●昼、総武線が秋葉原駅に停車した。人は疎ら、車内も空いている。ホームに二人の男女が立っていた、女のコは若くて、ぱっと見かわいい感じ、よく見てもかわいい感じ、でも男のほうは一目で秋葉原系で、かなり年上っぽい、ああアキバだなあ、平日昼間に秋葉原デート。男、でかしたぞ。そんなかわいい女の子を連れて、今日はパーツショップでジャンク品でも漁ってたのかなー、秋月電子通商とか千石電商で遊んできたのかなー、それともアニメ・同人系なのかも。秋葉原はオ××のためのディズニー・ランドです。二人は睦まじく、インテルCore2 Duo E6400のオーバークロック耐性について語りながら(←想像)、ゆっくりと電車に乗り込んできた。まず女のコが先に乗って、続いて男が。
●乗ろうとしたら、プシューッ!と電車の扉が閉じた。窓の向こうに見えるのは、カップルでいながら一人総武線の乗車に失敗し、呆然と立ち尽くす男。女のコはクスクスと笑いながら、バイバイと手を振って、すぐにケータイを取り出した。3ストローク毎秒の猛スピードでメールを打って、次の浅草橋で降りた。二人は2分後の浅草橋で再会するのだ。幸あれ、ヲタカポー。
2007年1月アーカイブ
エブリデイ、ヲタカポー
ストラヴィンスキー「兵士の物語」 大友直人×奥田瑛二 記者会見
悪魔:お前のヴァイオリンとこの本を交換してくれないか。そんな安物より、こっちの本のほうがずっと値打ちがある。なにしろこの本には未来のできごとが書かれているのだから!
●ストラヴィンスキーの音楽劇「兵士の物語」といえば、ジャン・コクトーからデーモン小暮閣下まで、さまざまな才人によるプロダクションがあるが、2月24日、東京文化会館にて、また新たな話題の公演が開催される。大友直人指揮、ジェニファー・ギルバード(リヨン管のコンサート・ミストレス。アラン・ギルバードの妹)他のアンサンブルによる演奏で、演出&出演は奥田瑛二。兵士と悪魔の二役を演じる一人舞台。昨日、同公演についての記者会見をのぞいてきたのだが、近年映画監督としても活躍中の奥田氏は「オペラの演出もぜひやってみたい」とのこと。楽しみな話である。(→林田直樹さんのブログも参照するが吉)。
>> 大友直人×奥田瑛二「兵士の物語」(東京文化会館)
●「兵士の物語」は物語がいいっすよね。兵士がヴァイオリンを弾いていると、老人に扮した悪魔が現れて、ヴァイオリンと本を交換してくれっていう。で、兵士が悪魔と3日間過ごしたら、その間に世間じゃ3年が経ってて、兵士の許婚はヨソの男と結婚して子供までもうけてる。兵士は村を出て、悪魔からもらった本を使って一財産築くんだけど……っていうロシア版ファウストみたいなお話。
●悪魔と取引するって話はどうしてこんなにワクワクするんだろか。悪魔じゃなくて死神だけど、「DEATH NOTE」も似たようなものだ。悪魔から本ならぬノートをもらう。ノートに名前を書くと誰でも殺せちゃう。でも、交換物の効用が「兵士の物語」は正方向だけど、「DEATH NOTE」は負の方向っていう点で暗すぎるかな。
「クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!」(飯尾洋一著/三笠書房)
●うむ。足がすくむが、告知せねば。拙著「クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!」が三笠書房・王様文庫より発売。本日配本なのでスゴく早いところは今日、そうじゃなければ明日、地方だと明後日以降に書店に並ぶはず。ミニCD付きで文庫本という手軽なクラシック音楽入門書である。なんと、帯の推薦コメント&イラストが「のだめカンタービレ」の二ノ宮知子さんという豪華仕様。さらに付録CDの選曲はN響の茂木大輔さんという強力布陣。ああ、眩暈が。
●版元での万人向け紹介文はこちらにあるのだが、当サイト読者様に入門者は少ないので、ここではコアな方々向けの紹介をせねば。えーっと。須栗屋敏先生のYes/No式作曲家占いがあります(笑)。メインとなっているのは古今の作曲家40人について、その人物像やエピソード、作品を紹介した書き下ろし部分。入門書なので専門用語などは使えず、まず人物像に興味を持ってもらおうという狙いで書いています。他にDHCさんの連載FROM40からいくつかのコラムを加筆訂正して再録。
