●中村俊輔に一言。ビバ、ナカム~ラ(ジーコ風に)。
●遅まきながら、UEFAチャンピオンズ・リーグ、セルティクvsコペンハーゲン。前の試合、中村俊輔がマンチェスター・ユナイテッド相手にフリーキックを決めた時点で、ワタシのなかで俊輔は伝説になった。舞台はチャンピオンズ・リーグっすよ。よかったなあ、俊輔。これもレッジーナからセルティクに来たおかげ。最初は「えー、スコットランド・リーグ!?」って思ってたけど、スマソ、ワタシがまちがってた。レッジーナなら毎試合耐えに耐えて、引き分けるか負けるかして残留争い、でもセルティックならクラブハウス入るのにも赤絨毯でドアマン付きだし(赤絨毯はウソ。でもドアマンはホントにいるらしい。さすが名門)。
●でもコペンハーゲンもスゴいんすよ、メンバーが。北欧各国代表選手選抜チームっていう感じ。クラブの格からセルティックが勝つだろうと思ってたけど、試合が始まるとアウェイにもかかわらずコペンハーゲンが志の高いサッカーを見せてくれて、正直なところ、地力ではせいぜい五分五分、むしろコペンハーゲンが強いかもと思った。彼らはアヤックスに勝ってここまで来ている。
●セルティックはレアル・マドリッドからグラヴェセンを獲得したのが大きい。自由なジダンの陰でマケレレが奉仕したように、中村俊輔の背後にグラヴェセンを。もっともマンチェスター・ユナイテッド戦ではグラヴェセンのミスパスで決勝点を奪われたんだが。
●俊輔は非常に好調。守備にまで貢献する。ボール扱いのうまさでは明らかにチームの中心。エレガントで、見ていて気持ちいいくらいに美しい。中村俊輔史上、今が最強かも。ペナルティ・エリア内で俊輔が個人技で突破、相手DFが引っかけてPKゲット。スコットランド代表のケニー・ミラーがこれを決めて1-0で勝利。
●今年はもうチャンスないけど、やっぱりオシム・ジャパンでも俊輔を見たい。オシムの発言、「美のために死を選ぶという選択はある。だが、死んだ者はサッカーができない。美しさを追求して死ぬのは自由だが、そうなるともうサッカーではない」、これと俊輔が両立するのかどうか。
2006年9月アーカイブ
セルティクvsコペンハーゲン@チャンピオンズ・リーグ
ショスタコーヴィチ・ラスト・ナイト
●中村俊輔@セルティックの試合の話は日を改めるとして。
●モルゴーア・クァルテットのショスタコーヴィチを聴きに第一生命ホールへ。生誕100周年記念弦楽四重奏曲全曲演奏会ということで、なんと3日間5公演(つまりダブルヘッダーが2日ある)で番号順に全曲を弾き切るという企画。ワタシはその最終日の第13番~第15番だけを聴き、それだけで十分なくらい濃密な時間を堪能したんだけど、全曲聴いてたら第15番の終楽章に滂沱の予感。ていうか、これ、演奏会の前に紹介するべき話題だったなー、と今気がついて激しく後悔。5回セット券で5000円とかなってたし。
●アンコールに3年まえに発見された未完の弦楽四重奏曲(1961/62)。自筆譜には「弦楽四重奏第9番作品113」と記されているそうだけど、未完成に終わってしまったという曲。そんなものが聴けようとは。僥倖なり。
●今偶然発見したんだけどショスタコーヴィチの生年月日(1906年9月25日)って、園部三郎とまったく同じっすね。だからどうってことではないが。
●恒例、DHC FROM 40にて連載「オトナのためのクラシック音楽入門」第22回掲載中。
なかた2号の青春
●「今ならこの便利なデジカメ付き電気布団圧縮機に加えて、なんと、電子辞書宇宙語256言語収録版が無料でついてちょうど65536円! 1024回払いの金利手数料はジャポネットが負担します」。朝から晩まで見かける通販番組に「ジャポネットなかた」(仮称)があるとしようじゃないか。テレビ世界において、民放キー局からローカル局、さらには地元CATV局まで、隙間やら深夜やら人気薄めな時間帯を席巻するのは通販番組、そしてキング・オブ・通販番組、それが「ジャポネットなかた」だ。
●「ジャポネットなかた」のボスは喋りが上手い。喋りのヴィルトゥオーゾ。立て板に水、ってのとは少し違う。軽く訛りが入っていて、それがまた親近感と味わいを増すというものであり、たとえるならベルリン・フィルよりウィーン・フィル。ワタシはボスなかたの語りに耳を傾けているうちに、すっかり魅了され、手は勝手に電話の受話器へと伸びてゆく。おかげでワタシの部屋には使いもしない電子辞書とデジカメがうずたかく積まれている(ウソ)。
●だがワタシはボスの手下の者どもが苦手なのだ。最近ボスよりずっと出番が多い、なかた1号となかた2号。二人ともがんばってるのであろう、しかし君らの喋りにはボスのような催眠効果はない、それどころか、仕事熱心なあまり絶叫調になり、おかげでワタシは無駄遣いをしなくなった。甲高い声が耳障りに聞こえてくる。キィーーッ! そんなふうに叫んでればモノを買わせられるとでも思うのかね、1号、そして2号。ああ、うるさい、物欲が萎える。NHK-BSでテレビ体操でも見るか……。
