●ルチアーノ・パヴァロッティ追悼~浄土宗大本山増上寺チャリティ野外公演というコンサートがあるそうだ。11月3日に崔岩光、中丸三千繪他が出演。で、このコンサートそのものには行かないんだけど、三部構成の公演の第1部に「パヴァロッティ秘蔵映像・幻の映画『イエス・ジョルジョ』」を上映するってあるんすよ! おお、これは見たいぞ。この映画、日本では未公開だと思うんだけど、マネージャーのハーバート・ブレスリンが書いた伝記「王様と私」でも大失敗作としてネタにされてて、かなり気になってた。
●パヴァロッティが売れまくって大スターになったから、ハリウッドで映画を撮ろうっていうことになる。パヴァロッティが俳優として主演する(歌もうたう)。しかもジャンルはラブコメっぽい。映画でのパヴァロッティの役柄は「オペラ歌手」だ(それ以外になにを演じろと?)。有名なオペラ歌手であるジョルジョはアメリカ・ツアーの最中に声を失う。で、喉の専門医である女医さんのところで診てもらって、二人は恋に落ちる。オペラ劇場の舞台でなら、パヴァロッティがロマンスやラブコメの主役を演じても誰も疑問に思わないだろうが、スクリーン上となるとどうなのか。
●Yes, Giorgioは1982年のラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)のワースト主演男優賞(パヴァロッティ)、ワースト新人賞(パヴァロッティ)、ワースト脚本賞(ノーマン・スタインバーグ)の豪華三部門にノミネートされたが、惜しくも(?)受賞はならなかった。早稲田松竹か新文芸坐あたりで上映してくれないだろうか。
2007年10月アーカイブ
幻のパヴァッロッティ主演映画「イエス・ジョルジョ」
友人の友人にアルカイダ
●鳩山法相:「友人の友人にアルカイダ」。前に「六次の隔たり」ってのを書いたけど、アメリカの社会学者スタンレー・ミルグラムによれば、友達の友達の……と6人を介すると、みんな世界中の誰とでもつながるんである。ワタシとロナウドだってちゃんと6人でつながったし、中村俊輔にいたってはわずか4人でつながった。だから友人の友人くらいでアルカイダにつながったとしても特に驚くことはない気もする。ていうか、そのアルカイダのメンバーは当然ビン・ラディンとも友人であろうから、法相的には「友人の友人がアルカイダ」ってのは「友人の友人の友人がビン・ラディン」と敷衍することも可能なはずで、そんなふうに発言したらさらに物議を醸したかもしれん。国会で追及されたりしたら大変だ。
●「友人の友人の友人がビン・ラディンなどという人物に大臣を任せられるでしょうか!」
「いや待て、そう言うあなたは大臣の友人ではないか。つまり友人の友人の友人の友人がビン・ラディンというあなたみたいな人間に追及する資格があるのか!」
「だがそういうあなたも友人の友人の友人の友人の友人がビン・ラディンということになるのであって……」
みたいな無限ループとか。なわけないか。
連続してスルー
●次々とスルーした今週。
●結局新国の「フィガロ」は見逃してしまった。あれこれ考えると微妙。
●映画「パンズ・ラビリンス」も見逃してしまったっぽい。スペイン内戦下の過酷な現実のもとで、空想の世界を作り上げた少女のダーク・ファンタジー、らしい。あちこちで好評を目にしていたのだが、近場に上映館がなく行きそびれてしまった。「恵比寿ガーデンシネマ」などはまだ上映中なんだけど、気分的にあそこは遠いからなあ。しばらくしたら早稲田松竹あたりでやってくれないだろうか。
●週末に甲府でヴァンフォーレvsマリノス。この試合、思い切って甲府まで遠征してみたらどうか作戦を密かに企んでいたのだが、直前になって体力的にキツいかなあとか思い出したらメンドくさくなって中止。そしたら台風で天候大荒れ、しかも試合も引分けだったわけで、まあスルーして正解と言わざるをえないところがまた悔しいんである。そもそも降格争いをしている相手の敵地で、シーズン終盤に目標を失ったクラブが勝てる要素はあまりない。ただ、もし見に行っていたら、水沼ジュニア、すなわち水沼宏太(17歳)のプロデビューを見れたわけだ。将来水沼宏太が偉大な選手になるとしたら、伝説のスタートを見逃したことになるのかも。ミスターマリノス水沼貴史さんは今「これってオレだけのリアルサカつくだよなあ」とか呟いていらっしゃるだろうか(なわけない)。
●しかしホントは軟弱者なのに、よく甲府まで日帰りしようと思ったものである(思っただけだが)。行ったことがないスタジアムに行ってみたい、小瀬スポーツ公園陸上競技場ってどんなとこかなあワクワクが最初の一歩だったのだが、次の一歩が出なかった。来季、もう一度狙いたいので、甲府はぜひJ1残留を果たしてほしい。
決勝へ。浦和レッズvs城南一和@アジア・チャンピオンズ・リーグ
●遅ればせながら、ややダイジェスト気味で録画チェック。これ、結果知らずに見てたらこんなおもしろい試合はなかっただろうなあ。もしワタシがレッズ・サポなら狂喜乱舞して室内エアフットボールでハットトリック決めること確実。ニュースでチラッと「PK戦を制して浦和レッズが決勝へ」ってのは見てた。で、前のアウェイでの試合は2-2だったわけだ。アジア・チャンピオンズ・リーグではアウェイ・ゴール優先ルールがあるから、PK戦になるということは、すなわち、このホームでの試合も2-2になって、しかも延長は0-0だったってことを意味する。恐るべし、アウェイ・ゴール優先ルール。「PK戦」と知っただけで、スコアまで全部バレ(苦笑)。
●しかもこの試合、ポンテのクロスを、ワシントンが「デカくてもやっぱりブラジル人だな!」っていうエレガントなトラップで足元に落ち着かせ、豪快にズドンと城南ゴールに叩き込んで浦和が先制したんである。アウェイで2-2だったんだから、これで圧倒的に浦和が有利に。でも城南一和は激しかった。彼らが2ゴール奪って逆転し、さらに浦和が追いついた。城南一和を見てて、一昔前の日韓戦の激しさを思い出した。どっちが勝っても終わったら両者とも消耗してる、みたいな。