●おもしろいエピソードなんていうものはそれゆえにあちこちで反復されているわけで、ここを読んでらっしゃるような方々にとっては「なーんだ、そんなの誰でも知ってるよ」みたいな話題ばかりで恐縮するんだけど、でもワタシなりにそこに「楽しさ」を付加しようと悪戦苦闘しながら書いた。ページをめくる原動力が退屈さに破れて萎えていかないように、と。でもこれが難しいんだ。世のおもしろい本なら当たり前に飛び越えるハードル、でもクラシック音楽入門書にとっては生易しいものではない、教科書的記述という逃げ場があるゆえに。ただ、ゲラを通して読んでいるときに、不遜にも自分で「あっ、これおもしろいじゃん!」と感じた瞬間があって、そのときはハッピーだったが、ワタシは自己批判能力がそれなりに発達しているので、やっぱりダメかもと思ったら眠ってる間に返本の山に頭を抱える版元になった悪夢を見た(苦笑)。あ、いかんいかん、自分の本の宣伝をしようと書いていたのに、ついウジウジと日記調になってるぞこのエントリー、ありえないなこの展開。でも買ってね。お願い♪
ブリュッヘン/新日フィル、18世紀オーケストラ・オルタナティヴ、ではなくて
●すみだトリフォニーホールへ。フランス・ブリュッヘン指揮新日フィルで、シューマンの交響曲第4番(初演版)とベートーヴェンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」(一部省略)。前回の同コンビ、ってもう一昨年なのか、ラモー、モーツァルト&シューマン2番で、18世紀オーケストラ感がすさまじく高いのに驚いたのだった。でも本日はそれが薄まって、もう少し慣れたというかリラックスしたというか、平時の音楽だった、でもそれってリアリズムなのか、2回目だからと自分で創作してる脳内物語なのか。
●シューマンの作品のなかでも、交響曲2番および4番の鬱屈した内向きのロマンティシズムをワタシは特に好んでいて、曲想からオーケストレーションまで、どこにもスペクタクルがない、太陽がさんさんと照りつける晴れ上がった一日に、日が傾いてからようやく寝床から起きてきて、雨戸も開けずに引きこもって詩でも詠む、みたいなロマンティシズムの真髄を味わえると、勝手に共感を寄せている、そしてこの日もブリュッヘンの大きな掌の魔術によって鬱々とこれを満喫した。さらに続く「プロメテウスの創造物」の非連続ドラマ体も。
●ブリュッヘンは老いていた。年をとったから音楽が枯れるってのはウソだってのは、昨秋ウィーン・フィルを指揮したアーノンクールが証明していた。あのときはケンカしたら気迫のみならず腕力でも負けるなって思った、70代の爺相手に。でもブリュッヘンは年相応以上に枯れてた。18世紀オーケストラの初来日だっていつだっけ、80年代に最初に聴いたとき、すでにブリュッヘンは白髪で長身痩躯、猫背で前かがみになりながら大きな掌を使って指揮するスタイルだったように記憶してて、今と同じといえば同じなんだけど、でもその間に来日するごとに少しずつ時は向こう側にもこちら側にも流れてて、今は老ブリュッヘン。静かだ。このブリュッヘンを聴けてよかった。誰もカウカソス山の山頂に磔にされたプロメテウスのような永遠性を望んではいない。
録ったら消す、消したら録る
●一昨日にご案内したNHK総合「プロフェッショナル 仕事の流儀」、指揮者の大野和士さんの回を録画でチェック。凄い人である、周知のように。今、クラヲタ度ゼロのフツーの人々がこの番組を見たら、きっとこう思うんじゃないか。「なるほど、千秋真一の20年後くらいの姿がこの人なんだな~」って。似てるよね、いろいろと、全体に。
●アニメ「のだめ」の第3回はまだ見ていない。っていうか、簡単に録画できるからって、ハードディスクの中に番組がどんどんたまっていくのってどうなんだろか。見てる番組はみんなおもしろかったりそれなりに役立ったりしてるんだけど、テレビの視聴時間が長くなるのってどうもなあ。しかも、「のだめ」とか「DEATH NOTE」とか「CSI 科学捜査班」(WOWOWの海外ドラマ)とかは忘れずに一週間以内に見てるのに、BSのオペラとかコンサートなんかが半年も一年も放置されがちなのが、マズい気がする(笑)。いつでも見れる(ら抜き言葉)ものは、いつになっても見ない。よし、ハードディスクをより低容量のものに換装しよう(ウソ)。
お客さま、危険ですのでお席での空中浮遊はお控えください(意味レス)
●昨日、新国立劇場07/08シーズンの全ラインナップ発表! ……む。新制作は「タンホイザー」「カルメン」、山田耕筰「黒船 -夜明け」、「魔弾の射手」、ベルント・アロイス・ツィンマーマンの「軍人たち」(!)。詳細は公式サイトをじっくり眺めるが吉。
●しかし軟弱者なので「軍人たち」とか「黒船 -夜明け」をスルーして、「カルメン」とか「魔弾の射手」に行ったりするかも。ていうかそんな先のこと、わからんな。それぞれ公演日一ヶ月前くらいになったら考える。席がなかったら縁がなかったということで(←基本スタンス)。