●と、1号および2号に辟易していたのであり、長らく「ジャポネットなかた」を見ることはなかった。が。恐るべきことである、昨日見てしまったのだ、なかた2号がデジカメを売っている番組を。キィーーッ!ってなるかと思ったら、ならなかった全然。2号の喋り、それは優しくて、滑らかで、穏やかに視聴者を包み込むかのようであり、そして肝心のプライス発表クライマックスには自然体のままでありながらワタシの気分を高揚させるという奥義まで披露してくれた。2号はもはやあの2号ではない。経験の浅い若者を侮るのは銀河一の愚か者のすることである。出藍。これをアルファ・ケンタウリ語に翻訳させてみよう、あの電子宇宙語辞書で。
Re:アマデウス・ブログ
●君はもう見たか>アマデウス・ブログ@nifty。モーツァルトご本人のブログ。「プラハでちょっと元気になりました」とか。オマエは金田かっ!(←ドラマ「結婚できない男」ネタ)
●そうかー、アマデウス、弦楽五重奏書きたくなったかー。弦4本で十分だと思うんだけど、なにが不満なんだろか。で、5本目はヴィオラなのかチェロなのか。絶対ないと思うけど、第3ヴァイオリン加えて弦楽五重奏だったら笑うぞ。
●ブログになってると自然と時系列ってのを意識して読むからおもしろいっすね。どうせならブログのエントリーの日付も2006年じゃなくて1787年とかに捏造しちゃえばいいのに、と一瞬思ったが、そこまでやるとRSSリーダー等、外側のシステムと噛み合わなくなるからダメか。
●似た試みとして、プロコフィエフの日本滞在日記というのもある(制作者のお名前もプロフィールも載っていないのが残念というかもったいない)。過去記事の1918年5月~8月の項をクリックすると、大正期の日本に滞在した(本物の)プロコフィエフの日記を読める。
Do or do not. There is no try.
●メールの詳細ヘッダというのをフツーの人はどれくらい見ているものか知らないが、ヘッダのX-Mailer: の項を見ると、差出人がどのメーラーを使っているかがわかる。Microsoft Outlook Express 6.00とか書いてあるわけだ。メール・マガジンなんかだとこの項目はない場合もあるし、なにか固有のヘッダがついている場合もある。
●で、ふと気がついた。ミクシィから日々送られてくる [mixi] コミュニティ・ニュース のX-Mailer: には Do, or do not. There is no try. と書いてある。なんじゃこりゃ。「やるかやらないかだ。試してみるなどない」。これ、有名な箴言かなにか?
●こういうときはネットはホントに役に立つ。ググってみると、ちゃんと見つかった。QuoteDB.com というのがあって、そこにも掲載されている。発言の主はJedi Master Yoda(笑)。スターウォーズ好きな方なら、どのシーンでのセリフかわかる。ヨーダのもとでルーク・スカイウォーカーが修行を積んでいる場面、スターファイターを念力、じゃなかったフォースで持ち上げるところだろう。ルークが「試してみる」っていうから、ヨーダが「やるかやらぬかだ。試してみるなどない!」と叱る。
●これがミクシィの社訓だったりするんでしょか。
真っ昼間に「ドン・カルロ」@新国立劇場
●新国立劇場の「ドン・カルロ」へ。昨日が最終日。平日昼公演である。もちろん「ドン・カルロ」も観たかったのだが、平日の昼間の客層を自分の目で確かめたかったのでこの日に。おー、なるほどー。やっぱりリタイヤ組、60歳以上と思われる方々が多いなあ……って、普段と同じか(?)。若者率は同じくらい。30代、40代の男性がやはり少ないようではある。空席もあるにはあるが、でもまあほとんど埋まってるわけだから、東京のオペラ人口ってスゴい。この「ドン・カルロ」だって6公演もやってて、いちばん集客力のなさそうな平日昼でこれだけ埋まるんだから。
●しかし平日の真っ昼間から「ドン・カルロ」ってどうよ、って気もする。昼っていうか、明け方まで仕事してたから個人的には朝っていうか、朝寝朝酒朝風呂朝オペラじゃ人として堕落しすぎだろ、みたいな。いや朝酒も朝風呂もしてないけど、なんとなく。なんかこう、「ドン・カルロ」だからウォオオーって熱く血がたぎるような思いをしたいわけっすよ、ホントは。劇場出たら気分は登場人物になりきって、男ならロドリーゴ、友のため理想のためなら死ねる、女ならエボリ公女、「この私の美貌はなんて罪深いのかしらっ!」と嘆く。そうありたいわけだが、起動したばかりのワタシの血圧は低く、テンションはイマイチ上がらなかった。きっと昼だったから。なのか。かな。かも。
●昼公演の楽しみ。喫煙コーナーの扉の向こう側に行く(非喫煙者でも)。あの扉の向こうは中庭である。タバコ臭いどころか、野外の新鮮な空気を吸える(逆に劇場内に戻るときに一瞬「ウッ」ってなるくらい)。青空を眺めながら休憩できる。吉なり。
朝から晩まで筋肉がミシミシと
●いつもそうなのだが、草サッカーをした翌日は寝不足になる。疲れ果てて、あまり眠れないから。興奮状態が続いてしまうのか、悔しさのあまり枕を濡らすからなのか(ウソ)。全身は激しく筋肉痛。起きただけでミシミシ。着替えるだけでもミシミシ。一仕事してミシミシ。