●この日韓対決で、たとえばトゥーリオの顔面めがけてわざわざ肘を入れてくるような悪辣な競り合いをするのが城南のイタマールっていうブラジル人だったり、鼻骨骨折してるのに出場して味方を鼓舞するのが浦和のワシントンであったりするわけで、クラブ文化ってスゴイというか、これってバルセロナに移籍してきた外国人が「マドリッドの奴らには絶対負けられない」とかいうのと似てる。こういう試合を見ると、代表の親善試合が味気なく思える人たちが出てくるのは良くわかる。ま、でも、それはレッズ・ファンだけの特権だから。次の決勝、ぜひ浦和に勝ってほしいけど、最終的にはヨソのクラブの話であって、残るのはひたすらに羨望それだけ。
グルダのモーツァルト・テープス2
●おっと、忘れてた。フリードリヒ・グルダのモーツァルト・テープス2。2枚組でピアノ・ソナタ6曲を収録。国内盤は11月に発売される。前作に続いて、またもグルダの未発表録音が登場。これでモーツァルトのソナタがほとんどそろったことになる。前回と同じように、この世でもっとも美しいモーツァルトだと思ったが、同時にこれらが後から遅れて出てきたことにも納得。残念ながら音質がよろしくないんである。ヘッドフォンで聴くのは途中であきらめた(録音レベル高すぎてガンガン音が割れる)。しかし、完璧なレコーディングによる退屈なモーツァルトと、ボロボロの録音による最高のモーツァルトと、どっちが聴きたいかって問われたらコンマ1秒の逡巡もなく後者。躊躇レスにゲットするしか。録音のタイミングも違うのかもしれんが、第14番ハ短調のソナタと幻想曲ハ短調(前作収録)が別々の商品に分かれてしまった……が、そんなの瑣末なことか。
●これって80年代ヒストリカル? いつまで死んだピアニストを追いかけるのか。まあでもモーツァルトもとっくに死んでるわけだから、クラシック者としてはこれがフツーとも言える。録音は死んだ人、演奏会は生きてる人みたいな感じになってきてるっぽい。ていうか、演奏会は死んでる人じゃムリか(笑)、おそらく将来も。ソンビ化されない限り。
着うたでイントロ当てクイズ
●長年超夜型生活を送ってきてるんだけど、日々の生活を朝型に移行できないものかと試行錯誤中。ていうか毎年一回くらいはそんなふうに思い立ってみるものの、猛速で挫折しているのであって、甘味爆食ダイエットみたいな狼少年かつ三日坊主な最弱チャレンジャー。えっ、来週から駅前のスーパーが24時間営業に? 悪魔の誘惑なのか。朝日を見たい、寝る前じゃなくて、起きてから。
●着メロサイト「音友クラシックコンサート」にて、着うたを利用したクラシック・イントロ当てクイズ実施中(月末まで)。初級・中級・上級と3ランクあり。初級はここ見てる人には呆れるほど簡単なので、中級・上級に挑むが吉。選択式なので比較的簡単なんだけど、上級あたりだとポツポツ落としちゃう人も少なくないかも。よろしければお試しを。ケータイサイトなので会員登録すると100円/月かかるけど、いつでも即退会できるのでお気軽にどぞ(その日のうちに退会しても最低100円はかかります)。
粘りのある演奏を期待
●納豆にモーツァルト効果?! この手のニュースはなくならない、なぜなら殺伐とするような暗いニュースばかりが伝えられる昨今、うっかり安堵しないだろうか、店のご主人が「モーツァルトを聴かせれば、納豆菌の繁殖にもいいはず」と語るのを聞いて。モーツァルトで癒される極楽状態の納豆菌の表情を想像してみよう(そういえば、アニメのもやしもん見てる?)。「ベートーベンはちょっと重いしね」というオヤジのセリフが泣かせる。
●それにしても不思議なのは、食物や農作物にはいつも音楽ばかり聴かせてるけど、たまには名画とかも見せてあげたほうがいいんじゃないかと思うんすよ。音楽好きの納豆菌と同じくらいの個体数で絵画好きの納豆菌がいるかもしんないし。
●でもあれかなあ、音楽と絵画なんか見せちゃうと、そのうち、詩だ小説だの、映画も見せろだとか、オペラや歌舞伎にも連れて行けとか、アニメ見せろゲームやらせろとうるさいかもしれんよなあ。それに食い主よりハイブローな野菜とか育っても困るし。
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●お知らせ。右欄のDrecomRSSを利用したブログリストに、ときどき広告が挿入されるようになってしまったのですよ。なんらかの収益性がないとこの種のサービスは継続できないだろうから、広告自体はやむをえないんだけど、どんな広告がどんなふうに入るか、ブログ主の裁量がほとんど及ばない。で、これまでの経験から、ここの提供会社は少し心配なところがあるので、似たようなサービスでBlogPeopleを活用することも視野に入れたいのです。まずは併用する体制を整えたい。
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連続する不戦敗
●今日、行かなかったイベント。
言うまでもなく、チャイコフスキーの大序曲「1812年」である。大砲パートで本物の大砲(105mmキャノン砲×4門)をぶっ放す。自衛隊じゃなきゃ演奏できない。で、これは過去にも何度かやってると思うんだけど、今回、ベートーヴェンの「ウェリントンの勝利」も演奏したんすよ。そう、銃撃戦の場面を本物のM1ライフル銃10丁で100発撃つと。直前に知ったので行けず、残念、不戦敗。