●隔月刊誌 PIANO STYLE 2月号発売中。特集「ラフマニノフ」に寄稿してます(万人向け)。アニメ版「のだめ」の特集記事というのもあって、アニメに疎いワタシにはためになった。楽器の演奏シーンを「CGで描いてる」って聞いてたから、てっきりモーションキャプチャーをやってるのかと思ったんすよ。でも違うって。CGはCGなんだけど、モーションキャプチャーじゃない。なるほどなあ。しかし第2回放映を見てワタシは再び思った、演奏シーンはもう少し絵が動いて欲しい。制作者はがんばって動かしてる、でも視聴者はもっと動いてくれと願う。大変。なにが? 世間は、かな。
マリノス新体制~今なら好きなだけ夢を見れるよFW&GK編
●明日1月25日のNHK総合「プロフェッショナル 仕事の流儀」は指揮者の大野和士さんが登場。録画しておこ。
●と一言案内して、いきなりマリノス話。監督から選手まで大幅刷新、新チームが作られつつある。元ニッポン代表の鈴木隆行をレッドスター・ベオグラードから獲得した、っていうのはいいニュース。でもどれくらい試合出れるかは微妙。
●外国人は前のシーズンからフォワードのマルケスのみ残留。新外国人としてフォワードのマルクス、ディフェンスのエウチーニョ(ドゥトラの代わり?)のブラジル勢と契約。東京ヴェルディから来たマルクスって誰だよ……と思ったら、以前川崎や新潟で活躍していたマルクスだった。しかしJ2のヴェルディで25試合出場5ゴールってのはどうなのか。
●これでフォワードは鈴木隆行、マルケス、マルクス、坂田、大島、ハーフナー・マイク、清水で2トップを争うってことか。多すぎ。坂田が軸となって活躍しますように。ドラゴン久保が横浜FCに移籍したことを惜しむ気はまったくない。
●GKからは榎本達也がいなくなった。ヴィッセル神戸へ移籍。一時は代表入りするかと思ったが……。そして若い榎本哲也が背番号1をゲット。これまで榎本達也と榎本哲也という二人の才能あるキーパー(親戚じゃないっすよ)がポジションを争ってて、大変ややこしかったんだけど、これからは榎本哲也が守護神。おそらく控えGKが仙台から移籍してきた高桑大二朗(元鹿島の。ていうか実は元マリノスであり出戻り)。
●かつて桐蔭学園高校から鳴り物入りで入団した阿部祐大朗は、フェルヴォローザ石川・白山FC(北信越社会人1部リーグ)に完全移籍。祈る、新天地での活躍。結局マリノスではリーグ戦で1ゴールも決めることができなかった。阿部祐大朗だけじゃない。毎年(元)期待の若手たちが選手名簿から消えてゆく。容赦レスに。同じ場所で生き残るだけでも大変なのがプロスポーツの世界。この季節になると痛感する。
もやしもん TALES OF AGRICULTURE (石川雅之著)
●コミックには手を出さない、あまりに傑作が多そうだし、これ以上自分の守備範囲を広げられないから。そう割り切っていたんだけど、「のだめカンタービレ」を読み、さらにそのなかで部分的に侵蝕してきた「もやしもん」が目に入り、「なにこのマンガ?」と思って読みはじめ、ついに新刊を待ちわびるようになっていたという恐るべきプチ雪崩現象。最新刊第4巻を満喫。
●「のだめ」が音大ラブコメであるのに対して、「もやしもん」は農大青春ギャグマンガ。ワタシは農大とも農学部ともなんの接点もないんだけど、「のだめ」と「もやしもん」、どっちの大学生活が自分の知ってる世界かっていえば猛烈圧倒的に後者。のだめとか千秋みたいな人ってファンタジーのなかの存在だけど、「もやしもん」に出てくる主人公とか、その友達連中ってまるっきりリアリズムの世界だ。UFO研が学部の田んぼにミステリーサークル作って教授に抗議するバカさかげんとか。実話としか思えん。
●あと登場人物ならぬ登場菌類のキャラがステキ。アフラトキシンとかL.エドデス(←かわいい)とかP.クリソゲヌムとかC.トリコイデスとか。菌生いろいろ、菌も楽じゃないなあ、がんばってんだなー、と。ちなみに作者石川雅之氏推奨清酒として、純米吟醸生酒「かもすぞ」(完売)があることを知った。
今日からはじめる納豆ダイエット
●やべっちFCを見て小野伸二の超絶技巧とやべっちのリフティングにかける情熱に感動し、華麗なるエアリフティングに挑む日曜の夜(←詩)。
●納豆界に平和が戻ったことを知って安堵する。スゴいと思ったのは、スーパーからいったんホントに納豆が消えたこと。納豆レスな納豆コーナーという納豆危機。テレビってスゴい。そして「食べて痩せる」って最強。でも数日後にはもう納豆が山積みになってたんすよ、ウチの近所だと。で、売れてないっぽい。よく見ると微妙に強気の価格設定がしてあって、そのせいかなと思ったんだけど、でも食べて痩せれるんだったら10円玉数枚くらいのプレミアムが付いても許してもらえる気もするし、よくわからんなー。ていうか光速で飽きただけなのか?