●で、昨夜録画しておいたドラマ「結婚できない男」最終回を見る。録画って時点でテンション下がりそうなものであるが、冒頭シーンがいきなり強烈。信介、プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」のアリア「私のお父さん」を聴きながら、一人手巻き寿司。ウニ、イクラ、トロ、旨そうな食材ずらり並べて一人手巻き寿司。この喜びはだれとも分かち合わないぜー、みたいな。信介、嬉しそうである。
●その後、いくつか秀逸な小ネタをはさみつつ、テレビドラマ的展開を一通り経て、無事ハッピーエンドに着地。ヨハン・シュトラウスの「皇帝円舞曲」なんて何年ぶりに聴いただろう。いい曲なんだよなー。シュトラウス・ファミリーのワルツのなかではこの曲がいちばん好きかもしれん。あとはベートーヴェンの交響曲第7番。しかし録画で見ていると、お約束的展開の部分は早送りでドンドンすっ飛ばしたくなるのが困りもの。
●夜、麻布十番へ。国際文化会館で内田樹&柴田元幸対談による「文学の力、翻訳の力」セミナーを聴講。至言の数々を脳内メモ。ひとつ晒すと「これを読んでいてわからないのは、私が悪いんじゃないかという思いを読者にさせない」。リーダブルな翻訳っていう話題から出てきた話かと思うが、翻訳に限らず言える。あと、柴田氏の翻訳スピードが異様に速いっていう話で、原書読みながらチラシの裏にでも(笑)訳文をダーッと書いて、わかんない漢字があったら脇にヘンカンって印つけておくと、後は奥さんがPCで清書してくれるってのもおかしかった(もちろん後で推敲する)。あ、書いてみるとそんなにおかしくないか。これは話し言葉じゃなきゃな。
草サッカー、伝説は今日も舞い降りない
●無力感、敗北、悔悟、恥辱、筋肉痛、かすり傷、擦り傷、腰痛。草サッカーから得られるものは多い。これらはなんと甘美なものであろうかっ! あなたにも分けて差し上げたい!
●全身、疲れ切っている。走れない、走る、でも走れない、でも走る。帰宅して、体重計に乗る。昨日とピタリと同じ数字が表示されるという不条理。世界の悪意を感じる瞬間である。
●5ヶ月ぶりの草サッカー、今回は初めての対戦相手、未知であり、こちらには強力助っ人が加わるが、しかし頼みの若手勢が不参加。15分×4本で0-5だったかな? 何点取られたということよりも、こちらが連続無得点であったことが悔しく、さらに言えば自分的になにもできなかった感という点で記録更新であって、もはや豊かな妄想力によって脳内伝説を構築することもできない。反射神経が極度に鈍っているのも問題である。格闘ゲーとかシューティングとかしたほうがいいのかなあ(←ダメくさい発想)。
●でも草サッカーは偉大だな。たとえ今はなにもできなくても、思い出だけでもご飯3杯はおかわりできる。オレ専用サンチャゴ世田谷ベルナベウは記憶の中で永遠に輝き続けるのだ。
「このとき私は、たった一日だけしか生活しなかった人間でも、優に百年は刑務所で生きてゆかれる、ということがわかった。そのひとは、退屈しないで済むだけの、思い出をたくわえているだろう」 (「異邦人」アルベール・カミュ/新潮文庫)
「マッチポイント」(ウディ・アレン監督)
●映画館で「マッチポイント」。ウディ・アレン監督だが舞台はニューヨークではなくロンドン、音楽はジャズではなくてなんとオペラだ!
●主人公クリスは元テニス・プレーヤー。シード選手になれるほどの成功は収められず、引退して高級テニス・クラブのコーチへ。ここで名家ヒューイット家の息子トムと出会い、その妹クロエに気に入られる。野心を持って上流階級の一員となることを企てるが、トムの婚約者ノラと恋に落ちる。クロエかノラか、地位と愛欲の二者択一を迫られる、というお話。
●主人公クリスがヒューイット家に気に入られるために、付け焼刃的にドストエフスキーの「罪と罰」およびそのガイド本(笑)を読んだり、「オペラが好きなんだ」とか言っちゃうあたりとか、かなり良いのであるが、たとえばオペラの使い方。次々とオペラの名アリアが出てきて、それがストーリーと関連しているっぽい、というか、この映画、途中から突然、ストーリーそのものがイタリア・オペラになる。欲望、情熱、嫉妬、裏切り、××……とオペラ的要素満載。相当気が利いてておかしい。曲はドニゼッティの「愛の妙薬」から「人知れぬ涙」、ヴェルディ「トロヴァトーレ」から「激しく襲いかかり」他。エンリコ・カルーソーの音源がいくつか使用されている。