●昨日、久々の草サッカー。が、天気がはっきりしない。昼間は晴れてたが、夜から雨だという天気予報。Jリーグじゃないんである、雨なら即刻中止の根性レスなワタシら。夕方、空は微妙な小雨。もうその段階で中止決定でも良かったんだけど、ひょっとして雨は止むかと期待して、サッカー場まで電車乗り継いで行ったんすよ。着いた頃にはフツーに雨、降ってるし。ここまで来て帰るのも悲しすぎると思い、着替えた。雨の中で、ストレッチしてランニングしてアップ。グラウンドで3分だけアップ。ナイター設備完備、電力無駄使いすぎ。雨、全然止まない。もうしょうがない。じゃ、雨天中止ってことで。3分運動するために片道1時間強。まあでも、晴れたかもしれなかったわけだし。サッカーは何が起きるかわからないから。ブラジル代表にダメ元で前線からプレスをかける巻誠一郎の気分(なにそれ)。
シェーンベルク「モーゼとアロン」@ベルリン国立歌劇場来日公演
●上野でバレンボイム/ベルリン国立歌劇場のシェーンベルク「モーゼとアロン」。今回3公演あるんすよ、「モーゼとアロン」だけで。ほとんど席は埋まっている。こんな来日オペラの公演が成立するってスゴいっすよね。どれだけ東京の聴衆がシェーンベルクを大好きかがわかる……。のか。
●人間ワザとは思えない合唱をはじめ、オーケストラもすばらしくて音楽的な充足度は大変高かった。もうライヴでこれ以上の水準の「モーゼとアロン」を聴く機会はないだろう。が、やっぱり舞台になると演出にどうしても目が行くわけで、しかもこれがかなり特異なんである。ペーター・ムスバッハ演出。もともと旧約聖書の「モーゼとアロン」があって、その上の層に微妙に異なるシェーンベルクの「モーゼとアロン」があって、さらにその上に全然違うムスバッハの「モーゼとアロン」があるっていう三層構造はなかなか手ごわい。ワタシはうまく咀嚼できなかった。以下ネタバレあり。
●登場人物は全員が黒スーツに黒サングラス、オールバックという「エージェント・スミス」スタイル。「マトリックス」の記憶は急速に古びているけど、この演出は2004年のプレミエだから、まだエージェント・スミスのインパクトはあったと思う。でも民衆だけじゃなくて、モーゼもアロンも若い娘も病人も裸の男も(裸じゃないじゃんそれ)全員エージェント・スミス。モーゼには言葉がない。だからアロンを代弁者にして民衆に語らせる。これをシェーンベルクはモーゼにはシュプレッヒシュティンメで発声させ、アロンには朗々と歌をうたわせるという形で表現している。モーゼのシュプレッヒシュティンメは民衆には通じないけど、アロンの歌なら通じるわけだ。でもアロンは求める民衆に抗しきれずに、モーゼの不在の間に戒律を破って偶像(金の子牛)を作ってしまう。これにより民衆は熱狂し、(モーゼから見れば)愚かしい放縦と狂乱へと駆られ、モーゼの逆鱗に触れる。と、いう筋に対して、この演出は「そうはいってもモーゼもアロンも民衆も全員エージェントスミスにすぎないよ」と頭から見せている。そうか、じゃあエージェントスミスってなんだっけ。彼らには実体がなく、個人としてのスミスはいない。そしてエージェントにすぎない。誰の? さあ、モーゼは神のエージェントかもしれんが、民衆はなあ……。
●と思っていたら、第2幕でスミスたちが「スターウォーズ」に出てくるライトセーバー状のものを持ち出してきた。これ、事前に写真で見てたから、きっと第2幕の騒ぎで民衆はこれでジェダイばりの殺し合いをするのだろうと思うじゃないっすか。ま、一瞬局所的にセイバーとして使われるものの、でも違ってた。全員、このライトセーバーを盲人の杖のように使う。床をトントン叩いて右往左往しながら歩く。ええっと驚く。きわどい。
●で、金の子牛は出てこなくて、代わりに頭部がもぎ取られた金の人型の像が出てきちゃう。これとフセイン政権崩壊の光景は、2007年のワタシには結びつかない。あと民衆がみんな小型のモニター状の光源を持ってきて、モーゼ一人がそのモニター状物体に囲まれて語るシーンがあったけど、あれってテレビ? テレビって言いたいなら、画面になんか映さないと伝わらない気がする。
●ていうか、全般にとても抽象化されているんである。第1幕のアロンが奇跡を起こす場面、杖が蛇になったり、病人が癒えたりとか、身振り手振りだけだし、第2幕の民衆の狂乱も、スミスたちが転がってうねったりするのみで、具体的な表現はほとんどない。
●カーテンコールで、みんなエージェントスミスで順々に出てくるってのは、「モンティパイソン」のネタとしてありうると思った(笑)。さすがにモーゼ(ジークフリート・フォーゲル)とアロン(トーマス・モーザー)は識別されたけど。最後にバレンボイムがスミスになっているというオチを一瞬期待してスマソ。
●ニッポンvsエジプト戦の翌日に「出エジプト」。いや、意味レス。
ニッポンvsエジプト&カタールU22vsニッポンU22(結果バレ)
●またしても一日二ニッポンである。サッカーの世界では、欧州クラブのリーグ戦と代表の国際試合が重なって選手の奪い合いにならないように、シーズンの日程が組まれている。代表の試合はインターナショナル・マッチデイの設けられた週に行うので、今日みたいに夜にフル代表、深夜に五輪予選なんてことになる。正しい。以前はアジア(あるいはニッポン)はこのルールの蚊帳の外にいたんだけど、だんだん正常化されてきて、おかげで一日二ニッポン。文句は言えないが、2試合もなかなか見れないぞ、フツーは。(以下ネタバレしますよ、五輪予選も)
●と言いながら生放送で見てしまった……。まずフル代表はニッポンvsエジプト戦。(元)アジア王者とアフリカ王者の戦いということで公式戦扱いであったが、「ニッポンは国内組オンリーでもこんなに強くて美しくて効率的なのか!」という賞嘆するのみ。いつもの布陣+大久保と前田の2トップというメンバーだが、まずまずレベルの高い相手に4-1で快勝。大久保2得点(意外にも代表初ゴール)、前田も1点(しかしチャンスに外しすぎ)、加地ゴール最高。今のオシム・ジャパンは代表史上最強かも。ワールドカップ予選より前にここまで「できあがる」のが心配なくらい。でもまあ、これを書いている時点では、この試合なんて美しい過去の思い出に浸るみたいなもので、全然頭に残っちゃいないんである。もうあまりに五輪予選のインパクトが強すぎて。