●そしたら、テレビ番組のデータは捏造でしたってことになって、一気に納豆熱ダウン。えっ、もう終わりなのか。参加できなかったというなにか微妙な悔しさが残る。
映画「銀河ヒッチハイク・ガイド」(ガース・ジェニングス監督)
●ようやく映画版「銀河ヒッチハイク・ガイド」を見た。いやー、笑った。以前ご紹介したように、「銀河ヒッチハイク・ガイド」はダグラス・アダムスが書いたカルト小説で、「モンティ・パイソン」に負けないくらい痙攣しそうなイギリス的な笑いがつまっている(と思う、読んだの20年近く前だから記憶薄れてるけど)。で、それが映画になった。
●冒頭のシーンが最高なんすよ。原作どおり、地球で2番目に知性が高い種族であるイルカが、3番目に知性が高い人類に対して、「銀河バイパス工事で地球が破壊されちゃいますよー」っていうのを、ジャンプしたり輪をくぐったりしながらイルカ言語で教えてあげる。でもバカな人類はそれをイルカの芸だと思って喜んで手を叩いている。しょうがないからイルカは人類を救うのをあきらめて宇宙に旅立つ。「♪人類のみなさん、さようならー。おいしいお魚をありがとうー」って歌いながら。この歌が、ミュージカルっぽい曲調で再現されてるわけだけど、もうメチャクチャおかしい! あまりにもそれっぽくて、腹よじれる。ひー、助けれ。
●醜悪で不気味な宇宙人の拷問が、「ヘタクソな詩を朗読すること」だとかさー(笑)。あと、憂鬱性のロボット、マーヴィン。C3POよりR2D2より断然クール。根っからのペシミストで、ロボットのくせに暗い暗い。常に物事の悪い面だけを考えるロボ。それから、Google電卓でも計算可能な、例の「人生、宇宙、すべての答え」という究極の問いも登場する。
●こういうユーモアは底意地の悪い人間じゃないと生み出せんな。全般に原作よりノリは軽くなってる気がするけど。軽いノリのイルカ(←回文)。
レッツゴー!クラヲくん2007
●連続不条理ドラマ「レッツゴー!クラヲくん」第9回
「あえて苦言を呈したい!!」
「いえ結構です」
丸に肉と書いてメガマック(ウソ)
●以前メキシコを放浪していた知人が、帰国してこう言った。「メキシコ人は朝から晩までコーラばっか飲んでる。毎食コーラ飲んでる」。実際、メキシコ人の一人あたりの炭酸飲料消費量は年間150リットルだっていうんだから、そんな感じなんだろう。これってグローバリズムなのか、でも彼らにしてみりゃ好きで飲んでるんだと思う、コーラ摂取のオートマティズム、そう、この反応はすなわち等しい、ワタシの。
●マクドナルドへの反応に。看板見ただけで味蕾に仮想的に再現可能なビーフ100%。全然ウマくない、むしろ××い。だがときどき猛然と爆食したくなるのであって、ビーフエキスの香りにパブロフの犬状態、「ジューシーじゃない、ジューシーじゃない、ジャンクなだけだ」と自らに言い聞かせるが、たちまちジャンク王と化して全宇宙のジャンク・フードを征服したくなるのであり、ロナルド・マクドナルドの属隷となって「ビッグマック」と発声する。だが。
●今後さらなる危険なワナが。メガマック。通常ハンバーガーがパン+肉+パンであるのに対して、メガマックはパン+肉+肉+パン+肉+肉+パン。長い、長すぎる、これは天国的な長さだ! と軽くシューベルト的な賛辞を述べて、公式サイトを調べたところ、1メガマックで754kcal。メガマックセットでポテト(M)とコーラ(M)をつけて、754+420+140 = 1314kcal。おお、つまり1メガカロリー超! だからメガマックなのか! 引き続き、ギガマック、テラマック目指してがんばれ!
