかげで、地域の水準は確実に上がる。結果的にニッポン代表が本大会に出場できないことも増えるだろうけど、本来それがフツー。オランダやフランスだって出場できないときはできない。で、たとえ監督がオシムであろうと、代表のレベルはJリーグのレベル次第。見るしか、J。いや、しばらく放心して見れないかもしれんが。
納涼「皇帝ペンギン」
●灼熱地獄と化したニッポンのみなさん、お元気ですか。今、ワタシは生態系調査のために南極に来ております。ウソです。東京は一ヶ月くらい晴れてません。どんより曇ったまま夏へ。須栗屋敏先生のアストラル天気予報によりますと、このまま東京は梅雨明けせずに酷暑に向かい8月より亜熱帯入りしてそのまま三世紀ほど氷河期待ちということです。ふぅ、庭のマンドラゴラがグングン伸びていくわぁ~。
●てなわけで、納涼お家で南極映画「皇帝ペンギン」。過酷な大自然のなかで生きるペンギンの人生、いや鳥生か、その苛烈さを知り涙。産卵直後、メスはエサを求めて海へ向かい、オスが卵を温めるんだけど、極寒の地だから食い物ははるか彼方。オスはメスがもどってくるまで4ヶ月も絶食して、零下60度のブリザードに耐えて命がけで抱卵する。メスが無事戻ると今度はオスが海に向かうんだけど、もう体力なくて力尽きたりする。
●動物ドキュメンタリーとして解説をさしはさむんじゃなくて、擬人化して声優を当てている。生まれたばかりのヒナがいきなりフランス語でしゃべったりするわけだが、そんなの気にしない方はぜひ。セリフは饒舌ではなく、あくまで雄弁なのは映像。
発表! 二ッポソ代表2006
●ついに発表! ワールドカップ2006記念、二ッポソ代表はこのメンバーで!
FW: 倉内、来栖、江藤(出てないけど)
MF: 子門三郎さん、丸田、二個小鉢、あるなコネ
DF: 那須田、照井、丸助
GK: 井作さん
●一部、かなりムリしてますが、気にしない!
「二ッポソ! 二ッポソ! 二ッポソ!」
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●と書いてみたものの、このネタ、ちっとも伝わらない気がする。二ッポソ代表のカタカナ表記も添えておこう。
FW: クラウチ、クルス、エトー
MF: シモン・サブローサ、マルーダ、ニコ・コヴァチ、アルナ・コネ
DF: ネスタ、テリー、マルケス
GK: イサクソン
阿部寛の「結婚できない男」
●さてと。ワールドカップが終わってしまった。日常へ。日々の生活の音楽濃度を回復させたい。では、えーと、まずはこれかな。
●TVドラマ「結婚できない男」、主演の阿部寛がクラヲタな建築家役という話を聞いて、第2回放映をチェック(笑)。40歳独身、自分で事務所構えてる建築家なので仕事はできるわけだが、性格が悪い、食い物は肉が好き、一人で焼肉屋に入れる(しかもこれを満喫できる)、自分の部屋に他人を入れない、趣味はクラシック音楽鑑賞。いやー、なかなかツボにハマるヤなヤツぶり。どうやらお気に入りはショスタコの5番とマーラーの5番のようである。一人で軽く指揮マネしてくれて、クラヲタっぷりも吉。
●もっとも、阿部寛なんだからヲタとはいえ男前なんである。これは重要である(ていうかドラマだし)。これから夏川結衣とのラブストーリーが展開されるはず。阿部寛には全宇宙のクラヲタ界のヒーローとなっていただきたい。
●今後予想されるもっともつまらない展開→阿部寛が気取りも照れもかなぐり捨てて、夏川結衣に体当たりで全力ラブ、クラシックなんか聴いてちゃダメだよ二人で弾けちゃおうぜっ! 今後予想されるもっともエキサイティングな展開→夏川結衣が見る見るうちに教化されて筋金入りのクラヲタになり、阿部寛とともにレアディスクを求めて愛と冒険の旅に! 謎のレコード屋オヤジとの出会い、そして別れと旅立ち、演奏会で隣になった飴玉包み紙クシャクシャおばさんとの対決、オーディオ・ケーブルの交換にハマってさあ大変、CDの並べ方で大喧嘩、ダブリCDの処分をめぐって破局寸前に、しかし最後は仲良く二人でCDビニール袋コンパクト収納大作戦敢行でハッピーエンド。
決勝:イタリアvsフランス。ジダン最後の試合、最後の伝説。
●あー、なんてことなんだろか。決勝戦、いい試合だったと思う。しかしなー、ジダンが赤紙で退場とは。睡魔と激しく戦いながら生放送を見てたんだけど、あれで一発で目が覚めた。