●アウェイのカタールU22vsニッポンU22戦。前から内心で「今回、北京五輪は厳しいかも」と危惧しつつも、内心のさらに内心くらいで「とはいえ、最終的には出れるだろう」って気分があったんである。それが今日前半43分に青山直晃がコーナーキックからゴールを決めた時点で、「北京五輪大丈夫そうだな」ってうっかり安堵したのであって、このうっかりがいけなかったのかもしれん。その後、ニッポンが決定機を次々と外し続けてもワタシは安心していたし、後半32分に16歳とかいうハッサン・アルヘイドスにヘンな同点ゴールを決められても、まだどこかで安心していた。だって勝点1でもアウェイで取れれば十分だから。ニッポンはグループ1位の座を守れる。
●それがロスタイムになって、ペナルティエリア内でハンドの反則を取られ(確かにハンドだ。ウズベキスタン人主審はそれまでニッポンに十分良くしてくれていた)、後半49分にPKで逆転ゴールを奪われた。「ニッポン、そこで、後半55分に奇跡の同点ゴールだ!」と願わなくもなかったが、後半55分なんてやってこない。あるわけない。試合終了。ずっとニッポンが勝ってる気がしてたのに、今、グループ1位はカタールだ。オリンピックには1位しか出場できない。念のため、順位と勝点を書いておこう。
1位 カタール 勝点7
2位 ニッポン 勝点7
3位 ベトナム 勝点2
4位 サウジアラビア 勝点2
●カタールとニッポンは勝点も得失点差も同じだが、総得点でカタールがリードしている。残り2試合。この後、ニッポンはベトナム(A)、サウジアラビア(H)と戦う(Aはアウェイ、Hはホーム、念タメ)。カタールはサウジアラビア(A)、ベトナム(H)の順。サウジの予想外の不振が話をややこしくしてるのかもしれない。彼らにはほとんどノーチャンスだが、可能性はゼロではない。次の試合、カタールもニッポンも負けることだってありうる。次は11/17だ。
●ここのところ、オリンピックでもワールドカップでもいつもニッポンが出場してたわけだけど、北京五輪に出場できないとなると、気分的にはずいぶん寂しい。その場合、五輪そのものへの関心がゼロに近くなるかも。少しだけ、ワールドカップのアメリカ大会を思い出す。あの場にオフト・ジャパンがいなかったという不条理は、カタールのドーハでのロスタイムの失点が原因だった。本日もドーハ、ロスタイムという既視感。必要以上に「イヤな予感」がしてもしょうがない。反町監督の試合後のコメントは半ば支離滅裂で、あからさまに気が動転していた。
目の細かすぎたフィルタ
●うっ。このブログ、スパム・トラックバックをはじくために自家製フィルタを装備させているんだけど、うっかり設定ミスをしたため、最近正常なトラックバックまでいくつもはじいていた模様。失礼いたしました>該当される方々。
●そのくせ、真性スパムはたくさん通してしまっていたという不条理。やれやれ。最近は一読しただけだと「あれ、これスパム?」みたいな微妙なスパム(でも断じてスパム)も多くて、トラックバックを開放するエントリーを選ぶようになってしまった。それにこちらからフツーにトラックバックしても拒否されることもムチャクチャ多いんである。「リンクがないからダメだよ」ってよく言われちゃう。初期の性善説に基づく牧歌的トラックバック・システムがとうに失われていることは承知しているんだけど、ったく残念。いろいろ考えて、現状は一部のエントリーにしかトラックバックを開放しないことにしている。
●NHKで放映している人気ドラマ「デスパレートな妻たち」。もう違和感ないけど、この訳題ってかなりインパクトあった。カタカナ語はここまで許されるのかっ!と。スティーヴン・キングの小説「デスペレーション」という先例はあったものの、まさかNHKで「デスパレートな妻たち」とは。「デスパレート」も日本語とはいいがたいが、「妻たち」も日本語じゃない気がする。もっとも、もしこれを日本語にするとしたらどうすりゃいいのか。ワタシだったら「崖っぷち奥様」だな(笑)。
「サッカー茶柱観測所」(えのきどいちろう著)
●サカ好きなら読むしか。「サッカー茶柱観測所」(えのきどいちろう著/駒草出版)。一時期、この連載を読むためだけに週刊「サッカーマガジン」を購読していた。書店では見つけられなかったようで単行本になっていたのを知らず、ようやくゲット。たっぷりと楽しんだ。
●中身はなんでもありのサッカー・コラム、ググッとサッカーの本質に迫るネタもあれば、脱力するようなバカネタもあり。でも突き詰めればサッカー愛。なんつうかな、好きなものに対する「おもしろがり力」の高さが半端じゃないんすよ。朝、思い立ったら高速バスに乗って磐田とか甲府に行くみたいなネタが特に好き。サカ好きなら、サッカーを存分にとことん楽しみたいわけっすよ。当たり前? いや、そんなことない。世の中には東京ヴェルディの凡戦を見て「こんなサッカー見てなにがおもしろい。バルセロナやマンチェスター・ユナイテッドがサッカーだ」と上から目線で述べる気難しいヲタもいっぱいいる。でもJ2の試合からもそのおもしろさを味わいつくすことのできる感受性のほうがサカ好きには有用なのであって、「サッカー茶柱観測所」はおもしろがるために、ときには物語を紡ぎ出すことだって厭わない。圧倒的に正しい。帯に原博美監督のコメントが載っている。「えのきどさんは最高にサッカーを楽しんでるね」。
●細かいネタだけど、ボスニア・ヘルツェゴビナのムシッチとカメルーンのソングの話に感動した。いや、単にユニの背中にある名前が、MUSICとSONGだってそれだけの話なんだけど。でもスゴくない? あと、アディダスの話も衝撃的だった。「川淵三郎」っていう名前の中に、2ヵ所も三本線が入っているっての! 氏名がすでにアディダス(笑)。どうしてそんなこと、思いつくですか!