オーストリー→オーストリア
●混乱している人がいるから(てのはワタシのことだ)、確認しておいた。
●しばらく前に、オーストリア大使館が「もうオーストラリアとまちがえられるのはこりごりなので、これからはオーストリーって呼んでね、昔は日本語でそう呼んでた時期もあったみたいだし」(超訳)という、衝撃的に味わい深いメッセージを発していた。その文書はいまでもここにある(PDF)。
●そして、現在、オーストリア大使館サイトのトップページには堂々とこう書かれている。
「オーストリアの公式日本語表記は変わりません!」
実際、サイトの名前も「オーストリア大使館」のまま。「オーストリーって言葉が使われたらいいなと大使館は思うけど、公式表記は従来のままオーストリアです」っていう、ややこしい説明がある。じゃ、ウチのサイト内の表記は今後もオーストリアのままで行くっすよ。
●宮本ツネ様がザルツブルクに移籍したから、今後はオーストラリアと勘違いする人も減るかも。……減らないか。今、オーストリア的に最悪のシナリオは、宮本がうっかりカンガルー・キックとかコアラ・タックルとかいう新技を編み出してしまうっていうパターンだな。ないけど、そんなの。
ケータイでPCメールを読めることに今頃気づく
●iPhoneのニュースを聞いたあたりから、「あー、いいな、せめて外出先でPCメールを読めるように、なんかPDAでも買おうかなあ」と一瞬欲望し、そして気が付いた。あれ?ケータイ電話でPCメールって、読めないんだっけ? ていうか、どうしてこの可能性を今まで検討していなかったのか、ワタシは!(軽くショック)。以下、ケータイにフルブラウザは使えないし、ケータイ側で特に専用アプリを立ち上げないっていう前提。
●単にPCメールをケータイのメール・アドレスに転送する、なんつう野蛮な方法は却下。毎日百通以上のスパムメールが送られてくる汚れきったワタシのアドレスでそんなことをすれば、ケータイは24時間プルプル震えっぱなしになるのでムリ。
●で、調べてみたら、ワタシが使ってるプロバイダでは、メールをウェブメールでも読み書きできるようにしてくれてて(これは出先とかで使えて便利)、しかもそれのケータイモードがあるではないか。が、ためしにアクセスしてみると、こいつが全然使えなくて大凶。メールサーバーにある全メールを拾おうとする。数日分残しているので1000通くらいある。タイムアウトして読めず。最新10通だけ拾うとか設定できればいいのに、一切融通が利かない鬼仕様。
●そこで考えた。フリーメールを活用しよう、と。PCメールをすべてフリーメールのアドレスにコピー転送する設定にしておけば、たいていはケータイからもアクセス可能だろう。まずYahoo!メールを調べてみると、なんと、あっさり解決策が。Yahoo!メールには「外部メール」というメニューがあって、あらかじめPCで設定しておけば、任意のプロバイダのメールを読めるようになっている。転送する必要すらない。新着分だけダウンロードさせられる仕様になってるのも実用的。これで今後はケータイでもPCメールを読める。
●ただし、Yahoo!メールから外部メールを受信するのは、あまりインターフェイスがよろしくなく、少々手数がかかって面倒。そこで勢いがついて、そのまま代表的なフリーメール・サービスについて一通り調べてみた。hotmail、gooメール、googleのGmail等。で、たどり着いた結論。ケータイがauならGmailがいちばんスマート(ドコモとソフトバンクはまだ対応していないっぽい)。PCのメールを全部Gmailにコピー転送するように設定。で、ケータイから https://mail.google.com/ にアクセス。すると、一度ログインさえしてあれば、すぐにメール受信を行ってくれる。すばらしく手軽。
●しかもGmailは自動的にスパム判別してくれる。それ自体は珍しくないが、その精度が驚くほど高い。ワタシがローカルでインストールしているPOPFileと遜色ないくらい。アルゴリズムは同じベイジアン・フィルタだと思うんだけど、自分用になにも学習させてないのにいきなり正確。どういう仕組みなんだろ? おかげでケータイからアクセスしても、必要なメールだけを目にすることができる。ビバGmail。新兵器レスにデジタル武装度高まって、小さな満足ゲット。
ヘタフェvsバルセロナとサラゴサvsセビリア
●ほとんど一週間遅れだけど、スペインリーグから2試合を。まず、ヘタフェvsバルセロナ。バルサはロナウジーニョとデコという大黒柱が出場停止。他にもケガ人続出で、なんと控え選手が足りない。ベンチに下部組織の選手を何人か呼んだが、それでも空きがある!
●例のクラブ選手権で来日するあたりから、コンディション面で苦労してて、そこに中心選手が欠場したので、試合内容はかなり低調。こちらも退屈して、90分通して見ることができなかった。ヘタフェに先制されながらも、シャビのフリーキック(珍しいシーンだ)が決まって引分け。本来2チーム作れるだけの人材を持ってて、ベンチが豪華世界選抜チームになることも珍しくないバルセロナだが、それでも人が足りなくなるという恐ろしさ。チャンピオンの責務といえばそれまでだけど、リーグ戦以外の試合数多すぎ。
●で、バルサ戦に失望して、サラゴサvsセビリア(セビージャ)。一転、こちらはスゴかった! 超ハイレベルで、あっという間の90分。セビリアは現在リーグ首位、一方サラゴサも上位クラブ定着を目指して補強が進んでいて、中盤にアイマールとダレッサンドロのアルゼンチン代表コンビが君臨するという華やかな仕様。お互いにテクニックが高くて、目指すは攻撃サッカー、バルセロナやレアル・マドリッドに全然見劣りしない、というかモチベーションがより高いだけに見ごたえあり。
●ホームのサラゴサが序盤から猛烈に飛ばしてゲームを支配、ディオゴとディエゴ・ミリートのゴールで2-0とリード、しかし後半運動量が落ちると、セビリアが盛り返して怒涛の攻撃、ルイス・ファビアーノが1点を返したら、もう足を止めてのノーガードの殴り合い状態。熱すぎる。終盤の猛攻に耐えてサラゴサが2-1で逃げ切ったが、ロスタイムでルイス・ファビアーノの頭突きと喉輪に激昂したディオゴが、相手の顔面に右ストレートを決めて逆襲、文字通りの殴り合いに。これはいかんです。しかしルイス・ファビアーノはスゴいよ。あんな屈強な男のパンチを食らっても、倒れずに殴り返そうとするもん。パンチ効いてて足がふらついてたけど、気持ちが全然怯まない。いや、でもこれは余計なシーン。ただ試合は熱くて、巧かった。
●前節終了時点で、まだ首位はセビリア、サラゴサは4位へ。今週末、レアル・マドリッドvsサラゴサの大一番なので、WOWOWな方は必見かと。
アニメ版「のだめカンタービレ」スタート!