●イタリアのセンターバック、マテラッツィ。ワタシはこの人が以前から嫌いであって、それは単に容貌が気にいらんとかそういう理不尽な偏見に基づくものかと思っていたが、そうではなかった。この事態を予期して先見的に嫌っていたのかもしれん。マテラッツィがなにかジダンに言う。ジダンがなにか答える。まだマテラッツィがなにかいう。ジダンがマテラッツィに頭突き。ジダンはカッとなりやすい。マテラッツィはジダンを罠にかけた。「ワールドカップ決勝戦で現役引退する」という伝説的シチュエーションで、ジダンはさらにその伝説性を増すはずだったのが、最後にこんな小賢しい罠にひっかかって失意のうちにピッチを去ることになった。ああ、マテラッツィごときに! これが相手がせめてかつてのアルゼンチンのシメオネみたいな極悪選手なら、罠には罠なりの値があっただろうに、よりによってマテラッツィ。ていうか、マテラッツィ(笑)。あーあ、マテラッツィ(プッ)。マテラッツィ(ペッ)。
●イタリアはトッティがいるかいないかわからないほどだったのが残念。トッティも伝説になれたかもしれなかったのに。MVPを選ぶなら、ザンブロッタに一票。サイドバックのMVPってなかなかないだろうから。グロッソと合わせて、イタリアは両サイドバックの活躍が凄まじかった。
●でも皮肉にも公式なMVPはジダンなのだ。もしジダンが退場せず、しかもフランスが勝っていれば、98年に続いてこの大会はジダンの大会になった。現実にはジダンは暴力行為で退場したわけだから、非難されてもしょうがない。では06年がだれの大会かといえば、やっぱりジダンの大会だったと思う。頭突きは狂ってる。90%は残念でならないんだけど、残りの10%で痛快な気分になった、ワタシは。
3位決定戦:ドイツvsポルトガル。シュヴァインシュタイガーの日
●ワタシもワールドカップには3位決定戦なんて要らないよと思うんだけど、でもじゃあ準決勝から決勝までの空いている日になにをやりゃいいかというと、いい案は浮かばない。ヘンなエキシビション・マッチとかやると大会がだれるしなあ。しかも前回も今回も開催国が3位決定戦に進出してるんだから、こうなると注目度も高くなる。
●主審は上川さん。日本人審判初の決勝トーナメント進出。まだトーナメントで実績のない主審を起用する場合は、まずトーナメント中もっともプレッシャーの低い3位決定戦をあてて経験を積ませるのかなあ……と思ったのだが、W杯の審判は45歳定年制なので上川さんはこれが最後。氏に対しては日頃Jリーグではしばしば悪口雑言が飛び交うが、これは「どんな優秀な審判でも自国リーグのサポーターからは悪く言われる」ことの証だろう。
●3位決定戦に地元ドイツが出てきて、まさか負けるわけにはいかない。控えキーパーとなったカーンがついに出場。好セーブ連発で安堵。バラックは欠場。得点王のかかったクローゼは先発したが、決勝でアンリがハットトリックを決めない限りクローゼの得点王は安泰なんだから、無得点でも問題なさそう。この試合はシュヴァインスタイガー・ショー。豪快なミドルを2本決めた。ポルトガルのほうは開催国が相手になってしまって気の毒というか、ホントに難しい試合だったにちがいない。
●あとは決勝のみ。なにか、とてつもないプレイを見たい。
準決勝:ポルトガルvsフランス。ジダン伝説準備編
●この試合で良かったのは「結果」。ジダンがPKを蹴って1-0でフランスが勝った。これ、逆だったらずいぶん寂しかっただろうなあ。お互い試合を重ねてコンディションが落ちているせいもあると思うけど、見せ場の少ない試合になってしまった……いや、ポルトガルが良くなかったからか。前半33分、アンリが倒されたPK、少々アンリの倒れ方がわざとらしいにしても、ファウルがあったには違いない。でも「この1点が決勝点になりませんように」って祈る、フランス人以外のサッカー・ファンは。味気ない試合になってほしくないから。
●で、そこでポルトガルがなにをしたかといえば、次から次へとダイブした(ような印象を受けた、実際にはそこまでではないにしても)。特にクリスティアーノ・ロナウドはどの試合もそうなんだけど、レフェリーのほうを向いてプレイしすぎ。悪賢く自分たちに有利な判定を引き出してやろうっていう演技が多くて辟易した。すぐ手や肘が出るのもねえ。同じ悪賢いにしてもデコには好印象しかないので、なにか違うんだと思う。