●物語のテーマは運(運命)。序盤で主人公クリスが言うように、人は人生のどれほど多くが運によって左右されているか、これを知ることを恐れる。運とは自分ではどうすることのできないもの。アイルランドの庶民に生まれたクリスは、自分の才能と努力によってテニス・プレーヤーとしての道を切り開いてきた人間であるからこそ、運(運命)の恐ろしさを知っている。一方、クロエはヒューイット家の一員として生まれた時点で物事は自分たちの支配下にあって、いくつかのエピソードで描かれるように運命を受け入れるという考え方を持てない。アメリカ人で女優の卵であるトムの婚約者ノラは、日々オーディションを受けながらチャンスを求めるのだから、彼女にとって人生が運に左右されることなんてのはごく当然のこと。だからクリスとノラのほうが多くを共有できる関係にある。でもなー、やっぱり地位やお金は欲しいものだよなー。あー、迷走するダメ男、そんなことしちゃうのか、ドキドキ。
●この話、いったいどんな結末に収まるのかと心配しながら見てたんだけど、これがまた実に鮮やか。シンプルなんだけど、シンプルじゃない。傑作。
今週のゴールとゴールとゴール
●しばらくきちんとサッカーの試合を見れてないんだけど、チラチラと眺めてて自分的にグレートだと思った3人のプレーヤーを備忘録的に。
●その1。柿谷曜一朗(セレッソ大阪)。AFC U-17選手権決勝でニッポンU-16が優勝。このチーム、凄まじい試合を重ねながら勝ち上がってきてるみたい。大会MVPになったのが柿谷曜一朗。ハイライトシーンをいくつか見たけど、シュートが上手い、パスも出せる、ドリブルも良くて、すごい才能が出てきたなと。水沼ジュニアも楽しみだが、柿谷はもっと楽しみ。次の「黄金世代」はこの年代かも。
●その2。中村俊輔。マンチェスターユナイテッドvsセルティック@チャンピオンズ・リーグ、久々に俊輔見たけど、やっぱりエレガントだ。オシム・ジャパンのだれよりも上手い。去年レアル・マドリッドにいたグラヴェセンがセルティックに移籍してて、彼みたいな選手がガンガン当たってくれると、俊輔みたいなプレーヤーが一人いても「美のために死ぬ」ことにはならない。ていうかグラヴェセンのミスパスで決勝ゴール奪われてるし。俊輔がフリー・キックを決めた瞬間は鳥肌モノだった。美しすぎる、罪なくらいに。
●その3。久保竜彦。福岡対マリノスの試合、相手DF柳楽(まだ20歳)の執拗なマークにブチ切れて、ビンタ&頭突き3発で退場……って、これじゃない。そうじゃなくてゴールのほう。右から左へグラウンダーで流れてくるボールに対して、腰をギュルルルルと回転させながら左足のダイレクトでループシュートを打った。キーパーの頭上を越えてゴール。そんなの見たことないって。ありえないような難度の高いゴールを決めるのが久保。たまーに一瞬アンリが憑依するし。
なぞなぞ姫の舞台稽古。フィレンツェ歌劇場「トゥーランドット」ゲネプロ
●ガイジンさんが漢字Tシャツを喜んで着てたりするじゃないっすか、「鯖」とか「鬼嫁」とか意味不明な漢字なのに。あるいはタトゥー。「愛人」とか「腕白」とか彫っちゃってて、オレってクールみたいな。ワタシらもその逆でヘンテコ英語とかで喜んでたりするわけで、エキゾティシズムって偉大だ。こういうのって、ヘンな漢字で脱力したりするけど、でも立派な漢字だったらいいかっていうと、それもまた物足りない気もするから、西洋から見たオリエンタリズムが東洋人によって矯正されるのも良かったり寂しかったりでビミョーかもしれん。
●さて、フィレンツェ歌劇場「トゥーランドット」の公開ゲネプロを見に神奈川県民ホールへ。メータ指揮、チャン・イーモウ演出、アレッサンドラ・マーク(トゥーランドット)、カール・タナー(カラフ)、ノラ・アンセレム(リュウ)他。
●このプロダクションは2001年にも来日公演があったけど、当時と今じゃ一般の人々の「トゥーランドット」認知度が象と蟻ほど違う。なんつっても、あの「誰も寝てはならぬ」の「トゥーランドット」なんだから。カラフが歌い始めると、客席がみんなでイナバウアーしながら「♪ネッスンドルマ~」って一緒になって歌い出す……わけないよ。んなわけない、んなわけない。
●でも隣に軽く元ヤン入ってそうなご夫婦が座ったんすよ。で、幕が開けると、フツーにしゃべってたね、二人で。「あんまりよく見えないわねー」「おう、あれがトゥーランドット姫だ」。いや、それリュウだから。ていうか、全然フツーにしゃべってた。1階の前のほうの空席に移動したらしく、2幕には姿が消えていた。フツーに音楽に興味がない人が見れば、舞台を見ながらストーリーを追うわけで、まさか周りの客が音楽を聴きに来ているとは思いもしなかったんじゃないだろうか。ある意味、世間の真実。
●このチャン・イーモウの「トゥーランドット」は、1998年に北京の紫禁城で上演したっていう一大イベントがあった。あれはいろんな意味でスゴかった。本公演の模様もDVDになっているのに加えて、メイキング映像を映画として公開、ワタシはこの映画をわざわざ渋谷の映画館に見に行った。当サイトではこの映画を2002年に記事にしている→「トゥーランドット」。さすがに音楽ホールで上演するときは紫禁城みたいなスペクタクルにはならないにしても、舞台美術、衣装は実に美しい。
●大道具的には「特大拷問図鑑」が出てくるのがステキ。リュウにカラフの名前を教えれって脅す場面だったかな。チラッとしか見せてくれないけど、釜茹での刑とか截舌の刑と思われるイラスト入り。あんなの見せられたら光速で「この人、カラフでーす」って白状しちゃう、きっと。