●もう「の◎だめ」って書かなくても大丈夫かな。ドキドキ。フジテレビ、深夜枠でアニメ版「のだめカンタービレ」スタート。「月9」と比べりゃ桁違いに視聴者数は少ないだろうから(遅れて放映する地域、放映しない地域もあるだろうし)、毎週ここで取り上げるつもりはないんだけど、第1回なので。
●で、ストーリーは第1巻から始まるんすよ! あー、パリ篇からじゃないのかー。残念だが、しょうがないか、アニメはドラマとは独立した番組なんだし。「これじゃあ、『悲愴』じゃなくて『悲惨』だな」がまた聞けた。モーツァルトの「2台ピアノ」をのだめと共演するあたりまでで第1回。
●で、アニメはおもしろかったか。っていうとこれは微妙というか保留。なにしろ原作読んで、ドラマで見て、さらにこのアニメで同じ物語を3回見てるんだから、さすがに新鮮な気分でストーリーに入り込めない。惜しかったところはいずれも演出面の問題。クラシック音楽密度が薄まった。テーマ曲もフツーだし、ストーリー中の音楽の存在感が弱い。後ろでピアノを弾いている影武者氏の「悲愴」は大変冴えていたんだけど、その音がアニメのキャラクターとうまく同期していない印象。っていうか、キャラがまだ立ってないうちにストーリー進行を急いでしまってる気がする。あと、アニメ用語でなんていうのか知らないけど、絵の枚数が足りないっていうのかな、演奏シーンで静止画を移動させるような演出はどうかと。やっぱり大変だろうけど、音に合わせて指や体が動いたりするアニメーションがないと、音楽が伝わってこない。
●でも優れたところもある。原作にあったギャグは、ドラマよりアニメのほうが自然に表現できてて吉。笑った。ドラマがあまりに傑作だったから、ハードルが上がってしまうが、来週も見る。楽しみにしてるぜ。
iPhoneのニュースを見てZERO3をググる
●アップル製携帯電話機 iPhone が登場。テレビで見たら、すっごくカッコいい。これまでアップル製品とは縁がなかったんだけど、軽くクラッと来た。重量が135gって。とはいえ599ドルかー。「ケータイ」だと思うとなあ。いや、日本じゃ発売未定だから悩む必要ないんだけど。
●もっとも日本にもすでに物欲を猛烈に刺激してくれるステキなスマートフォンはあって、WILLCOMのZERO3はかなりドキドキ度が高い。QWERTY配列のキーボードが付いてるとか、Word、Excelファイルも開けるっていうのは実用度の高さを期待させる。これ持って出かければ、外でもいろんな用事を済ませられるのかなあ、と。ただ疑問なのは、これってみんなケータイとしてフツーに音声通話に使ってるの? それとも通話用に別の端末持ち歩いているんだろか。
●自分のケータイがauだから、マジメにWILLCOMを検討したことはないんだけど、しかしこの分野に関しては音沙汰ないっすね、au。
「スキャナー・ダークリー」と「フィデリオ」
●おっと、昨日の「スキャナー・ダークリー」は肝心な話に触れるのを忘れていた。映画版では無視されてしまったが、原作の小説「スキャナー・ダークリー」には、ベートーヴェンのオペラ「フィデリオ」からの引用が出てくる。幽閉されていたフロレスタンのもとにレオノーレ(フィデリオ)が助けに来た場面とか。作者P.K.ディックは特にクラヲタじゃなくて、ロックかなんかの人だと思うんだけど、でも作品中にクラシックが出てくる場面は結構多い。で、「スキャナー・ダークリー」にはいきなりドイツ語で引用が突如出てくる。「フィデリオ」だけじゃなくて「ファウスト」とかハイネとかまで説明なしに出てくる。フレンドリーじゃないんすよ、ディックは。
●オペラ「フィデリオ」が選ばれているのはたまたまではなく、「スキャナー・ダークリー」の物語と対応しているから。「フィデリオ」もまた主人公が身分(と性別)を偽っている。ただ、「フィデリオ」は救出劇なので、外から刑務所へ乗り込んで救うという話なのに対して、「スキャナー・ダークリー」は外から刑務所じゃないけどそれに近い場所に閉じ込められる救われない話で、物語的には正反対である。
●昨日書いたように、これまでに3度、この小説は翻訳されている。古い順に挙げる。
「暗闇のスキャナー」(飯田隆昭訳/サンリオSF文庫/1980)
「暗闇のスキャナー」(山形浩生訳/東京創元社庫/1991)
「スキャナー・ダークリー」(浅倉久志訳/早川書房/2005)
