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April 16, 2007

「ハンニバル・ライジング」(トマス・ハリス/新潮文庫)

ハンニバル・ライジング●最近めっきり読書量が減ってるのでリハビリ気味に軽くスコンと読んじゃおう、電車の中とか移動の時間に、そう思いつつも果たして大ヒットした名作の続編の続編の続編くらいのものがおもしろいだろうか、懸念して上巻のみ買ってみたら、もう翌日には本屋にダッシュして下巻を買い求めてしまっていたのである、「ハンニバル・ライジング」を、寛容フレンドリーぬるめな自分。
●あの「羊たちの沈黙」が1988年。バッハのゴルトベルク変奏曲を愛する、精神科医にして連続猟奇殺人犯のハンニバル・レクターという強烈なキャラクターがいかに誕生したか。ハンニバルの少年~青年期を描いたのが今回の「ハンニバル・ライジング」。映画版ももうすぐ公開される。
●前作「ハンニバル」を読んで「たしかにおもしろいんだけど、ずいぶん緊張感のない話になっちゃったなー」と思った人は、最新作でもっと緩いトマス・ハリスを発見する、きっと。だって、少年ハンニバルの叔母さんが紫夫人っていう日本人なんすよ(紫式部に由来するんだって)。それで紫夫人はパリで鈴虫の鳴き声を聞いたりしながらハンニバルといっしょに日本的美の世界に浸って暮らしてるのに、乱暴狼藉を働く不躾なガイジンたちが出てくるものだから、ハンニバルがもうしょうがなくてムシャムシャパクパクみたいな? いや、それ少し違うか、でもトンデモ系ジャポニズム万歳な話で驚くって。
●あー、もうしょうがないと思う、続編ほど緩くなるのは。そしてそれでもついつい明け方までガガッと読んで楽しめるんだから、なんの文句もない。もうハンニバル、俳句詠んじゃうし(笑)。こんなの。

しらさぎと 白さを競うや 仲秋の月

 あ、二人でオペラも聴いてる。パリのオペラ座でベニャミーノ・ジーリが出てくる。
●そういえば、前作の「ハンニバル」で傑作だと思ったのは、ボルティモア・フィル(架空のオケ)のフルート奏者のエピソード。なんか大事なところで音を外すんだっけ。で、ハンニバル・レクターは彼を調理しちゃう。しかもそれを……ってヤツ。音楽家が舞台に立つときは命懸けっすね、レクターがいる街じゃ。
●何年か前の映画版の「ハンニバル」を見たときは、「あれ、次はレクター博士は日本に行くのかな?」って思ったんだけど、どうも日本ネタはこっちのヤング・レクターのために使われたようだ。アンソニー・ホプキンスは前回ですでにお爺さん然としすぎてたから、そのまま続編っていうのはムリがあっただろうし、少年期に遡るってのは正解だったんでは。それともまだ続編があるのか?
●それにしてもトマス・ハリスって効率的な作家だ。30年の作家生活で長編5作、全部映画化されている。スゴすぎる。

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