●「トゥーランドット」は音楽的には最強で猛烈大好きなんだけど、無鉄砲な若者の物語だから「ファルスタッフ」みたいな味わい深さはないっすね。もうカラフはさー、なぞなぞ解いた勢いに任せて「オレの名前を当てたら、死んであげてもいいよ」って言っちゃうけど、その時点で自分の親父とリュウの命を危険に晒してるって、どうしてわかんないかなー。あんたみたいな人と一緒に仕事するのは絶対ヤだね。調子こくときは落とし前も自分で取れるっていう範囲でやってくんなきゃ。どうするの、リュウみたいないい子が自害しちゃったよ。そもそも周りにこんなに美女がいっぱいいるのに、トゥーランドットがいいってどういう審美眼なのさ。あー、パワフルな若者ってめんどくさい、っていうか怖いよ。
●↑こりゃまた世にも珍しいオペラの感想文だなー。バカすぎ(笑)。
フィレンツェ歌劇場「ファルスタッフ」(ルカ・ロンコーニ演出)
●文化会館でフィレンツェ歌劇場来日公演「ファルスタッフ」。メータ指揮、ルカ・ロンコーニ演出、ルッジェーロ・ライモンディ、バルバラ・フリットリ、ステファニア・ボンファデッリ他、大変豪華。期待以上のすばらしさで満喫。ああ、ワタシも「ファルスタッフ」を楽しめるくらいオッサンになってしまったということなんであろーか。
●ファルスタッフという人物像、下品で狡猾、好色、大酒飲み、自惚れの強い肥満の老騎士であってもちろんヤなヤツではあるんだが、でも根本的には憎めない魅力的な人間でなければこの話は成り立たない。老人力の一歩手前、オヤジ力が高いっていうか、機智と知恵はあるから、コミカルかつアイロニカルな物語が生きる。ルッジェーロ・ライモンディはそういう意味で完璧にファルスタッフだった。「♪ノーフォーク公爵の小姓だった頃は痩せていた、美しくて軽くてやさしい蜃気楼のように」って歌う場面なんて、最高に笑える。オペラって笑いがやたら安い傾向があるじゃないっすか。ヘンな仕草とか声でおどけてみせて客席の笑いを強要するみたいなのがワタシは耐えられないのだが、この「ファルスタッフ」にはそんな場面はなかった。
●あっ、以下、演出上のネタバレを一部含むので、これから公演をご覧になる方は読まないほうが吉。圧倒的に。
●フリットリのアリーチェとボンファデッリのナンネッタはちゃんと若いお母さんとその娘に見えるからスゴい。ボンファデッリが華奢で美しいからなんだけど、ところがその恋人役フェントンのダニール・シュトーダ、この人が全然青年に見えない。なんだこりゃ、他のキャストは全部役柄にふさわしいのに、こんな中年太りが進行中のフェントンでいいのかね、なんだかナンネッタを抱くときの手つきもオヤジくさいし、衣装も一人だけありえないダサさだし、なんだかなーと最初は思ったのではある。が。
●第3幕に仕掛けがあった。ガーター亭の部屋からウインザーの森に場面転換するところ、あそこでなんとファルスタッフが眠っているベッドだけを取り残して、森に転換するのである。舞台は森だけど、ファルスタッフはベッドでずっと眠ったまま。つまり、第3幕はファルスタッフの夢ということになる。では夢のなかでの主人公はだれだろうか。第3幕に最初に登場する人物と考えるのが自然だ。フェントンとナンネッタ。二人を主人公とするならば、この幕は恋する若者が結婚に反対するお父さんをだまして結ばれるというラブ・ストーリーである。夢の中でファルスタッフはフェントンになっている。ああ、フェントンとはヤング・ファルスタッフだったんだ。なるほどー、だからフェントンは野暮ったいヤツとして描かれていたのかー。もちろんファルスタッフは途中からベッドから起き上がり、本来オペラに含まれるファルスタッフの役を歌う。
●夢の中では、自分が演じる一人称の役柄があって、それとは別に神視点での自分本人が同時に存在するというのは、よくあること。この夢の第3幕では前者がヤング・ファルスタッフたるフェントン(ノーフォーク公爵の小姓だった頃を思い出して見た夢だろうか)、後者がファルスタッフ自身。この夢は大変都合よくハッピーエンドで終わる。夢なんだし。
●でも待てよ。夢に入る前、現実のファルスタッフはどこにいたか。ベッドで寝込んでいたのだ。なぜ寝込んだかといえば、洗濯籠ごと川に捨てられるという酷い仕打ちを受けたから。じゃあ肺炎でも起こして寝ている病人の願望充足夢だったのかと思うとこりゃずいぶん辛辣な話になってしまうじゃないか。そんなシニカルな要素はこの話にはないだろう。ファルスタッフは嫌われたり愛されたりしても、孤独な人物であるはずがない。行け、ジョン。夢なんか見てる場合じゃないぞ……。いや、でもまあ、いいか。夢でも現実でも大したちがいはない。人生なんてみんな悪ふざけだ(って歌ってるんだから)。
●↑と、勝手に解した。あ、オペラの感想を書いてるのに、一言も歌に触れてない(笑)。
スプーンとお箸は不要で、ポイントカードはお持ちじゃありませんよね