ワタシが読んだのは最初の飯田訳。ボロボロになった古い本を今本棚から取り出して、確かめてみたが、特に「フィデリオ」についての言及はなく、ドイツ語部分も訳出してあるから、ワタシは絶対引用に気づいていない。山形訳と浅倉訳ではドイツ語部分はそのまま残されているし、引用元についての説明もある。
●今はインターネットがあるからホントに便利になったなと思うのは、こういう引用句関係の翻訳。「とりあえずググってみる」ことを思いつけば、仮にオペラの素養がなくても「フィデリオ」という作品からの引用だとすぐわかる。優れた翻訳家というのは一種の超能力者だとワタシは常々感心してるんだけど、超能力の負担は少し軽減されたかもしれない。
●ちなみに飯田訳をパラパラとめくっていて、時代を感じる表現がいくつか。たとえば「7-11グロッサリ・ストア」って、意味わかる? 今なら「セブンイレブン」と訳せば、だれでも意味がわかる。でも1980年時点では、まだ日本にセブンイレブンが上陸して間もない頃。「7-11」の意味が読者には伝わらないから、「グロッサリ・ストア」なんて語を添えてくれているわけだ。他にもチョコレートの「M&M」にわざわざ (Melt in your mouth 口のなかで溶ける、の略)とか詳しすぎる訳注が入ってる。当時「M&M」は日本じゃ知られてなかったから、訳注が必要になった。この四半世紀でグローバリズムが順調に進行しているってことか(笑)。
「スキャナー・ダークリー」(リチャード・リンクレイター監督)
●東京全域で渋谷のわずか一館でしか上映されていないという不人気ぶり。しかももうすぐ打ち切られそうなので、慌てて映画館で「スキャナー・ダークリー」。映像は実写にデジタル・ペインティングを施してアニメ化したもの。キアヌ・リーヴスとかウィノナ・ライダーとか出てるのに、全部アニメなんすよ!
●客席も閑散。こんなに映画が不人気だと、むしろ原作のほうが有名なんじゃないか。P.K.ディックの「スキャナー・ダークリー」(または「暗闇のスキャナー」)は、3回も異なる翻訳者、出版社で刊行されている。そんな翻訳小説はめったにない。
●舞台は7年後のアメリカ。物質Dという新たな麻薬と、コカイン、ヘロインが社会に蔓延している。主人公は覆面麻薬捜査官。職務中は姿を変える特殊なスーツを全身に着用し、本名を上司にすら知らせず、完全な匿名による捜査を行う。主人公はおとり捜査を行う一方、自らも物質Dの常用者となって、薬に溺れる。そして捜査官でありながら、自分自身を密売人の容疑者として監視することになる!
●ディックの小説を読んだことのある方なら「ああ、またか」と思われるはず。何十作品もあるけど、テーマはいつもほぼ同じで、アイデンティティの崩壊への恐怖、自分/他者、本物/贋物の境界のゆらぎを描く。「スキャナー・ダークリー」はこれが徹底していて、主人公は麻薬操作官でありながら麻薬中毒者であるとか、自分で自分を監視するとか、姿を毎秒変化させる特殊スーツを小道具として登場させて「自分は何者か?」という不安を比喩的に表現させたりする。
●昔サンリオSF文庫で読んだ原作のほうはすっかり中身を忘れていたので、これを機に新訳のハヤカワ文庫版を購入。頭のほうだけ読んだが、映画は(ディック作品にしては)原作に忠実で、冒頭シーンはそのまんま同じ。
●このシーンが傑作なんすよ。重度の麻薬中毒者が体中に虫がわいているからっていうんで、ヒイヒイ言いながら虫を取る。シャワー浴びてキレイにしても、バスルームを出たとたんに虫が全身にわいて出る。頭から殺虫剤をスプレーする。でも部屋中虫だらけ。虫を何匹かつかまえて壜に入れて、他人に見せに行くんだけど、もちろん正気の人間には空っぽの壜しか見えない。
●こんな暗いディストピア映画、ヒットするわけないな(笑)。麻薬中毒者たちの生活はディック自身の実体験に基づいている。1970年前後にドラッグで体を壊し、小説が書けなくなり、奥さんに逃げられ、自宅がストリート・ピープルの溜まり場になって、薬物常用者たちとどん底の生活を送る。まだ若い連中が次々とドラッグで破滅してゆく。しかもある日、帰宅すると自宅のスチール棚が爆破されてて、「軍事行動を思わせる」という徹底した捜索の後が見られ、警察からは「ここでは反戦活動家はお呼びじゃない。よそへ引っ越せ」と脅されたというエピソード付き。実生活も創作に負けていない。目に見えるいかなる確からしいものも信用しない、己が何者であるかも確実とされない、そんな救いなき世界観から生まれたエンタテインメント。見たいという奇特な方は1/12までにシネセゾン渋谷へダッシュ!
