●書店に立ち寄ったとき、「今すぐ、おもしろいものが読みたい」と思って手に取った、「スペイン、とっておき!」(中丸明著/文春文庫)。40年にわたってスペインに魅了されてきた著者が、ガイドブックには載っていない、現地在住者の視点でスペインを語る……のだが、ワタシはスペインの情報なんて全然求めていないし、スペインに特別の興味があるわけじゃない。でもこの著者の本を何冊も読んでしまっている。この人の書くものを読みたい、っていう動機だけなのだな。
●この文章、おそらく嫌いな人も少なくない。やたらスペイン人が名古屋弁をしゃべってるし(笑)、下ネタが多いし、同じ話が繰り返される(他の本とネタが重なるっていうんならともかく、同じ一冊の中で重なってる。書下ろしなのに!)。全般にオヤジ臭あるいはジイさん臭が強すぎてダメという方もきっと多いだろう。でもスペイン好きでもない人間が、何冊も同じ著者のスペイン本を買って読んでしまうっていうのは、よっぽどなことであって、これは文章の味わいとしかいいようがない。あ、原稿用紙の升目に手書きで書いて生まれる文体、きっと。
●文中で紹介されているスペインのことわざ。
ロバが旅に出たからとて、馬になって帰りはしない。
「人生とは旅であり、旅とは人生である」という命題との論理積を導いてみたい。