●えっ、次で最終回なのか>阿部寛「結婚できない男」。こんなにテレビドラマを見てしまったのは久々であるなあ。今回も阿部寛演ずる桑野信介が気持ちよく指揮マネ全開、曲はドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。こんな風にドラマの中でチラッと出てきただけで、「おお、ドヴォルザーク、やっぱりいいなあ」と思えるワタシ/あなたは幸せ者。
●今回ウケたのはコンビニのシーン。うんざりするほどマニュアル通りの応対しかしない(「スプーンはよろしかったですか」「ポイントカードはお持ちですか」)のがコンビニの店員であって、店員と桑野信介の間にあるコミュニケーションなど本来ゼロといってもよいはずのものだったのに、ある日、店員のいつもの女の子がむさ苦しい野郎に変わってて、はじめて気づく。コンビニ店員と客みたいな希薄な人間関係が失われただけで、微かながらも孤独の気配が漂ってしまうとは、なんつーことかと。あー、自分は周囲の仲間たちに恵まれていたのだなあ、人は社会的な生き物であるなあ、そんなことをよりによってコンビニ店員の不在で感じてしまうおかしさ。いいっすね。
●「結婚できない男」が終わったら、次は毎週「のだめカンタービレ」見ちゃうんだろなー。うう、テレビ見すぎ。
あなたは56%の確率で男性であり、44%の確率で女性である
●ピカ!ゴロ!ズズズドン。昨日明け方の雷は凄まじかった。あんなに長時間連続して光っぱなしの雷ってのも珍しい。ていうか、初めて。しばらく雨が降らずに空が光り続けていたから、なにが起きたのかと。時々刻々と関東地方に落ち続けた雷の模様は、サンダー・ドット・エヌイー・ドット・ジェーピーにて。3分後との観測によって、関東地方以外のみなさまおよびピカゴロしててもぐっすりお休みになれたみなさまにも二次元的に追体験していただけます。→ ピークの午前3時30分あたり。恐れよ。ピカ。
●ウワサのMicrosoft adCenter LabsのDemographics Predictionを試してみた。URLや検索キーワードを入れると、ユーザーの男女比、年齢層を統計的に推定してくれる。一ヶ月間のMSNサーチのログをもとにした分析。アルゴリズムの詳細はよくわからない。
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年齢:18歳未満が最多
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年齢:18~24歳未満が最多
●ウチのサイト、18歳未満とか18~24歳未満とかやたら若い数字が出てギクッとしたのだが、おおむね音楽関係の人物名を入れると若い年齢層がヒットする。むしろウチは18歳以下から50歳以上にまで万遍なくユーザー層が広がっている(といってもサイトに対応するMSNの検索キーワードがそうであるというだけで、実際にどうかは知らない)。
●作曲家名を欧文で入れるとほとんどの場合女性が多く出るのだが、カタカナで入れると男性のほうがずっと多くなる。これはなにを意味してるんだろか。
おでん缶が目の前でビュンビュンと
●ひっさしぶりに秋葉原に行ってみた。なんと、つくばエクスプレス開通以来一度も足を運んでいなかったのだ(すっかり脱アキバ)。まず、かつてはあまり用事のなかった南東側の巨大ヨドバシカメラへ。上に書店とタワーレコードがあるから、個人的には物欲の大半をこのビルで充足可能である(涙)。便利だ。が、これでは新宿となにも違わないのであって、ウチからより遠いアキバに来る理由はない。さっさと電気街へ。
●で、驚いたのだ。電気街口とか、大変なことになっている。よくわかんないアイドル志望の女のコとか歌ってる女子中学生グループとかメイド喫茶の店員さんの呼び込みだとか、一見ヲタク都市ならではの健全なる混沌と見えるが、少し違う。なんつうか、これ、すっかり観光地化してる混沌って気がする。ヲタク集結趣都だったところに、ヲタ生態を見たいって思うフツーの人がたくさん押し寄せて、アキバはその期待に沿うリアクションを取り続けているというか。
●あと「おでんの自販機」がどうなってるかなーと思ってたら、あれは健在だったんだけど、それ以前に各店頭で山のように売られてるんすよ、おでんの缶詰が。しかもこれが飛ぶように売れていく。目の前でビュンビュンとスゴい勢いで。おでん缶が観光地の饅頭の役割を果たしている。
●しかもヘンなもの、見ちゃったんですよ、ジャンクとかバルクとか軒先に並べてるような小さなお店の前で。セールの看板持って立ってるアキバっぽいお兄さんのところに、全然アキバっぽくない脂ぎったオッサンが歩み寄ってきて、ドスの利いた声で一言。「おう、兄ちゃん、このヘンでいいコのいるメイド喫茶、どこ?」。ここは歌舞伎町かよっ! それ、秋葉原と違うから、ノリ的に。でもお兄さんはすらすらっとよどみレスに返答、もう毎日何回も同じ質問されててメイド喫茶案内所状態であること確実。気の毒なことである。
●これに比べると中野は平和なヲタクの街だなー。PC系が皆無なのが惜しいけど、怪しさでは負けていない、たぶん。
アイイーッ!