●終了直前、コーナーキックのチャンスにポルトガルはキーパーのリカルドまで前線に上がってきた。これでリカルドがゴールかアシスト決めたら伝説だったのに。ていうか惜しかった→アシスト。でも1-0でおしまい。しょうがない。決勝でジダンを見られるだけでもありがたい。コンディション的にはイタリアが断然優勢だと思うが、フランスが優勝したら伝説。もうフランスが韓国と引き分けたことなんかだれも覚えてないのでは。
準決勝:ドイツvsイタリア。あの2点目がいいんすよ、容赦なくて。
●長い大会だと思っていたけど、もう準決勝。なんだかもうすぐ終わると思うと寂しくなってきたり。
●で、「こういう対決が見たかった」的な対戦実現、ドイツvsイタリア。本来ならイタリアを応援するところなんだけど、ドイツは開催国だからついついドイツ視点で見てしまっていることに気づく自分がいる。クリンスマン監督のオーバーアクションはかなり楽しい。
●お互いに攻守の切り替えが早くて、見ごたえのある試合に。ただ後半30分くらいになってまだゴールが生まれていない時点で、これはイタリアは苦しいなと思った。イタリアはトップのトーニをジラルディーノに交代したけど、徐々に消耗してきてギリギリのところで守るようになっていたのに対して、ドイツは中盤の両サイドにシュバインシュタイガーとオドンコーを投入。もうこれでイタリアはサイドの攻防に耐えられないだろうなと覚悟。が、ドイツ攻め切れず。無得点のまま延長へ。
●延長戦、イタリアは疲れきってたカモラネージをイアキンタに、さらにペッロッタをデルピエロに。さすがに中盤は緩くなって、いつ点が入ってもおかしくない状態に。延長前半ロスタイム、オドンコーのクロスに猛烈どフリーでポドルスキーがヘディング・シュート、しかしボールは枠の外へ。ドイツにとってもっとも悔やまれるシーン。
●もうPK戦だろうと思った延長後半14分、コーナーキックのこぼれ球を拾ったピルロがペナ付近でキープ、グロッソへノールックでスルーパス。これをグロッソがダイレクトでシュートすると、ボールにきれいな回転がかかって、枠の外側から巻いてきて左隅へ。美しすぎる。これがサイドバックの選手のシュートかね。あと1分。最後の奇跡に賭けて攻めに出たドイツに対して、イタリアは容赦なくカウンターアタック、デルピエロがさらにゴールを決めて2-0。こういうときのイタリアってホントに鬼。デルピエロの咆哮につい笑ってしまった。
●ドイツは負けたけど、ワールドカップになると強いっていう伝統は生きてる。前回は印象薄かっただろうけど決勝まで行ってるわけだし。だいたいみんな大会前はクリンスマン監督のことを胡散臭そうに見てたっぽいけど、これだけ内容のある戦いをしてきたんだから褒め称えられるべきかと。
新感覚RPG「トラスティベル」
●むむ、これはなんだろう。ショパンの名曲に乗せて――Xbox 360に新感覚RPG「トラスティベル」誕生。ピアノ演奏がブーニンという本格派(?)なのであるが、音楽ゲーとかリズムゲーとは違う。RPGなんである。病の床に伏したショパンが夢を見る。で、その夢の世界においてショパンは魔法の力を得る、っていう世界観みたい。かつてないクラシック音楽系ファンタジーRPGの予感。現在開発中、発売日は未定、メーカーはバンダイナムコゲームス。ぜひプレイしてみたいところであるが、Xbox 360を導入する気にはなれんなあ。
●音楽配信サイト MaXMuseのクラシック・コーナー、週イチペースで更新中、EMI音源を中心にタイトル数は増え続けている。
ナカタ引退、そしてオシム・ジャパン
●中田英寿現役引退を表明。ペルージャ時代とローマに移籍してトッティとポジション争いしていた頃はホントに毎週ワクワクしたなあ。ローマで優勝した年、トッティの代わりにナカタがトップ下で出場したことが何度かあった。で、ナカタがスゴく活躍してみせた。トッティが試合後に不機嫌そうにコメントを残す。「ナカタはその才能を証明してみせた」。今思うと、そんな時代があったことが夢のようである。
●当時、日本人選手が欧州のトップレベルであれだけ活躍できるとは思いもしなかった。そしてその後、続く日本人選手たちがこれほどまでに欧州で成功できないことも予想できなかった。ナカタの後にナカタなし。