史上最速でリリースされるニューイヤー・コンサート
●今年のウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサート、おなじみのメータの指揮ということで安心印と評判よさげなのだが、ワタシはまだ半分強しか見ておらず、正月気分の賞味期限について苦悩するところであるが、しかし。
●時は流れるのだ、秒速1秒で。かつてレコード会社は「ニューイヤー・コンサートのCDをいかに迅速に世界中の店頭に並べるか」を競っていた。いちばん早かったのはいつだったかなあ、国内盤で1月6日くらいまで繰り上がったことがなかったっけ? ありえない速度を実現するためにあの手この手の策が講じられていたような気がする。
●でもそんな情熱は達成感とともに失せていくのかも。なにしろドイツ・グラモフォンが自ら iTunes Music Store 他を通じて、直接ニューイヤー・コンサートを販売してくれることになった。公演から48時間以内というスピードで。ワタシはこの事実に1月6日になってようやく気づき、まだテレビの録画を見終わっていないほどスローなのであるけれど。
ウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサート2007
(iTunes Music Store/要iTuneインストール)
今晩はウナギでどうか
●Googleでなにかを検索してたら、たまたま目に飛び込んできた見出しが、「ゲイツ財団、うなぎ養殖に全額を寄付」という虚構新聞のウソ記事。ネタ的にもっと秀逸な記事は同紙にいくつもあるのだが、ワタシはこの「うなぎ養殖」ってところに全面的にノックアウトされてしまったのである。うなぎ養殖。ププ。そしてふとわれに返って、しばらく悩む、ワタシはいったい何を検索していてこの記事にぶつかったのか。
●2000円札を久々にゲット。まだ実在しているようだ。
予定通り2006年の次は2007年がスタートした
●お正月らしく雑煮食べたり脳内凧揚げたりe独楽回ししてたら、あっという間に過ぎ去る三が日、メータ指揮ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは細切れにHDD再生して、ようやく半分。松の内リミットで見たい。大晦日、ラトル指揮ベルリン・フィルのジルベスターのほうは見た。内田光子独奏でモーツァルトのピアノ協奏曲第20番が弾かれたんだけど、カメラワークが強気。オケのみの部分でもしばしばソリストの姿だけを撮る。想像されるように、大変雄弁な映像となる。強い。音楽、最高。
●自分用にメモ。2007年、今年の作曲家。下二桁は00か50に限定、50未満は最近すぎるので除外。他に誰か重要な人を落としてたら、トラバして教えてくれると感謝。150とか250っていうのも「キリ番」感は薄いから、やっぱりシベリウス&グリーグの強力北欧コンビおよびブクステフーデ・イヤーってことになるか。
没後50年 シベリウス、コルンゴルト
没後100年 グリーグ
生誕150年 エルガー、レオンカヴァッロ
没後150年 グリンカ
没後250年 ドメニコ・スカルラッティ
没後300年 ブクステフーデ
●ちょうど256年とか65536年というのは調べてないっす。
賀正
●謹賀新年。2007年もどうぞよろしくお願いいたします。
●年末、大仕事を終えてほっと一息ついたら、もう途端に脱力バーンアウト、テンションが急降下。先週までは大リーグボール養成ギプスを装着してパソコンのキーボードをバリバリ叩いていたというのに、今週はもう箸より重いものは持てない。しかし箸より重いものが持てないということは、理論的には箸でお節をつまんだ瞬間、プラスされたお節の重量に耐えられずに箸をポトリと落としてしまうということであろうか。うわぁ伊達巻も昆布巻きも重すぎるっ!みたいな。
●ひっそりと恒例My Disc of the Year 2006。この一年間で発売された新譜のなかで、自分が一番ワクワクして「楽しいなあ!」と思えたもの。まず、ヴィヴァルディのオペラ「グリセルダ」。スピノージ指揮アンサンブル・マテウス。筋も知らずに音楽だけ聴いているんだけど、こんなにも次々とすばらしいアリアが出てくるなんて。特に第1幕、第2幕は悶絶級に楽しい。うっすら未来にモーツァルトが見える。naiveのヴィヴァルディ・エディションはもともとジャケットだけでも訴求力高かったんだけど、Credoさんのところでこのシリーズが何度も紹介されてて、それが物欲を強く刺激してくれたおかげで手が伸びた。ルネ・ジラールの言うことはホントっすよね。欲望とは他人の模倣であって、オリジナルの欲望なんてない。逆にいうと、もともと好きでもなんでもない人に宣伝記事書かせたりすると、模倣されるべき元の欲望がないから、うまく機能してくれない、ってのは前にも書いたか。
●もう一点。これはたくさん売れたっぽい、ポリーニ/ウィーン・フィルによるモーツァルトのピアノ協奏曲第17番&第21番。最後まで聴き終えるのがもったいないって思えるくらい、豊かな音楽。かつて反復して語られたポリーニ=鋼のピアニズムといった物語とは無関係に驚嘆できる、これが才人の爺さん力なのかと。