●B-ingのショッカー戦闘員CMがおもしろすぎる。いっぱいあるけど、「かばん持ちをするショッカー」篇がいちばん笑える。「上司に恵まれないショッカー」篇も傑作。
●若者向けにご案内。11月のテミルカーノフ指揮サンクトペテルブルグ・フィルによるTDKオーケストラコンサート 2006、「公開リハーサル&コンサート」に学生さん150名様をご招待。応募資格は中学生以上で、音楽を学んでいる、またはアマチュアで音楽活動をされている学生の方(当日要学生証)。
●超名曲コンピ、I LOVE CLASSICS、おかげさまで好評発売中。これ、3枚組なんだけど、ケースが4枚組のを流用するんじゃなくて、1枚×3pで本みたいに片開きになっているのがなかなか良いかも。
●今季、WOWOWがスペイン・リーグの放映権をいまだ獲れず。いやー、もうリーグ戦始まってるのに。もしこのまま放映権を獲得できなかった場合、WOWOWからサッカー中継が消えてしまうのだが、どうしようか。サッカーだけが目的で入ってたのに、気がついたら映画やドラマも案外見ちゃってるからなー。すっかりワナにはまってる感じ。祈、権利交渉成功。
どこかで見た光景。イエメンvsニッポン@アジア・カップ予選
●「ギリシャ神話に似た話があるが、エネルギーが大地からわき上がって全身を満たすということが、ホームでのイエメンに起こるかもしれない」とオシムが語っていた通りになった。イエメンvsニッポン。ていうか、ニッポンが大地からエネルギーを吸い取られてたのかも。エナジー・ドレインくらってぐったりレベル・ダウン。
●とはいえ、ニッポンのほうが強いってのもまた明らかで、イエメンにあったチャンスは勝利というよりはせいぜい引き分け。サウジ戦に続いて、ニッポンは決定機はあるのに決められない。こっちが疲れてきて、でもよく見たら向こうも疲れてて、もう最後は時間がないから時計を見ながらパワープレイ、ボールをゴール前に放り込んでたら後半46分というロスタイムに我那覇ゴール、うぉ、やった、1-0で劇的な勝利だ……あれ? これ、前回のアジア・カップでのジーコ・ジャパンも毎試合こんな感じで戦ってなかった? なにもかも変わったようで、なにも変わってない、みたいな。
●注目の大熊監督、いや大熊コーチ。今日はベンチに座って静かだなあ、と思っていた。やっぱり前の試合でやりすぎて怒られちゃったのかなあ、それとも空気が薄くて声出ないのかなあ。が、終盤ニッポンがパワープレイに入ってからは大熊絶叫ショー。「啓太、スペース」「遠藤、サイド!サイドから高いボール!」「加地、その辺から!」「佐藤!」「遠藤!」。シャウト大熊の大声が一人でイエメン大応援団を圧倒。空気の薄さも全然感じさせない! しかもこれで1点取って勝っちゃうし。オシム・ジャパンなのにシャウト大熊。一粒で二度おいしい。いいのか。
♪フィ~ガロ、フィガロフィガロフィガロ、フィーガロ
●もうすぐこのドラマ、終わるんだよなあ、阿部寛主演「結婚できない男」。いよいよエンディングに向けてテレビドラマ的に本筋部分が盛り上がってきたため、小ネタが控えめになってきて少し寂しい。いや、でも十分楽しんでるんだけど。
●さて今週登場の曲は、ロッシーニのオペラ「セビリアの理髪師」から「私は街の何でも屋」。「♪フィ~ガロ、フィガロフィガロフィガロ……」って歌ってるところに、信介がボソリと「違うな」と言ってストップ。そんな愉快な音楽を聴いている場合ではない。
●ロッシーニの「セビリアの理髪師」にはフィガロが登場する。フィガロといえばモーツァルトの「フィガロの結婚」。登場人物が共通する。これはともにボーマルシェの戯曲が原作で、「セビリアの理髪師」の続編が「フィガロの結婚」である。ってのはクラヲタ的にはみんな知ってるわけだけど、ワタシはこれを最初に知ったときには結構違和感があった。音楽史的にはモーツァルトの「フィガロ」のほうが先になのに、物語的にはロッシーニの「セビリアの理髪師」が先。ヘンなの。
●ちなみにボーマルシェの戯曲は三部作である。「セビリアの理髪師」「フィガロの結婚」と来て、おしまいは「罪ある母」。どんな話か調べてみると、なかなかヤな感じっぽくて凶。時代設定は「フィガロ」から20年以上も経ってて、伯爵夫人はケルビーノと不倫してて、二人から不義の子レオンが生まれ、これを苦にしたケルビーノは自殺(ええっ)。一方伯爵はレオンが実の子ではないと知り冷遇、代わりに他の女に産ませた子供を養女に迎えて溺愛。そんな背景で、レオンが成人したところから戯曲は始まるそうだが、なんだか「セビリア」や「フィガロ」と雰囲気が違ってそう。こりゃだれもオペラ化しなかったわけだ……。
●いや、しかしこの「罪ある母」もオペラの一部にはなっている。アメリカの作曲家ジョン・コリリアーノのメト創立100周年委嘱作「ヴェルサイユの幽霊」、このなかの劇中劇として「罪ある母」が出てくる……ようだ。このオペラ、以前レーザーディスクでは出てたけど、ワタシは惜しくも見逃してしまった。DVD化は少なくとも日本ではされていないと思う。
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●音楽配信サイトMaXMuse クラシック・コーナーにて、さっくりとオペラ特集掲載中。どぞ。
われわれは現実からスタートする。サウジアラビアvsニッポン@アジア・カップ予選
●ラリホーマ! 深夜の試合を生中継で見てしまったら、昨晩ここを更新せずに寝てしまったではないか、もうこれはフテ寝なのか、横になってワタシは呻く、「ウウ、ウウグググ、アル・ドサリめ……」、枕を濡らしながら。ウソ。
●このアジア・カップ予選、公式戦なんだけどなんだか「どうせ予選は通過するでしょ」的な空気が漂ってるのが軽く気になる。アウェイでのサウジアラビア戦、ついに負けてしまったか。結果は0-1。不思議とニッポンはサウジに対して戦績がいいのだが、やはりアウェイとなると苦しい。