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●リアルつながりの方、ネットつながりの方にミニ緊急告知。10/19(金)夜、いっしょに草サッカーしてくれる人、募集。気軽なミニゲームを予定、大半未経験者、40~20代。競技性ゼロ、親睦優先、初めてでもOK。雨天中止、場所は都内。興味のある方、ご連絡ください。ボールは友達。
募集。秋のカルチャー・セミナー「クラシック音楽入門」
●えー、募集をひとつ。あれから一年……。昨年に引き続き、再び趣味のカルチャー・セミナーというものの講師(?)をします。11月29日(木)、18:30から、場所は六本木であります。話の内容はほぼ未定、しかし前回とは重複しないので、昨年ご参加いただいた方々も新規の方も、ぜひご参加ください。本質的にきわめてシャイな人間であるワタシとしては、人前でしゃべるというのはどうかと思うわけでありますが、ありがたくも「2度目の声がかかる」となれば期待に添えられるよう力を尽くさねばいかんなと、ダラダラと冷や汗をかきながらここで営業。お申し込みは以下から。前回はおかげさまで盛況でした。
よろしければ、ぜひ。
マラ9@バレンボイム指揮ベルリン・シュターツカペレ
●二日連続でバレンボイムを聴く。サントリーホールでダニエル・バレンボイム指揮ベルリン・シュターツカペレ、演目はマーラーの交響曲第9番。昨日の「トリスタンとイゾルデ」は休憩入れると5時間だか6時間だか、もう感覚的には半日聴いてたくらいのボリュームだったんすよ。それに比べるとマーラー9番は一瞬。もう、「あっ」と思ったらコンサート終わってる。休憩なし、1時間半。と、軽く光陰矢の如し感に浸ってみたが、実際にバレンボイムのテンポも速めだった。もともと自分がこの曲をカラヤンやバーンスタインで刷り込まれているからなんだろうけど、第4楽章なんか特に。でも第4楽章の例の鳥肌ポイントではちゃんと鳥肌立つ。このオケ、ホントにすばらしくて、弦楽器の深々とした響きを耳にして感じるのは、こんなオケがウチから半径100km圏内を本拠にしてくれたらなあ!という意味レスな羨望。猛速で定期会員になる。近頃ホームタウンベースで物事を見るのが脳内流行なので、「アウェイのクラブがホームスタジアムに来てくれるのだけを喜びとして生きていくのは寂しい」という命題を思い起こす。物欲しげな目線で舞台を眺める、ヨダレ垂らしながら。
●それにしても、二日続けて「死」っすよ。「トリスタンとイゾルデ」で愛と死、マーラーの9番でまた「死に絶えるように」だ。来週のシェーンベルクの「モーゼとアロン」はどんなオペラなんだっけ?まあクラシック音楽は「愛」と「死」なくして成立しないからしょうがないか。逆説的にこれだけ短期間にオペラとコンサートを次々こなすバレンボイムは鉄人。
●余韻を味わう曲だから大変すばらしいことであるが、サントリーホールのお客さんは最後の一音が鳴り終わってもだれ一人拍手をしなかった。昨日の「トリスタン」では終わって間髪いれずに失敗ブラボが入ってしまって惜しかったが、この日は完璧、そう思った。だれも拍手しない。バレンボイムが手を下ろした。まだだれも拍手をしない(笑)。5秒、10秒……。慌て気味の(?)バレンボイムが譜面台の楽譜を閉じて、ようやく拍手。お客さんはもっと余韻を楽しみたかったかもしれない。「指揮者が棒をおろしてから拍手しよう」ってのはよく言うけど、そのうち「指揮者はお客が拍手をはじめてから棒をおろすように」って言い出す人が出てくるに16777216マッカ。
「トリスタンとイゾルデ」ベルリン国立歌劇場
●NHKホールでバレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場来日公演、ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」を。クリスティアン・フランツ(トリスタン)、ワルトラウト・マイヤー(イゾルデ)、ルネ・パペ(マルケ王)。ハリー・クプファー演出。豪華。
●少し前に20世紀フォックスの映画「トリスタンとイゾルデ」ってあったじゃないっすか。マークって呼ばれてるシブいオッサンがいて、誰かなあと思ったらマルケ王のことだったってヤツ(笑)。もちろんワーグナーの楽劇とは筋が少々違うんだけど、でもあれはあれでためになったかも。っていうのは、クラヲタ的には「トリスタンとイゾルデ」伝説ってワーグナーばっかりで知っちゃうわけだけど、このオペラにはプロットらしいプロットがない。幕が開いた時点で、実は話の大半はもう終わっている。どういう由来でトリスタンはイゾルデと出会ったのかといった前史はもっぱらセリフで説明されるだけで、オペラは大きな物語のクライマックスだけを拡大鏡で見せて丹念に描く。トリスタンがマルケ王に寄せていた主君への忠義がどのようなものであったかを、ワタシらは舞台上で目にすることはできない。だからそのあたりを視覚的に見せてくれるあの映画はそれなりによかったのかもな、と思ったんすよ。あ、映画そのものとしてはオススメしたいタイプじゃないんだけど。
●で、このハリー・クプファー演出は、トリスタンとマルケ王の関係を強調しているんだけど、そのあたりも「トリスタンとイゾルデ」という二人の短い関係よりも、「トリスタンとマルケ王」の二人の長い関係について、舞台に描かれていない物語を想起しながら見るとよく伝わってくる。トリスタンとマルケ王の愛、嫉妬、裏切り、赦し。フツーに「トリスタンとイゾルデ」を見ると、第3幕のマルケ王が唐突じゃないっすか。「媚薬ゆえのことと知ったので、お前を許す、トリスタンとイゾルデは結婚してオッケー」って言ってくれるんだけど、そんなので許されるなら第2幕まではなんだったのさ、どうしてブランゲーネはきちんとマルケ王に事情を説明してあげなかったんだよー的な疑問がわいて。今日、ワタシのなかでは、それはブランゲーネはトリスタンとマルケ王の愛を許せなかったからだと勝手に了解することにした。毒ではなく媚薬を飲ませたのも、そのため。事件の主犯はブランゲーネ。あと、クルヴェナルも怪しい男だとにらんでいるのだが、それはまた別の機会に。
●今後、どこかの製薬会社が媚薬を開発して市販することになったら、商品名はイゾルデ、ないしはブランゲーネだな。あ、毒薬と媚薬は違う色に着色しておいたほうが、安全管理上なにかとよいと思うぞ→イゾルデ母。
●舞台は簡潔で、3幕を通して中央にドーンと天使の像があって、それがぐるぐる回るスタイル。ただし天使は打ちひしがれ、地に伏している。大体こんな感じで。
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天使もいろいろと大変である、と(違うだろ)。地上に堕ちた天使ということなのか。
