September 27, 2006

なかた2号の青春

電子辞書宇宙語256言語収録版●「今ならこの便利なデジカメ付き電気布団圧縮機に加えて、なんと、電子辞書宇宙語256言語収録版が無料でついてちょうど65536円! 1024回払いの金利手数料はジャポネットが負担します」。朝から晩まで見かける通販番組に「ジャポネットなかた」(仮称)があるとしようじゃないか。テレビ世界において、民放キー局からローカル局、さらには地元CATV局まで、隙間やら深夜やら人気薄めな時間帯を席巻するのは通販番組、そしてキング・オブ・通販番組、それが「ジャポネットなかた」だ。
●「ジャポネットなかた」のボスは喋りが上手い。喋りのヴィルトゥオーゾ。立て板に水、ってのとは少し違う。軽く訛りが入っていて、それがまた親近感と味わいを増すというものであり、たとえるならベルリン・フィルよりウィーン・フィル。ワタシはボスなかたの語りに耳を傾けているうちに、すっかり魅了され、手は勝手に電話の受話器へと伸びてゆく。おかげでワタシの部屋には使いもしない電子辞書とデジカメがうずたかく積まれている(ウソ)。
●だがワタシはボスの手下の者どもが苦手なのだ。最近ボスよりずっと出番が多い、なかた1号となかた2号。二人ともがんばってるのであろう、しかし君らの喋りにはボスのような催眠効果はない、それどころか、仕事熱心なあまり絶叫調になり、おかげでワタシは無駄遣いをしなくなった。甲高い声が耳障りに聞こえてくる。キィーーッ! そんなふうに叫んでればモノを買わせられるとでも思うのかね、1号、そして2号。ああ、うるさい、物欲が萎える。NHK-BSでテレビ体操でも見るか……。
●と、1号および2号に辟易していたのであり、長らく「ジャポネットなかた」を見ることはなかった。が。恐るべきことである、昨日見てしまったのだ、なかた2号がデジカメを売っている番組を。キィーーッ!ってなるかと思ったら、ならなかった全然。2号の喋り、それは優しくて、滑らかで、穏やかに視聴者を包み込むかのようであり、そして肝心のプライス発表クライマックスには自然体のままでありながらワタシの気分を高揚させるという奥義まで披露してくれた。2号はもはやあの2号ではない。経験の浅い若者を侮るのは銀河一の愚か者のすることである。出藍。これをアルファ・ケンタウリ語に翻訳させてみよう、あの電子宇宙語辞書で。

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