September 16, 2006

なぞなぞ姫の舞台稽古。フィレンツェ歌劇場「トゥーランドット」ゲネプロ

●ガイジンさんが漢字Tシャツを喜んで着てたりするじゃないっすか、「鯖」とか「鬼嫁」とか意味不明な漢字なのに。あるいはタトゥー。「愛人」とか「腕白」とか彫っちゃってて、オレってクールみたいな。ワタシらもその逆でヘンテコ英語とかで喜んでたりするわけで、エキゾティシズムって偉大だ。こういうのって、ヘンな漢字で脱力したりするけど、でも立派な漢字だったらいいかっていうと、それもまた物足りない気もするから、西洋から見たオリエンタリズムが東洋人によって矯正されるのも良かったり寂しかったりでビミョーかもしれん。
フィレンツェ歌劇場●さて、フィレンツェ歌劇場「トゥーランドット」の公開ゲネプロを見に神奈川県民ホールへ。メータ指揮、チャン・イーモウ演出、アレッサンドラ・マーク(トゥーランドット)、カール・タナー(カラフ)、ノラ・アンセレム(リュウ)他。
●このプロダクションは2001年にも来日公演があったけど、当時と今じゃ一般の人々の「トゥーランドット」認知度が象と蟻ほど違う。なんつっても、あの「誰も寝てはならぬ」の「トゥーランドット」なんだから。カラフが歌い始めると、客席がみんなでイナバウアーしながら「♪ネッスンドルマ~」って一緒になって歌い出す……わけないよ。んなわけない、んなわけない。
●でも隣に軽く元ヤン入ってそうなご夫婦が座ったんすよ。で、幕が開けると、フツーにしゃべってたね、二人で。「あんまりよく見えないわねー」「おう、あれがトゥーランドット姫だ」。いや、それリュウだから。ていうか、全然フツーにしゃべってた。1階の前のほうの空席に移動したらしく、2幕には姿が消えていた。フツーに音楽に興味がない人が見れば、舞台を見ながらストーリーを追うわけで、まさか周りの客が音楽を聴きに来ているとは思いもしなかったんじゃないだろうか。ある意味、世間の真実。
●このチャン・イーモウの「トゥーランドット」は、1998年に北京の紫禁城で上演したっていう一大イベントがあった。あれはいろんな意味でスゴかった。本公演の模様もDVDになっているのに加えて、メイキング映像を映画として公開、ワタシはこの映画をわざわざ渋谷の映画館に見に行った。当サイトではこの映画を2002年に記事にしている→「トゥーランドット」。さすがに音楽ホールで上演するときは紫禁城みたいなスペクタクルにはならないにしても、舞台美術、衣装は実に美しい。
●大道具的には「特大拷問図鑑」が出てくるのがステキ。リュウにカラフの名前を教えれって脅す場面だったかな。チラッとしか見せてくれないけど、釜茹での刑とか截舌の刑と思われるイラスト入り。あんなの見せられたら光速で「この人、カラフでーす」って白状しちゃう、きっと。
●「トゥーランドット」は音楽的には最強で猛烈大好きなんだけど、無鉄砲な若者の物語だから「ファルスタッフ」みたいな味わい深さはないっすね。もうカラフはさー、なぞなぞ解いた勢いに任せて「オレの名前を当てたら、死んであげてもいいよ」って言っちゃうけど、その時点で自分の親父とリュウの命を危険に晒してるって、どうしてわかんないかなー。あんたみたいな人と一緒に仕事するのは絶対ヤだね。調子こくときは落とし前も自分で取れるっていう範囲でやってくんなきゃ。どうするの、リュウみたいないい子が自害しちゃったよ。そもそも周りにこんなに美女がいっぱいいるのに、トゥーランドットがいいってどういう審美眼なのさ。あー、パワフルな若者ってめんどくさい、っていうか怖いよ。
●↑こりゃまた世にも珍しいオペラの感想文だなー。バカすぎ(笑)。

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おやぢの部屋2 - Turandot (2006年9月16日 10:54)

 この前、WOWOWで「トゥーランドット」をやっていました。と言っても、もちろんこの局ですから、オペラの舞台を放送していたわけではありません(昔は結構やっていたものですが。全く出演者のコメントのない「シチリア島」とか)。原題を「The Turandot Project」と... 続きを読む

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