●終演後、もっとも盛大な拍手を受けていたのはルネ・パペ。オーケストラの響きもすばらしくて堪能。しばらく頭のなかで「愛の死」がグルグルとローテーション確実。でも一番好きなのは第3幕のド頭かな。ラブ夜の国、グッバイ昼の世界なほんの一瞬。
ラーメン屋の決闘
●空腹は突然やってくる。すぐ目の前にあったラーメン屋に飛び込んだ。狭くてカウンターだけで、こぎれいでもなく、行列にも縁がなさそうな、フツーのラーメン屋。店の名前がついたラーメンを頼み、ズズッと食していると。
●右に座った男がウーロン茶を注文した。そして仏頂面でバイト店員に言う。「ここの水、なにか匂うよ。これ、どうなってんの。匂ってしょうがないからウーロン茶、頼んだんだ」。えっ、これ、匂うかな。水道水なんてこんなもんだろ、ていうか、ここ、ラーメン屋だし。しかも相手、バイトだし。応対に困った若者に向かって執拗に男は続ける。「お店によっちゃね、いろんな工夫しているところ、あるよ。知らないの? 備長炭を入れるとかさ」。
●ああ、これが00年代の光景なんだろなー。そそくさと猛速爆食、ガンマンが店内で撃ち合いをはじめると知った酒場の店主のごとく、あわてて逃げ出す粘着ゴー・アウェイ。
10分間だけ「フィガロの結婚」
●週末に録画しておいたNHK-BSの「フィガロの結婚」、冒頭の10分くらいだけ見る。ザルツブルグ音楽祭の公演でアーノンクールが指揮。アンナ・ネトレプコがスザンナを歌っている。とっくにDVDで発売されていたと思うけど、映像を見たのは初めて、そして猛烈に驚愕。
●っていうのは、この公演、ネットラジオなら生中継がある!ていうので、ワタシは夜中にPCにかじりついて聴いてたんである。おおリアルタイムでザルツブルクの公演がウチの古いPCで聴ける、みたいな感動をしばし味わい、で寝落ちした、深夜すぎて。あまりに悔しいので、バルトークラジオのアーカイブから中継を拾ってきて、翌日以降携帯プレーヤー(ていうかホントはICレコーダー)にこれを突っ込んで堪能していた。うわ、アーノンクール、スゴい、なにこれ、みたいに。ワタシの頭の中にはギョロリとした眼で歪にテンポを動かしながらウィーン・フィルを操るパワフル老巨匠の図ができあがっていて、そこに舞台が存在するっていう当然のことすら忘れてた。
●そしたら、こんなカッコよさげな舞台だったのか!と自分で勝手に描いてた想像図とのあまりのギャップに驚いたんである。クラウス・グートの演出、頭良すぎ。って最初の10分しか見てないのにナンだが(笑)、でも無言の狂言回しらしき「天使」が舞台にいる時点でこりゃ何事だと思わされるし、最初の場面、スザンナとフィガロが「この部屋、ヤな感じ」「どうして? 伯爵に近くて便利じゃない」「でも伯爵があなたのいない間にこの部屋に押しかけてきたら?」とか歌ってる間に、フィガロの死角でもう扉から伯爵があらわれて、すでにスザンナとの情事がはじまっていることを示唆するのって、どうっすか。ホント、冴えてるよなー。あと、モノクロームを基調にした衣装なんかもステキすぎる。
●で、どっちが本物なのか、とか一瞬悩んだ。去年音だけで聴いたネットラジオの音源と、このNHKのテレビ放送と。劇場の舞台で見えるものが本物とするなら当然後者だけど、前者も自分的には確固とした実在で、むしろなじみ深い。映像で見るザルツブルク音楽祭の上演のほうがファンタジーって気もする。ネトレプコみたいな容姿の女中がいるかよってことじゃなくて、これだけキャストがそろってて、演出の切れ味が鋭くて、こんな指揮者とオーケストラが劇場に集うっていう、全世界でDVDが発売されるような公演は、少なくともウチから半径100km圏内には実在しない。「引越し公演ならありうる」とかいうのはそれはまた別口別ジャンル異種格闘技みたいな話であって、やっぱりファンタジーだと思った。
●どうして10分しか見てないかといえば、今月新国立劇場で「フィガロの結婚」があるわけで、これに行くか行かないかを迷い中であり、もし行くとなった場合、そんなファンタジーみたいな舞台で予習したくないんである。そりゃなんか違うだろう、と。でも行かないかもしれない。スザンナ役のラウラ・ジョルダーノはキャンセルになった。行くか、行かないか。迷っている間が一番楽しい。てのはウソ、真っ赤に。
「私はフェルメール」その2
●3つ前のエントリー、「私はフェルメール」の続き。才能のある作曲家がバッハやベートーヴェンの完璧な贋作を書いたとしても、それが真作として信じられる以上、(パブリック・ドメインとなるので)贋作曲家は1円も手にすることができない、と書いた。でもよく考えたらそんなことないっすね、自筆譜まで用意できるのなら。少し前にベートーヴェンのピアノ連弾用大フーガ自筆譜が発見されてサザビーズで競売にかけられたっていうニュースがあったではないか。落札価格は2億3千万円だった。これが交響曲第10番の自筆譜ならずっと高額でもおかしくない。ファン・メーヘレンのように莫大な財産を手にするとまではいかなくても、宝くじ級の大金にはなりそう。
●ファン・メーヘレンの戦略に倣うとすれば、まず18~19世紀の紙とインクを調達しなければならない。17世紀絵画はギャラリーで買うことができたけど、楽譜はどこで買うんでしょか(笑)。ていうか、絵の具と違ってインクを剥ぎ落とすのは難しそうだから、未使用の紙を手に入れなきゃいけないのか。これは難問かもしれん。
●でもやっぱり最大の問題は肝心の作品。ベートーヴェンっぽい曲を書ける人はいくらでもいるだろうけど、ベートーヴェンっぽい「傑作」を書ける人はいるんだろうか。みんなが大好きになるような「第十」、コンサートのレパートリーになって繰り返し演奏されるような、ベートーヴェンの専門家が感涙に咽ぶ名曲を。
●もしそんな曲が書かれたら、ベートーヴェンの交響曲全集を録音した現役指揮者は、全員第10番を追加で録音させられること確実。そして嵐のような第10番ブームが吹き荒れて、その後、この作品が贋作者の手によるものと判明したとする。この場合、ファン・メーヘレンによる贋フェルメール「エマオのキリスト」が美術館の片隅に追いやられたように、作品の価値は暴落するのだろうか。それとも贋作者の評価が暴騰して、新作交響曲を委嘱されたりするんだろうか。ワタシとしては、既存の9曲と同じくらいの傑作なら、新作は10曲でも20曲でも大歓迎だ。贋作者には「ベートーヴェソ」と名乗っていただきたい。
ひきこもって天皇杯3回戦
●天皇杯3回戦、ここからJ2勢が登場し、アマチュア・クラブと対戦する。この日曜日は味スタに行って、東京ヴェルディvsホンダFC(静岡代表)を観戦しようかなというプチ野望を前日夜に抱いた。が、抱いたけど、徹夜してしまって、朝起きたらもう朝じゃなかったので断念(涙)。結果を聞いたら、ホンダが勝ったっていうじゃないっすかー。ああ、それはそれで見たかった、惜しいことした感、全開。
