amazon
February 6, 2007

「2001年宇宙の旅」と「一つ目の巨人」

PIANO STYLE ●たまたまテレビをつけたら、NHK-BSで映画「2001年宇宙の旅」が放映中。HALがわけのわからんことを言い出したので、乗組員がスペース・ポッドのなかでマイクを切って「あいつ、おかしくなったんじゃないの」と会話する場面。ついそのまま最後まで見てしまった……。もう何回見たことやら。すぐにHALの叛乱の場面、そしてリゲティの音楽に乗ってサイケデリックな抽象アナログ特撮画像のシークエンス~エンディングへと向かう。
●なんど見ても鳥肌が立つシーンってのがいくつかあって、たとえば糸の切れた凧のように宇宙空間に投げ出されたフランク・プール、それから続く冷凍睡眠中の乗組員の生命停止。叫び声も恐怖の表情もなにもない、もっとも静かな死の場面。それと、やはり最後のボウマン船長が、そしておそらく人類が進化の階梯を昇ることを示唆するスターチャイルド誕生の場面。R・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」冒頭が再現する場面である。当初、映画にはアレックス・ノースの音楽が使われるはずで、曲もできていたんだけど、キューブリックはこれをシュトラウス(両方)やリゲティらの音楽に差し替えた。おかげでワタシらはこれを音楽映画としてすら楽しめる。あ、「失われた宇宙の旅2001」とか、おもしろかったっすよ。原作者クラークと監督キューブリックの共同作業の様子が書かれていて。
●映画のなかで、HALは赤い非常灯みたいに描かれてて、この光の具合がなんとなく感情表現をしているように見える。ボウマンとプールの会話を読唇するときは興奮したような赤い光、乗組員の生命維持装置を停止させる場面では冷酷な赤い光、ボウマンに機能をシャットダウンさせられる場面では恐怖に慄く赤い光、といったように。ワタシは自分じゃ気づかなかったけど、「HAL=サイクロプス(一つ目の巨人)」という読み解き方をしている方がいて、あっそうだったかと思った。赤い単眼といえばサイクロプス(キュクロプス)。ギリシャ神話で……えっと、なにした人、じゃないや神様だったっけ。
PIANO STYLE ●音楽の世界にもサイクロプスはいる。ラモーのチェンバロ曲集のCDにはたいてい入っている、3分ほどの小曲「キュクロプス(一つ目の巨人)」。チェンバロ一台で弾かれるんだから、ずいぶん小さな巨人ではあるが、これはこれで激しく荒々しい音楽なんである。ワタシが聴いてるディスクはクリストフ・ルセのとケネス・ギルバートのだけど、トレヴァー・ピノックのは写真のように一つ目がジャケットに描かれている。

トラックバック(1)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/787

レコードはまっすぐに Putting the Record Straight John Culshaw著(山崎浩太郎訳) 学習研究社刊(ISBN4-05-402276-6) ジョン・カルショーという骨が丈夫になりそうな名前(それは「カルシューム」)、クラシックレコードの愛好家で... 続きを読む

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「ゲームは一日一時間(©高橋名人)」です。

次の記事は「体内カレー濃度に注意すれ」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。