プロコフィエフはラフマニノフのことを毛嫌いしていた。なぜだかわかるか? それは…… (スヴャトスラフ・リヒテル)
●リヒテル没後10年を迎えてということなんだろうか、先日、NHK-BSでリヒテルのドキュメンタリーが放映されていた。昨日HDDに録画したものを途中まで見た。中身は以前にもご紹介したことのある「謎(エニグマ)~甦るロシアの巨人」で、DVDで発売されている。ワタシはレーザーディスク時代に見てるんだけど、もう一度見ても抜群におもしろい。どうしても時間がなくて途中で止めてしまったが、これはまた最後まで見なくては。音楽ドキュメンタリーの最高傑作なんじゃないだろうか。
●80歳になったリヒテルが淡々とその生涯を振り返るというインタヴューに、古い貴重な映像(よくわからないものもあるけど)が次々とさしはさまれる。YouTubeにも載っているショパンの練習曲Op10-4の映像なんかも入っていて、この強烈さには呆れるしかない。
●ウクライナに生まれたんだけど自分の父親がドイツ人で、大戦中に国家権力によって銃殺されたこと、ピアノは8歳か9歳から始めたんだけど(最初から天才なんである)ピアノよりオペラのほうに夢中になっていたこと、モスクワに行ってネイガウスに師事したらすぐに「もう教えることはない」って言われたこと……。リヒテルのネイガウス評も興味深かった。心から賞賛を重ねた上で、ポツリと「ピアニストにとって教育熱心であることは致命的である」なんて言ったりする。
●大物女流ピアニスト、マリア・ユージナとのエピソードなんかもそうなんだけど、本質をえぐるようなシリアスな物言いのなかにチクッと棘のあるユーモアが混じる語り口がすばらしいんすよ。冒頭に挙げた「危険な男」プロコフィエフについての評言はこう続く。
プロコフィエフはラフマニノフのことを毛嫌いしていた。なぜだかわかるか? それは(プロコフィエフが)影響を受けていたからだ。