●もっともJ2でもヴェルディのようにJ1昇格争いをしている上位チームにとっては、天皇杯というのは微妙な存在だ。ここで熱くなって挑んでくる下位リーグや学生のチームと消耗戦を繰り広げて、リーグ戦に悪影響が出てしまうようでは到底割に合わない。ヴェルディは控え選手をズラッと並べたチームを出してホンダに敗れた。この日、J2上位4チームはすべて敗退したんである。札幌は秋田のTDKに、京都は明治大学に、仙台は順天堂大学に負けた。プロフェッショナリズムという点では合理的すぎる結果かもしれんが、サッカーの神様的にはどうなんだろう。
●で、一試合だけテレビ観戦。水戸ホーリーホックvsツエーゲン金沢。これはスゴい対戦カードっすよ。だってツエーゲン金沢は北信越リーグ所属で、J2の水戸から見ると、一つ下のJFL(3部リーグ)のさらに下のリーグの相手なんだから。でもツエーゲン金沢はJFLのクラブを2チーム破ってここまで勝ち上がってきている。で、メンバーを見ると、J1では活躍できなかったけどまだ若い選手をたくさんそろえていて、元マリノスの森陽一とかがいる。水戸がフリーキックで1点先制、しかし後半途中からはほとんど一方的に金沢が攻撃して、足が止まった水戸が耐えるという展開で、J2と地域リーグなんていう戦いには到底見えなかった。今はJFLを目指すクラブがいちばん熱いのかも。
●ちなみにツエーゲン金沢というクラブ名、Zweigenという表記からドイツ語っぽく聞こえるが、全然違う(笑)。ワタシはここの生まれだからよくわかるが、これはベタベタの金沢弁で「強いっすよー」みたいなことを言っている。いや、うまくニュアンスを伝えられる東京語が見つからなくて、「強いっすよー」じゃ正確な翻訳とはいえないんだけど、地元民には脱力系の笑いが起きるネーミングなんである。この地域はツエーゲンが台頭する前は、「テイヘンズFC」というクラブが天皇杯の常連として君臨していた。脱力系の名前のクラブしか勝ちあがれないのか、ここは。
セルティックvsACミラン@チャンピオンズ・リーグ
●10月3日の試合だから結果バレもないだろうから、いきなり書くけど、中村俊輔が所属するセルティックがミランに勝ったんである。録画しておいたフジテレビの深夜放送を再生。しかし、スタメンに中村俊輔はいない。結果だけは知っていたが、試合終了直前になってやって中村俊輔が出てくるとは。俊輔はゴールもアシストもしていないが、ロスタイムになって決勝ゴールが生まれて、2-1でセルティックが勝利。俊輔がいないセルティックはとことん無骨な武闘派集団に見える。そして、見てて楽しいものでもないことに気づく。
●それにしてもここの「ホーム&アウェイ力」って凄まじい。アウェイのACミランが借りてきたネコのように大人しくなる。ミランの選手は最初から萎縮していたように見えたし、後半ロスタイムになると、みんなうつむき加減になっていた。俊輔もフェネホール・オフ・ヘッセリンクもいないスコットランド人だらけのセルティックに対して、あのミランが耐えるサッカーをする。どういう仕組みなのか。謎。
●決勝ゴールの入った瞬間、ストラカン監督は連続飛び上がりガッツポーズして狂喜、お客さんは優勝したみたいに興奮。ドガガガッとスタジアムに歓喜が爆発するあの雰囲気がいい。アジア・チャンピオンズ・リーグは十分ワクワクする大会だけど、ACミランのような相手がいないところが惜しい。ていうか浦和がACミランみたいな存在になればいいのか。
「私はフェルメール」(フランク・ウイン著)
●この本を読んで、美術界がうらやましくなった。「私はフェルメール~20世紀最大の贋作事件」(フランク・ウイン著/ランダムハウス講談社)。これはなにかといえば、フェルメールの贋作者であるハン・ファン・メーヘレンの伝記である。フェルメールのことはろくに知らないのに、贋作者のことには詳しくなってしまった(笑)。
●ファン・メーヘレンの代表作は、当時オランダ絵画界最高額の値段がついたという贋フェルメールの「エマオのキリスト」。贋作がバレたのは、ナチスのゲーリングの所有物としてフェルメールの贋作「姦通の女」が押収されたから。売買ルートからファン・メーヘレンの名が挙がり、オランダの至宝を敵国に売り渡した罪で起訴される。で、ファン・メーヘレンは告白したのだ。「いや、それフェルメールじゃなくて、実はワタシが描いたんです」と。これがきっかけでいくつかのフェルメール作品が贋作であったことがわかるのだが、その反響がおもしろい。これまで散々傑作として「エマオのキリスト」を称賛してきた専門家はどうすりゃいいのか。で、なかにはファン・メーヘレンが自白したのにまだ自分の誤りを認められなくて、「エマオのキリスト」真作説を唱える専門家がいたりする。贋作能力を証明するために、ファン・メーヘレンは法廷で衆人環視のもとでフェルメール風作品を描かされる。大変なスキャンダルであるが、部外者から見れば痛快でもある。
●絵画の門外漢のワタシはわかっていなかったのだが、ファン・メーヘレン級の贋作というのは、ただ絵が描ければいいってものじゃないんである。絵の才能はもちろん必須、しかし並外れた情熱もいる。たとえば、フェルメールは17世紀の画家だから、画材店で絵の具を買ってきて描いているわけではない。顔料は自前で調合するわけだ。ファン・メーヘレンも17世紀絵画への造詣の深さを活かして、当時と同じ方法で顔料を作った。フェルメールの青は天然ウルトラマリンで、ラピスラズリという貴重な鉱石をすりつぶして生成する。ファン・メーヘレンはそれも再現している。キャンバスだって、別の本物の17世紀絵画を購入して、そこから絵の具を剥ぎ落として調達した。そこまでやって、そして専門家や批評家が感嘆するような見事な「エマオのキリスト」を描いたんだから、もうこれはファン・メーヘレンその人が偉大な才能の持ち主だったってことでいいんじゃないのか(笑)。
●で、そんな美術の世界にどう羨望を感じたかといえば、音楽にはちっとも優れた贋作者が出てこないってことだ(笑)。斯界の権威が真作と認める、未発見のベートーヴェンの交響曲を作曲しようと情熱を燃やす人はいない。バッハの未発見のミサ曲とか、モーツァルトの未発見のピアノ協奏曲とか、そんなものを書いてくれる贋作者がいるならワタシは諸手を挙げて歓迎する。ありがとう、こんなすばらしい曲を書いてくれて、と。
●これに近い路線としては、クライスラーの事件が有名だ。当初、バロック期の古い作品を図書館から発掘して、それを編曲したものとして自作を発表していたのだが、30年も経ってから本当は自身のオリジナル作品だったことを打ち明けた。でも、これは全然本質的にはファン・メーヘレンのやってることとはちがう。ワタシが聴きたいのは、どこからどう聴いても真作としか思えないバッハやモーツァルトの新しい名曲だ。「エマオのキリスト」がそうであったように、多くの人を感動させる大作がいい。