●妄想田中軍団ならあるけど。
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●で、オシム監督なんすけど。みんな諸手を挙げて歓迎してるし、ワタシも本当に嬉しい。以前紹介した「オシムの言葉」は売れまくっているんじゃないだろか。これまでの代表で最強の監督なのはまちがいない。
●が、予言する、オシムが代表監督に就任し試合を率いたが最後、メディアもファンも今「偉大な名監督オシム」に抱いている敬意などすっかり忘れて、生まれてからボールを蹴ったこともない人間まで「オシムは選手交代をできない」「オシムはサッカーのことを知らない」と批判しはじめる。「まさか! んなわけないじゃん」と思うかもしれない。でも4年前、ジーコがまだ代表監督などではなく「白いペレ」「黄金のクァルテットの10番」だった頃はどうか。その頃「ジーコはサッカー知らない」なんて言うヤツはいなかった。それが代表監督になれば「でもジーコじゃねえ、わかってないから。プッ」てなものである。
●あなたは鶏が鳴くまでに三度「オシムはサッカーのことを知らない」と言うでしょう(笑)。いや、ワタシだって発狂してそう言い出すかもしれん。そして、代表監督を退いたジーコは、今やふたたび「白いペレ」の威厳をまとっているではないか!
準々決勝:ブラジルvsフランス。再現ドラマなのかこれは。
●スペインvsフランス戦でも書いたけど、ここまで筋書きができちゃったら後はジダンとフランスの復活劇になるしかない。奇しくも8年前の決勝戦と同じ組合せ。もうひとつ、近年の最強フットボーラー対決であることも見逃せない。ジダンとロナウジーニョ。大会前はジダンの活躍なんて期待されてなかったし、ロナウジーニョの大会になることがほとんど当然のことのように語られていた気がする。
●しかしよくわからんのだが、どうしてブラジルはフランスを前にすると借りてきた猫みたいになるのか。8年前もそう、今日もそう。ジダンのフリーキックからアンリが先制ゴールを決めた、そこまではフツーにあり得る。が、その後、熱くなったブラジルが鬼のような猛攻を仕掛けてくるはずなのに、なぜか沈黙してしまう。ロナウジーニョは4年前の日本ですでに伝説プレイを見せてくれたけど、今回はノーゴール、普段バルセロナで見せているプレイの半分もできなかった感じ。アドリアーノもどうしちゃったのか。1-0でフランス優勢のまま勝利。欧州で開催されるワールドカップでは欧州が強い、この基本法則がさらに強まって再確認された今大会、ベスト4は全部欧州。
●伝説の物語となるためには、8年前の再現を狙うフランス vs 8年前だって優勝したのは開催国だよだからドイツ、ってファイナルを期待したいものである……って、ドイツ戦はイタリアを応援するけど。
●印象的な場面。前半45分が終わってベンチに帰ってくるジダンに、ブラジルのベンチからロビーニョが出迎えて抱擁。ジダンから見りゃブラジル代表はレアルマドリッドのチームメイトだらけだけど、特にロビーニョはジダンになついてるのが微笑ましい。フランスが負けたら即、ジダンの引退試合になるからなー。でも勝ったのはフランス。ジダン、またマルセイユ・ターン見せてくれっ! あと次戦はジダンにはつまんないイエローカード出すの禁止! スペイン戦で一枚もらってるから。決勝に出場停止で引退じゃあ泣くに泣けん。ジダンだよ、そのへんのヘッポコといっしょにしちゃいかんよ。
準々決勝:イングランドvsポルトガル、イタリアvsウクライナ
●まずはイングランドvsポルトガル。イングランドのフォーメーション、今日も4-1-4-1。ルーニーのワントップってどうっすか。フォワードを一人にして、ディフェンス・ラインの前にハーグリーブス。慎重。ほぼ確実に試合はつまらなくなる。決定機が少なく眠気を催してきた後半(えっ、もう?)17分、ルーニーが一発退場。これ、なぜ退場なのか全然わからなかった。ポルトガルのクリスチャーノ・ロナウドとなんか言い合ってたように見えたけど、ひょっとしてこの二人、険悪? マンチェスター・ユナイテッドのチームメイトなのに。どっちも若いからなあ。