●メンバーはこう。GK:川口-DF:加地、坪井、トゥーリオ、駒野-MF:阿部、鈴木啓太(→羽生)、遠藤ヤス、アレックス-FW:巻(→我那覇)、田中達(→佐藤寿)。試合後にオシムがすべてを解説してくれているように、チャンスは十分あったけど、ミスが多かった。でもそう心配する結果ではなくて、内容、サッカーの質、さらには運動量でもニッポンが相手を上回っていた。なんどもあった決定機に決められず、一方向こうは幸運に助けられたゴールをひとつ決めた。よくあることで、これがワールドカップ予選じゃなくて良かったという気もする(それだけアジア・カップの予選は軽く見ちゃうってことでもある)。もし次のイエメン戦に負けたりすると急に大変な事態になってくるが……。
●オシムの会見でおもしろかったのは、「結果として負けたのだから、ジャーナリストの皆さんは怒って、もっときつい質問をしていいと思う」っていうあたり。オシムは教師役になってて、負けた試合なんだから厳しい質問が来るものだろうってジャーナリストに教えてくれて、さらにそういう質問が来た場合に自分が答える回答もしてくれる、「ブラジル代表じゃないんだから、現実からスタートしなければならない」と。一人何役もやってる感じで、選手に対しても日本人コーチに対してもメディアに対してもサポーターに対しても、オシム先生。
●あとニッポン代表のベンチで試合中ずっと大熊コーチがシャウトしていたのがおもしろかった。オシム「エンドー、エンドー」。大熊「遠藤! 遠藤!」「集中!集中だぞ!」「飛び込むな、飛び込むな」「サイド! サイド使え!」「トゥーリオ行くからな! おい、トゥーリオ上げたぞ」「上げろ上げろ!」。大熊さんの役割は通訳なんだろうか裏監督なんだろうか。あるいはダバディ役なのか。オシムがしまいに「うるせーぞ、クマ!」とか言わないかとドキドキ。でも大熊さん、ファンです。
スーパーマン・リターンズ(ブライアン・シンガー監督)
●劇場公開中の映画「スーパーマン・リターンズ」。なんの予備知識も持ってなかったので意表を突かれたんだけど、これは78年と80年のクリストファー・リーヴ版「スーパー・マン」の直接的な続編になってる。スーパーマンのリメイクはもっと前にもいくつもあるだろうけど、あくまでリーヴ版2作の続き。だからオープニングがアレなのだ。78年版のプレCG時代に観客を驚かせた、立体的なゴシック体の欧文が宇宙空間で彗星のごとく尾をひいて流れるオープニング。そして音楽がジョン・オットマンとクレジットされているのに、オープニング・テーマはヒットしたジョン・ウィリアムズ作曲のテーマ(同時期にさらにヒットしていた「スター・ウォーズ」の自己複製みたいなヤツね)、さらにロイス・レインのテーマ(愛のテーマ)も同じ! 懐かしすぎる。これは80年代ノスタルジー映画なんじゃないだろか。そろそろまた夜空を飛んでもいいかなエヴリバディ!て感じ? リーヴ版を知らない世代の人にはウケない気がする。
●じゃあリーヴ版を知ってる世代の人にはウケるかというと、やっぱりウケないかも。ネタを割れないので言えないが、あの物語設定は超人ヒーローの冒険譚とは相容れないものがあるし、なぜか78年版ほど「オレも赤パン履いたら空を飛べるかも!」っていう気になれない。これは自分が年を取ったってのと違って、CGでなんでも描ける時代ゆえの難しさなんじゃないだろか。ただ小ネタの部分、クスリと笑わせるところはかなり秀逸。笑えるってのはいい。
●ところで「スーパーマン」といえば思い出すのがBBCのコメディ「モンティ・パイソン」の「バイシクル・リペアマン」(自転車修理人)ネタ。舞台は全員がスーパーマンの国(だからクリプトン星なのか)。みんな胸にSをつけてマントをなびかせてる。で、あるスーパーマンが自転車に乗ってたら転ぶ。自転車が壊れる。スーパーマンたちはうろたえて困る。ああ、自転車が壊れてしまった、こんなときにバイシクル・リペアマンがいてくれたらなあ……。そこであるスーパーマンが電話ボックスに駆け込む(笑)。そう、彼は日頃ただのスーパーマンのようにふるまっているが、実はバイシクル・リペアマンだったのだ。自転車修理工の格好をして出てくる。「あれは誰だ?」「株のブローカーか?」「測量技師か?」「教区委員か?」「いや」「バイシクル・リペアマンだ!!」。彼は自転車を修理しては颯爽と去っていくヒーローだったのだ。
●やっぱり「スーパーマン・リターンズ」より「バイシクル・リペアマン」のほうが盛り上がれる、断然。
拡大するオシム・ジャパン
●オシムのニッポン代表、二川、西川、伊野波、梅崎の4名を初選出。いやー、またまた驚いたのである。二川はあるかなと思ってた、もっと早期に選ばれていてもおかしくなかったくらいで。しかし大分の西川、梅崎とは。キーパーの西川は若い年代の代表で活躍したから知ってるけど、梅崎って知らなかったっすよ。ああ、知らない選手がニッポン代表に選ばれたのは、ファルカン時代以来だなあ(←不吉なことを言わない)。
●とはいえ、ディフェンス・ラインは固定されている。左右にアレックス、駒野または加地、中央にトゥーリオと坪井。ていうか、メンバー24名のなかにセンターバックはトゥーリオと坪井の二人しかいないよっ! キーパーだって3人いるのに(笑)。痛快である。もっともトゥーリオと坪井になにかあったときは、MF登録の阿部と伊野波にセンターバックをやらせるってことなんだろう。それにしても大胆だな。
●あ、昨日のJリーグなんすけど、水沼新監督のマリノス、甲府に3-0で一見完勝したように見えるけど、それは違うと思うんすよ。このチーム、このままじゃ危ない。「鬼軍曹が去って話のわかる兄貴がやってきた」みたいな感じで、試合に出られるようになったベテラン選手がのびのびしすぎてるというか、実績重視になったからよかったよかった的なぬる~い空気が流れている気がする。ワタシの妄想かもしれん。だったらいいけど。山瀬や坂田がスポイルされませんように。
●甲府の右サイドバックの杉山新はスゴいってことは書いておく。ドリブル、スピード、運動量という点で。