●でもわかってる、これはムリな話なのだ。だれもモーツァルトの交響曲第42番を書かない。決してバッハの(資料からの復元ではなく「本物」の完成品としての)「ルカ受難曲」は書かれない。騙せるほどの天才はいないから? そうかもしれないし、そうでないかもしれない。ただ一つ確実なのは、ファン・メーヘレンは贋フェルメールを売ることによって、どれほど遊蕩しても使い切れないほどの大金を手に入れたが、贋バッハはいかに優れた作品を書いても、それがバッハの真作と信じられる以上、1円も手にすることができないということだ。
アジア オーケストラ ウィーク2007開催中
●アジア オーケストラ ウィーク 2007開催中。オペラシティでKBS交響楽団を聴いてきた。韓国を代表するオーケストラ。チャン・ユンスン指揮でショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」、ピアノのキム・ソヌク独奏でショパンのピアノ協奏曲第1番、あとはお国ものアリラン由来のオーケストラ曲を。ショスタコの「1905年」はある程度覚悟していたけど、大変強烈な演奏で、終演後もしばらく鼓膜にショスタコ印がこびりついて取れなかった。ドンドン、ドドドン、テーハミングッ! あ、スマソ、これ、ショスタコじゃなかった。音楽だけじゃなくて韓国文化全般に感じることなんだけど、ある意味自分たち自身の鏡像を見ているかのような同質性を見て取り、一方で根源的なテンペラメントの違いを感じる。
●ワタシはこの一日だけなんだけど、この後、本日3日に中国の昆明交響楽団、4日にインド=スリランカ交響楽団の公演が続く。なかなかアジアのオーケストラを聴く機会はないので、ワールドカップよりアジアカップな方はどぞ。
●ショスタコを満喫、でもあまりに強靭な音楽を聴いてしまったので、帰宅すると正反対のものを聴いて、中和したくなる。ダウランドとかバードとか、作者不詳の17世紀の音楽だとか。これはカラムーチョ一袋を爆食したら、今度はガリガリ君ソーダ味を食べたくなるとか、そういうことなのであろうかいやなんか違う。
ウサワのテルミンmini、そして「村上春樹にご用心」
●学研の「大人の科学マガジンVol.17」、なんと付録があの「テルミン」なのである。予約して即ゲット。本日ようやく試してみたが、これはなかなか楽しい。もともと学研の「科学と学習」といえば、ワタシは「科学」派だ(なんの話かわからないあなたはきっと若者)。よくカブトエビ飼育セットとかラジオとか作ったよなあ……手先が不器用でことごとく失敗した気もするけど。
●それが大人になって再会してみたら最古の電子楽器「テルミン」である。ちゃんと音が出た。ヒュイ~ンと唸る。まずは練習。ドーレーミ~。次回更新のクラジャン@日経パソコンPC Onlineのネタにしてしまおう。オススメ。
●そうだ、先日ご紹介した新しい出版社アルテスパブリッシングの設立第1弾「村上春樹にご用心」(内田樹著)がついに発売されたのだった。スゴいっすよ。今見たら、Amazon.co.jp ランキング「本で74位」。あらゆる本のなかでのトップ100入り。bk1じゃ単行本総合4位に入ったっていうから、想像を絶する。発売前に重版決まったとか言ってたし。売れたら売れたでいろんなことが大変なんだろなーとは思うんだけど(出版流通の仕組みは難しい)、でもやっぱり売れるのが吉にはちがいないので、この後ビュンビュンと追い風に乗って全宇宙的大ベストセラーになることを祈る!
東京ヴェルディvsコンサドーレ札幌
●つい数日前まで30度とかしつこく残暑だった東京、いきなり16度、雨はしとしと。寒い。そんなブルブル震える日曜日、2部リーグのサッカーを見に行くと? 閑古鳥が鳴いているかと思えば、んなことない! 東京ヴェルディvsコンサドーレ札幌、味スタに集まった観客1万2000人。実はJ2の3位vs1位という昇格争いの大一番でもある。
●少し前まではJリーグってまだまだ借り物の文化で、ワタシらはヨーロッパとか南米とかいろんなところをチラチラ横目で見ながら、「サッカーはこんな感じに見るのかな」みたいにいろんな作法を試行錯誤しながら身につけてたと思うんだけど、もうそんな時代って完全に過去。2部リーグがここまで自然体で受け入れられているんだから。お客さんに「2部リーグ」感っていうかマイナー感とか過剰なサッカー通の雰囲気とかが全然ない。えっとマイナー感っていうのは、「競技経験者の目の肥えたオヤジが、左サイドバックのポジショニングに野次を飛ばす」みたいな光景のことなんだけど。フツーにサッカー好きな家族連れ、カップル、若者たちが集ってる。
●その一方で、札幌側ゴール裏にも1000人まではいかないけど、数百人の赤と黒の人たちが集まっている。ヴェルディ側にも数百人の熱心なサポーターがついている。これ、すごい変貌ぶりっすよ。迷走に迷走を重ねた結果(川崎から東京に移転したりとか)、かつてはゴール裏数十人だったりした時代もあったのが、今は再生の時代を迎えているみたい。
●あと味スタはいいなあ。陸上トラックのスペースがあるから、専用競技場じゃ全然ないんだけど、でもマリノスの日産スタジアムとは比較にならないほどピッチが近い。バックスタンドの2階に座ったのに。周辺の雰囲気も含めて、ここ来るとスタジアムに来たって気がする。日産スタジアムはむしろ巨大イベント会場、にもかかわらず付随する娯楽なさすぎ。
●試合は札幌のディフェンスが崩壊して、ヴェルディが5-1と快勝。ヴェルディは名波は欠場してたけど、服部は左サイドバックで健在。中盤は元柏の大野。元札幌のフッキ、ディエゴ、元U20代表飯尾一慶(後半途中から広山望)にときどきシウバが加わって4トップ状態。そんな前がかりじゃ中盤の守備はどうなるかと思いきや、お互い中盤は省略気味、J1とはいろんな面で違う。ブラジル人依存度の高さとか。やっちゃいけないミスの多さとか。運動量とかスピードとか。規律のない勝手プレイへの許容度とか。でも観戦する楽しさは高くて、最近何試合かのマリノス戦よりよっぽど楽しかった(それじゃマズいんだけど)。
●しばらくヴェルディを応援しようかなあ。ヴェルディはその歴史的罪深さゆえに応援したくなるというか(あの憎いほど強かった黄金時代)。紆余曲折あったけど、今は東京のクラブなんだし、心情的に味方するのに抵抗はない。ただし、一部に上がってきたらまたライバル。
●ちなみに、J2はベンチの控えメンバーがいまだに5人のまま(J1は7人)。選手視点で見ると、1部から落ちるというのは、まずチーム内でのベンチ入り争いが激化するということを意味する。