●イングランドは一人少なくなったのに、運動量の低下を感じさせなかった。この魂のフットボールは立派。攻め切れないポルトガル。惜しいシーンはいくつもあったが、延長に入っても決着付かずにPK戦へ。プレッシャーから両者なかなか決まらないが、制したのはポルトガル。見せ場の少ない試合だったけど、熱くなって見ることができたのは準々決勝だから。次戦、ポルトガルにデコが帰ってくる。楽しみ。
●イタリアvsウクライナ。こっちもイタリアが1トップ。トーニだけ。トッティがその下にいる。後はみんなでまず守って、攻撃は前のほうにいる特殊能力持った二人くらいでやるイタリア風。ワタシは人が言うほどイタリアの守備的な戦いが嫌いじゃない。技術はあるわけだし。ベンチにジラルディーノ、インザーギ、デルピエロ、イアキンタと豪華フォワード陣4人座らせて、ピッチには一人(笑)。なかなかこんなことはできません。
●前半6分、イタリアはザンブロッタが右サイドからドリブル突破、10回打ったら1回入るかどうかみたいな難しいシュートを決めて先制。守りの意識の強いほうが先制してしまったので、後は安心して見ていられる展開。トーニが後半14分、後半24分と追加点を奪って、3-0で完勝。ジラルディーノ、インザーギ、デルピエロ、イアキンタは全員最後までベンチ。ならそんなにフォワード連れてこなくていいじゃねーの!なんて寂しいことを言っちゃいけない。
準々決勝:ドイツvsアルゼンチン。選手交代って難しい
●よくニッポン代表の負け試合とかで、「あそこでジーコが××を交代させてりゃ」みたいな悔しがり方、するじゃないですか。でも基本的に弱いほうが選手交代で勝てたかもしれないって思うのは幻想で、交代の明暗ってのはこのドイツvsアルゼンチンみたいな、対等に戦っている者について生まれるものなんじゃないか。と思ったり。
●前半、アルゼンチンのボール支配率は60%を超えていたと思う。リケルメを中心としたパスワークで異彩を放つアルゼンチン、慎重な戦い方をするといっても攻めないとかそういうんじゃなくて、ボールを失わないっていう試合をする。ドイツ相手に。すごいなあ。でもあまりに慎重で、延々と横パスをつないでいたら45分が終わったという印象。お互いチャンスレス。
●後半、急激に試合は動き出す。後半4分、コーナーキックにアジャラがクローゼに競り勝ってヘディング・ゴール。クローゼは顔が青ざめてた(ように見えた)。で、ここから明暗が分かれた気がするんだが、後半17分にドイツはシュナイダーに代えてオドンコー。すると右サイドの攻撃がぐっと活発になり、ゲームを支配しはじめる。
●一方、アルゼンチンが不運だったのはキーパー、アボンダンシエリの負傷退場。レオ・フランコが入ったが、延長もあるトーナメントでキーパーの交代に一枠使ってしまったのが痛すぎる。攻勢に出たドイツに対して、中盤の運動量と守備力を補うために、後半27分、大胆にもリケルメを下げてカンビアッソ投入。ほぼすべての攻撃をリケルメが作っていたのに! でも、このまま逃げ切ってりゃ実に合理的な交代だし、こういうのはみんな結果論でしかない。さらに続いて、クレスポを下げてクルス。ええっ、クルス? そこで3枚目の交代枠使っていいんすか、ペケルマン監督。っていうか、ワタシは単にメッシやサビオラを見たいだけだ。クルスみたいな体を張る長身フォワードじゃなくて。(思いっきりアルゼンチン寄りで見てます)
●で、悪夢。後半35分にクローゼがゴール決めやがった。あーあ、もうアルゼンチンにはリケルメもクレスポもいないよ。ベンチにメッシもサビオラもアイマールもいるのに、誰も使えない。なんたる不条理。かくなる上はクルスにかんばってもらうしかない。ワタシはずっとテレビの前で呪文のごとく繰り返していた。「クルス、クルス、クルス、クルス……ブツブツ、クルス」。
●でもこういう裏目に出た試合はめったに勝てない。延長を耐え、PK戦に入ったら、ドイツのレーマンが鬼のようにPKを止める。レオ・フランコ、今日まさか自分がPK戦を戦うことになるなんて想像してただろうか。というか、ドイツ人たちは絶対にキーパーが止められないところに次々蹴りこんだ。4-2でドイツがPK戦を制する。ペケルマン監督とクリンスマン、前者の交代策が失敗して後者が奏功するなんて。なんか試合終了後、アルゼンチンの選手がエキサイトしてたけど、あれ、なんだったんだろ。はあ、クルス……。メッシ。